ニュース
【特別企画】回すだけ? だがそれがいい。最近流行りの「ハンドスピナー」を遊んでみた
2017年6月28日 12:00
最近、「ハンドスピナー」が流行している。ハンドスピナーとは中央の軸部を手に持ち、回転させて楽しむシンプルなおもちゃだ。欧米では「fidget spinner(フィジェットスピナー)」と呼ばれ、元々は筋無力症の子ども向けの玩具として生まれ、精神安定の効果もあるといわれ医療関連器具として使用されていたが、特許が切れた2016年末頃から、メーカー各社が多種多様な製品を販売することで草の根的に噂が広まり、人気となった。
欧米での人気を経て、日本でもテレビやユーチューバー達が取り上げ、東京おもちゃショーでもメーカー各社が輸入品やオリジナル商品を出して盛り上がっている。近所の駅構内にある大型の薬局では輸入したハンドスピナーを店頭で販売していたほか、おもちゃの取り扱いもある家電量販店では複数のハンドスピナーを輸入販売しており、かなり大々的に扱われている。
筆者はこういう流行のおもちゃやガジェットが大好きだ。「ポケモンGOプラス」は品薄の中、友人のつてをたどって入手したし、消費電力の少なさと安価で話題となったスマートウォッチ「Pebble2」も飛びついた。ブロック型の電子ガジェット「CubeWorld」はハマりにハマって海外版と国内版も含めて18個も……。
そういったわけで、今回流行に乗ってクールなギア型のハンドスピナーを入手したところ編集部から連絡があり「ハンドスピナー」を題材にさらに踏み込んで体験、それをレポートすることにした。調子に乗っていくつも商品を買い、さらにベアリングの交換まで踏み込んでみた。自分なりの遊びの感触を語ってみたい。
ちなみに今回買ったハンドスピナーの価格は200円(税込)から、4,800円(税込)まで。主にネット(アマゾン)で購入した。商品名ではなく機能をアピールしている商品が多かった。
ハンドスピナーは、“回している感触”こそが最大の楽しさ!
ハンドスピナーの基本構造は中央に回転軸があり、それを中心に複数のブレードが均一に配置されることで安定した回転を保つ作りになっている。回転軸の内部にはベアリングが組み込まれており、このベアリングの性能に応じてかなり長い時間、回転し続けるのが特徴だ。ハンドスピナーのギミックは基本的に、中央の軸を手に持って本体を固定してそれを回す、ただそれだけだ。……これが面白いのか? 実は筆者も面白さに気が付くまで少し時間がかかった。
まず一番最初に気が付いたのがちょっとした中毒性だ。しばらく手元で回し続けていると、そのうち回転が落ちてきたところでまた回したくなってきた。これなしではいられないという病的な感覚ではなく、手元にあると何となく回してみたくなる。
心地良いのだ。スピナーが回転しているときの抵抗感、回転時の「シュイーン」という音、そして回転しているスピナーの動きが楽しい。暇つぶしという消極的な理由ではなく、積極的に回転を楽しんでいる。現在2週間以上遊んでいるが、最近では常に持ち歩いて、駅から目的地までの歩行時や、駅で電車の到着を待つまでの間などのちょっとした隙間の時間におもむろに回している。
ハンドスピナーは本来は医療機器であり、「ADHD」や「自閉症」、「不安障害」、「重症筋無力症」の子供向けに効果があるとされている。実際に通販サイトのAmazon.co.jpで購入しようとすると医療機器として扱われている旨の注意も出る。そういった心理効果もあると言われても納得はするが、筆者の場合は単純に楽しさを感じて回している。
筆者はいくつかハンドスピナーを購入したが、その中でも回していて特に楽しいのがオーソドックスな3枚のブレードがついているものだ。一番“片手回し”が楽しい。やり方は簡単で、右手、または左手の親指と人差し指とで挟んでハンドスピナーをしっかり持ち、それを中指で弾いて回転させるだけ。
最初のうちは慣れないかもしれないが、慣れてくると両手で同時に勢いよく回せるようになる。コツはデコピンの要領で中指を弾くことだ。この片手回しがどこでもできるようになると、前述のように常に持ち歩き、ちょっとした待ち時間などにおもむろに回せるようになるので、楽しみ方が次のステージに進んだ感じになる。
片手回しについてはサイズや形状も重要になってくる。大きすぎると指で挟んで固定した際にブレードが指や指の隙間に接触してしまうため、片手回しを楽しむ場合はコンパクトなサイズがいい。オーソドックスな3枚ブレード型は非常に片手回しがしやすい。
片手持ちで回す楽しさは回転を見るだけでなく、その振動や遠心力のエネルギー、回転音を楽しむのも魅力だ。振動を指で感じる感覚も物体の回転運動が直に感じられて気持ちがいい。また、回転中のハンドスピナーを軽く上下にゆすってやる事でハンドスピナーにかかっている遠心力を指から感じ取れるのも面白い。回転音についてはハンドスピナーを回す際に生じるベアリングの回転音は結構大きい物もある。ただ不快な音ではなく、軽やかな回転音が耳心地よいので、この音も楽しめる。ただし、静かな場所などでは耳障りと取られる場合もあるため、使用する場所には注意が必要だ。
他にもYouTubeなどの動画サイトを見ていると、回したハンドスピナーを指の上に載せたり、そこからもう片方の手の指に移すなどのトリックプレイもあるようだ。筆者も練習してみたが指の上で安定して回すのがそもそも非常に難易度が高く、そこから他の指に移すなどのプレイはちょっとマスターできなかったが、こういうトリックプレイを練習してみるのも面白いかもしれない。
回転持続時間を極める
ハンドスピナーの説明を読んでいると「3分以上」などのワードが確認できる。そう、ハンドスピナーのもう1つの楽しみ方は、回転持続時間をどれだけ延ばせるかを楽しむことだ。実際に購入した製品の回転持続時間を測ってみたが、中には1~2分で終わってしまう物もあったし、最長5分を達成するものもあった。
回転持続時間については基本的には購入した製品次第で、持続時間を決めるポイントはベアリングと本体の形状だ。特に重要なのがベアリングで、このベアリングの良し悪しがそのままスピナーの回転持続時間を決めるといっても過言ではない。ところが製品を購入する際にベアリングは選択できないので、手元に届くまでどんなベアリングが入っているかが分からないのが悩ましいところだ。
これを極めたい人はハンドスピナーの中でも分解してベアリングを交換できるタイプの製品をチョイスするのがおすすめだ。中にはその辺の記載がない物もあるので、分解写真が載っている物など、意識して選択する必要がある。
ただ、正直なところ回転持続時間が1~2分しかなくても、前述のような片手回しで遊ぶ場合や手元に置いておき、たまにちょこっと回すだけなら回転持続時間を意識しなくても十分に楽しめる。ここのポイントは良い製品を手に入れたときの“こだわりポイント”かもしれない。
見た目の楽しさ、モノとしての魅力
そして大きいのが見た目の楽しさだろう。ハンドスピナーは多種多様な製品が発売されている。オーソドックスな3枚ブレード型の物以外にも、ベースのデザインは3枚ブレード型だが、ブレードの形状やデザインをカッコよくアレンジしている製品、他にも金属製の重厚な物や、ブレードを6枚装備したもの、ブレードの先が円形になっているもの、一見するとハンドスピナーに見えないような形状の物も目につく。そしてそんなデザイン的な魅力で買ってしまうのもハンドスピナーの楽しみ方の1つだ。
筆者は最終的にデザインや形状で購入を決定した。実際これらユニークなデザインの製品の中には、常時持ち歩いて簡単に回すのに向かない物もあった。だが金属のひんやりとした手触りや手に持った時に感じるほんのりとした重量感が実に心地よい。手元に置いてちょっとした隙間の時間にデスクで回すのにはちょうどいい。
今回購入した中で、筆者のお気に入りは8方向にブレードが伸び、各頂点部に歯車(ギア)を装着したハンドスピナーだ。このハンドスピナーの何が熱いかというと全てのギアと中央の軸の全てにギアが付いていて、しかもそれらのギアがハンドスピナーの回転と同時に連動して動くところだ。
サイズが大きいため、卓上に置くなどして回すことになるが、全てのギアが連動して動くビジュアルは歯車の動きを見るのが好きな人なら間違いなく気に入るだろう。このカッコよさだけで満足度は最大クラスだ。
ギアを挟み込むため、ブレードは上下に分割する金属板となっている。またなるべくスムーズに回転させるために、上下の金属板それぞれにベアリングが装着されているほか、全てのギアにもベアリングが仕込まれており、かなりコストがかかっているのが感じられるのもうれしいところ。
しかもこのハンドスピナー、各部のギアを外すこともできるので、中央の回転軸のギアと絡む4つのギアを外すことで、通常のハンドスピナーのように遊ぶこともできる。全てのギアを連動させていると、摩擦が生じるため、回転持続時間が1分弱程度とかなり短くなっていたが、回転軸を独立させることで、一気に回転持続時間が4分近くまで延びた。正に1粒で2度美味しいタイプなのだ。
この他にも5方向に伸びたブレードの先が全て金属円に繋がった円形状のハンドスピナーも買った。ブレの少ない金属円の回転は、他のハンドスピナーと異なるのが心地よい。この円形の形状は恐らく回転持続時間の延びにプラスに働くと思われるが、筆者の手元の個体については4分前後とそれほど延びなかったので、ベアリングの個体差が関係してそうだ。
また、もう1つキューブ型のハンドスピナーも購入してみた。こちらは一見するとメタリックのキューブなのだが、立方体の2か所の角が回転軸となっており、そこを中心にキューブ全体が回転する。通常のハンドスピナーと違う雰囲気が魅力的だ。
他にも6枚のブレードが全て着脱可能で、ベアリング含めてカスタマイズが容易に行えるタイプの真鍮型ハンドスピナーも購入してみた。ブレードの先端には赤、緑、青の色がついており、回転させると回転円にそれぞれのカラーのラインが浮かび上がるなど、回転時のビジュアルにも凝った製品だ。回転音も非常に静かで、持ち運び用のソフトケースや分解用の平らな金属板が付属するなど、最初の1個におススメできるハンドスピナーだ。
ここで紹介した以外にもブレードが2枚だけの直線的な金属製ハンドスピナーや、オーソドックスな3枚ブレードタイプのプラスチック製ハンドスピナーもいくつか購入して試している。このオーソドックスなタイプは日本でもメガハウスが製品化して発売中なので、日本のおもちゃ会社が手を入れたハンドスピナーとして買ってみても面白そうだ。
以上、一通り色んなハンドスピナーを遊んでみた。いずれも見た目は凝ったものが多いが、基本的には回転させるだけというシンプルなギミックだ。こうやって色々見ていると、ハンドスピナーに昔ながらのおもちゃの原点のような印象を受けた。最近のおもちゃは目的がはっきりしていたり、凝った物も多いが、昔のおもちゃのようなシンプルな遊び方のできるものは少ないように感じる。
その点、ハンドスピナーはそれこそ幼児でも簡単に扱えるようなシンプルな作りだ。一過性のブームにとどまらず、もう少し低年齢層に遊ばせるおもちゃとして普及していくのも面白そうだ。また、現状でもかなり多種多様な製品が出ているが、さらにこちらの想像を上回るユニークなハンドスピナーが登場することを期待したい。
ベアリング交換は奥が深すぎ!
さて、最後にちょっとマニアックな楽しみ方として、ベアリング交換をあれこれ試してみたので紹介したい。ベアリングを交換したのはオーソドックスな3枚ブレードタイプのプラスチック製ハンドスピナーだ。こちらは構造が非常にシンプルで、中央の蓋を外すと直接ベアリングがブレード部と直結しており、押すだけでベアリングが外せたので、こちらをカスタマイズしてみることにした。平均回転持続時間は2分35秒ほど。
ベアリングの交換で最初に注意したいのはベアリングのサイズだ。ベアリングは世界規格でサイズが決められており、手元のベアリングのおおよその幅、内径、外径を測って検索をかければ、同サイズのベアリングがいくつか見つけられる。今回試したハンドスピナーのベアリングは内径8mm、外径22mm、幅7mmだったので、その情報を元に検索した。筆者にはベアリングに関する知識は皆無だったため、検索で見つかったベアリングをいくつか購入してみた。そして実際に手元に届いたベアリングをあれこれ交換して回転を試してみた。
ところがどのベアリングを使用しても回転速度は向上せず、むしろ短くなるものばかりだった。ほとんどが数秒で回転終了してしまうのだ。そこでちょっと調べてみたところ、一般的にベアリングにはシールド型と開放型があり、開放型はベアリング内のボールがむき出しになった状態のもので、シールド型は文字通り密閉されて、中にグリースが密封されているタイプだ。実際、筆者の手元にあるハンドスピナーに使用されているベアリングを調べてみたが、いずれも開放型、または片側のみシールドされた半シールド型のどちらかだった。
それに対して、筆者が購入したベアリングはほとんどがシールド型だった。一見すると外部のごみなどが入りにくく密封されたシールド型の方がよさそうに見えたのでチョイスしたのだが、実際は開放型の方がよく回る。シールド型はどちらかというと何十年も動作するような機械などに使われており、回転持続性よりもスムーズな回転をより長時間持続させる耐用年数の高さが特徴だったのだ。シールド型のベアリングは回転持続時間を延ばすのには向かないことがよくわかった。
また、今回は金属製のベアリング以外にも一見するとプラスチックっぽい外観だが、1個辺りの単価がやたらと高い窒化ケイ素セラミック製のベアリングも購入してみた。こちらは一見するとスムーズな回転をしていたので期待大だったが、最終的な回転持続時間は2分20秒ほどで僅かに短くなってしまった。
ただ、これらベアリングも用途次第で使い道はある。例えばシールド型ベアリングは回転持続時間を延ばす用途には向かないが、密封された上に回転持続性が低いため、ハンドスピナーの回転時の音が非常に静かなので、職場などで常に片手回しで使いたい場合などは意図的にシールド型のベアリングをチョイスするなんて使い道も面白い。
また、セラミック製のベアリングは回転開始直後の初速は通常の金属製ベアリングより高速に感じるのと、音が金属製より少し高めのキーの「シャーッ」といった耳心地のいい音が鳴る。現在は、この回転時の音の違いを楽しんだりして常用している。
最後に手元にあったハンドスピナーのうち、ベアリング交換可能な物とも交換してみようとチェックしてみたが、いずれもベアリングのサイズがもっと小さい物ばかりだった。これらの小さなベアリングについても購入してみようと模索してみたが、ちょうど適した開放型が見つからなかったので断念。ベアリングの世界の奥の深さにお手上げだ。
ただし、今回購入したベアリングはいずれも通販サイトを使用して購入したが、専門のサイトや専門の業者にアプローチしなかった。そこで、たまたま筆者の職場の近くに国内でベアリングを取り扱っている日本精工株式会社の代理店があったので、話を聞いてみた。
こちらの代理店ではベアリングの購入自体は内径、外径、幅などのサイズさえもらえれば、1個単位からでも現金取引での購入は可能だそうだ。ただし、やはり回転時間の長さを軸にした製品は存在しないようで、自分で交換して成果を上げるにはいくつか実際に購入して自分で試してみるしか手はなさそうだ。
長時間の回転に適したベアリングはやはり開放型のタイプでNSK製ベアリングの場合、グリスを使わず、潤滑剤を使っているだけのため、スムーズに回転するという。今後はこうしたベアリングなどを扱う専門業者にも話を聞きつつ、ハンドスピナーに適したほどよい価格のベアリングを探して購入してみたい。ベアリング道、どこまでも奥が深いぞ。