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劇的な変化でファンに挑戦!「Civilization VI」プレビュー

内政、外交、軍事、全ての面で新鮮なゲームシステムに対面

文明の発達と衝突を描く「Civilization VI」

 2K Gamesから10月21日の世界同時発売が予定されている、「Sid Meier's 」。今回、そのテストバージョンを実際にプレイすることができたのでインプレッションをお届けしたい。

 本作は、ターンベース文明シミュレーションの金字塔として名高い「Sid Meier's Civilization」シリーズの最新作。1991年に発売された初代作から数え、シリーズは25周年にならんとする長い歴史を誇り、累計販売本数は3,400万本に登る人気シリーズだ。中でも2011年に発売された前作「Civilization V」は900万本以上の販売を達成しており、近年のPCゲームシーンを代表する1本となっている。

 そして10月21日に発売される「Sid Meier's Civilization VI(以下、『Civ6』と表記)は、前作から5年ぶりのナンバリングタイトルとなり、紀元前4000年から近未来までの人類史をテーマとする本筋はそのままに、ゲームシステム上に多くの変化がもたらされ、シリーズのファンに多くの驚きと、新たな研究を求める内容に仕上がっている。

 今回プレイすることのできたバージョンは、製品版に収録されるコンテンツのうち一部を収録した体験版的な位置づけで、日本語化はまだされておらず、各所に仕上げ前の荒削りな部分も見受けられたが、本作のプレイ感覚は大いに確認することができた。前作「Civ5」とくらべてゲームシステム上の変化が極めて多岐にわたるため、全貌は把握することができなかったものの、ゲーム中盤となる150ターンまでのプレイまででも充分以上に本作の手強さを実感することができた。

戦争と平和、和戦両面の戦略をプレイできるのがシリーズの素晴らしいところだ

基本骨格は「Civ5」を踏襲も、驚くほど多くの違いがある

本作のプレイ画面。もちろん日本文明も登場。指導者は北条時宗となった

 「Civilization」シリーズは、文明という人類社会の最も大きな構成単位を大上段からプレイする、極めてスケールの大きなターンベースストラテジーゲームだ。本作でもそのことは変わらないが、特に骨格の部分では前作「Civ5」を踏襲したシステムになっている。マップを構成するマスの形状は六角形のいわゆるヘクスタイルで、基本操作や、軍事ユニットの運用方法、マップ上に散在する戦略資源や贅沢資源の活用法や効能なども、おおよそ「Civ5」と同等だ。都市の集合体として文明全体が生み出す重要リソースが科学力、金銭、文化力、信仰力となっていることもおおよそ共通である。だが、その細部にはシリーズのファンが驚くほどの違いがあり、プレイ上考えることも非常に多くの点で異なるゲームになっている。

 ゲーム開始時の紀元前4000年ににプレーヤーに与えられるのは各1ユニットの開拓者と戦士だ。ここでやることは、開拓者に最初の都市の建設をさせ、戦士ユニットで周囲の探索を行なうこと。ここまでは従来のシリーズ通りである。そこから先は、ほとんど毎ターン毎に未知との遭遇だ。

技術ツリーと公民ツリー

新たに加えられた公民ツリーから、次の研究項目を選択する
従来の技術ツリーからは、文化的な項目が排除され、公民ツリーに移された

 従来のシリーズでは、都市が建設され、文明が研究力を出力し始めると、技術ツリーの進展がスタートしていた。本作ではそれに加えて、新たにCivics Tree、日本語で言うなら公民ツリーというもうひとつの発展要素が追加されている。正確に言えば、公民ツリーは追加されたというより、従来の技術ツリーから文化・政治関連の技術項目を分離・拡張させたものだ。

 技術ツリーのほうには例えば、灌漑、牧畜、陶器、筆記、弓術、石工、青銅器、車輪……といった「技術」が連なる。これに対して、公民ツリーのほうには、法律(Code of Laws)を起点として、職人(Craftsmanship)、国際交易(Foreign Trade)、神秘主義(Mysticism)、神学(Theology)、軍事伝統(Military Tradition)、競技と娯楽(Games and Recreation)、演劇と詩(Drama and Poetry)、政治哲学(Political Philosophy)……といった、民心を安定させたり、統治システムを改善していく政治技術的な項目が並ぶ。項目には従来の技術ツリーにあったものも、なかったものもある。

 文明を健全な形で発展さえていくためには、この技術ツリーと公民ツリーの双方をうまく発展させていかなければならないが、システム的に巧妙なのは、技術ツリーが従来通りの研究力で進行させられることに対し、公民ツリーを進行は文化力の蓄積によるという仕組みになっている点だ。

 前作の「Civ5」では文化力の蓄積により社会制度を発展させることができたが、「Civ6」ではそれを廃止して、従来の技術ツリーから多くの要素を引き継ぎつつ、文化的発展のシステムとして再構成した形だ。従来のシリーズでは文化出力をおざなりにして軍事に傾倒する戦略をとっても大過ない場合が多かったが、「Civ6」で同様の戦略を取れば、統治技術の著しい遅れを引き起こし、致命的な結果を招来しかねない。特に、民心を安定させる施設(劇場やコロセウムといった、従来なら幸福度を上げるために使われたもの)を作れるようになるためには、まず先立って文化を蓄積して公民ツリーを進めなければならないという事実が大きい。

 これはかなりややこしい問題で、従来の技術ツリーでもどう進めるかも難題だったところに、ツリーが分離したことで飛躍的に問題が複雑化した感がある。今回プレイした150ターンの1ゲームだけでは、うまく乗りこなせる気がしなかった。かなり手ごわそうだ。

都市運営はさらに“特化”を推し進めるシステムに

本作における都市。周辺タイルには様々な「地区」が設置されている
各地区は、それぞれに建築可能な地形や範囲が存在。例えば野営地は都市タイルに隣接できない
労働者は一瞬で土地改善や地区の設置ができるが、回数制限で消滅するようになった
ブラジル文明は固有の「ストリートカーニバル」地区を設置できる

 文明の構成単位である都市をどのように運用するかはシリーズを通して大きく変化してきた部分だが、本作もまた、前作からはかなり趣を異としている。筆者の記憶では、「Civ4」ではいかなる段階でもかなり極端な都市の特化が可能で、それが重要テクニックでもあった。「Civ5」では逆に、周辺の地形による影響が極めて大きく、プレーヤーの意思というよりは流れで都市の特性が決まる部分が大きかった。

 「Civ6」の都市運営は、その双方の特性を持つように思える。特に重要なのはDistricts(地区)というシステムが導入されたことだ。地区は都市の建設物の一種だが、タイルを占有する。地区にはキャンパス、野営地、商業ハブ、聖地、娯楽施設、劇場広場、工業地区といったたくさんの種類があり、設置すると、その地区内に対応する建築物を作れるようになり、また、それぞれに応じたボーナスを隣接タイルに与える仕組みになっている。例えば商業ハブを設置すれば交易所や銀行の建設が可能になり、キャンパスを設置すれば図書館や大学の建設が可能になるという感じだ。

 ここで問題になるのは、すべての地区を1都市に設置するのはほぼ不可能という事実だ。まず地区の種類が中世まででも10種類近くにのぼること。地区はタイルを1つ占有するほか、一部の建築物(国家遺産や世界遺産)には隣接するタイルを必要とするものもあるため、全て建築すると都市のタイルが不足する。また、地区の設置のためには労働者ユニットが必要。本作では労働者ユニットは3つの地形改善を行なうと消滅する、消耗品となったため、都市周辺を各地区タイルで埋め尽くすには大量の労働者ユニットを生産しなければならない。特に古代~ルネサンス期の貧弱な工業生産力ではとても賄うことができないので、勢い、限られた数の地区を頭をやなませながら設置することになるのだ。

 またここで重要なのは、各地区が設置されるタイルの種類により、出力が変化するという部分だ。例えばキャンパスは丘陵に設置すると科学出力が増え、商業ハブは沿岸もしくは河川沿いに建設すると金銭出力が増える。そうすると、いきおい、都市周辺の地形状況に応じて、設置すべき地区の方向性が定められる格好となる。

 これらの特性を総合すると、特に工業出力の低いゲーム中盤までは、各都市をある特定の方向に特化しながら、運営する必要が増しているのだ。科学出力を最大にするにはどうするか、金銭出力を最大にするにはどうするか、そういったことを考えながら、各都市を運営することになるだろう。

 その中で悩ましいのは、「Civ5」での文明の大域幸福度に変わって、都市毎に独立したAmenity(快適度)というシステムになった成長キャップのシステムだ。劇場やコロセウムといった娯楽施設を建設しなければ都市の快適度が増えず、都市の成長は止まってしまう。このため大都市を作りたいなら、かなり早めの段階で娯楽地区の設置は必須である。そのためには公民ツリーの項目も早めにアンロックしていく必要があり、「Civ5」以前とは全く違うレベルで都市運営のやりかたを考えることになるだろう。

文明全体の方向性を頻繁に調整可能となった「政府」システム

例えば、政策の効果で労働者ユニットの使用制限数を増やすこともできるようだ(画像では4、通常は3)
経済面の政策には、交易による利得を強化するものもある

 公民ツリーをある程度進めると、古典時代に入るころに政治哲学(Political Philosophy)を取得し、デフォルトの部族政治(Chiefdom)に変わって、独裁制(Autocracy)、寡頭制(Oligarchy)、古代共和制(Classical Republic)といった新たな政治体制を選択することができるようになる。政治体制についての管理を行なう政府パネルでは、この政治体制を変更したり、政策(Policy)を調整して文明全体の微調整を行なうことが可能だ。

 政策はカードの形で表現されており、軍事、経済、外交の3種にわかれている。1つ1つは小さな効果を持ち、「蛮族に戦闘力ボーナス」とか、「首都の工業出力に+1」といったものだ。政策の種類は公民ツリーを進めることでアンロックされ、その種類は膨大に増えていく。その選択肢の中から選び、各政治体制によって決まる政策スロットに当てはめることで、文明の特性にちょっとした変更を加えるというシステムだ。

 同時に使用できる政策の種類(軍事・経済・外交)とその数は政治体制の種類によって変化する。独裁制なら軍事政策を2つ、経済政策を1つ、任意のもの(ワイルドカード)を1つの計4つ。寡頭制なら軍事・経済・外交で1つづつ、ワイルドカードを1つ、という感じでスロットが用意される。時代が進み、より高度な政治体制となれば、同時に使える政策の数は増え、政策による各種ボーナスの累積は大きなものになっていく仕組みだ。

 そして、政策の組み合わせは、公民ツリーを進めて新たな政策をアンロックするたびに変更が可能になる。早いペースで進めていれば、5~10ターンに1度は変更できるというわけで、かなり頻繁な変更機会があたえらえるわけだ。これを利用して、序盤の蛮族掃討を効率化したり、その後に続く開拓者・労働者生産を効率化したり、世界遺産の建設を早めるといったことができる。

 逆にいえば、その時々に応じて最適な政策をチョイスしていくことが本作における基本テクニックのひとつであるというわけで、政府パネルはゲーム中、外交画面と同じくらい頻繁に操作するものになる。これは面白い要素だが、その反面、時代が進んでいくと政策カードの種類が数十種類にもなり、その効果を把握し、適切な選択をするのがかなり困難になってくるので、かなり面倒だなという印象はあった。こういった作業がよく間に入るため、「Civ5」以前に比べてゲームプレイのスピードはかなり落ちた印象がある。

外交、内政、軍事におけるさらなる変化の数々

外交の重要局面のひとつは戦争だが、そこに至る課程と、戦後の処理に本作の醍醐味がある
スパイも今回のプレイでは試せなかった要素のひとつ。今回は「Civ4」のようにユニットとして登場するようだ
ユニットの運用方法は、基本的に「Civ5」のものを踏襲しているようだ

 本作ではその他にも多くの変化がもたらされており、初めてのプレイではとてもその全貌を掴めなかったところだ。大きなところでは、外交面。インターフェイスは全体的に見やすくなり、関係状態をほぼひとめで把握できるようになった。他の文明と直接に取引できる項目は「Civ5」とほぼ変わらないが、新たに「ゴシップ(噂)」という項目が増え、ここにその文明が過去に行なったふるまいについての情報が列記されるようになっている。技術進行についてのものや、戦争についてのもの、あるいは交易状況についてのおぼろげな情報だ。これは当該文明の過去の流れを把握するために役立つが、フランスの指導者カトリーヌ・ド・メディシスなら、このゴシップシステムを使った特別な戦略があるようだ。

 「Civ5」と同じく、「Civ6」のマップにはたくさんの都市国家があり、それらと良好な関係を築くことで各種のボーナスを得られる仕組みも存在する。ただし、「Civ5」では金銭を贈ったり、スパイ導入以降は政治工作を行なうことで関係構築を行なっていたが、このシステムは変更され、「Civ6」では各都市国家に「代表団(Envoy)」を派遣することで関係を深める仕組みになっている。代表団は時折文明に追加され、既知の都市国家のどれに送るかという選択ができるのだが、代表団自体の増加を促す方法はよくわからなかった。外交力のようなリソースが存在してはいるようなのだが。これは次回のプレイ機会にしっかり検証してみたい。

 内政面では、「偉人」のシステムもかなり変化した。偉人は、時代毎に特定の出現テーブルがあるようで、偉人パネルにてその内容を見ることができる。偉人の種類そのものは「Civ5」と同じく、偉大な科学者、偉大な商人、偉大な技術者、偉大なアーティスト各種という感じに分類されているが、「Civ6」では各偉人に固有名と、固有の能力が付与されており、すべての偉人で得られる効果が異なる。そして、偉人ポイントの蓄積もしくは金銭/信仰力での購入で、狙った偉人をアンロックさせる仕組みだ。

 問題は、今回のプレイでは特定の偉人に割り当てられるポイントをどう出力するかが不明瞭だったことと、即時購入に必要な大量の(中世で2,000ゴールド、1,500信仰力以上)金銭や信仰力が賄えなかったので、150ターンの間に1度も偉人を出現させられなかったことだ(ちなみにこのゲームではAIのクレオパトラがほとんどの偉人を独占していた)。このように本作は、様々なシステムがドラスティックに変更させれているため、シリーズのベテランでも基本的な要素を把握するのにかなり苦労する。一度、初心者の気持ちで、数ゲーム通してプレイする必要がありそうだ。

 軍事面では、本作より軍事ユニットと非軍事ユニットをスタックして1ユニットのように扱うシステムもある。例えば古代であれば、開拓者ユニットに戦士ユニットを結合して、護衛させるような形だ。これに加えて、同種のユニットを複数重ねて、強力な軍団を構成することも可能なようだ。ようだ、というのは、今回のプレイでは内政に集中したため、軍事面まで充分に試すことができなかったため。「Civ4」であったような軍団構築のシステムがあれば、戦術面のやりくりがガラリと変わることは間違いないので、ぜひまた次の機会に試してみたい。

 以上、「Civ6」は、前作「Civ5」の骨格を踏襲しつつも、驚くほど多くの面で、大きな変化が加えられている1本だ。シリーズのファンも非常に新鮮な気分でプレイに臨めるこは間違いなく、発売日10月21日からは秋の夜長を多くのプレーヤーが“あと1ターンだけ!”の延々たる反復に誘うことになりそうだ。シリーズの初代作から欠かさずプレイをしてきた筆者自身も、本作の完成が非常に楽しみである。知的な刺激に満ちたストラテジーゲームをまったりと楽しみたいみなさんも、ぜひ本作の発売を楽しみにしていて欲しい。