Taipei Game Show 2010現地レポート

Softworldグループ本社訪問レポート その2
日本産久々のヒット作「モンスターハンターフロンティアオンライン」の人気の秘密を聞く

2月5日~9日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人 150台湾ドル
    子供 100台湾ドル


 「モンスターハンター」シリーズは、日本ほどではないにしても台湾でも非常に人気の高いフランチャイズだ。特にPSP向けの「Monster Hunter Portable 2nd」は、PSPのキラータイトルとなった。

 2009年にWiiで発売された最新作「モンスターハンター3(トライ)」は、日本語版のままだった上に、肝心のオンラインプレイに対応しなかったため残念ながら不発に終わった模様だが、Softworldグループの運営子会社Gameflierのもとで運営されている「魔物獵人(モンスターハンターフロンティアオンライン、MHF)」は、オープンβテストで4万人を集め、1月21日からスタートした正式サービスにおいても堅調を維持しているという。

 Softworldレポートその2では、今年のTaipei Game Showの目玉タイトルのひとつだった「魔物獵人」の運営責任者を取材し、その人気の秘密を聞いた。




■ 「モンスターハンター」シリーズ待望の中文版にファンが殺到

取材に協力頂いたGameflier 運営部協理の銭幽蘭氏
「魔物獵人(モンスターハンターフロンティアオンライン)」のタイトルイメージ
Softworldブースでは、ダンスと試遊を交互に繰り返し、多くの来場者を集めていた

編: 「魔物獵人(モンスターハンターフロンティアオンライン、MHF)」の獲得経緯を教えてください。

銭氏: 非常に有名なタイトルだったということはもちろんですが、ゲームのグラフィックス、見た目のインパクトにひきつけられました。

編: 1月21日に正式サービスをスタートしたばかりということですが、台湾での運営状況について教えてください。

銭氏: サーバー数は3台、人数は課金開始後は同接3万人です。OBTの時には4万人でした。ユニークログイン数ですと月間7万人から8万人です。これは元々我々が予測した数字よりも良いです。当初は同時接続2万人を想定していました。2万人の目標というのは決してこのゲームを甘く見ているというわけではありません。このゲームは他のMMORPGとは異なる遊び方になりますので、そういった慎重な予想をしていました。

編: サーバーのキャパシティはどれくらいなのでしょうか。

銭氏: 最大で2万人です。

編: 非常に大きいですね。次にゲームのアップデートの内容ですが、日本とどれくらいの差があるのでしょうか。

銭氏: 日本では「シーズン7.0」が始まっていますが、台湾では「」シーズン5.0」の内容でやっています。スタート時には「4.0」までのモンスターは登場しますが、「5.0」は入っていないモンスターもいます。

編: ユーザーからはどういった意見がありますか。

銭氏: プラスの面とマイナスの面とあります。マイナスの面では、操作がしづらいということです。他のゲームとの操作性が異なるために慣れるのに時間がかかります。パーティーを組んでモンスターを倒しにいくのですが、パーティーをなかなか組むことができない。台湾のユーザーは自分でパーティーを組むのはちょっと苦手なのです。掲示板でパーティーを募ったりするのですがなかなか集まりません。

 プラスの面でいきますとグラフィックスが素晴らしい。モンスターのAIが素晴らしい。戦っていて非常にリアルです。遊び方もユーザーの技術が跳ね返ってきますので他のタイトルで単にクリックしてモンスターを倒していくのではなく、自分の技術で倒していく楽しさです。後はパーティーとの協力です。それらの面白さすばらしさがあって非常に刺激になっている。他の既存タイトルとは異なるタイプのものですので新鮮味もあります。

 新鮮味は操作に限らず内容面にもあります。既存タイトルではモンスターなどを倒して目標を達成すると終わりというところがありますが、「MHF」の場合は、闇雲に戦えばよいというわけではありません。各モンスターにはそれぞれに弱点があります。それら1つ1つのモンスターについて研究しながら最後に倒したときに満足感があるわけです。

 たとえば武器の中にライトボウガンがありますが、闇雲に撃てばよいというものでもないのです。しっかり狙いを定めて弱点を狙わなければならない。他のゲームでしたら銃を使った攻撃が他のプレーヤーに当たってもなんともありませんが、「MHF」の場合は4人で攻撃する際に他のプレーヤーに攻撃が当たってしまうとその人も吹き飛んでしまう。それらを考えながら戦略的にモンスターにチャレンジしなければなりません。

編: 「MHF」と競合するタイトルは台湾にあるのでしょうか。

銭氏: 現時点で言えばこういったタイプのものは無いと思います。将来に渡って考えれば登場するとは思います。現在同じようなタイプのゲームは思いつきませんが、韓国の「C9」や「マビノギ英雄伝」は近いタイトルかなと思います。同様にクエストを達成していき、リアルな雰囲気があります。

 最初「MHF」をパブリッシングするときに迷いはありました。まさに他のゲームと違ったタイプのタイトルでした。まったく新しいタイトルでしたので一か八かというところはありました。しかし、もし当たれば新しい流れを作ることができるとも考えました。一方でユーザーにまったく相手にされない心配もありました。受けるか受けないかが非常に差の分かれるタイトルだと感じていました。

編: 「MHF」はスターターパッケージやクライアントをダウンロードして月額課金で遊ぶビジネスモデルです。台湾ではいかがですか。

銭氏: 弊社でもパッケージを販売しています。パッケージを買ってチャージする方法もありますし、プリペイドカードからチャージする方法もあります。基本的には月額制で、月額400元(約1,200円)です。月額は基本のハンターライフコースが400元で、この他に中国語では「豪華コース」という名前の「エクストラコース」というものがあります。定価が60元ですけれども現在は無料です。

 エクストラコースは色々な内容があります。このゲームには採集の要素があります。色々なマップにいって素材を集めて武器が防具を作ります。エクストラコースでは採集専用のクエストが設けられ、素材を集めることができます。後はエクストラコース専用クエストや、エクストラコースの方専用で購入できるアイテム、その他美容室のような機能があります。日本とまったく同じ機能です。

編: 「MHF」を遊んでいるユーザーさんは、シリーズのファンが多いのでしょうか。

銭氏: 多くのユーザーは元々「モンスターハンター」シリーズをプレイしているユーザーさんが多いです。オープンβテストから、積極的にプロモーションを行なっていまして、これまでシリーズをプレイしていない新規ユーザーも入ってきています。

編: 台湾でも、「モンスターハンターポータブル 2ndG」や「モンスターハンター3(トライ)」が発売されていますが、これらの既存のプロダクトとの関係性はいかがですか。

銭氏: 具体的な数字はあきらかではないですが、どちらも遊んでいるユーザーはいます。バージョンやコンテンツの差異もありますのでそれぞれの楽しみを遊んでいられると思います。これまで家庭用を遊んでいたのですが、「MHF」のリリースを機に移ったというユーザーも多いと思います。というのもオンライン版は完全に中文版にローカライズされていますので、すべての台湾のユーザーに親しみやすいからです。

編: なるほど、確かにPSP版もWii版も日本語版のままリリースされていますよね。「MHF」のみ完全中文版というのは、大きなアドバンテージですね。

銭氏: そう思います。

編: 先ほど、ユーザーが「操作が難しい」と感じているとのことでしたが、これは具体的にゲームパッドで遊ぶのが難しいのでしょうか、それともキーボード操作が難しいという話でしょうか。

銭氏: 操作がしにくいというのは他のゲームと操作性が異なるということです。これまでの90%以上のオンラインゲームがクリックするだけで遊べてしまいます。クリックすることでメニューが出てきたり、場所を移動できます。その点「MHF」は異なる操作性です。普通のオンラインゲームのユーザーからすると「MHF」をプレイするときに考え方を変えなければならないです。

編: ゲームパッドの利用率はいかがですか。

銭氏: 調査では87%のユーザーがゲームパッドを使用しています。

編: 予想以上に高いですね。やはりゲームパッドの方が有効にモンスターと戦えるという認識がユーザーの間で深まっているのですね。

銭氏: はい。他のゲームですとキーボードとマウスで遊べるのですが、「MHF」ではゲームパッドを使用することで独特の操作ができますから。

編: 日本では、推奨ゲームパッドという枠組みで、サプライメーカーさんとタイアップが行なわれていますが、台湾ではどのような形でゲームパッドを提案していますか?

銭氏: 台湾でも専用ゲームパッドのついたパッケージ販売を行ないました。メーカーは台湾のメーカーです。ゲームパッドの上に「MHF」のキャラクタがプリントされています。これで799元です。アイテムが付属しています。ただ、必ずしもゲームパッドを使用しなければいけないわけではなく、どのゲームパッドを使わなければならないということも申しておりません。

編: ゲームパッド付きのパッケージはどのくらい売れたのでしょうか。

銭氏: 限定版で5,000本販売しています。全国各地で販売していますのでこれを探すのは難しいかもしれません。ゲームパッド単独では販売していません。

【スペシャルパッケージ】
台湾で発売されたゲームパッド付きのスペシャルパッケージは、日本や韓国で販売されたものと同コンセプト。たちまち完売し、もう手に入らないという



■ 「台湾のユーザーはハンターランクを上げたがる」。今後は台湾独自展開も

銭氏自身、「MHF」は大好きで日夜プレイしているということで、ユーザーと密着した運営が行なわれているようだ
ハンターランクばかりを上げたがるというプレイスタイルはユニークだ。今後運営方針を日本と変える必要がでてくるかもしれない

編: 遊び方の点で日本のユーザーさんとの違いはありますか。

銭氏: 台湾のユーザーの習慣として発見したのはハンターランクをすぐに上げたがる傾向があることです。イャンクックばかりを倒したり、そういった傾向にあります。我々としては色々なモンスターやクエスト、装備を作るための素材を用意していますので、そんなに急がないで色々と遊んでもらいたいと思っています。日本のユーザーさんはもっと多様な遊び方をされているのではないかなと思います。他のオンラインゲームと同じような感覚でランクアップにプレイの主眼が置かれているように感じます。

編: 日本だと装備を整えようという動きが強いですが、台湾のその傾向は面白いですね。

銭氏: まず装備を見て、これが欲しい、そのためにはこういうクエストをやらなければならないから、このクエストをやっていく。そうしているうちにハンターランクが上がっていきますので皆さんもそういう風に遊んだら良いのではないかなと思っています。

編: ハンターランクの上限はいくつですか。

銭氏: 現在999です。最高は110~120くらいの方がいます。

編: 999まであると一生懸命上げたくなる気持ちはわかります。

銭氏: ユーザーのアベレージは30~40くらいです。

編: 現在台湾サーバーの運営はどういった方針で運営されているのでしょうか。

銭氏: 基本的にはバージョンアップやコンテンツは日本の内容に合わせて続けていくつもりです。いくつかイベントなどは台湾に合わせたものを行なっていくつもりです。現時点では良いスタートを切っていると思います。他のタイトルとは差異の大きいタイトルですので、操作性やゲームへの入りやすさ、敷居を低くすることを考えれば、もっとたくさんの方に体験してもらえるはずだと思います。次の段階ではもっとはやらせて1つの流れを作りたいです。

編: ユーザーからどのような要望が出ていますか。

銭氏: ゲームの設定を簡単にして欲しい、インターフェイスを使いやすくして欲しいということがあります。例えばチャットの画面を使いやすくする、すぐチャットが消えてしまうのではなく、ちゃんと見たいといったことです。また、公式試験というものがあるのですが、それをクリアしなければ次の段階に進めません。そういったものを簡単にして欲しいというものがあります。それらをまとめて日本の方に伝えています。

編: 現時点で台湾オリジナルの要素はあるのでしょうか。

銭氏: 現時点では台湾独自の要素は特にありません。台湾オリジナルのイベントは行なっています。今後は台湾のニーズに合わせた提案を日本に行ないますので、独自のコンテンツは出てくるかもしれません。

編: 現在検討中の提案内容を教えてください。

銭氏: 1つ目は季節性のイベントです。台湾の旧正月や端午、中秋節に合わせた関連アイテム、飾りつけ、イベントを検討しています。そういったものを導入することで台湾のユーザーに身近に思ってもらいたいです。

編: ゲーム世界において不正行為を働くユーザーはいますか?

銭氏: 「MHF」の構造自体が特殊でして、アイテムの取引についても低いレベルのアイテムしか取引できませんのでRMTもほとんど意味を成さない構造になっています。ユーザーがチートを行なってアイテムを取得したとしてもそれで利益を得られる仕組みになっておりません。ユーザーの不正行為を行なう意味がなくなるだろうと考えています。そうは申しましてもユーザーの行動やアイテムの状況、ユーザーからの報告は逐次チェックしておりまして、不正行為につきましては厳正に対処したいと思っています。

編: 比較的運営しやすいオンラインゲームといえるのでしょうか。

銭氏: 取引の難しさからRMTが成立しにくいということで逆に心配することがありました。取引ができないということはゲーム内の経済的な活動が活発にならないということです。その部分で運営側のビジネスチャンスが減ってしまうのではないかと考えていました。このゲームの設定がどちらかというと自給自足がテーマになっておりまして、自分の力で狩をして自分の力で素材を集めて自分の力で装備を固めてランクを上げていきますので、開発コンセプトには合っていると思います。ゲームの設定によってそれぞれ長所短所はありますが、このタイトルに言えば逆に売りになっていると思います。

編: 現状で最も人気の高いコンテンツ・クエストは何でしょうか。

銭氏: 自分自身はチャチャブーが好きなのですが、どんなモンスターが好きかを投票にかけるのも面白そうです。ハンターランク40以下である現在の主なユーザーにとってイャンクックが最もたくさん戦う相手になるかもしれません。しかし、だからといって1番人気があるかはわかりませんが。後はリオレイアやモノブロスといったモンスターが、良く戦う相手ではないでしょうか。その他にもハンターランク30に出てくるタラバガニそっくりなモンスターはすごく個性的です。そのモンスターを見ているとおなかがすいてきます。恐竜のようなモンスターもいますし、魚介類のようなモンスターもいますし、どれを遊んでも楽しいのではないかなと思います。後はアイルーという猫のモンスターがいますが、それも人気が高いです。

編: 日本ではXbox 360版が発表されました。台湾での反応はいかがでしたか。

銭氏: 期待するユーザーは多いと思います。ユーザーにとっては喜ばしいと思います。現在PC版を遊んでいるユーザーやこれからPC版を遊ぼうと思っているユーザーも長らく期待していた方たちです。既にコミュニティがありますので、彼らがそうそう簡単に離れていくことはないと思っています。ただ、台湾ではXbox 360とPCは普及率では圧倒的にPCが上ですので、ハード面、言語面、コミュニティにおいてPC版に分があると思います。Xbox 360版が発表されたことで、PCでも遊べるコンシューマでも遊べるということで、本タイトルがすばらしく魅力的であるという証明にもなると思います。

編: Softworldさんが台湾でXbox 360版を販売する可能性はあるのでしょうか。

銭氏: 現時点ではそういった話はありません。

編: 今後の目標の人数を教えていただけますか。

銭氏: 目標は同接5万人です。これはすぐに達成できる数ではないと思います。これからどんどん魅力的な内容が充実してきますので、将来的にはその数字を目標にやっていきたいです。

編: 「MHF」の台湾運営は、正式サービスから1カ月が経過してからがいわば本番となりますが、どのようなオンラインゲームに育てていきたいですか?。

銭氏: 先ほど流行するものにしたいと申しましたが、今後も同様の考えです。日本でも「モンスターハンター」は皆が好きなゲームになっています。台湾でも同じようなタイトルに育てたいです。現在台湾で似たようなゲームで、「WoW」が国民的なゲームに成長していますが、本作品も同様のタイトルにしていきたいです。日本で作られたタイトルですが、皆が知っていて愛されるタイトルにしていきたいです。私自身もプレイしていて非常に面白いタイトルだと思います。他のMMOとは異なりますが、本作には本作の面白さがあります。また、このゲームを遊んでいると年を取らないと思います。反射神経が鍛えられますし、常に若さを保っていられます。日本の方でもアップデートが繰り返されていますし、台湾でも継続的に続けていきたいです。

編: カプコンの開発チームに向けて要望はありますか。

銭氏: プレーヤーに代わってお伝えしたいこととしては、みんながこのタイトルが好きです。この状況はカプコンさんも喜んでおられると思います。今後も現在の成功している状態を続けていきたいです。こちらの方でも台湾ユーザーの声を受け付けていますので、台湾ユーザーの声の中にはニーズの他に基本的な声もあるかもしれません。ユーザーすべてがそういった本作を愛するからこそそういった声を出していると思いますので、台湾に合わせて変えられるものは変えてもらいたいと思っています。台湾のユーザーに合わせたゲームを台湾ユーザーのために出していくお手伝いをお願いしたいです。

編: ありがとうございました。


【パッケージとグッズ】
インタビュー後に、現在までに作成したパッケージやプライズを見せてもらった。パッケージは右から順に39元(約120円)、400元(約1,200円)、1100元(3,300円)の3種類があり、39元はハンター6までの無料期間を遊べる一種の体験版。400元は1カ月分、1,100元は3カ月の利用権が入ったパッケージだ

(2010年 2月 9日)

[Reported by 中村聖司 ]