ガマニア、「仙魔道」開発・運営インタビュー
4月30日に生産システムを実装。
今後はストーリー、ゲーム要素をさらに強化
ガマニアデジタルエンターテインメントはMMORPG「仙魔道」のアップデートを4月30日に実施する。このアップデートにより、かわいらしい採集用ペットが追加され、連れ歩くことが可能になるだけでなく、ペットが集めた材料を使うことで道具や武器を作ることができる「生産」要素が追加される。
「仙魔道」は4月15日からオープンベータテストを開始しているMMORPGで、プレーヤーは「仙族」と「魔族」にわかれ戦いを繰り広げるというRvRを大きなテーマとして掲げている作品だ。他の作品と異なるポイントは、プレーヤーの意志で自分の所属陣営を仙と魔どちらにも変更できること。このゲームシステムがどんなプレーヤー社会を形成するのか、楽しみな作品である。
今回はガマニア本社に台湾Gamaniaの子会社である開発元のALIBANGBANG DIGITAL GAMESのVice President Jack Cheng氏とガマニアオンライン事業本部第1事業部ディレクターの稲川義章氏に、アップデートの内容や今後の展開、更に日本展開の方向性などを聞くことができた。本稿では最新スクリーンショットと合わせて紹介していきたい。
■ これまでの方向性と異なるかわいらしい採集ペット実装により、生産が可能に
小さな天女のような「織女」。かわいらしさの中に「仙魔道」ならではのオリエンタルファンタジーの要素が込められている |
マップ画面。右に採集可能なアイコンが表示される |
生産するためには様々な採集アイテムが必要になる。プレーヤー間の採集アイテムの商売も活発になりそうだ |
今回追加されるコンテンツは「生産」要素と、それを行なうための採集用ペットの実装である。「仙魔道」ではこれまで騎乗用ペットが実装されているが、採集用ペットは生産に必要な材料アイテムを集めることができる。採集アイテムは「鉱石」、「木材」、「薬草」、「布」の4種類だ。
採集ペットはプレーヤーキャラクタに比べると小さく、かわいらしいデザインが多い。「フゥ子」は頭の両側で髪の毛をまとめた強気そうな女の子、といったデザインで、「チョロ助」はフードをかぶったモグラのような姿。「ピョコ太」は桜の木の切り株が歩き出したような姿で、「ピヨ丸」はカラス天狗のような格好をしている。「織女」は小さな女の子、といったデザインだが、他のペットはぬいぐるみのようにかわいらしい。
ペットも採集材料も4種類だが、1つのペットは2種類の材料を採集することができる。採集ペットは餌をあげたり、一緒に連れ歩くことで親密度を上げることができる。また、戦闘には参加しないものの、連れ歩き、主人が戦うことで採集用ペットも経験値を獲得し成長する。成長したペットはより高級なアイテムを採取することが可能になる。
採集ペットは「ペット師・ハクロウ」というNPCから購入できるが、購入条件としてボスモンスターのレアドロップである「霊気の結晶体」というアイテムが必要な上、価格もかなり高めに設定されているため、手に入れるためには少しハードルが高いバランスになっている。
採集用ペット、といっても他のゲームのように採集場所に行き、アクションをすることでアイテムを得る、というわけではなく、連れ歩いているだけで一定時間でペットが勝手にアイテムを集めてくるという仕組みだ。また、モンスターと戦い、勝利した際もアイテムを獲得できるという。
採集できる材料はマップ画面で確認できる。4種類全部とれる場所もあれば、2種類、3種類のところもある。高レベル向けマップが多く材料をとれたり、高級な材料をとれるというわけではなく、ペットの能力に依存している。強力なアイテムを作るためにはより貴重なアイテムが必要で、ペットのレベルを上げなくては強いアイテムは作れない。
採集アイテムを組み合わせることで様々なアイテムを作ることができる。これまでドロップや商店で販売されていた以上の「武器」、「防具」、「特殊」、「回復薬」、「宝石」といったアイテムを、材料さえ集めれば作ることができる。宝石に関しては現在はまだ使い道がないが、今後プレーヤーが背負う後光のようなオブジェクト「スフィア」を強化するアイテムとして使うことができるという。生産スキルも今後はさらにアップグレードされる予定で、作れるアイテムの増加や、専門性を持ったスキルを導入、クランやパーティーなどの協力要素も考えていきたいとのことだ。
このシステムは日本の要望で作られたもので、台湾でも4月15日に実装したばかりで、好評を博しているとのことだ。台湾のプレーヤーはレベルが高く、現在はどのアイテムを採集できるか、どうすれば効率よくアイテムを作れるか、という攻略を行なっている。これまでは追加効果をもたらす武器強化のシステムは入っていたのだが、今回のシステムの導入でプレーヤー自身がアイテムを作ることができゲームの幅が広がった点が評価されているという。
「仙魔道」は輝く甲冑に身を包んだ仙族の戦士や、赤黒い肌の魔族の戦士、そしておどろおどろしいモンスターなどハードなイメージが中心だった。今回のようにかわいらしいデザインを入れたのは、日本の強い要望に応えたからだが、開発元のCheng氏はこういったかわいらしい要素は最初は開発スタッフの間からも「作品の世界観に合わない」という声が上がったという。
そこから開発チームは単純にコミックのキャラクタのようにかわいらしいデザインを使うのではなく、「仙魔道」が目指す「オリエンタルファンタジー」の方向に合うようなデザインを模索していった。そして民話や童話に出てくるようなデザインを造り出したのである。その結果先行して実装された台湾のユーザーからも高い評価を受け、ゲームの世界観を広げるという大きなプラス効果が生まれた。この成功は、開発スタッフにもフィードバックされたという。Cheng氏は「今後日本のユーザーの反応も見て、好評ならばこういったかわいらしいペットの種類をどんどん増やしていきたい」と語った。
左から、「精衛」、「土竜」、「木芽」。絵本に出てくる妖怪のようなデザインだ | ||
左ペットを購入できるペット師・ハクロウ。ゲーム内の値段は高めで、さらにレアアイテムが必要となる。また、生産するためには専用の道具も必要となる | ||
最初からかなりのアイテムを作ることができるが、採集アイテムを集めるのが大変、というバランスになるようだ |
■ キャラクター性を重視した「妖狐女王」のシナリオを実装、戦場システムの強化や、ボイスエモーションも
4月30日のアップデート内容に続き、開発元のCheng氏と日本運営ディレクターを担当するガマニアの稲川義章氏にこれからの「仙魔道」の展開と、開発・運営それぞれの思いを聞いた。
最初に稲川氏は日本のプレーヤーが本作を楽しんでいると語る。オープンβテストからコアプレーヤーは順調にレベルを上げている。レベル35からはPvP可能な同一フィールドでの冒険が待っており、今後の展開が楽しみだという。「仙魔道」ではこの高レベルキャラクタフィールドだけでなく、仙族と魔族の挑戦者がインスタンスフィールドを舞台に拠点を奪い合う「戦場システム」が好評とのことだ。
戦場システムは7レベル以上のキャラクターが挑戦可能で、戦場は7~14レベルのキャラクターまでといった形で細かく分類されており、レベルの近い者同士で戦うことができる。フィールドに設置されているいくつかの拠点を奪い合うというルールだが、フィールドには両軍のモンスターが配置されていて自立的に敵陣に攻め込んでいる。このNPCをどう使うかが戦いの鍵となる。この凝ったシステムと、スポーツのようなルールがユーザーから高い評価を得ているという。
Cheng氏は「『仙魔道』はオリエンタルファンタジーの世界観と、RvRが中心となるゲームなため、日本で運営できるとは思っていませんでした。日本運営が決まったとき不安を感じる部分もありましたが、日本のガマニアと話し合うことで自信がついてきました。今後もユーザーの声を取り入れて色々なコンテンツを追加していきたいです」と語った。
現在日本向けコンテンツとして、日本の和服や、お花見の桜の枝など日本ならではの要素を入れていく方向性がある。Cheng氏は今後もこの方向性を強めていきたいという。日本向けを強く意識したコンテンツとしては、「妖狐女王」に関するクエストが準備されている。この妖狐女王は小さな女の子の外見をしていて、先代である女王が死んだ後、妖族を治めていかなくてはいけなくなる。外見同様まだ経験の足りない妖狐女王がどうがんばっていくか、というストーリーが展開する。妖狐女王は「仙魔道」の日本展開の象徴となるキャラクタになる予定だという。
「開発では、日本と台湾それぞれの要望に応えていきたい、という想いがあり、今後コンテンツによっては台湾ではあるものが日本にはない、ということも考えられます」とCheng氏は語る。逆のケースはすでに発生しており、日本の「仙魔道」はNPCに声優を起用しているが、台湾では言葉が違うため入れていない。今後も両国で内容が変わっていく可能性もあるという。
日本に向けての展開だけではなく、今後の目標としてCheng氏は「戦場システム」のアップデートを挙げる。Cheng氏はこの戦場システムに今後様々なシステムを盛り込んでいきたいという。現在は6対6の戦いだけだが、24対24の対戦を実現させたいという。またマップの地形が戦いに影響をもたらしたり、多彩なステージ場の様々な仕掛けなど、アイデアはたくさんあるが、モンスターのAIとスクリプトでハードルがあり、これを突破すべく努力を重ねている。特に、地形の面白さ、戦略性を追求していきたいという。
この他にもより快適な対戦を実現させるために参加チームの戦場の予約システムも検討している。決められた時間になるとプレーヤが呼び出されるシステムや、ビジュアルロビーなどどうすればいいかをスタッフと議論しているとのことだ。こちらは夏以降の実装を予定している。
一方、稲川氏はこれまでのイメージとは違う、かわいらしい要素や、小さい女の子が活躍する「妖狐女王」を入れていく日本の運営方針に関して、「『仙魔道』が持っている殺伐とした雰囲気を緩和して、もっとユーザーが身近に感じてもらう要素を増やしたかった」と語る。
このため、ブログでユニークなエピソードを展開したり、シナリオ上のヒロインキャラクタをゲーム内に投入し、イベント進行を行なうことでより親しみやすい雰囲気作りを目指しているという。コンセプトは「キャストキャラクターがプレーヤーと遊ぶ」ということで、キャラクターの場合は受け答えのセリフにも気をつけるというこだわりを込めている。
雰囲気という部分ではBGMにも力を入れて、日本オリジナルのファンタジー色を感じさせるものを入れており、人気声優を起用しキャラクタ性を強化している。声優のセリフは短いが何種類も入っている。その方向性を大きく打ち出したのが妖狐女王のコンテンツで、ストーリー性を重視して展開させるという。
声優のギミック、という部分では5月に「ボイスエモーション」というシステムを実装予定だ。声優達の台詞を何パターンも収録し、プレーヤーがエモーションとしてそれらの声で自分の想いを主張したり、友人とのコミュニケーションのスパイスとして使用できるようにする。5月にはさらに本作ならではの「師弟システム」を促進させるためのイベントも企画中だ。
この他、日本側が提案しているのが「仙族と魔族が同時にはいることができるイベントフィールド」だ。現在の仙魔道は35レベル以上のキャラクターが入ることができるPvフィールドで出会うことができるほか、戦場システムでも出会うことができるが出会えば即戦いであり、そのほかのコミュニケーションはとれない。このため両陣営の多くのプレーヤーが気楽に参加できるイベントが実施しにくいのだ。これを解消するために皆が入れるフィールドの要望を出しているという。そのフィールドに入ればPvP不可になり様々なイベントが実現可能になる。また、全く反対に、PvPを完全にOKにしてレベル制限なしでひたすら戦わせる、というイベントも可能になる。運営として様々な働きかけが可能になるのだ。
最後に、ユーザーへのメッセージとしてCheng氏は「日本のクローズドβテストの反応などを見てみると、日本のプレーヤーさんは恥ずかしがり屋さんが多いのかな、と感じました。他の人と話すのが恥ずかしいからソロプレイをするのかな、と思っています。もっともっとゲーム内で友達を作ってゲームをみんなで楽しんで欲しいです。そのために開発の方でも人と人を繋げるような働きかけをしていきたいと思っています」。
稲川氏は「オープンβが開始して、ユーザーさんにはとても温かく迎えてもらったな、というのが実感です。声を聞いてみると応援してくれるユーザーさんが多く感謝の気持ちでいっぱいです。ぼく自身も、ゲーム内やブログでも暖かい言葉をかけてもらっています。応援してくれているユーザーさん達に対して、その想いに応えていきたいと思います。もちろん、ゲーム内でバグなどが見つかっている部分に関しては認識しているので、できるだけ早く対処すべく努力しています」と語った。
今回、「仙魔道」の開発・運営スタッフの話を聞いてみて、改めて本作に好印象を持った。ハードな世界観とエキサイティングな対戦を提供したいという開発側に対して、より親しみやすい世界を、という日本側の要求は矛盾しているようにも感じる。しかし開発側はかわいらしいデザインを取り入れつつ、「仙魔道」ならではのアレンジを加えたペットを投入するという方向性を生み出した。ペットのデザインからは、運営の要望をただ受け入れるだけではなく、完全に否定するのではない、よりよい方向性を模索しようという意志を感じる
日本の提案である「単純な声優起用にとどまらない、ストーリー要素のあるシナリオの導入」という点も面白く感じた。オンラインゲームでの声優起用はポピュラーな手法だが、そのほとんどが、ただ同じ言葉を発するだけの個性が全くないNPCに声を当てただけ、というものばかりだ。妖狐女王のシナリオはそういったレベルから脱却したいという意気込みを感じた。また、ボイスエモーションシステムなど、リソースの展開も興味がひかれる。
ソロを好むユーザーの声を「恥ずかしがり屋だから」というCheng氏の言葉は、本当に日本の「仙魔道」のユーザーがそうなのだろうか、という疑問を感じる。ソロプレイを好むプレーヤーは自分のペースで狩りをしたり、クエストをこなすというプレイスタイルで、そこには「30分しかプレイ時間がとれない」、「クエストで次の場所に行くから」、「特定の狩り場で1人でやるのが効率がいいから」といった様々な理由でソロ重視にしていると思う。開発がパーティープレイを推奨したいなら、どういった体験をユーザーに提供したいのか、現在のシステムやゲームバランスがそこにフォーカスできているのかも、考えていかなくてはならないだろう。
特にAIによるモンスター制御や、地形や人数を増やすなど多彩な要素で、戦場システムをさらにアップグレードしたい、という開発側の技術的なチャレンジ精神は応援したいところだ。開発と運営のそれぞれの熱意が「仙魔道」というタイトルをどのようなコンテンツに成長させるのか、注目したい。
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□ガマニアデジタルエンターテインメントのホームページ
http://www.gamania.co.jp/
□「仙魔道」のページ
http://sd.gamania.co.jp/
(2009年 4月 24日)