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【CEDEC2017】技術デモを製品化する難しさ。「サマーレッスン」はどうやって乗り越えたのか?

8月30日~9月1日 開催

会場:パシフィコ横浜

講演を行なったバンダイナムコスタジオの技術統括本部技術本部技術企画部イノベーション課の小関一正係長(右)と、技術統括本部 技術第1開発本部 プログラム1部 プログラム2課の山本治由係長(左)

 8月30日から開催されているゲームを中心とするコンピュータエンターテインメント開発に関する話題を取り扱う「CEDEC2017」において、バンダイナムコエンターテインメントより発売中の「サマーレッスン」に関する講演「技術デモだった『サマーレッスン』がご家庭で遊べるようになるまで ~あなたの技術デモは製品化できますか?~」が開催された。

 バンダイナムコスタジオの技術統括本部技術本部技術企画部イノベーション課の小関一正係長は冒頭「技術デモがどれくらい製品化されているか知っていますか?」と問いかけた。無料で配信されたり、複数のソフトと一緒に商品化されることはあっても、なかなか単品で商品化されている例は少ないという。では、技術デモを商品化するための課題とはどこにあるのだろうか?

 「サマーレッスン」は、技術デモを体験した人からはかなり好評だったため、徐々に社内でも「VRもいけるのでは?」といった意見や「『サマーレッスン』は良いコンテンツなでは?」と評判が上がっていったという。もちろん、「この新しい体験を世の中の多くの人に体験して欲しい」という想いもあったということで、そのためには試遊だけでは体験してもらえる人数に限りがあり、そういった意味からも製品化することで、多くの人に見て欲しいと言うことになった。

 近年最新の技術に対応しいち早くソフトを開発し、市場にアピールすることが重要となっている。こういった意味でも技術デモの重要性は増しているわけだが、製品版の作成はまた違った側面を持つ。ゲームタイトルでいえば、「じっくり長く遊んでもらえること」、体験会ではコンパニオンがいるが、家庭では1人でプレイすることもあるため、誰もがわかるようにしなければならないなどいくつかの課題がある。

 小関一正氏によれば、技術デモで好評だった点は変えてはいけないという。「デモとは違う」ということになるためだという。「サマーレッスン」ではキャラクターとの近さをコンセプトとしており、また「教師と生徒」という絶妙な距離感も大切にしていたため、この2点については製品化の時も変えなかった。ただ、製品化にあたって一種相反するようだが、「デモと同じでもだめ」なのだという。コンセプトは引き継いでも、まったく同じものでは、ユーザーが興味を持てないためだ。

 では「サマーレッスン」ではどう対応したのか?「じっくり長く遊べる」という点に関してはゲーム的なトライアンドエラーの要素を盛り込むことにした。しかしゲーム化にあたって、アイコンなどのインターフェイスをVRの画面内に盛り込みすぎると、すべての情報を画面内に表示するために画面上の情報量が増え、キャラクターが小さく遠くに表示されることになった。これにより没入感がそがれ、キャラクターが近くにいるというコンセプトを実現できなくなった。このため、ゲームのアイコン類やインターフェイスは喫茶店に集約し、キャラクターが登場するシーンでは極力アイコンなどを廃し、キャラクターと向き合えるようにした。

 以上はコンセプトを変えずにゲームの要素を入れるための模索だが、技術デモとの違いを見せるためにどうするか? という点については、技術デモでは部屋の中で完結していたことに対して開けたお寺のシーンを加えることとなった。場所が変わりそれにあわせて各種イベントが用意されることになった。

 さらには、すべて説明を入れるなど誰もがわかるよう配慮した。そしてロード時間の短縮なども行ない、クオリティアップに努めたという。こうして「サマーレッスン」は無事製品化され、店頭に並ぶこととなった。

 質疑応答で、試作に掛ける時間を問われた技術統括本部 技術第1開発本部 プログラム1部 プログラム2課の山本治由係長は、「試作は3日かけません」とキッパリ。短いスパンでどんどんアイディアを出していき、ダメならすぐに次に取りかかるようにしたという。逆に最高でも3日で実現できる範囲で考えていったという。

 最後に「体験会などで行列しても時間の都合で体験できないデモもたくさんある。残念なので、ぜひ皆さん製品化してください!」とエールを送り講演を終えた。

技術デモはなかなか商品化されないという現実を表したグラフ
「サマーレッスン」の技術デモを体験した人の反応は大好評だった
技術デモの重要性は増している
技術デモで必要とされている案件
技術デモならではの様々な必要条件がある
家庭用の商品には技術デモとは違った必要条件がある
製品化にあたって、コンセプトは変えてはいけないという
コンセプトは引き継いでも同じものではユーザーは振り向いてくれない
商品化に必要な商品像はこんな感じ
じっくり遊べるとはどういうことか?
商品化にあたって試作されたバージョン。上半分の数字はキャラクターのパラメーターだが、パラメーターを表示するとプレーヤーはそればかり見て、キャラクターを見なくなるという
試作を作ってみたが、様々な問題点が噴出
2つめの試作品。ゲームらしいが、アイコン類が多く、画面内の情報量が多いためキャラクターとの距離が遠くなっている
ゲームの試作結果で得られた結論
アイコンなどの情報は極力少なくした
ゲームのインターフェイスや盛り込むべき情報は喫茶店に集約
新しい点として開けた神社などのシーンを導入。またこれまでとは違い夜などのシーンを入れることで目新しさを演出
プレーヤーへの説明を丁寧にすることでクオリティをアップ
プログラムの安定性の向上と同時にVR体験の快適さを追求した