文化庁メディア芸術祭、エンタメ部門シンポジウムを開催
松山氏「キャラクターゲームを軽い気持ちで作るな!」


2月14日 開催

会場:国立新美術館


 文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会からなる「文化庁メディア芸術祭実行委員会」は、「第13回文化庁メディア芸術祭」受賞者と受賞作品を2月2日に発表した。今回は、2月13日に開催された「エンターテインメント部門 受賞者シンポジウム」の様子をお届けする。

 「エンターテインメント部門 受賞者シンポジウム」は、エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏と審査委員の桝山寛氏を司会進行に、大賞受賞作品「日々の音色」のナカムラ マギコ氏と中村将良氏、優秀賞「NARUTO -ナルト-ナルティメットストーム」開発チーム代表の松山洋氏、優秀賞「電気グルーヴ / Fake It !」の田中秀幸氏がそれぞれ出席。軽妙なトークも飛び出すなど、終始なごやかな雰囲気で進行した。

 河津氏によれば、第13回メディア芸術祭の応募総数は2,592点。うちエンターテインメント部門は622点で、アートやアニメーションの各部門に比べると海外からの応募は少ないものの、対象作品「日々の音色」を制作したナカムラ氏らはニューヨークを拠点にしているなど、地域的には広がりを見せているという。エンターテインメント部門の傾向について桝山氏は「大雑把にいうと、今年はゲームが少ない。広告がらみが多かった」と印象を述べた。


河津秋敏氏桝山寛氏



■ 「NARUTO -ナルト-ナルティメットストーム」
「凄く、キャラクターゲームに関しては“こだわり”を持って作っている」

松山洋氏

 最初のテーマに取り上げられたのは、PS3「NARUTO -ナルト-ナルティメットストーム」。一昨年に北米、欧州で先行、日本では3カ月遅れで発売された。松山氏は「今の現行世代機、特に欧米で目立っているんですけど、3大ジャンル。『スポーツ』、『映画』、『戦争』、これが実に増えましたよね。世界で1千万本を超える大ヒット作品の多くに、この傾向が如実に出ている。対して、これに日本人がどう対抗するか。欧米人の猿真似をして、追いついて勝てるか? そんなことはないだろうと。日本人の強みを活かすには、どうしたらいいかと考えたとき、我々がたどりついたのが、日本が誇る文化としてのアニメーション、マンガ。私個人も凄くマンガやアニメが大好きで、そこを突き抜けて“本物”を作りさえすれば、世界で勝負できるタイトルを作れるんじゃないか」とコメント。

 続けて「たとえばジブリさんの『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』って、欧米を意識して作られたかというと、そんなことはないと思うんですよ。宮崎監督以下、ジブリの方々が作りたいものを作られて、結果として世界中で評価された。日本が作り出すアニメーションは、それがたとえアジア的、日本的であっても、世界にちゃんと通用するのではないかというコンセプトを掲げた。アニメーションとゲームの華麗なる融合。PS3というハードが我々の夢を実現させてくれたのも大きかった」と説明する。

 続いて、制作に関する技術的な説明が行なわれた。本作では、3Dモデルの骨格を通常の人間以上に増やしているという。「我々は“自由ボーン”と呼んでいるんですが、多関節を用いることによって、こういう(マンガチックに弓なりにしなるような足の動き)キックが可能になる。人間には実際にできない動きなんですが、これこそ手書きアニメの文法。真面目なコンピュータ・グラフィックスに“不真面目”を取り入れたというのが、今回のコンセプトで1番大きかったところ。奥から手を(手前に)バーンと出す迫力あるシーンも、実際に手を大きくしちゃった(会場笑)。これもスケールアニメーションという技術ですが、CGは計算結果なので、入力されていないパラメータは勝手に動かない。どうしても、小さいものは小さいままという先入観がありがちなんですが、それをひっくり返した手法」といい、来場者も笑うとともに大きくうなづいていた。

 “アニメブラー”と呼ばれる、物凄く早い動きを影がひっぱられるような見せ方で表現するエフェクトについては、3Dモデルのなかに同じ色の三角形モデルを埋め込むことで、プログラムで制御しているという。物理計算で動きに合わせると同時に「まぁ、計算なので思い描いた通りには動かない。結局、手で直している。計算と手付けのブレンド」といい、フェイシャルボーンでも表情やアゴなどにアニメーション的な誇張表現が可能になる工夫が取り入れられているという。

 制作環境では、映像チームのデスク周辺などが公開された。作業用PCモニター、実機確認用モニターのほか「サブモニターで、朝から晩まで、その週にTV放送されたナルト、劇場版ナルト、自分が好きなアニメ作品を1日中延々と流している。そうした“イケてる”アニメーションのカットを、うちのスタッフは自分たちで編集している。イケてるアニメの間(ま)とは、どういうものか。体中に刷り込むための、現場から生まれた工夫」と説明。高精彩の液晶ペンタブレットも30数台用意されているという。

 毎月会社で60冊マンガを購入しているといい「全部買ってスタッフも全員読んでいます。特にナルトという作品に関してはは全部買っている。版元から送られてくるわけではない。新刊が出るたびに15冊ずつ買っています。DVDも全部買っているし、毎週木曜に放映されるTVシリーズもレコーダーに録画してスタッフ全員で観ている。少年ジャンプも過去8年分とっている。これは、単行本で描き直しをされることがよくあるので、その差異を埋めるため。チケットを買って、映画にも行かせています。どのみち仕事に直結するので、劇場で子供たちの顔を見る(観察する)ためにもやっています。国内外のイベントにも積極的に参加しています」と一気に説明。松山氏の「ナルト」に対する想いは一方ならぬものがあり、連載開始当初から10年来のファンで、「当時のバンダイと話をして(ナルトのゲームを)作ることに決めたから。一緒に集英社にいこう、と口説くところからはじめました。好きでやってます」と言い切る。

 上映されたデモムービーは、2年前に制作したティザー。「アメリカとヨーロッパに1番最初に持っていってプレス発表会で使ったもの。元々我々のコンセプトは、日本人が『好きだ!』というものを突きぬけて作れば、きっと欧米人も驚いてくれるだろうと思って作ってきたんですが。1番最初に上映したとき『Oh, My God!』って本当にいうんだ! って(会場笑)。リアルでそれをきいたときは、本当にうれしかった」とコメントする松山氏。

 ブラーに関しても「手付けって物凄く労力がかさむが、見極めは?(桝山氏)」という質問に、松山氏は「大きいところは私が、細かいところは現場が判断する。私はよく『こんなだったら、凄いじゃん!?』という言い方をする。それを目指そうよ! っていうと、それをどう効率よく実現するかは、現場。どこを上手くさぼって、どこを真面目にやるか。1から10までやり方を指定すると、自由な発想がでてこなくなってしまう」と回答。「結局アニメーションって、突き詰めると紙と鉛筆。動きとか間(ま)が真骨頂。特に日本のアニメーションはフルではなく秒間8コマのリミテッド。それで、どうイケてる絵作りができるか。それを我々がCG技術でやろうとしたときに覚悟していたのは、アニメーションの文法を取り入れる以上、最終的には“手付け”で仕上げていかなきゃいけないだろうな、と。逆にいうと、そこが1番楽しいところではある」と説明する。

 「ナルト」という既存のモチーフがあることについて質問されると、松山氏は「何かしらを原作にしたキャラクターゲームは、年間を通して物凄い数が発売される。そんななか我々は常々『キャラクターゲームのお手本になるものを作ろう』と考えている。私が子供のときからそうなんですけど、ありとあらゆるキャラクターゲームはイコール“クソゲー”っていう(会場笑)。まぁ酷いゲームソフトが多かったんですよ。キャラクター版権にあぐらをかいて悪い商売をしている大人が多かったと思うんですけど、そういう人間をひとり残らず退治したいんですね! 私は子供の頃から凄くキャラクターが好きなんで、それがゲームになると、やはり買っちゃうじゃないですか。ところが、遊んでみると『作った人間は、1回でもいいからやったのか!?』と、本当に酷いものが多かった。それって、子供たちにとってどうしようもないことだと思うんですよ。自分の好きなキャラクターを人質に取られているようなものなんで」と、鬱積していたかのごとく想いを一気にぶちまける。

 「これ、2倍がんばらなきゃいけないと思うんですよ。元々のファンがいるっていう期待に応えなきゃいけないし、『そのキャラクターが出ていればいい』ではなく、そのうえで作品でしか味わえないオリジナリティもちゃんと作っていかなきゃいけない。私はよく同業者にもいうんですけど『キャラクターゲームを、とにかく軽い気持で作るな』と。本当に、心の底から止めて欲しいと思っている会社もいくつかあるんですけど。できれば実名をあげたいくらい(会場爆笑)。凄く、キャラクターゲームに関しては“こだわり”を持って作っている」とコメント。このあたり、結論としては桝山氏のいう「突き詰めると“作品への愛”なのかな、という想いを強くしました」となるのかもしれない。


ご自身がファンだから、というだけでなく「(キャラクターゲーム作りは)2倍がんばらなきゃいけない」を日々実践しているサイバーコネクトツー松山氏。熱い想いを吐露した



■ 「電気グルーヴ / Fake It !」
田中氏「CMとミュージックビデオの仕事は、全然違う意識で作っている」

田中秀幸氏

 田中氏は、電気グルーヴと15年来の付き合いになるといい、アートディレクションやビデオ演出などを手がけているという。「ほんとんど友だちみたいな関係だが、それには良い部分と悪い部分がある。良いところは、打ち合わせをする際のコミュニケーションがスムーズ。一方、彼らの音楽、やりたいことをわかってしまっていること。親しいがゆえに、彼らの音楽をしっかり面白く見せないといけないと考えてしまい、自分の作品性などを反映させづらい」といい、今回の作品は結成20周年ということもあり「今回は意識を変えてやってみよう、彼らの音楽と自分の映像、コラボレーション的な作品として成立するようなもの、一体化したようなものを作りたい」と思ったという。

 なぜ飛び込みなのか? という質問には「彼らの音楽性は理解しているつもりなんですが……ひとつのテーマを決めて。それはひとつのフレーズだったり、細かいところ。それを延々と繰り返して、それに絶妙な時間の使い方、アレンジを加えていき、ひとつの音楽として成立するよう構成される。今回の作品も、それがシンプルに表現されている。それにあう映像が作りたいと思って、別にモチーフは何でも良かった。飛び込みは、これを作っているときに、ちょうど北京オリンピックをやっていて。飛び込み、いいんじゃないかなぁと思って(会場笑)。すごくミニマル、絶妙、音楽とシンクロした時間の使い方を何か考えられないか。飛び込みとシンクロナイズドスイミング的なものを……シンクロって、何か音楽をかけて表現するじゃないですか。電気グルーヴの音楽的な競技があったとしたら、どんなものか。そこから発想してみました」と説明する。ちなみに、今だったら「モーグルもいいですね。カーリング……本当に、モチーフは何でも良かったんですよ。それを繰り返していくことと、演出で時間を積み重ねていくことで作品を成立させる、ということがやりたかった」といい、タイトルの「Fake It !」も内容に影響を与えるものではなかったという。

 飛び込みシーンで実際に飛び込んでいるのは、全部で10人のインストラクター。あとはすべて映像を重ねてループを作成したといい「本当に飛び込んでいると思った!」という松山氏は真横で本当に驚いている様子。なお、飛び込み人数は少ないほど後の処理が大変になるといい、逆に多いと現場のコストが増大。10人は両方のバランスをとって決められた数字で「本当に低予算でして、撮影自体もソニーの民生用ハンディカム(驚いてざわつく会場内)。プールは横浜国際なんとか。そこを借りる費用くらいはあったんですが、それ以上は……。最近のミュージックビデオはどこも予算的に厳しい状況で、こういう自由な発想でやれる仕事はますます苦しくなっていて。そういうなかで、1発のアイデアを突き詰めることで、なにか作品を作りたいというのがあった」と苦しい事情を明かす。

 飛び込みに関しては具体的なコンテなど何もなく、すべて口頭による説明。どういう展開で構成が盛り上がっていくか、というタイミングは自分で決めていたが「コンテ書いても仕方ないよなぁ」と、現場で状況を見ながら完成形をイメージして撮影。プロデューサーや編集スタッフと技術的な打ち合わせはするが、アーティスト自身へのプレゼンは「付き合いが長いということもあって。今回はストーリーも何もないので(田中氏)」と最低限にとどめ、具体的な内容は皆無。撮影は4時間、ポスプロは2日で終了。計画性という点では「日々の音色」と極めて対極的な位置にあるのが面白い。

 テクノ作品なので、個性を感じないために登場人物に黒い目隠しを入れたという田中氏。これに対し河津氏は「人物に黒い目隠しが入っているのが今風だけど、それが逆に味が出ていていい」という。中村氏は「一見緻密なのに、2日って……物凄くビックリ」と非常に驚いた様子。これに思わず「物凄く綿密に計算して物を作るってことも結構あるんですが、今の技術なら、たいした計算をしなくても後から何とかなっちゃうんです。それでいつも『あぁ、なんであんな緻密に計算したのかなぁ、損したなぁ』ということがある(会場笑)」とぶっちゃけてしまう田中氏。ただ「綿密に計画して、その通りに仕上がったときの達成感もひとしお(田中氏)」といい、このあたり「あぁ、いい加減でもいいんだな」と勘違いされないようご注意いただきたい。

 ミュージッククリップがHD(16:9)で撮影されているのに、完成版はSD(4:3)という点に疑問を抱かれたナカムラ氏。「これは作業を軽くするため?」と質問されると、田中氏は「これを作った頃が、ちょうどHDとSDの過渡期。この次に作った電気グルーヴのビデオがHD。予算的な部分が大きい。撮影はHDだけど、SDで仕上げないと予算的にあわなかった」と説明。「モーションカメラを使ったのかと思ったんですが、あれは編集で動かしたんですか?(ナカムラ氏)」、「あれはアニメ的な考え方。そのまま二次元的に動かした。あとから画面を横にスライドさせるだけでも、撮影時の被写体アングルをちゃんと考えれば、案外バレないものなんですよ(田中氏)」、「HDで撮ってSDであげたから、というのもありますかね(ナカムラ氏)」、「そうですね。仕上がりより高い解像度で収録しておけば、何でもできちゃう(田中氏)」など、クリエイターならではのやり取りが繰り広げられる。

 河津氏が「あえてうかがいたいんですが、田中さんはCMもやられるじゃないですか。この場合は音楽ですが、やはり“物を売る”ことは意識されますか?」と質問すると、田中氏は「CMとミュージックビデオの仕事は、全然違う意識で作っている。CMはクリエイティブ・ディレクターというか、もっと根本的なことを考える方がいる。その人が物を売ることを真剣に考えているので、その人が『こういう形でアピールしたい』というメッセージ伝えるために、自分のテクニックを使うといった感覚。ディレクターとして映像表現、技術を提供するような気持ちで参加している」と説明。ミュージックビデオに関しては「アーティストの音楽に感情移入できないと、元となるコンセプトが出てこない」といい、たまに「音楽全般に興味があるが、やはり何も出てこない音楽というのは、ある」という。


さまざまなジャンルで活躍中のアートディレクター。今回、受賞作「Fake It !」を手がけた電気グルーヴとは旧知の仲だという



■ 大賞作品「日々の音色」
何か不思議な面白さを感じさせるのは、ドキュメンタリー性みたいなところ

ナカムラ マギコ氏(上画像・右)と中村将良氏(同左)

 大賞作品「日々の音色」は、ナカムラ氏と中村氏のほか、この場には来られなかった川村真司氏、Hal KIRKLAND氏の4人で制作されたという。キッカケは、アーティストのSOURと川村氏が高校の同級生で、以前のミュージックビデオ2作品を手がけていたこと。SOURから「またミュージックビデオを制作して欲しい」と依頼されたが、SOURは東京、4人はニューヨークを拠点にそれぞれ活動しているため、直接撮影しにいくことは予算的にも難しい。だが、SOURは「自分たちは出演しなくてもいい」ということから、今回の企画が立ち上げられたという。

 「何をやろうかという話になったとき、まずこの企画を見たときに『いやいや、無いよね』と。こんなに細かいもの(クリップ)をつなげるのは不可能じゃないか」と思ったというナカムラ氏。機材は、ラップトップ型のMacintoshに内蔵されたWebカメラ2台、編集も2人。にも関わらず、大賞作品は「1番最初に却下された企画(ナカムラ氏)」で、発案者は川村氏。続いてスクリーンに映し出されたのは、アイデアがち密かつ具体的に記されたアイデアスケッチの数々。まずは4人で思いつく限りのアイデアを出し合い、その時点で「可能か否か」机上で検討。次にWebカメラで実証を行ない、細かい動き、絵の見せかたを詰めていく。アイデアがしぼられてきた段階で、音楽をひたすら聞き込んでイメージにあうシーンを当てはめていく。

 続いて4人は、デモムービーの作成に着手。動きの合わせ方は、OHPシートを引いてセンターラインを作る手法を採用。このやり方も「デモムービーを作ってみて、はじめてわかったことが多々あった」という。ボツになったアイデアも数知れず、机上では面白かったが実際やってみたらさほど……というケースも少なくなかったようだ。完成版ミュージックビデオに参加したのは、のべ84人。SOURの公式サイトを見て参加された人が多く、足りないぶんは4人自身および友人知人に依頼。大半は日本人だが、一部欧米のファンも参加しているという。

 作品を見て「何が面白いのかと思っていて。最初(面白いんだけど)その正体がわからなかった。みんなで何かひとつの作品を作り上げるようなことを、Webカメラという手法を使ってスマートに表現されている。マルチ画面を使った作品は今までいくらでも見たことがあるが、何か不思議な面白さを感じさせるのは、ドキュメンタリー性みたいなところなのかな」という田中氏。ナカムラ氏は「仰るとおりです。正直そこまで新しいことは(何もないが)。作業量を考えると誰もやりたがらなかったというだけで。みなさん技術的な質問が多いんですが、やはりそこ(ドキュメンタリー性)ですね。演出をする際に、それをしていない。見たまま『コレをやって』、『え~、どうしよう』とか、やれてうれしい笑顔とか、そのままの自然な表情を撮っている。Webカメラが目の前にあるので、人としゃべっているときの距離感で撮影できた。観ている人も、自分に話かけられているんじゃないか? という錯覚を起こすというか。そういう感覚になっているんじゃないか」と説明する。


のべ84人の参加者が、さまざまな表情や動きを見せる。綿密な計画にもとづいた効果的な見せ方は、ドキュメンタリー性で高い評価を受けた



■ 松山氏「この仕事をやり続けることが夢」

 今後の活動や展望などについてきかれると、中村氏は「僕たちふたりは映像ディレクターユニット、チームでやっておりまして。これからも色々な世界で見ていただける作品をどんどん作っていきたい」といい、ナカムラ氏は「最近になって思うようになったんですけど。若い頃は『将来映画を撮りたい』、『あのアーティストと仕事をしたい』とかあったんですが、そういう細かいことがだんだん見えなくなってきて。いま、自分が映像の仕事でご飯を食べていける有難さみたいなのが、歳をとるごとに感じられてきた。ずっと続けていけることがいいな、と思っています。きっと仕事が、私たちを成長させてくれる」とコメント。

 松山氏「同じような答えになってしまうと思うんですけど。私もよくインタビューや取材で『将来の夢ってなんですか?」的なことを聞かれることが多いんですね。そのときにいつもお話しているのが“この仕事をやり続けることが夢”なんですよ。好きで選んだこの商売で、毎日好きなことだけ考えて、好きなことをやって、それでご飯を食べられて、人から褒めてもらえるって、こんなステキな仕事ってないと思ってるんですね。『趣味はなんですか』ときかれることもあるんですが、真っ直ぐに『仕事です』と答えられる生き方をしてます。これからも幸せな仕事を続けつつ、世界中の子供たちの笑顔を作っていければいいなと思います」とコメント。

 続けて「それと、もうひとつだけ。ゲーム業界に身を置くひとりとしてお話をしておきたいのが……ゲームソフトの文化的価値をあげていきたい、と個人的に思っています。どうしても歴史が浅いところがあって、ゲーム文化は叩かれがち。社会や父母の敵になることが非常に多いと思うんですけど。人を刺すのに、ナイフに罪はないじゃないですか。人に罪があるわけであって。極論かもしれませんが……。ゲームソフトはベビー・シッターではありませんので、都合のいい形で子供に与えないで欲しいなと。ちなみに、私にも5歳の子供がおりますが、ゲームソフトは一切禁止です(会場爆笑)。分別がつくようになるまでは一切興味も持たせませんし、触らせもしません。与え方を間違えると、簡単に毒になり、ききわけのない子供になってしまいます。ぜひ使用上の注意をよく守って(会場笑)、ゲームソフトは然るべきタイミングで与えていただきたいと思います」と一気に想いのたけを述べた。

 松山氏の気迫にやや気おされつつ、田中氏は「僕も本当に……極論をいってしまうと、みなさんと同じように、このまま作品を死ぬまで作り続けていきたいと思うんですが。こういうものを“やり続ける”ってことが、実は1番難しいことだと思っていて。何か素晴らしい作品をひとつ作るよりも、ずーっとやり続けることが本当に難しいと、最近凄く感じています。やり続けるためには、実はただ続けていればいいのではなく、やり続けるために物凄く色々なことを考えなくてはいけない。大変なんですが、でも、やり続けるってことは凄く大切だと感じています」とコメントしてくれた。


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(2010年 2月 15日)

[Reported by 豊臣和孝]