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VRでラノベを読む「フルダイブノベル」
挿絵の代わりに没入感たっぷりのボイス付きのカットシーンが入る!
2017年9月22日 08:47
東京ゲームショウの10ホールには、VRやARのコンテンツを集めたコーナーが作られている。専用筐体で遊ぶアーケードマシンや、体中にトラッカーを付けて複数人数で遊ぶシューターゲームに交じって、MyDearestという会社が、VRとライトノベル、VRとマンガを組み合わせた「フルダイブノベル」、「フルダイブマンガ」という一風変わったコンテンツを出展していたので話を聞いてきた。
今回出展されていたのは、フルダイブノベル「Innocent Forest(イノセントフォレスト)」とフルダイブマンガ「夢の相談所」。どちらもGear VRで読むバーチャルな読書コンテンツだ。コンテンツの開発には、編集者として「ソードアート・オンライン」や「とある魔術の禁書目録」などを世に出してきた三木一馬氏がアドバイザーとして参加している。VRという新しいプラットフォームを通して、質の高いコンテンツを世の中に送り出していき、ゆくゆくはVRをスタートとしたメディアミックスができればと、取材に応じてくれたCEOの千田翔太郎氏は語った。
今回体験してみて、まだまだコンテンツとしてはクオリティ的に満足できない部分もあったが、それでも、ドラマCDともデジタルノベルとも違うこの表現方法には可能性を感じた。千田氏は、自身の会社を編集会社に近いと語っていた。今は独自のコンテンツを配信しているが、今後はクリエイターがコンテンツを発信するマーケットの1つとして機能するような可能性もあるのではないかと思えた。それでは、実際体験してみたフルダイブシリーズがどんなコンテンツだったのかを解説したい。
読みながら体感できるライトノベルの新しい楽しみ方
VRでライトノベルを読むという感覚が最初はぴんと来なかったが、試してみてなるほどと思った。ゴーグルを被ると、プレーヤーはたくさんの鳥かごが吊された部屋に降り立つ。そこで英語か日本語の言語を選択してスタートする。Gear VRの本体横にあるタッチパッドに触れることでページをめくることができる。今後は、DaydreamコントローラーやGear VRコントローラーへの対応も予定されている。
物語が始まると、画面中央に白いサークルが現われ、そこに文字が浮かぶ。冒頭は、主人公の青年ケイが森の中をさまようシーン。足音のSEと、文字以外は何もない。文字を下まで読んだら、タッチパッドに触れて次の文章と切り替える。その際、主人公が明るい森の中にいることがわかると、背景は明るい森に代わる。背景は1枚絵のパノラマで、見回すことはできるが、動きはない。
主人公は森の中で、不思議な少女ルクレイに出会うが、このシーンも何が起こっているのかは文字のみで表現される。だが、ルクレイとの最初の邂逅の後、主人公が意識を失い、次に目覚めると、目の前に3DCGのルクレイがいて、話しかけてくる。
このシーンだけはキャラクターボイスもアニメーションもあり、さっきまでのテキストのみの画面とは別世界のように没入感がある。千田氏によると、このカットシーンがライトノベルでいうところの挿絵にあたるのだそうだ。
確かに、ただテキストを読んでいるだけでは、VRにする意味はあまりないかもしれないが、カットシーンが始まると、突然小説世界に迷い込んだような気分を味わうことができる。2Dのノベルゲームで挿入されるカットシーンと原理は同じだが、そこはやはりVRの得意分野である没入感が大きなアドバンテージになっている。挿絵がそうであるように、カットシーンも物語上、ここをしっかり見せたい、という部分に挿入されている。CGのクオリティなど、まだまだ進化の余地は多いが、ライトノベルの新たな表現方法としては面白い試みだろう。
「Innocent Forest」は7月末に第1話がリリースされており、現在は全国のネットカフェなどで閲覧することができる。今後はiOS用やDaydream用のGoogle Playアプリとしてもリリースを検討しており、Daydream用は現在申請中なのだそうだ。第1話はプロモーションを兼ねて無料で公開されているが、2話以降は500円の予定。
フルダイブエンターテイメント第2弾はマンガ
「夢の相談所」は、VRで読む漫画の第1弾。今回はTGS 2017に合わせて、漫画バージョンと絵本バージョンの2バージョンが参考出展されていた。
悪夢にうなされる無邪気な少女ミキちゃんは、不思議なチラシに導かれて、のんびりやのバク、ノッテと出会う。悪夢を食べて欲しいと頼むミキちゃんに、ノッテは「しばらく預からせて」と告げる。
フルカラーの絵本バージョンには、VRコンテンツディレクターとして、文化財や美術品のVRコンテンツをディレクションしているKA0RUさんが外部協力者として参加している。今回はデモバージョンということで、プレーヤーが操作で介入できる部分はほとんどなく、アーティスティックな映像作品を見ているような気分で楽しめた。
漫画版は目の前に2枚の白い紙が現われ、そこに1コマずつコマが出現する。セリフはどちらもフルボイス。動的なコマを使ったデジタルコミックはすでに2Dでは何年も前から表現手段として使われているが、それをそのままVR内に持ってきたような形だ。こちらも小説と同じように、ある程度話が進むと紙が消えて3DCGのカットシーンに切り替わる。
3DCGのキャラクターに「下を見てごらん」と言われて、見下ろしたそこには夢への入り口があり、そこに向かって落ちていく。そういうVRならではの演出も使われており、このコンテンツでしか味わえない体験ができそうだ。
今回は約5分程度の内容だったが、本編は1時間程度のボリュームがあるそうだ。漫画版は、Gear VR用が10月に発売される。iOSへの配信も健闘しているそうだが、時期は未定。
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