Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート

スクエニ、「ファイナルファンタジー XIV」Q&Aセッションを開催
Xbox 360版は「話し合い継続中」、アバター以外は「FF XI」からの引き継ぎ要素はなし

 

6月2~4日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center


 株式会社スクウェア・エニックスは、E32日目の6月3日、前日のSCEAのプレスカンファレンスで電撃発表を行なったMMORPG「ファイナルファンタジー XIV」にフォーカスしたQ&Aセッションを開催した。

Q&Aセッションの冒頭で、Xbox 360版の可能性について言及する橋本真司氏
SCEAのカンファレンスでお披露目された「ファイナルファンタジー XIV」プロモーションムービーの1コマ。チョコボが出てきたことでようやく「ファイナルファンタジー」であることが確信できた

 「ファイナルファンタジー」シリーズのナンバリングタイトルの最新作が、2010年にプレイステーション 3およびPCのみに提供されるという具体性を帯びた刺激的な発表内容だったことから、発表会場には日本のメディアのみならず、欧米のメディアも数多く駆けつけた。

 登壇者は、コーポレートエグゼクティブの橋本真司氏、「ファイナルファンタジー XIV」プロデューサーの田中弘道氏、同ディレクターの河本信昭氏の3名。橋本氏は、スクウェア・エニックスの営業方面を担当。田中氏、河本氏は、「ファイナルファンタジー XI」のプロデューサーであり、ディレクターだ。

 登壇者を代表して最初に挨拶を行なった橋本氏は、“Xbox 360が発売プラットフォームから外された”というネガティブなニュアンスの報道について「一部のメディアに解釈の相違がある。『XIV』については現行、PS3とPC向けという形で発表しているが、その他のMicrosoftのプラットフォームについては引き続きプラットフォームホルダーと話し合いを継続中」と、Xbox 360への展開に含みを持たせた。

 その後は30分にわたってQ&Aセッションが行なわれた。質問の中心は「FF XI」との関連性についてだった。ディテールにはまだ言及できないということで、「FF XI」との関連性という搦め手から攻めた格好だが、注目度の高さを浮き彫りにした格好となった。

 一方、回答内容については、ディテールについては明かされなかったものの、「FF XI」とはあらゆる点で一線を画す革新的なオンラインゲームを作ろうという意志が感じられたセッションだった。それではさっそくQ&Aセッションの模様を完全収録でお届けしよう。なお、セッション終了後に日本メディアを対象にした合同インタビューも実施されたので、その模様については後ほどお伝えしたい。


【ファイナルファンタジー XIV】
ハイクオリティのプリレンダームービー。ムービーに登場する男性キャラクターは、“大人びたヒューム”という印象だが、この人種はヒュームではなく、世界もヴァナ・ディールではなく、エオルゼアとなっている



■ 「FF XI」との関連性に関する質問が続出。基本的に引き継ぎはなく、完全な新作

質問に答える「ファイナルファンタジー XIV」プロデューサーの田中弘道氏(中央)。右はディレクターの河本信昭氏
「FF XI」に続いて再びプロデューサーに就任した田中氏(左)と、「やっと発表できました」と笑顔を見せてくれた河本氏(右)。“次世代MMORPG”担当となったことで、一時期姿を消していた河本氏だが、今後は表舞台に立つことが増えてきそうだ

Q: 「FF XI」に登場するヒュームやガルカといった種族は「FF XIV」ではどうなるのか?

田中弘道氏: アバターという意味では同じような見た目の種族が登場するが、ゲーム的には“エオルゼア”というまったく違う世界であり、「FF XI」の種族とはまったく異なる呼ばれ方をされます。アバターはプレーヤーの分身なので、「FF XI」と似たようなものを選べるように、あえて共通のデザインを採用しています。

Q: 「FF XIV」がリリースされたら、「FF XI」のアップデートはどうなるのか?

田中氏: 「FF XIV」の開発がスタートしたのはかれこれ4年ぐらい前になります。開発が本格化したのはもう少し後になりますが、すでに「FF XI」と「FF XIV」は同時開発しています。「FF XI」は運営を開始してから7年が経過していますが、常に半年から最大1年先ぐらいまでのバージョンアップスケジュールを立てて開発を進めています。現状でも、1年先までみっちり予定があってまだまだアイデアは尽きないようです。

Q: 「World of Warcraft」は、「FF XIV」の開発にどのような影響をもたらしているか?

河本信昭氏: 「World of Warcraft」であったようなカジュアルなユーザーに対する施策は、「FF XIV」にも行なわれていくと考えています。ただし、我々は「World of Warcraft」を目指して作っているわけではありません。また違った独自のスタイルのオンラインゲームになると思っています。

Q: バトルシステムはどのようなものになるのか?

河本氏: バトルの詳細についてはまだお答えできません。

Q: ソロプレイ周りの仕様について、「FF XI」で培った経験は活かされるのか?

河本氏: そうですね。「FF XI」というのはもともとパーティーを主体とした戦闘を目指していましたが、今回は最初からソロプレイや、大人数バトルを想定して開発を進めています。

Q: リリースについては世界同時になるのか?

田中氏: 今回も日英独仏の4言語対応で世界同時リリースを目指しています。プラットフォームについては最初はPS3とPCからということになります。

Q: サーバーは、グローバルサーバーか、リージョンサーバーか?

田中氏: 現状では、「FF XI」と同じように、クロスリージョンのグローバルサーバーを考えていますが、ユーザーの要望に応じて国別のサーバーも検討していきます。これはβテストの中で可能性を見ていこうと考えています。ただ、「FF XI」でも自由にサーバーを選択できるようにすると、バハムートワールドのようにサーバーのユーザー数がパンク状態になってしまうので、それを避けられることが前提となります。

Q: 「FF XI」はユーザーからのフィードバックを受けて7年間掛けて進化してきたが、「FF XIV」ではこの点はどうなるのか?

河本氏: ユーザーの声は何よりも重要ですので、それを参考にやっていきたいと考えています。また、もうすでに「FF XI」で頂いてきた意見がありますので、β時点、スタート時点でそれらを取り入れていきたいと考えています。

Q: 「FF XI」と「FF XIV」の2つのコミュニティは別々に扱うのか、それともクロスオーバーさせるのか。

田中氏: そこはコミュニティ自身の選択だと考えています。ある日は「FF XI」、別の日は「FF XIV」と行ったり来たりできるといいなと考えております。プレーヤーとしては同じ人たちなのでコミュニティとしても繋がっていくのではないかと思いますが、その辺はユーザーさん次第です。

Q: スペイン語バージョンは考えているか?

田中氏: 残念ながら現在は考えていません。ユーザーからのリクエストが多ければ考えていきます。ただ、今は各4言語を同時開発していて4言語で大所帯化しているので、良いトランスレーターさんがいればというところですね(笑)。

Q: 「FF XIV」は、オンラインゲームとして何か革新的な要素はありますか?

河本氏: その時代ごとに1番おもしろい「ファイナルファンタジー」を作りたいという想いがあって、今回の方向性で1番ふさわしいのがMMOだというアプローチで考えています。だから、MMOを新しくしようというよりも、新しい「ファイナルファンタジー」を作る中で、それにふさわしいMMOのスタイルを提供したいと考えています。

田中氏: ただ、ゲームのシステム的にも、ゲーム内で使われている機能的にも、いままでのMMORPGでやってなかったことにチャレンジしていこうと考えています。

Q: なぜ「FF XI」の続編ではなく、新しいMMOを作ろうと考えていたのか?

田中氏: 「FF XI」はPS2でスタートして、その後PC版、Xbox 360版というものを順次投入してきたのですが、その後もPS3やXbox 360の新しい機能に特化したものに移植をしてくれという要望は強かったのですが、やっぱりMMOは運営しながら仕様を追加していくので、7年も続けているとリソースが膨大になりすぎて、とてもじゃないが数年では移植が終わらないレベルになってきてしまう。

 続編は移植が終わらないと作れませんから、準備を整えるのにまた5、6年掛かってしまう。ということを考えると、その期間で別のものとして作った方がお互い良いのではないかということで「FF XIV」を手がけました。

Q: 公開されたトレーラーは実機相当のものと考えて良いか?

河本氏: あれはプリレンダーのムービーと、実機で作られたリアルタイムのシーンの両方が混ざった状態になっています。

Q: たとえば、ガルカみたいなキャラクタが敵と戦っているシーンがありますが、あのぐらいのクオリティのものがプレイできると考えて良いか?

田中氏: あのバトルシーンは実機映像です。


【スクリーンショット】
初公開となる「ファイナルファンタジー XIV」のスクリーンショット。リアルタイムのカットシーンのようだが、一見して「FF XI」と比較してグラフィックスのクオリティはかなり向上していることがわかる。ただし、画面内に不特定多数のキャラクタが表示されるオンラインゲームであるため、グラフィックスの進化は、「FF XII」から「FF XIII」ほどの開きはないという印象だ

Q: バトルシーンでは、敵数も多く、これまで多対1だったものが、多対多になっているという印象を受けましたが、ゲーム性、アクション性に変化があるのでしょうか?

河本氏: どこまで答えて良いのか判断に困りますが、多対1を多対多にしたいというのは我々としても非常に大きな希望として持っています。

Q: 「FF XIV」の魅力は何か?

河本氏: このゲームのキーワードとして我々が掲げているものに「成長」というものがあります。従来の「FF」ならではのハイクオリティのカットシーンなどもあるのですが、それとは別に独自のシステムでクエストを提供していく。バリエーションも多く、ゲーム性重視のクエストをクリアすることで自然と成長していく。成長した結果、何が得られるかについてはジョブシステムとは違ったものを検討していきたいと思っています。基本的には「FF XI」のジョブシステムのコンセプトを拡張した形での実装を検討しています。

田中氏: 「FF XI」とは違うベクトルで作られています。「FF XI」の場合、今では緩くなっていますが、どうしてもパーティー前提でやらなければならないシステムにしていますが、「FF XIV」の場合は、今日は1人でやりたい、明日は大人数でやりたい、あるいは少ししか時間がない、1日中プレイできるといったいろんなユーザーさんのプレイスタイルに対して、ゲームシステム的にサポートしようという風に考えています。

Q: βテストの予定はどうなっているか。「FF XI」のユーザーにはβ参加権を与えることは考えているのか。

田中氏: βテストを実施するのは確定しているが、スケジュールについては未定。詳細が決まり次第、お伝えしたい。

Q: 「FF XI」のキャラクタは、「FF XIV」に引き継げるのか?

田中氏: 引き継ぎに関しては、まったくゲームシステムが違うものですので考えていません。「FF XI」のユーザーがすんなり「FF XIV」の世界に入っていけるように、「FF XI」で使っていたアバターと似たようなものは一通り用意しようかなと考えています。

 それから「FF XIV」ではプレイオンラインは利用しませんが、プレイオンラインのフレンドリストに相当するものは何らかの形で引き継いでいきたいと考えています。

Q: 初心者のユーザーが、無数にオンラインゲームがある中で、「FF XIV」を選ぶ理由は何か?

河本氏: まずはこの世界を気に入って頂けること。システムをいくら説明しても最初は取っつきにくいところがありますので、この世界、そしてこの世界で起こる物語に注目していただきたいと考えています。


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(2009年 6月 4日)

[Reported by 中村聖司 ]