東京ゲームショウ2009レポート
「東京ゲームショウ2009」 基調講演 第2部レポート
「グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望」
基調講演2部ではゲームメーカートップ5人によるパネルディスカッションが行なわれた |
社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催による国内最大規模のゲームイベント「東京ゲームショウ2009」が、9月24日に幕張メッセで開幕した。24日と25日はビジネスデイで、一般公開は26日と27日の2日間となる。
東京ゲームショウの展示ホール1では、ソニー・コンピュータエンタテインメント 代表取締役社長 兼 グループCEO 平井一夫氏による基調講演第1部が始まり、続いての第2部では昨年に続き、トップメーカー代表による「グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望」が行なわれた。
今回の講演では前回の登壇者、株式会社カプコン 代表取締役社長 辻本 春弘氏、スクウェア・エニックス 代表取締役社長 和田洋一氏、バンダイナムコゲームス 代表取締役社長 鵜之澤 伸氏、そしてモデレーターに日経BP社 電子機械局 局長 浅見直樹氏の4名であったが、今年はさらに株式会社コナミデジタルエンタテインメント 取締役副社長 北上一三氏、ソニー・コンピュータエンタテインメント SCEワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏を加え6人による3つのテーマについてのパネルディスカッション形式で語られた。本稿では基調講演第2部についてお伝えする。
■ 日本の家庭用ゲーム業界 この1年の総括
浅見氏はまず、昨年の9月と今年の9月で変ったこととして株式市場における経済恐慌についてあげ、去年の春先から産業全体から見たときにやや曇りがちだったと語った。また、これにより金融も製造も未曾有の不景気に見舞われているほか、日本国内では少子化といった問題なども挙げ、そのほかにも基調講演第1部でもあげられた“テクノロジーの中にも飽和感がある”といった前置きを踏まえ、メーカートップのパネルディスカッションによる、ゲーム業界での2010年をうまく展望する上でのヒントを持って帰ってほしいと挨拶を交わした。
最初のテーマとしてあげられたのが、「日本の家庭用ゲーム業界 この1年の総括」。先の問題も踏まえ、この1年を振り返り業界ではどのような変化があったかをパネルディスカッションにより、提示。登壇者の左から順に語られていく
トップバッターはカプコン 辻本氏から始まり、「特にこの1年間で、ユーザーの皆さんのゲームにおけるプレイスタイルが大きく変わったと感じている」と語る。また同氏は、「その1つとして、携帯ゲーム機の普及、以前からも携帯ゲームを遊んでいる風景を見ることはあったが、この1年で複数人でゲームを遊んでいるというのをよく見かけるようになった」と語っていた。同社から発売中の「モンスターハンター」もその要因の1つではあるが、近々でいうと「ドラゴンクエストIX」を遊んでいる様子を特に見かけるようになったと現状を考察し、これにより「今までは個々人で数人で集まりながらゲームを遊ぶ状況だったが、ここにきて簡単に複数人でゲームを遊べるということが携帯ゲーム機の特性であるということが認知されたのではないか」と語っっていた。
コナミデジタルエンタテインメント 北上氏は、「景気がどうのというのは、我々エンターテイメントの産業というのは関係がない。(1993年から2004年の)『失われた10年』の時も我々の産業は毎年成長していたと記憶しています。初代プレイステーションは失われた10年の真っただ中に発売されたわけですから、そういう意味では景気と我々の業界とは関係がない。この1年での変化という意味で考えるとWiiが成功したり、ニンテンドーDS、PSPなどの携帯ゲーム機がいつでもどこでも遊べるという新しい感覚として、今までのゲームユーザーも、ファミリーユーザーも取り込め、業界としては新しい提案ができたのではないかと思います。」と語った。また浅見氏の「では、来年は明るそうですか?」という問いには「それはまた別の話ですね」と返していた。
株式会社コナミデジタルエンタテインメント 取締役副社長 北上一三氏 | 株式会社カプコン 代表取締役社長 辻本 春弘氏 |
3番目のスクウェア・エニックス和田氏は「証券会社出身なので」と前振りを起き、「今回の経済恐慌でなぜ住宅や車に影響がでたかというと、これらはクレジットで買うからであってキャッシュで買っている人がほとんどいないので」と語り、「エンターテイメントの世界ではこれらは関係なく、ゲームを借金して買う人はほとんどいないので、ユーザーの影響はほぼない。影響があるとすれば、小売店の方が仕入のときにどうしても確かなものを……リテーラーの方々が思うものしかまとまって仕入れていただけない。マーケット全体が足踏みしているように見えるけれども、これはお客様側ではなく、中間である小売店がファイナンスの影響を受けたのではないだろうか」と業界での影響がどこにあったのかについて考察を語っていた。
和田氏はそのほかに「今からちょっと感じが悪くなります」と冗談を交えた前振りを起き、自社タイトルの「ドラゴンクエストIX」が累計出荷本数400万本を超えたことや、今年4月に子会社化されたEidosの「BATMAN: Arkham Asylum」 が世界販売本数が250万を超えたことなどを説明。また年末に控えているPS3「ファイナルファンタジーXIII」や、Wii「スクウェア・エニックスァイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー」などのラインナップがあることを説明。「スクウェア・エニックスはたまたま今年に発売が集中するということもありますが、業界ではどういうタイトルが出てくるかということが影響がありますね。そういう意味では、リーマンショックによるダイレクトな影響は実はあまりないですね」と、ビッグタイトルの発売による業界全体への影響はあるが、世界恐慌が起きた影響が強いわけではないことをアピールしていた。
家庭における変化の部分では、「携帯ゲーム機における習慣は定着していきましたよね。作り手もそれを前提に考えるので、ものすごく豊かになると思います。割と向こう5年間で重要なのは、ハードやゲームソフトでのイノベーションではなく、課金などの収益モデルのイノベーションが大事なのではないか。収益モデルがどう多様して、それがお客様に定着していくかという部分でブレイクスルーがあると思います。そういう意味では我々はまだ超えきれていない」と語っていた。
ソニー・コンピュータエンタテインメント 吉田氏は「私はコンテンツを作る側から、今後の家庭用のゲームコンテンツを作ることに対して、大きな影響、あるいはヒットになるような大きな事件といってもいいような、それがゲーム産業の周辺で起きたと思います。去年の夏に発売されたiPhoneでは、ゲームに限らずアプリケーションが配信され、小さな時間でほんの2、3分の会話の中でゲームを見せるといったこともできます。今年に入ってより顕著になった部分では、FacebookやMyspaceなどのゲームに非常に多くのユーザーを取られており、カジュアルなゲームが実際の友人がそのゲームを遊んでいるということで、友達と話をするためにそのゲームを遊ぶといった人との繋がりをエンターテイメントにするというのが、我々プラットフォームやゲームコンテンツを作るという意味で非常に良いヒントになるなと思います。我々プラットフォームのほうでどうったサービスを提供できるかを検討しています」と語っていた。
バンダイナムコゲームス 鵜之澤氏は、「景気の流れは、会社の全体的な売り上げ的には使わせてもらっているが、言い訳ですよね。」と前振りを起き、「1月と6月は大したタイトルも出せなかった、そのいいわけは『ドラクエ』を避けていた」と先の和田氏のビッグタイトルによる影響を語った。また、避けていたために3月と7月は売るものがなくなったといった話や、「8月6日には6タイトル同時とか無謀なことをやりましたが、ソフトを出してみるとPS2/Wii『SDガンダム ジージェネレーション ウォーズ』 が好調で、PS3の『ガンダム戦記』、『テイルズ オブ ヴェスペリア』なども好調でした」と語っていた。同社としての反省点は、「お客様が大きく変わったり、景気の影響よりも魅力的なソフトが出せていなかった」と語る。
その後、再びカプコン 辻本氏に戻り、「エンターテイメント産業というのは、景気が悪いからというよりも遊びたいゲームがあるということで買っていただけるわけであって、余力があるから買いたいというのはあるかもしれないが、お金が余っているから買うということではない。映画業界でも興行成績を占う上では前年に対してこれだけのヒットタイトルがあって、今年は不作ですという話になります。まったく影響がないとはいえないが、しっかりした良質なゲームを作っていくことが僕たちの重要なことであって、またゲームの新しい遊び方等を提案していくのが重要なことで、これが業界の発展につながることではないかと思います」とこの1年の総括についてまとめた。
不況下にも強いといわれるゲームだが、今年は「ドラゴンクエストIX」が累計400万本を突破していることや、「ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー」が発売初週で120万本を売り上げ、また新型プレイステーション 3も発売初週に17万台を販売するなど好調な事実もある。一方、今年の東京ゲームショウに出展している中小パブリッシャーは、例年よりも少なめな印象を受けるのも事実であり、経済恐慌の影響だと受け止められる部分は否めない。
スクウェア・エニックス 代表取締役社長 和田洋一氏 | ソニー・コンピュータエンタテインメント SCEワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏 | バンダイナムコゲームス 代表取締役社長 鵜之澤伸氏 |
浅見氏からは次に、中、長期的に見たゲーム業界に先行きを見たことでどう見えるかという問いを出し、これに対し北上氏から「近い将来になのか遠いのかはわかりませんが、ゲーム業界は20年以上続いてきて、その中で波があったり事件があったり進化を繰り返し現在がありますが、20年続いて成長を遂げてきたということは、常に新しい提案をユーザーの皆様にできたと……。そしてユーザーの皆様に新しい感覚、新しい遊びなどに刺激されてゲームのプレイ人口が増え、ユーザーが増え、日本だけでなく世界に広がったということだと思います。これからの業界はどうなのかというと、新しい進化、新しい提案、新しい遊びなどをどう作り出していくのかと……今まではハードメーカーの努力もあり、技術も進化し、ソフトメーカーの表現力も増し、これらを組み込んで表現できました。しかし、これからはそれだけでいいのかと考えると、ハードメーカーに頼るだけではなく、コンテンツという面で進化していかなければならない。いい意味ではWii、DSなど新しい遊びを提案して成功したと、我々もソフトだけで今までの感覚ではない、新しい提供をしなければならず、右往左往することも業界としては成長を妨げる要素ではないかと考えています。今まで体を使ったゲームというのはなく、色々な角度で提案できたのが1つ進歩したと思います。そればっかりでは、飽きてしまうので、それとは違う新しい提案を毎年、または時代で提案していかなければならない」と語っていた。
浅見氏は「去年の講演での会話の中でも業界に危機感提示していたが、今は感じているのか?」という問いを和田氏に投げかけたところ、和田氏は「足もとの心配はないが、物事を変えるというのはとてつもないストレスがかかりますから、変えにくいところもあります。そういう意味では変えづらい部分でもあります。コンテンツのことは最も重要で、お客様をはじめ、マーケットという議論とビジネスモデルというものがあり、マーケットに関しては、ゲームが子供だけのものであるとうことではなく、大人の娯楽として十分楽しめるということを、もっと真正面から認知してもらうことが重要だと思います」と語った。
また「エンターテイメントとして、ド真ん中に来ましたという時に、大人のマーケットを意識して作っているコンテンツというのは少ない。今後は大人がちゃんと遊べるものをアピールしていかなければならないし、これらを意識することによって対象マーケットというのは倍になる。これは我々もやろうと思っているが、中々切り替わらない」とコメントしていた。
続いての例として「欧米において大人がゲームを遊ぶことがクールだという風に受け止められているが、日本は世界で1番ゲームをすることが子供っぽいと思われているかもしれない。また、これらは業界側も取り組むべきで、レーティング制度はその一環です。大人向けゲームを作ることと青少年の健全育成というのは別の話で、すべてのゲームを子供に寄せるということではなく、社会的に分離して対象を広げたい」と語っていた。
ビジネスモデルの部分では、「基本的に年月が経つと最終消費小売価格が下がるが、そのなかで開発コストが上がってくる、決定的な部分ではメディアが変わった」という部分がターニングポイントだという。
「過去にROMから光ディスクに変わった時に、利益配分が変わったが、今回ネットワークにどのタイミングになるか……段階的に適正になっていくかを捕えられるだろうか、このまま下落圧力が10年続いたら業界が壊滅すると思います。遊び方は収益モデルにもリンクしているので、収益のモデル自体にイノベーションが起きないと、数年は持つが厳しい状況ではあると考えています」と現在の危機感について語っていた。
吉田氏は「物事を作る、クリエイトするというのでは、ビジネスとして経営者の一員として考えると少々変わってくるが、物を作るという立場で考えたときに、今のこの業界は、Wiiで体を使って遊ぶ、センサーなどは日進月歩でより忠実な体の動きをとらえたり、3D(立体視)の技術やタッチパネルなどいろいろなゲームに使える要素など、たくさんネタがある。これらを“こういう風”に、“こういう事”としてゲームに使ってみたいというアイデアは出てくるが、ユーザーの生活の中で、ゲームがいろいろな形の中で入ってきている中、そこに使われる時間やお金、課金の仕組みなど、それらを見ていかないと、ユーザーの需要と、クリエーターのアイデアが合わない時など、色々なことがあるからこそ見極めが難しい」と語っていた。
鵜之澤氏は「中期計画みたいなのを立てると、すべてがパッケージになり、日本では7,000円台、海外では59ドルで、それを何枚売るかというビジネスモデルから抜け出せていない、ダウンロードで7,000円払うというとどうかと、自分の感覚としてはありえないという感じはします。では、iPhoneで見てみるとアプリケーションの平均売価は1ドル足らず……。1ドルと7,000円/59ドルではかなり違う」と語る。
また自社のモバイル部門を例にあげ、「『パックマン』を5ドル程度で販売したところ、1億程度の末端売上になった」と説明。だたし、これでは同社規模の会社は回せないと語っていた。
「皆さんおっしゃる通りビジネスモデルと売上はいつ変えられるんだろうという恐怖心はある。間違いなく変わっていくと思うが、開発費をこの程度かけてプレイ時間は何十時間、というスタイルから抜け出せていない」と語り、「ここ数年ゲーム業界が元気だったのは、ニンテンドーDSやWiiのようなパラダイムが起きたが、サードパーティはそれにうまく付いていけなかった」という実感を語っていた。また「業界の改編期に直接的に収益へと結び付くビジネスモデルや斬新な発想が出せなかったのが恐怖心につながっている」とコメントしていた。
「パッケージのときのビジネスモデルに比べると、ネットワークだけで遊ぶのは難しいか?」という問いに、辻本氏は「ネットワークにおける課金候補は、課金システムがなければならないので、プラットフォームフォルダーさんにお願いしないといけません。ひとつのゲームをダウンロードして課金するというのも出るだけでいいのかというとそうでもない。そうなると少額課金であったり、色々な仕組みの課金方法が多様化されるなど、それに続いてゲームを作り、ユーザーの皆さんの手元にお届けし、遊んでもらう知恵や企画ができるはずです。ただし、現状はそういうものがないために課金化されないので、経営側からは投資もできない。いかにビジネスモデルを変えていくかが大事で、携帯という部分においては日本のユーザーさんがゲームにおけるスタイルが変わってきています。いつでもどこでも遊べるという部分が強い。これにさらにゲーム提供できれば変わっていき収益の拡大などがあり、ゲームビジネスにおける進化拡大があると思う」と語る。
吉田氏は、「ネットワークでビジネスが成り立っている例は増えてきています。規模としてはそれほど大きくないが、PlayStation Networkや、Xbox LIVE、Wiiウェアなど、小さな規模の制作チームが作った作品が、世界中のネットワークサービスで面白いものは、何十万ダウンロードにもなり、制作は若い人や、小員数など比較的低いコストで制作されている」といった説明がされていた。
続いて「SCEはこれまで、パブリッシャーとしてディベロッパーとお付き合いして、ファンディングして作っていくという流れだったが、ディベロッパーサイドは、ネットワーク配信のタイトルであれば、自分たちのリスクで成功できる。成功しなかったタイトルであっても少ないロスでチャレンジできる」という。
「ネットワークにおけるコンテンツビジネスがあるだろう?」との問いで、鵜之澤氏は「1つのゲームを作るのに50人~100人規模のタイトルで2年がかりで制作しているゲームでは、ダウンロード販売モデルは成立しないだろう。この10年くらいでインターネットが台頭してきており、オンラインやモバイルで成功しているかというには、IT業界の人がゲームを使って大きなビジネスや新しいモデルを作り上げてきている、少なくともゲーム業界はそこに乗り遅れたと思います」と語った。
また和田氏は「商売だけの議論でいうと、明らかにロジティクスや在庫、そのほかの経費を使わなくなるので、今までは誰かが負担しなければならなかったが、それがなくなるということはあります。重要なのは、パッケージソフトは一物一価だったということで、ネットワークであれば価格を自由に設定できると……たとえば6,800円のゲームを30時間遊んでくださいと設定し、現状であれば30時間遊ぶ遊ばないに関わらず6,800円。ところが、30分だけ遊びたいが500円しか払いたくない、または30時間遊んでから、自分の自由にカスタマイズできるなら5万円払ってもいいという人もいます。こうなると同じコンテンツからも色々な収益モデルができるというところが大きいと思います。ただし、これらはお客様の習慣もある。ゲームの入ったディスク1枚に何千円も払うのは抵抗がある人もいるが、百科事典であれば3万円であれば払う人もいる。そういう販売モデルがあり得るということを一般化する前にどんどん言っていかないと作り手の発想も変わっていかない」と語った。
北上氏は、「前から感じているんですが、電子マネー問題がもともとにある」と語る。「ネットワークを使ったビジネスは次世代だということで持ちあげてられてはいるが、問題としてお金の回収ができない。これをうまくでき、ビジネスモデルとして成功したのは携帯電話だった。ゲーム業界においてのプラットフォームでは、電子マネーが一般化していない。ユーザーは電子マネーを買うよりはパッケージが欲しくなるし、遊び終わったゲームは売ってしまうという中古の問題もある。これからオンライン、ネットワークで何とかしようというのであれば、もっと電子マネーがいきわたっていかなければならない。ただし、各国ごとに法律の問題もあるのをはじめ、オンラインがしっかりしていくには電子マネーが世界的にルール化され、ユーザーが一般的に使えるようにしなければならない」と語っていた。
また携帯ゲーム機の部分においては「携帯ゲームのビジネスにおける可能性が1番あるのではないかと思います。それは1人1台持てること」と語り、「据え置き機であれば一家に1台だが、携帯ゲーム機であれば各々が持てる。1人1台持つことによって、自分の視点でプレイに参加できたり、兄弟で一緒に遊べたりと考えるとゲームボーイが出てから成長していると思います。携帯ゲーム機はまだまだ1人1台という中でネットワークにつながることで大きな可能性を秘めている」と語っていた。
携帯ゲーム機でのネットワークプレイに大きなブレイクスルーを生み出したメーカーでもあるカプコンの辻本氏は「携帯は非常に有望だと思っています」と力強く切り出し、「北上さんがおっしゃった通り1人1台、シルバーウィークは家族や友人と遊んでいましたが、みんなもっているわけです。集まって色々遊びますが、そうすると娘が持っていたゲームを娘の友達が遊んでると娘よりも進化している。これがあると家に帰ってもまた遊びだすんです。据え置き機であれば、家に行かないと見れませんが、携帯機の場合はリアルタイムで見せれます。こうやって遊ぶ、こう遊ぶと……『モンスターハンター』も、わからなければこうやると教え合えるわけです。こうすることでユーザーコミュニティに広がりが持てれる上に、口コミで広がってきます。口コミほど安くて使えるものはないとなりますし、そういった手段を使って、携帯はビジネスのチャンスが広がると思います。これらを踏まえて、コンソールとポータブルというのはゲームの作り方自体も考え行かなければならない」と語った。
和田氏は「携帯電話は、なぜ普及したかというと、マイクロペイメントと課金のプラットフォームとして、ものすごく簡単だったからだと思います。電話機でゲームをやる必然はあまりなく、なぜ普及したかというと、コンシューマで1つのゲームで50種類も課金形態があった場合、ものすごく面倒になってしまいます。これをシンプルにしたことで、成り立ったと思います。携帯機と携帯電話では違うと思いますし、携帯機ということでは日本は圧倒的に携帯に向いていると思います」と語る。
また「おそらく世界中で最も家いる時間が少ない国民だとおもいます。自分の部屋やリビングに居るという時間が少ない日本人にはモバイルは強いですね。これは国によると思います。日本に関しては携帯ゲーム機の可能性はもっと広がると思います」と語っていた。
いずれの代表もみな携帯機においては強い可能性を秘めていることを明示していおり、また家に帰ってからのゲームプレイから友人らを集まってゲームを楽しむユーザーのプレイスタイルの変化について強く語っていたのが印象的だった。
■ 国内外のマーケットはこれからどうなる?
第2テーマでは、グローバルな競争における日本という視点から、市場という点とタイトルの開発における2点に焦点をあてて行なわれた。
鵜之澤氏はまず海外戦略にあたり、「直近でいうとマーケット。1つは開発費が倍近くに上がると、今までのマーケットの方法では商売にならないため、海外市場が良いからではなく、生き残るために海外を意識するという方法になっています」と語る。
また「うちもワールドワイドスタジオを作ってアメリカでも開発を進めていますが、どうもいい仕事にならなくて、結果引き上げてきて内部で完成させるというのが2度ほど起きました」と国内企業が海外のスタジオにおいて開発が難しいことを語っていた。
またローカルな問題として「アメリカは独自にタイトルのチョイスやパーティカルスライス、グリーンライトの制作システムなどメイドインアメリカのゲームの進め方でやってみたが、結果、仕組みだけではできず、ゲームの中身がわかる人間がしっかりやっていかないといけなかった。今は責任者に尻拭いという形で走っているタイトルの見直しをしてもらっています。今年2本出る予定が、これらは来期発売になり、結果を出せていない」と現状を語っていた。
浅見氏からの「日本ということの強みは?」という点ではに対し、「確実にあると思う。日本人の持っている物づくりのこだわりや手触り感、マリオやパックマンなどから始まったものがアレンジされて、今はハリウッド映画みたいになっていますね。ハリウッド映画を日本で作ってもしょうがないな……と。日本は日本のカルチャーがあるので、そこをチャレンジしていけばいいことがあると思います。ChinaJoyに行ってきましたが、すごい勢いですよね。ただ日本のものを必要にしているとは見えないが、日本はコミックやアニメなどは数10年の歴史を持っているし、アジアはまだそういう産業が立ち上がったばかりなので、この蓄積は日本に優位性があると思います」と語っていた。
続いて吉田氏にバトンタッチし、「私は2000年から去年まで、アメリカにおける責任者としてやってきました。現在はワールドワイドスタジオの責任者ですが、今でもSCEのワールドワイドスタジオの規模や投資金額の8割以上はアメリカやヨーロッパでのスタジオになっています。そういう意味では、ここ10年以上は海外メーカーの目で日本の市場を見てきた立場になります。我々アメリカですごいゲームができた。200万本超えるぞというものを日本に持ってきても2万本だったりと非常に厳しい」と語る。
また「日本のユーザーさんと欧米のユーザーが好むものは技術や表現力が進化していくにつれ、さらに違いがはっきりしてきて、日本市場で作るものは日本のクリエイターじゃないとだめだと思います。また少子化などもあり、市場の全体規模でも日本の市場が減ってきている。しかし、日本でゲームを作って業界におけるインパクトを与え続けるのも考えています。1つはハリウッドのような表現でゲームを作るというのは、欧米が得意ですが、日本人が持つ強さはインタラクティブにおける強さのアイデアや突き詰めていく能力は一日の長があると思います。いたずらに欧米で売れている物を作るのではなく、自分たちの強みがなにがあるかということを踏まえ作れば、世界中で受け入れられると思います。そういうところを見極めながらやっていけばいいと思います」と語っていた。
ゲーム業界が飛躍していくためには、ゲームの好きな集団だけではなく、芸術家や数学家など新しい血を入れていかなければという問いに対しては、「専門家は海外では取りやすい。探さなくても、この業界が伸びる、面白そうだと思う人は来てくれますね。ただ、専門家集団を束ねるゲームディレクターが必要です」と鵜之澤氏同様ゲーム制作における核となる部分には必ずゲームを理解したディレクターが必要だと語っていた。
和田氏は「グローバルという部分では、世界中でゲームを遊んでくださる人、それに対してお金を払っていただける人がいるという前提で、どのような設計でも成り立っていると思います」と語る。
これはパッケージソフトの販売で、日本とフランスでパッケージを発売する場合、スプレッドは倍くらい違い、マーケットは2:1になり、開発コストが2倍くらいかけられるという。国内だけで完結というのも成り立つが、せっかくグローバルという市場があるなら、グローバルで戦おうと。このとき、グローバルという市場がない場合は、色々な国のセグメントの積み上げで、結果グローバルになっている場合もあるという。「作る側も売る側も多様な仕組みを考える必要がある。これをどう割り切るかというのが重要なのかと思います」と語っていた。
北上氏は現在アメリカ在住であると前置きを話し、「日本人とアメリカというと人種が根本的に違いますね。日本は2000年という歴史があり、アメリカは200年とまだ歴史が浅い、我々とは歴史が違い、教育課程、価値観なども違います。ただ、日本が共通ということはなく、世界の中でちょっと違うんだろうと思います」と語っていた。
また「我々の頭脳がグローバルに成功できるようにはどのようにしたほうがいいのかと考えますと、技術力では欧米のパブリッシャーのほうが優秀だと思います。日本のメーカーの良いところはクリエイティブ……言葉としては広いですが、新しい遊びを提案するおもちゃの発想……新しい遊びの提案などでは日本がリードできるのではないだろうか……ここをなんとか全面に出せていければと思う」とコメントしていた。
「ジャンル部分では、ハリウッドの映画は1つのヒントになるかもしれないが、アメリカ人であっても多様な人種と言語があり、英語のわからない人もいる。そういった彼らであってもハリウッドのアクション映画はわかるし、彼らに映画を楽しませるには、ああいう手法になったのかな……と。言葉が違っても、面白さを伝える技術を身につけたのかな」と語っていた。
KONAMIとしては「『メタルギア』は、日本のかくれんぼの要素が入ったアクションゲーム」だという。アクションゲームの中にそういう新しい遊びを組み込むことによって、全世界の人に共感してもらったと思う。同じものを作っていては勝てないですし、海外のメーカーが日本向けに作ったとしても我々に理があります。日本としては新しい遊びを提案するのと、グローバルとしてはアクションやスポーツなど、誰でもわかる我々からの新しい遊びを提案がクリエイター側から必要なのではないか」と語っていた。
辻本氏は、「日本のゲーム業界においては可能性はある。コンソール、昨今のプラットフォームフォルダさんのご提案があり、Wiiからはじまった体験型コントローラから始まり、日本のゲーム業界というのはアーケード出身の会社が多いわけで、欧米で売れてる『ロックバンド』や『ギターヒーロー』などはKONAMIさんお得意のものだったわけです。元々、体感ゲームは日本からスタートしたもので、アーケード技術で物を作っていくというのはあると思う。アーケードは元気がなくなってきているというのではなく、アーケードで得た経験を持ってくるのもチャンスだと思うし、日本は携帯先進国であるので、、いろんなビジネスモデルが展開できると……日常的に携帯ゲーム機を持って、慣れ親しんでいるかという部分を目の当たりに感じているわけですから、これらを踏まえゲームにおける企画開発をすれば、勝負ができるのではないだろうかと思う。ここを基軸に考えていければと思う」と語っていた。
鵜之澤氏は、「アーケードの技術は活かせると思いますが、うちはバンダイとナムコが3年半前に統合していますが、うちに限らずアーケードと家庭用というのは大きな壁がありまして(笑)。この2つのプラットフォームはあまりにモデルが違い過ぎるので……たとえば、「鉄拳」を6,800円とかで売るのではなく、ダウンロードで無料、1プレイ100円または50円とか始めたら、これはすごいんじゃないかと思います。そんなことができればいいんですが、中々踏み切る度胸はないですね」と語る。
技術面では「インターフェイスが変わることについてもアーケードはやっていましたし、今後出てくるかもしれない立体についても旧ナムコがやっていました。家庭用なり技術の進化が追いつき追い越そうとしている。アイデアのDNAは社内にいっぱいありますが、部門の壁が……うちは壁を取りますとコミットしておきます」と語っていた。
■ ゲームタイトル開発はこれからどうなる?
最後のテーマでは、ゲームタイトルの開発においての今後についてが語られた。これからのゲームタイトル開発についての未来について、過去1年でブレイクスルーを起こしたのはネットワーク、ポータブルゲーム機の普及、基調講演第1部では、モーションコントローラーや立体(3D)の可能性などが語られたことを踏まえた総括が各代表から語られた。
辻本氏「先ほどコンソールと携帯機の方向性について申し上げましたが、これから以降は、消費者の方々のライフスタイルが変わってきています。ここを認識し、いかにゲームビジネスを変えていかなければならないかと……ここに向けてゲームを開発して行ない、コンテンツを提供していく。これに対しビジネスを変革していくかが重要だと思います」。
北上氏「競争が激しく、売れるもの、売れないものの落差が付いていますが、その中で、成功させていくとうには、メーカーサイドの視点で物事を考えるのでははなく、ユーザーサイドからどう新しいか、どう差別化されているのか、どう面白さの感じを提案できたのか、とまさに同じものではなくてどう新しいものをユーザーに認知してもらうか重要だと思います。どう差別化をしたのかを焦点を絞って物づくりをしていかなければならないかと思います」。
和田氏「ユーザーインターフェイスも多様になりましたし、相当色々なことができてしまうと……如何に顧客視点で考えていくか、どのニーズにピンポイントで答えるかプロデューサーの力が重要になっていきます。好きな物を作っていくだけではなく、このお客さんにこういう遊び方でこうやってもらう。作る側の手法としては、自分たちだけで完結するのではなく、いかに知恵の共有していくのが必要だと思います」。
吉田氏「これから業界を引っ張っていくようなコンテンツを作る要素がいっぱいある中で、地域間によってユーザーのライフスタイル、ニーズなど分かれている中、我々はいかにゲーム制作のマネージメントをする上で、クリエイティブのアイデアとマーケットを近くするかというほうの情報を販売、マーケット、ユーザーの皆さんを結びつけないといけないと思っています。さらに言えば、プラットフォームとして我々は提供するソフト部門の役割として、ゲーム制作を作りやすい環境を提供していく。課金やネットワークサービスなどもそうですが、我々ゲーム制作チームを参加させていただくなど頑張っていきたいと思います」。
鵜之澤氏「我々はグループではおもちゃ、映画、ゲームでもアーケード、家庭用など分かれていますが、これらを取り払い、ミックスしたような、新しい生み物を出すことができるようなことに力を注ぎたい、その中で新しい仕組みやアイデアをひねり出したいですね」。
いずれのトップ陣営も携帯ゲーム機に対しての認識度の一致や、ネットワークによる加速度的な成長、新しい収益モデルの模索など、現状からさらに上の段階へとステップアップするための苦労が伺えた。また、日本ゲーム業界におけるゲームタイトル開発にあたって技術的に失われた10年のような部分に危機感を感じていた。そのほかにも、グローバル戦力におけるカルチャーの違いなどを理解した上で、日本人にしかできない手法を取り入れていくという方向性などが伺えたディスカッションだといえるのではないだろうか。
□東京ゲームショウ2009のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/
(2009年 9月 25日)