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【特別企画】Kingston初のNVMe SSD「KC1000」の能力をテストする

600MB/sの壁をぶち破るPCIe拡張カード型SSD

発売中

価格:36,699円(480GBモデル、税込)

 パーツにこだわるPCゲーマーなら、NVMe SSDはかなり気になるパーツの1つだろう。近年のグラフィックスがリッチなゲームは、グラフィックスの美しさに正比例して、それなりのローディング時間が必要となる。ゲーマーにとってローディング時間は短ければ短いほどいいし、アイコンをクリックした瞬間にゲームが始まって欲しい。

 そんな贅沢な悩みを持つゲーマーたちが、速いストレージを求めるのは自然な流れだろう。そこで今回は最近手に入れやすい価格になってきた、M.2 NVMe SSDのうち、米Kingstonが初めて発売した、ハイエンドユーザー向けのNVMe SSD「KC1000」で、その使い勝手をテストしてみた。今回使用したのは、PCI Express(PCIe)スロットに対応した HHHL AIC(Half-Height Half-Lengthアドインカード)が装着されたタイプの480GBモデル。

 従来ストレージとマザーボードの接続に使われていたシリアルATA(SATA)は、転送速度の物理的な上限が600MB/sで、どんどん高性能化するSSDの進化に対応できず、SSDの性能を活かしきれないという問題が起きてきた。そこで、PCIeを使ったより高速な次世代の規格として、NVMeが生み出された。NVMeはM.2スロットに挿して使うタイプと、PCIeに挿して使うタイプの2種類が存在する。いずれもマザーボードが対応している必要があり、具体的にはH97以降のチップセットが必要となる。OSはWindows 7以降が対応している。

「KC1000」の基本性能

 まずは「KC1000」の基本性能を見ていこう。ラインナップにはM.2タイプとHHH AICタイプがあり、各モデルとも240BG/480GB/960GBの3モデルがある。今回使用している、HHHL AICタイプの480GBモデルは、店頭価格で36,699円(税込)。同容量のSATA SSDが安くなってきているので、価格だけ見ると若干割高となる。

 サイズはM.2 NVMe部分が80×22×3.5mm(横×縦×厚さ)。HHHL AICに装着した状態では、180.98×120.96×21.59mm。標準ブラケットの他に、省スペースPC用のロープロファイル・ブラケットがついており、ドライバーを使って簡単に付け替えることができる。この状態ではサイズが、181.29×80.14×23.40mm(横×縦×厚さ)になる。重量はM.2 NVMe部分が10g。標準ブラケット装着時は76g、ロープロファイル・ブラケット装着時は69g。

 メーカーから発表されているデータを見ると、連続でデータを処理した時の速度を見るシーケンシャル読み取り/書き込みでは、一般的なSATA SSDの4倍から5倍の速度が出るとされている。また、4キロバイト単位でのデータのやり取りを調べる「最大4k」では、480GB以上では290,000IOPS(※IOPS=1秒辺りの入出力回数)と高速での動作が発表されている。もちろん、4キロバイト単位でのランダムアクセス速度を見る「ランダム4k」では、すべての容量モデルで読み取り速度に差がなく、わずかに960GBモデルのみ書き込み速度が速くなっている。

【基本仕様】
フォームファクタ:M.2 2280
インターフェイス:NVMe PCIe Gen3.0 x4レーン
容量:240GB、480GB、960GB
コントローラー:Phison PS5007-E7
NAND:MLC
書き込みバイト総数(TBW):240GB 300TB(0.70DWPD)
480GB 550TB(0.64DWPD)
960GB 1PB(0.58DWPD)
消費電力:アイドル時 0.11w/平均 0.99w/読み取り時 4.95w(最大)/書き込み時 7.40w(最大)
保管温度:-40℃~85℃
動作温度:0℃~70℃
耐震性(振動時):2.17G(ピーク時、7~800Hz)
耐震性(非動作時):20G(ピーク時、20~1000Hz)
MTBF:2,000,000
保証/サポート:5年保証、無料テクニカルサポート

【シーケンシャル読み取り/書き込み】
容量読み取り書き込み
240GB最大2700MB/s最大900MB/s
480GB最大2700MB/s最大1600MB/s
960GB最大2700MB/s最大1600MB/s
【最大4k 読み取り/書き込み】
容量読み取り書き込み
240GB225,000IOPS190,000IOPS
480GB290,000IOPS190,000IOPS
960GB290,000IOPS190,000IOPS
【ランダム4k 読み取り/書き込み】
容量読み取り書き込み
240GB190,000IOPS160,000IOPS
480GB190,000IOPS160,000IOPS
960GB190,000IOPS165,000IOPS

 HHHL AICの表側にはM.2スロットがあり、NVMe本体が取り付けられている。M.2基板上には3つの東芝製NANDフラッシュメモリが並んでいる。基板はHHHLボードにねじ止めされているので、外して単体でマザーボードのM.2スロットに取り付けることもできる。使用できるPCIeスロットは、PCIe 3.0 x4以上。PCIeスロットにはx4、x8、x16などの種類があり、マザーボードによって配置や数が決まっているので、事前にきちんと調べておかないと、ビデオカードを挿したらもうスロットが残ってなかったなんて悲劇もありうる。

 もう1つ今回マザーボードに取り付けいて気になったことが、ビデオカードとの距離だ。ビデオカードもNVMeもかなり発熱するので、小型のマザーボードで2つのPCIeスロットが近い場合は、M.2スロットに接続したほうが温度が上がりにくいかもしれない。

箱の中に入った状態。右上には、ロープロファイル・ブラケットが入っている
PCIe対応ボード付きの本体
ボードの裏側
M.2基板部分の裏側。3つのNANDフラッシュメモリが装着されている
ボード表面
マザーボードに挿した状態。ビデオカードの横のPCIeスロットに挿した

ベンチマークテストでは、NVMeの速さが際立つ

 まずは基本のベンチマークテストの結果を比べてみた。検証した環境は以下の通り。 今回は、「KC1000」の性能と比較するためにSATA SSD「CSSD-S6T128NHG6Q」と、1TBのHDD(SATA、7200回転)でも同様のベンチを走らせてみた。

【テスト環境】
CPU:Core i7-7700
GPU:NVIDIA GeForce GTX 970
マザーボード:PRIME H270M-PLUS
メモリ:DDR4-2400 16GB
モニター:フルHD(1,920×1,080)

今回比較した2つのSSD
M.2基板にヒートシンクを装着した状態

 まず、ストレージ分野の定番ベンチマークCrystalDiskMarkを試してみた。このテストでは、上からシーケンシャルアクセス(マルチキュー&マルチスレッド=複数の処理の流れを平行に処理できるかどうか)、ランダムアクセス(マルチキュー&マルチスレッド)、シーケンシャルアクセス(シングルキュー&シングルスレッド)、ランダムアクセス(シングルキュー&シングルスレッド)をそれぞれ調べている。

 シーケンシャルアクセス(マルチキュー&マルチスレッド)では、予想通りの大きな差が出た。NVMeのシーケンシャルリードが2827、SATA SSDが552.4で約4倍、HDD166.6で10倍以上の差がついている。シーケンシャルライトは1055、490、130とこちらもNVMeが圧倒的な速さを見せつけている。

 ランダムアクセス(マルチキュー&マルチスレッド)では、NVMeとSATAの読み込みではそれほど差が出ていないが、書き出しではこちらも約3.4倍となかなかの好成績だ。いずれにしてもHDDを完全に過去のものにする圧倒的なスピード差がついていることがわかる。

【CrystalDiskMark】
KC1000
CSSD-S6T128NHG6Q
HDD

 次に総合ベンチマークソフトPCMARK8のStorageテストを試した。このテストは「World of Warcraft」や「Photoshop」、「Word」など9種類のアプリケーションの動作をシミュレートして、読み取りと書き込みの速度をチェックする。総合スコアはNVMeが5053、SATA SSDが4976、HDDが2563で、速度の目安となるBandwidthは448.05MB/s、284.76MB/s、10.54MB/sとなっている。

 各アプリ事の成績では、ゲーマーが最も気になるであろう「World of Warcraft」で57.9と58.2、110.4s、「BattleFirld3」で131.9と133.1と297.1s。どちらともHDDと比べると倍近い速度差がついている。「BF3」では2つのSSD同士でも、1秒以上の差がでた。

 ビジネスソフトでは、総じてゲームよりも顕著な差が出ているが、その中でPhotoshopでは、Light、Heavyともに最も大きな差が出ている。

【PCMARK8 Storage】
KC1000
CSSD-S6T128NHG6Q
HDD

 ストレージ専用のベンチマークATTO Disk Benchmarkでは、以下のような結果になった。「CSSD-S6T128NHG6Q」は読み込み、書き出しともに550MB/sと500MB/s付近で安定しているが、「KC1000」は1MB、2MB、4MB、16MB、32MBでは読み込みが3,000MB/s前後になるが、8MB、12MB、24MB、48MBでは1,200~1,300MB/sになり、かなりばらつきが出た。何度か試してみたが、毎回同じ傾向が出た。HDDもパッと見では良い成績が出ているように見えるが、横軸の数字を見ていただければわかるように、NVMeとはこちらも倍以上の差がついている。

【ATTO Disk Benchmark】
KC1000
CSSD-S6T128NHG6Q
HDD

【NVMeのばらつき】
このばらつきは、今回、ゲームの起動テストも行なうため、システムドライブと兼用したことから、OSへのアクセスによって生じた可能性があるので参考程度に留めておいていただきたい

 なお、検証の最中にNVMeの温度が65度を超えてしまったため、ヒートシンクを装着してみた。使用したのは、アイネックスの「M.2 SSD用ヒートシンクHM-21」という、M.2基板の片面に、熱伝導両面テープでM.2基板に張り付けて使用するタイプのもだ。700円程度と安価で、装着も簡単だが、温度は65℃から55℃程度まで一気に下がるなど、かなり効果的だった。

 熱について問い合わせたところ、「KC1000」は、十分なエアフローが供給されるエンタープライズ向けに設計しているため、一般向けでフルパフォーマンスを引き出すためにはやはり何らかの冷却システムを別途用意する必要があるようだ。

 念のためヒートシンクのあるなしでもベンチマークをとってみたが、こちらはそれほど有意な差はでなかった。しかし、M.2 NVMe SSDを導入するなら、ヒートシンクは必ず装着しておいた方がよさそうだ。以下のベンチマークは、すべてヒートシンクをつけた状態で計測した。

「FFXIV」と「Fallout 4」で起動までの時間が約6秒短縮

 次に各種ゲームのベンチマークと、実際のクライアントを使ってロード時間などを比べてみた。まずはPC本体の起動時間を調べてみた。起動ボタンを押してから、Windows 10の背景写真が出てくるまでの時間で、SATA SSD比で3秒以上の差がつくなど、NVMeのパワーを実感できる結果となった。

【Windows10 起動時間】

 また、ベンチマークで大きな差がついたAdobe製品のローディング時間も比較してみた。イラストを描く人にもおなじみの、Photoshop CC(2017)と、Illustrator CC(2017)で、それぞれ起動時間を比べてみた。こちらは、重めのIllustratorで大きな差がついた。

【Adobe製品起動時間】

 続いて「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」で、各設定ごとに比べてみた結果は以下のような結果になった。ベンチマークのスコアだけを見ると、2つのSSDは微妙な差しかなく、ローディング時間も勝敗に多少のばらつきはあるが、体感ではほぼ変わらない程度の速さだった。

【ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク】

 では、ゲームではあまり差が出ないのかというと、そんなことはまったくない。ゲームでは避けて通れない各種ローディング時間で大きな差が出た。

 まず、「FFXIV」のキャラクターセレクトからのローディング時間と、エリア移動にかかる時間も調べてみた。ローディング時間は、キャラクターセレクト画面から、クガネにログインするまでにかかる時間を測った。SSD同士では「KC1000」がわずかに早いだけだが、HDDとは大きな差がついている。ただし、これは起動してすぐのログインの場合で、1度ログアウト画面に戻ってから再ログインするような時には、ログアウトエリアのデータがキャッシュに残っているのか、どのストレージでも大きな差は付かなかった。

 テレポ移動は、「紅蓮のリベレーター」の2つの拠点、ラールガーズリーチからクガネへのテレポ移動にかかる秒数を測った。こちらはSSD同士では1秒差がついているが、コンマ秒まで図るとほぼ誤差の範囲内といってもいいレベルでほとんど差はなかった。クガネは拠点となる街だけにデータ量が多いのか、HDDでは他のエリアへのテレポに比べて差が大きく出た。

 徒歩移動1では、クガネから隣の紅玉海へ、徒歩移動2では、リムサ・ロミンサから中央ラノシアへ徒歩移動したときのローディング時間を測ってみた。結果はすべてのストレージでほぼ差がなかった。

【「FFXIV」エリア移動時間】

【「FFXIV」エリア移動テスト】

 そのほか、「PSO2キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「Windows版ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマークソフト」でのテストは以下のような結果になった。「PSO2」と「DDON」では「KC1000」がわずかに伸びているが、「DQX」ではSSDがほぼ互角という結果になっている。「PSO2」はSATA SSDのみ何度やっても他2つに比べて低めのスコアが出た。

【ベンチマーク】

【「PSO2」ベンチマーク】

【「ドラゴンクエストX」ベンチマーク】

【「DDON」ベンチマーク】

 また、各ゲームの起動までにかかる時間も測ってみた。測定方法は、動画で撮影しながら、スタートボタンを押した後、タイトルや企業ロゴや、最初の画面が出るまでにかかった時間で比べている。

 「FFXIV」では、SATA SSDとHDDがほぼ互角だったのに比べ、「KC1000」がとびぬけて早かった。「フォールアウト4」は、ベンチの成績順に起動時間が短いという順当な結果、「DDON」はほぼ同じくらいだった。「PSO2」はHDDのみ遅く、SSDは同じくらいの結果になった。

【起動時間】

【起動時間テスト】

ゲームプレイ中には体感しづらいが、起動時間やローディングに大きなアドバンテージ

 ハードディスクからSSDにシステムディスクを変えた時、起動の速さに感動した。その後、OS自体も軽くなり、昔ほどの劇的な感動はなくなったが、それでも「KC1000」を使った起動では、体感できるほどに起動時間の短さを感じた。

 今回の結果から、ゲームでの恩恵はローディングの長いスタート時に特に大きく、HDDと比べると待ち時間が劇的に短縮されることがわかっていただけたかと思う。SSD同士では差は小さかったが、最近ローディング時間が長くなっているadobe製品では、NVMeの速さを驚きとともに実感することができた。

 すでに大容量SSDの利用者なら、乗り換える恩恵はそれほど大きくはないが、容量の小さなSSDとHDDのデュアルストレージや、HDDだけの構成からの乗り換えを考えている人にとっては、480GB以上の容量のM.2 NVMeはかなり魅力的な選択肢と言えるだろう。