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初のオフィシャルコンサート「KINGDOM HEARTS Concert -First Breath-」東京公演開催
プレミアムな演奏だけでなく“名場面の朗読”によるスペシャルサプライズも!
2016年8月12日 12:00
スクウェア・エニックスは、「キングダムハーツ」シリーズ初のオフィシャルコンサートとなる「KINGDOM HEARTS Concert -First Breath-」の東京公演を開催した。
このコンサートは東京、名古屋、大阪を巡り、来年には海外公演も行なわれるツアー。東京公演は、その初日の夜の部となっている。
なお、本稿は後の公演のことを考慮し、演目のなかでも特に“来場した人ならではのお楽しみ”と言えるアンコール曲、メドレー曲の構成、演出の一部については伏せた形のレポートとなっているのだが、その点はご理解頂きたい。
厳かな雰囲気漂う東京芸術劇場のホールに、演奏を行なうシエナ・ウィンド・オーケストラ、そして指揮を務める吹奏楽曲の作曲家・アレンジャーとしても知られる和田薫氏が、大きな拍手に包まれつつ登場した。
このコンサートで演奏される曲の構成は“ゲーム体験をシリーズ順に追っていく”というコンセプトにしたということで、第1部では「キングダムハーツ」、「キングダムハーツII」、「ファイナルミックス」からの楽曲が、まさにプレイして聴いていく順とも言える並びで演奏されていった。
1曲目は、シリーズの中でも最も古い楽曲と言える「Destati」。重く辛い宿命のようなものに相対するような激しさ、「KH」シリーズの本質とも言えるシリアスさを感じさせる楽曲。そこにブラスバンドによる音の厚み、生の迫力が加わって、聴く者を圧倒するような仕上がりに。
続いて2曲目に入るかというときに、ステージに「ナミネ」の声優を演じる中原郁さんが登場した。スポットライトの中、中原さんはナミネの“あのセリフ”を朗読していく。来場者の胸に鮮やかに蘇る記憶。場内の空気が、どこかハッと気づかされたような、大切な何かを思い出したかのような空気に変わり、そこに添えられるように「Dearly Beloved」の演奏が始まっていった。タイトル画面で流れる、シリーズを象徴するテーマとも言える1曲だ。
このコンサートではこのように、随所で“名場面のセリフを朗読する”という試みがなされていた。朗読によってゲーム体験やそのときの想いを蘇らせ、その心をブラスバンドの音色で包んでいく。ファンにとって、これ以上ないほどにたまらない演出となっていた。
曲間のトークには、シリーズの楽曲を手がける作曲家、下村陽子さんも登場! 下村さんは学生時代から、この日の指揮を務める和田氏が手がける曲のファンだったそうで、後に「キングダムハーツ」シリーズのオーケストラアレンジを依頼することになった時にはとても感動したそうだ。そうした縁と共にシリーズも長く続き、ついにオフィシャルコンサート開催というこの日を迎えたことへの喜びを語っていた。
第1部の締めくくりに登場したのは、「テラ」のボイスを演じた置鮎龍太郎さん。置鮎さんが朗読したのは、最強の隠しボスと言われ、誰も耳にしたことのなかった“あの存在”。そして……この後には“まさか!”となるようなサプライズも……!!
このサプライズはコンサートに来場した人だけの特別なものなので詳細は明かせないが、会場でそれを目撃し、聴いたことは忘れられない思い出になったはずだ。
第2部では、シリーズ作が進んで「Birth by Sleep」や「358/2 Days」からの楽曲が。本稿の下にセットリストを記載しているので、演奏楽曲が丸わかりしてしまってもいい、という人なら、そちらでご確認頂きたい。
いずれの楽曲も、ブラスバンドによる生演奏による音の幅の広さ、厚み、とくに悲しさのこめられた楽曲では、その繊細さが際立って、非常にプレミアムな演奏なっていた。
また、第2部でも中原さんと置鮎さんによる朗読があり、演奏の途中にはトークセッションも行なわれた。中原さんは最後にナミネを演じてからは約7年、最初に演じたときからだと12年ほどにもなるということで、当時を思い出しながら、純粋さをこめて、この日の朗読に挑んだということだ。
置鮎さんは、そもそもナミネとゲーム中では会っていないということで、お互いに“初めまして”的な状態だったのだとか。前述の“朗読によるサプライズ”では、はじめて声をつけたということもあって、ご本人も今回の試みに驚いたそうだ。
また、この日の朗読には中原さんと置鮎さんによる“このコンサートだけで聴ける、ゲーム中には入っていない、ある作品の前日譚となる会話”というものまであり、大サービスを通り越した、新たな公式設定として扱われるクラスのサプライズが披露された。
サプライズたっぷり、名曲づくしなコンサートもいよいよ終わりへ。アンコール楽曲はこちらも来場した人だけの秘密。だが、シリーズ楽曲の作曲者である下村陽子さんからは「アンコールでは“下村のお戯れ”をお楽しみ頂けます!」と紹介して頂ければということだったので、今後の公演に行かれるかたはぜひ、その“お戯れ”も楽しみにして頂きたい(個人的にはお戯れなんていうものどころか、素晴らしいものだった)。
アンコール曲では、ここまで感極まるのをぐっとこらえていたであろう人も、次々に涙する姿が。まるで雪崩のように会場全体のあちらこちらで目元や口元を押さえる姿が増えていった。
豪華なブラスバンド演奏に加え、朗読による記憶の呼び起こし、たっぷりのサプライズ、そして“下村さんのお戯れ”からの“泣き崩れるほどの感動”と、まさにファンにとって最高のコンサートとなっていた。
ディレクター野村哲也氏からのコメント
「キングダムハーツ」シリーズのディレクター、キャラクターデザイン、ストーリーなどを手がける野村哲也氏からコメントを頂いたので、こちらに掲載しよう。
【野村哲也氏からのコメント】
東京の昼・夜公演に出演しましたが、
残念ながら私は全公演に出演するわけではありませんので、
どこに出てどこに出ないのか、それもサプライズです……。
実は、今回のコンサートのセットリストや内容は、
来年のワールドツアーのセットリストと同時並行で考えたもので、
個人的には今回のブラスコンサートとワールドツアーで
前後編のような構成で考えました。
今回楽しめた方はまた次回もお越しいただいて
来られなかった方は次回こそ参加していただければと思います。
コンサート直後の作曲・下村陽子さん、指揮・和田薫氏にインタビュー!
――まずはコンサートを終えての感想をお聞かせください。
下村氏:本当にすごく嬉しいです。いろいろと大変だったりもしたのですが、それが全部昇華されるというか。ただただ、喜びと幸せをかみしめています。私1人でできることではなく、たくさんの方に協力して頂いて、和田さんにも全力の指揮とアレンジをして頂いて。私の作った音楽にたくさんの方が関わって、たくさんの方が聴きに来てくださって……。最高の幸せです、ありがとうございます。
和田氏:とりあえず初日が終わって「ふーっ!」っていう気持ちです(笑)。でも本当にお客様に喜んでもらえたみたいで、泣いていた人もいらっしゃったとか。嬉しい限りです。こんなにたっぷり「キングダムハーツ」の曲にひたれるというのは、指揮者・アレンジャーとして冥利に尽きます。下村さんとも長いおつきあいになりまして、かれこれ14、15年になります。今日は指揮をしながら走馬燈のようにいろいろと思い出しました(笑)。気持ちよく振らせて頂きました、ありがとうございます。
――和田さんが「KH」の曲をアレンジされる上で意識されたポイントというのはどういうものなのでしょうか?
和田氏:僕は「KH」のオーケストラレーションを以前にもやらせてもらいましたが、やはりゲームのイメージが強いと思いますので、それを大切に。あくまでも原曲に忠実にして、「生演奏になるとこんな迫力の曲になるよ!」という方向にしています。吹奏楽ならではの迫力、音圧感、ライブ感が伝わるようにがんばりました。
下村氏:アレンジが完成した時点でデモを聴かせて頂くのですが、デモはまだ仮の音を入れてあったりするんです。ただ、デモを聴いただけでも「きっと(生演奏なら)こうなるんだろうな!」っていう想像ができるので「これで大丈夫です!」とお返事したんです。でも、一昨日のリハーサルで演奏を聴いたら「これが和田さんの頭の中で鳴ってるんだ!」って驚愕したんですよ!
和田氏:すいません、デモが下手くそで(笑)。
下村氏:いや、そういうのではないんですよ!(笑)
なんていうか、「想像を越えてくるってこういうことなんだな」っていう気持ちで。私はもともと和田さんの曲が好きで、アレンジも好きですから、ある程度は私の頭の中でも(和田さんならこんな感じにしてくれそうというのが)鳴っているんですよ。でも、想像を超えていて。リハで私は泣きそうになっていたんですよ。
――演奏する曲は、どのように決めていったのでしょう?
下村氏:「KH」を遊んだ人が、その記憶を思い出せるような。追体験して、まるでそのプレイをしていたのをなぞるような構成にしたいと思ったんです。そこで、私のなかで「ここはこう、ここはこう」というのをつけていって。例えば「Traverse Town」を2回演奏したりしていて、普通のコンサートならそれはしないと思うんですよね。でも、あえて入れていたり。
哲さん(野村哲也氏)からも「それなら、この曲も入れたらいいんじゃない?」とかも監修してくださって。そんな考えで今回のセットリストを決めさせて頂きました。
――野村さんからのオーダーややり取りというのは、他にもあったのでしょうか?
下村氏:朗読は哲さんからの「こうしたい」というのがあって。和田さんにもイントロの入りを調整してもらったりもして。哲さんが朗読用にエピソードを書き下ろして頂いたりもして。ディレクターさんがここまでコンサートにも関わってくださるというのが、私は見たことがないぐらいで。すごく恵まれているタイトルだし、コンサートだと思います。
――朗読など驚きのサプライズも盛りだくさんでした。アンコールも楽しかったですね
下村氏:そうですね、アンコールのあれについては……「お戯れになった」的な感じで書いて頂ければと思います(笑)
――お戯れ(笑)。
下村氏:あと朗読は、「公演に来られるかたは、よく記憶しておいてください!」っていう感じですね(笑)。
――ブラスバンドで演奏される上で、相性のいい曲などはあるのでしょうか?逆に苦労された曲などは?
和田氏:いろいろと吹奏楽ならではな、アレンジすると面白い曲ばかりですね。まぁ、苦心しているかと言うと……全部、苦心してるんですけど(笑)。でも、下村さんから「こうして欲しい」というようなことはないですしね。
――基本的には和田さんにお任せしている?
下村氏:簡単なコメントで「メドレーはこういう感じにしてもらえたら」ぐらいはあるんですけど、原曲そのままなイメージを残してくださっているので、それぐらいですね。
――コンサート中のトークでは下村さんが学生で吹奏楽部だった頃から「和田さんのファンだった」というお話もありましたが、下村さんからみた和田さんの曲の魅力というのはどのようなものでしょう?
下村氏:“熱い”んですよね。当時に好きになった曲は、1度聴いたらものすごく耳に残って。また聴きたい……飽きない……ってなって。この秘密はなんなんだろうなって思うぐらいで。私の告白タイムみたいになっちゃってますね(笑)。
和田氏:ありがとうございます、ホントに。
――なるほど。逆に和田さんから見た下村さんの曲はどんな印象でしょうか?
下村氏:わー! 聞きたくないっ!!
和田氏:(笑)……やっぱり“キャラクターがすごい”というか。僕がやらせて頂いたアレンジというのは、料理人のようなもので。どんな料理にするにしても素材が良くないと、美味しい料理にはできないんですよね。独特な世界観があって、いろんな幅広さもあって。「キングダムハーツ」の曲は、下村さんでないとっていうものですよね。
――下村さんは曲作りにおいて、和田さんから影響を受けたと思えるところはあるのでしょうか?
下村氏:どの作曲者の人でも、例えばクラシックだとショパンとかすごく好きなんですけど、それを聴いて分析して近づけるというのは、1度もしたことがないんですね。ただ、和田さんの曲を耳で聴いてそれだけ残るということは、絶対どこかに影響を受けているんだと思います……「影響を受けてこれかよ!」って思わないでくださいね(笑)。
――メドレーあたりは吹き分けが大変なのではと感じたのですが、実際に演奏する上でしんどいとか、辛いパートなどがあったのでしょうか?
和田氏:実はこのコンサート自体が、プレーヤーさんは体力的にかなり大変なんですよね。でも、皆さんお好きだから、すごく積極的にやってくれて。吹奏楽ではあまりないタイプの曲が多いので、びっくりしたというか、「こういうタイプの曲なんですか!」というのはありましたね。でもそれも、シエナ・ウィンド・オーケストラさんとしても刺激になったのではないでしょうか。
下村氏:もともとはバイオリンの早引きのところをサックスでやってもらったりしてますからね(笑)。
――来年にはワールドツアーがありますし、「キングダムハーツ」も15周年を迎えるということで。今後の展望をお聞かせ頂けますでしょうか
下村氏:長いシリーズになってくれて。私は長くこの仕事をしてきても、シリーズもので続けて曲を作っていくというのはなかったので。それだけに思い入れもあって、特別なタイトルと思っています。今後もいろんな人の、ゲームファンのみなさんの期待を裏切らないような曲を作っていけたらと思います。
ワールドツアーについては曲はだいたい固まってきて、和田さんにも引き続きお願い頂ければと考えています。ぜひ、生のオーケストラで、今回とも違う響きを楽しんで頂ければと思います。
ちょっと先ですけどワールドツアーも聴きに来て頂いて! ゲームも遊んで頂いて!いつになるかわからないけどサントラも買って頂いて! これからも、いっぱい「キングダムハーツ」の世界を堪能して頂ければと思います!
――ありがとうございました。
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以下にセットリストを掲載しておりますが、今後の公演にいかれる方でネタバレを避けたいと言う場合は見ないようにご注意ください
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【セットリスト】
<第一部>
Destati
Dearly Beloved
Traverse Town
Hand in Hand
Journey of KINGDOM HEARTS(フィールドメドレー)
Lazy Afternoons
The Other Promise
Another Side
<第二部>
Gearing Up ~Shipmeisters' Shanty~Blast Off!
Destiny's Union
The Unknown(メドレー)
Musique pour la tristesse de Xion
The Power of Darkness(ボスバトルメドレー)
March Caprice for Piano and Orchestra
アンコール
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