Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
「Forza Motorsport 3」シニアゲームデザイナー谷口潤氏インタビュー
1080p/60fps、完全物理制御を実現した最強のレースシミュレータが見参!
Microsoftが「Xbox 360 E309 Media Briefing」において、自社の目玉タイトルのひとつとして発表したのが「Forza Mortorsport 3」だ。前作にも増してリアルになったグラフィックスとカーモデル、1080p/60フレームによる華麗なドライビングシーン、無尽蔵とも言える愛車のカスタマイズ機能、そしてスタントカーによるテレビCMを彷彿とさせる驚愕の動画作成機能と、インパクト抜群の要素が目白押しであり、今年のXbox 360エクスクルーシブタイトルのベストに押す人も少なくない。
Microsoftブースではプレイアブル出展されていた。米国で2009年10月発売ということもあって完成度はかなり高い |
開発元のTurn 10 Studiosは、レースゲーム界の巨人であるポリフォニーデジタルの「グランツーリスモ」シリーズを超えるレースシミュレータを開発することを目的として設立されたMicrosoft Game Studios内の開発チームだ。“1で挑戦権を得て、2で追いつき、3で追い抜く”。「Forza Mortorsport 3」の登場により、このシナリオがいよいよ現実のものとなりつつある。
もっとも、ポリフォニーデジタルは、今回のSCEAのプレスカンファレンスでフラッグシップタイトル「グランツーリスモ 5」を正式発表し、さらにPSPにもフルセットの「グランツーリスモ」を提供することを明らかにするなど、両作のリアル系レースシムの頂上決戦の行方はまだまだ予断を許さない。両作以外にもSlightly Mad Studiosの「Need for Speed Shift」やCodemastersの「Dirt 2」など、ライバルに値するタイトルは多い。どのタイトルがレースゲームファンの支持を集めるのかはわからないが、現時点でひとつだけ確実に言えるのは、今年はレースゲームファンにとって素晴らしい年になるということだ。
さて、今回「Xbox 360 E309 Media Briefing」での「Forza Mortorsport 3」の正式発表を受けて、E3初日にはプレス向けのブリーフィングが行なわれた。今回取材に応じて頂いたのは、「セガラリー」シリーズの育ての親として著名なゲームクリエイターである谷口潤氏。同氏は、現在はMicrosoft Game Studiosに籍を置き、Turn 10のシニアゲームデザイナーとして「Forza Mortorsport 3」の開発に携わっている。谷口氏は、Turn 10内部の盛り上がりぶりを反映するかのように、やや興奮の面持ちで自作の魅力を語ってくれた。
【Forza Mortorsport 3】 | ||
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カーモデルは、前作からさらに格段に進化している。それに対して、地形の進化はカーモデルほどではないが、1080p/60フレームのドライビングシーンの美しさは格別だ。マルチプレイ最大参加者数、同時走行車数といった仕様上のリミットが気になるところだ |
■ あらゆる点で妥協を許さないリアル系レースシミュレータ
谷口氏は、「Forza Mortorsport 3(以下、『Forza 3』)」の特徴として以下の4つの項目を挙げてくれた。
- ・最高のグラフィックスと物理演算
・最大の車種数と最新の車の収録
・もっともスリリングで親しみやすいゲームプレイ
・クリエイティブなオンラインコミュニティ
順番に紹介していくと、まずグラフィックスと物理演算に関しては、前作の720p/60フレーム表示から、1080p/60フレーム表示に進化させ、400車種すべてにリアルなコックピットビューを搭載。カーモデルに関しては、前作の10倍のポリゴンを使用しており、一目で違いがわかるほど美しくなっている。マニファクチャラーのロゴ、ベンチレーティング、ストップランプなどなど、あらゆるディテールの描き込みが強化され、実写さながらのクオリティを実現している。これらのアップデートにより、グラフィックス面に関しては「グランツーリスモ5 プロローグ」と同等以上の水準に引き上げられたことになる。
「Forza」シリーズの強みである物理演算に関してはさらに磨きが掛かっている。「Forza 2」までの、あのフェラーリですらぐちゃぐちゃになるというリアルなダメージ表現に加えて、「Forza 3」では新たに車が横転するようになる。「Forza 2」まではリアルな物理挙動だったとはいえ、横転の動きに関してはリミッターが掛けられ、その意味ではリアルではなかったわけだが、「Forza 3」では無理な角度でカーブを曲がろうとして、壁にぶつかったりすると激しく横転する。
谷口氏によれば、優れたレースシミュレーションは何かと考えた際に「ぶつかることに怖さを覚えるゲーム」だという。「高速で走っているときが怖いのではなく、高速で走っていて衝突するとどうなるかがわからないのが怖い。今回ロールオーバー(転覆)を入れたことで怖さが助長されました」とレースゲームクリエイターらしい回答で、実際に横転シーンを見せてくれた。なお、横転してしまった場合は即リタイアではなく、アクセルを踏むことで再横転して再び走行可能になるというゲーム的な救済策が設けられている。横転するとルーフに傷が付くなど、妙なこだわりに感心させられた。
車種に関しては、「Forza 3」本編で約400車種(50社以上)を収録し、残りはダウンロードコンテンツ(DLC)での追加を計画しているようだ。DLCで何をどの程度追加するかについては現在計画中ということで、公式発表では「400種類以上」としている。前作比で一気に100種の増加であり、どのような車が登場するかは現時点では内緒ということだが、マッスルカー、ストックカー、スーパーV8、SUVなどさらにカバーする領域が広がるようだ。
「『Forza 3』最速の車は?」の質問には、「それに答えてしまうと、“あれ”に答えてしまうことになるので、現時点ではお答えできませんが、本編で終わりではなく、バージョン2、バージョン3で入ってくる車もあるでしょう」と含みを持たせた回答だった。レースモードに関しては、標準的なサーキットレースに加えて、オーバルレース、ドラッグレース、ドリフトモード、タイムアタックモード等を完備するということだ。
ゲームプレイで印象的だったのは、アシストモードの充実だ。シミュレーション精度(レース難易度)の調整に加え、「もうブレーキングからして難しい」というカジュアルなレースゲームファンのための「オートブレーキ機能」、ベストラップを実現するための最善のライン取りをコース上に明示してくれる「Suggested Line機能」、何をどういじれば走りやすくなるのかわからないという人のための「オートチューニング機能」、そしてCodemastersのレースシム「GRID」で実装されて好評を博した、ハンドリングをミスった場合に時間を巻き戻せる「フラッシュバック機能」に似たRewind機能などが搭載される。
Rewind機能は、驚くべきことに難易度設定やレースのグレード等に関わらず、何度でもペナルティなしで利用できる。標準でBackボタンに割り当てられており、多用することをある程度前提としてデザインされている点にも注目したい。一部のコアゲーマーには不評を買いそうな便利機能だが、レースシミュレータというゲームジャンルのハードルをグッと下げてくれるという点で歓迎したい。
ちなみにRewind機能に付随する話題としては、Rewindするたびに、その都度AIカーの動きにも変化があるという。さらに今回AIカーは、プレーヤーのライバルカーを認識してプレッシャーを掛けてくるという。それによって自滅したり、逆にプレッシャーを利用して相手を突き放すなど、ライバル同士のコース上のインタラクションも楽しめるようだ。
最後のクリエイティブなオンラインコミュニティについては、まだ隠しておきたい部分が多いようで詳細は不明のままだったが、「Forza 2」で話題を集めたカスタムカーについてはさらに自由度と機能を高めた状態で実装されるようだ。マルチプレイについても、「Forza 2」から様々な進化が計られているということだが、詳細については「今後」とかわされた。
最後に気になる要素に付いてまとめておくと、まず収録コースについては「まだ発表できない。全体で100コース」。発売時期は北米で10月、日本では発売は確定しているものの時期については未定。DLCについては、「計画はあるものの詳細は明らかにできない」ということだ。天候の変化はなく、100コースそれぞれに異なる天候が固定で配置される。ただし、ウェットコンディションはなし。
そして「Xbox 360 E309 Media Briefing」で話題を集めた動画作成機能については、肝心の収録の仕方、その機能については明らかにされなかった。基本的な内容としては、単なるリプレイの枠を超えて、オンライン上で仲間達と自由に愛車を操作し、その内容をクリッピングして動画を配信できるというもの。「Project Gotham Racing 4」にややそれに近い機能が用意されていたが、その進化形と考えて良さそうだ。共有できる相手は、Xbox 360ユーザーに限定されず、forzamotorsport.netを通じてインターネット上にも公開できるという。
発売までわずか5カ月足らずだが、「Forza 3」はまだまだ謎が多い。谷口氏によれば、「この美麗なグラフィックスが60フレームでしっかり動くことをお披露目したかった。今後も大きな発表を報告していきたい。日本でも発売は決定していますので、東京ゲームショウでも何らかの情報はお披露目できるのではないかと思います」ということだが、今後どのような発表が行なわれるのか、また日本語版はいつ発売されるのか、マイクロソフトからの続報に注目したい。
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(2009年 6月 3日)