宝塚歌劇宙組公演「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」開幕
ゲームの世界観をきっちり描きながらもオリジナル作品として楽しめる舞台


9月5日~15日まで 開催

会場:赤坂ACTシアター


「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」のポスター。主人公のフェニックス・ライトが大きくデザインされている

 宝塚歌劇団宙組による舞台「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」が東京の赤坂ACTシアター にて開幕した。上演期間は9月5日から9月15日まで。同作品はカプコンのゲーム「逆転裁判」シリーズをベースにした舞台で、原作・監修・制作協力としてカプコンも名を連ねている。1作目「逆転裁判 -蘇る真実-」は2月5日から15日まで日本青年館で上演され、それに続く公演となる。

 タイトルは「逆転裁判」となっているが、成歩堂龍一も王泥喜法介も登場しない。舞台はカリフォルニアで、主人公は弁護士のフェニックス・ライトだ。もちろん監修がカプコンと言うことで、キャラクターのデザインから細かい台詞回しに至るまで「逆転裁判」のテイストを再現。その上できちんとオリジナル作品に仕上げられているというクオリティの高い作品に仕上げられている。

 舞台は前作を引き継ぐ形でスタートする。前回の事件で心に傷を負ったフェニックス・ライト(蘭寿とむ)はカリフォルニアにもどり弁護士を続けているが、自分の道に疑問を持っていた。そんな中、自分が弁護士になるきっかけとなった幼少時の事件に関わった小学校教師ローズ・アレイア(光あけみ)の弁護を担当することとなる。ローズ・アレイアには一人娘のルーチェ・アレイア(純矢ちとせ)がいて、彼女はフェニックス・ライトに憧れ、弁護士を目指していた。ローズに容疑がかけられた事件は、ローズの教会に出資しようとしていたマルケス・ペインが毒殺されたというものだった。悩みながらも法廷に挑むフェニックス・ライト。しかし、法廷では意外な展開を見せ、意外な人物に焦点が当たり始める……。

 2幕構成となっており、第1幕で事件は一応の解決をみるが、登場人物の心に波風を立てる結果となる。第2幕ではフェニックス・ライト自身悩みながらも、多くの人の迷いに光を当て、導き、事件も真の解決に至る。

 フェニックス・ライトは言わずもがなの成歩堂龍一だ。さわやかでカッコイイが、コミカルな面もあり親しみの持てるキャラクターとなっている。劇中では心で思っていることが“ツッコミ”として流れる場面もあり、吹き出しそうになるシーンも多数ある。そしてフェニックス・ライトの幼馴染みであり検事として登場するのがマイルズ・エッジワース(悠未ひろ)。彼はもちろん御剣怜侍だ。すらっと背が高く、ド派手な衣装に身を包みひたすらカッコをつける。しかし彼はフェニックス・ライトの良き友として心の支えとなっている。

 この他にも、名前もムチを振るうキャラクターのスタイルも狩魔冥そのままの、フランジスカ・ヴォン・カルマ(藤咲えり)。設定では霊媒師の娘となっているが、そういったシーンは用意されていないのが残念なフェニックス・ライトの助手を務めるマヤ・フェイ(すみれ乃麗)は見たまんま綾里真宵だ。そして、事件現場をどたどたと走り回り、語尾に「~っす!!」を付けて話すディック・ガムシュー(春風弥里)は糸鋸圭介をモデルに……している割には若くてカッコイイが、コミカルなシーンには欠かせない存在感を示している。

 これから鑑賞する人のためにも細かい展開の記述は避けるが、とにかく唄、踊りなど全てにおいて完成度が高い舞台で、素直に全ての人に勧められる仕上がりだ。宝塚歌劇のファンの方はもちろんのこと、ゲームファンも「逆転裁判」の世界観がこれだけ再現されていることに驚きと楽しさを発見できるだろう。

 もし唯一残念な点があるとするなら、この公演のチケットがすでに完売状態となっている点だろう。もし見る機会があるのであれば、ぜひとも足を運んで貰いたい舞台だ。


オープニング。「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」ということで、前作を受けての内容となっているため、バックに前作の映像が映し出された。もちろん前作を知らなくても十分楽しめるフェニックス・ライトの助手を務めるマヤ・フェイ。原作の「逆転裁判」では綾里真宵にあたる。衣装もほぼゲームを踏襲しているほか、コミカルな部分も上手く表現されている過去を回想するシーンのバックには過去のフェニックス・ライトを描いた絵が映し出された。裁判のシーンなどでも同様にタイミング良くグラフィックスが挿入される場面が用意されている
今回重要な役割となるのがルーチェ・アレイア。第1幕でライトのかつての師であるローズ・アレイアの弁護を頼みに来るところからお話はスタート。彼女はライトのようになりたいと弁護士を目指している前作の舞台にも登場したディック・ガムシュー。原作の糸鋸圭介に当たる役所で、「~っす!」を連発。コミカルな役所を熱演
各場面を唄と踊りで繋いでいくミュージカル仕立て。素晴らしい唄と踊りで、楽しめるライトの幼馴染みでもある天才検事、マイルズ・エッジワース。原作の御剣怜侍と同様に舞台でも重要な役所として登場ひときわ異彩を放つフランジスカ・ヴォン・カルマ。なにかとムチを振り回す。原作の狩魔冥に名前も似せてある
全体の約半分ほどが法廷のシーンだが、非常にスピーディで逆転に次ぐ逆転の展開で全く飽きることなく最後まで楽しめる。法廷シーンの証拠は人情味溢れるサイバンチョの後ろにタイミング良く挿入される。もちろん「異議あり!」といったキメ台詞もバンバン登場し、ゲームを知っていればさらに楽しめる
第1幕のエンディング。フェニックス・ライトの活躍により裁判で勝利を収めるが、真の解決は持ち越されてしまう。ライトはただ裁判に勝つだけでなく、人を幸せに導くことができるのだろうか舞台も後半にさしかかり盛り上がる展開の中、舞台だけでなく、客席にもアピールする場面がある。客席を巡りながらの唄は迫力がある
つらい出来事から道を見失いかけているルーチェを諭すフェニックス・ライト常にカッコイイマイルズ・エッジワースだが、コミカルな場面も数多くある道を失いかけていたのはルーチェだけでなく、フェニックス・ライトもまた自分が弁護士でなにができるのか見失っていた。人を救い、また弁護士としての自分の道も見いだしていく
戦いのシーンも用意されており、広い舞台を縦横無尽に使い、ダンスと融合した華麗なアクションシーンを見せてくれる。フランジスカ・ヴォン・カルマの活躍が楽しめるシーンだ主役のフェニックス・ライトを演じた蘭寿とむさんを中心にエンディングは大きく盛り上がる
「異議あり!」に始まりゲームのシーンが演出ベースで上手く練り込まれていて、違和感がない。宝塚歌劇のファンはもちろん、ゲームファンも楽しめる仕上がりとなっているとにかくかっこよく決める蘭寿とむさん演じるフェニックス・ライト。コミカルなシーンも挟み込まれさわやかに演じきった
物語が終った後は1曲ごとに衣装を替え全員による唄とダンスのショーが繰り広げられた。とにかく艶やかでキレのあるダンスで、見るものを圧倒する

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(2009年 9月 7日)

[Reported by 船津稔]