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稲船敬二氏に聞く「ReCore」の魅力
日本の魂を盛り込んだギミック山盛りのアクションシューター
2016年6月18日 04:28
日本でも9月15日に発売が決定したXbox One/Windows 10向けアクションアドベンチャー「ReCore」。ご存じ日本を代表するゲームクリエイターのひとりである稲船敬二氏が開発に携わったアクションアドベンチャーである。基本的なゲームコンセプトを稲船氏率いるComceptが担当し、実際の開発はArmature Studiosが行なっている。
Armature Studiosは、任天堂傘下のゲームスタジオRetro Studiosの元スタッフらによって設立された独立系のゲームスタジオで、Retro Studios時代の代表作は、「メトロイドプライム」シリーズ。独立後は、「Metal Gear Solid HD Collection」を皮切りに、「Batman」や「Injustice」、「Borderlands: The Handsome Collection」など、様々なメーカーのタイトルを手がけた実力派のスタジオである。本稿では「ReCore」のインプレッションと、稲船敬二氏へのインタビューの模様をお届けしたい。
和洋両方の良さを兼ね備えたアクションシューター
今回、Xboxブースでは、「ReCore」のほぼ完成版に近いバージョンをプレイすることができた。「メトロイドプライム」を筆頭に過去に手がけた海外タイトルのエッセンスを随所に感じさせつつ、それでいて稲船氏がこだわる日本的なテイストも混ざり合った和洋混在の独特の味わいが好印象だった。
プレーヤーはヒロイン ジュール・アダムスとなり、ロボット型のパートナー“Corebots”と共にファクトリーのような巨大な拠点の中に潜入していくことになる。
基本は、3D空間でシューティングゲームのように雨あられと降り注いでくる敵の弾を目視で回避しながら、敵を小まめにロックオンして射撃したりチャージ弾を浴びせていくタイプのアクションゲームだが、基本アクションに2段ジャンプと、空中ダッシュという、2Dゲーム的なエッセンスも盛り込まれており、基本アクションがすでに楽しい。
敵への攻撃も単に銃撃とチャージ弾だけではなく、4種類の属性(カラー)が設定されており、デジタルパッドに割り当てられているカラーを敵と合わせる事でダメージを底上げできる仕組みになっている。バトルフィールドには様々なカラーの敵が存在するため、ロックオンする敵の属性によってその都度カラーを変えながら攻撃していく感じが、純粋なアクションゲームとして楽しい。うまく遊ぶ楽しさがあり、これこそ日本のゲームだという手応えが感じられた。
また、主人公と共に戦ってくれるCorebotsは、AI操作で自動で戦ってくれるだけでなく、攻撃対象を指定するなど細かく指示を出すこともできる。今回は、操作に慣れるのに精一杯でとてもそれどころではなかったが、Corebotsを上手く駆使しなければクリアできない場面も多そうで、二人三脚のアクションゲームとなりそうだ。
稲船敬二氏インタビュー「ただの洋ゲーじゃない。日本の魂も入っている」
――改めて「ReCore」の基本コンセプトを教えて下さい。
稲船氏:世界観が独特なものにしたかったんですね。今どのゲームを見ても、どのキャラクターを見ても、ムキムキのオッサンが活躍するゲームばっかりじゃないですか。全部が血まみれになるゲームばっかりで、そういうのとは違うゲームが作りたかったんです。女性キャラクターを主人公にしたのもそうだし、ペットみたいなロボットを連れているのもそうです。バトルの部分でリアリティから外れた、結構乱暴な部分はあるんだけど、そういう存在がいることによって和むじゃないですか?
――そうですね、このペットロボットも稲船さんも発案ですか?
稲船氏:そうです。ロボップといって、自由にカスタマイズできるキャラクターを作ろうと考えていたんです。
――この着想はいつ頃からあたためていたのですか?
稲船氏:あたためてはないですね。Armature Studioとどんなゲームを作ろうかと話したときに、地球が滅亡して荒れ果てた世界のゲームを作りたいというところから始まって、ではどういうものにする? というところで出てきたアイデアのひとつです。
――想定しているゲーマーのターゲットはどのあたりですか?
稲船氏:ティーン向けです。若い層のゲーマーが楽しんで貰えるようにしたいというのと、日本のゲームのファンなんだけど、日本のゲームはおもしろくないよねという人。「ReCore」は日本のテイストもあるんだけど海外のゲームで、日本でゲームを作るとよほど上手く作らないとバカにされるところがあるので、日本のゲームが好きな海外のファンに楽しんで貰えるようなゲームにしたいと思いました。
――「ReCore」というタイトルの由来はなんですか?
稲船氏:コアの入れ替えという単純なところですけど、できるだけシンプルなものにしたくて、タイトル見ただけでなんとなくわかるという、このゲームが大事にしているのがコアだということがわかるようにしたかったんです。
――「ReCore」はステージクリア型のアクションゲームなんですか?
稲船氏:ステージクリア型というよりは、新しい世界がどんどん拡張されていくという感じですね。そのために開けなきゃいけない扉、倒さなきゃいけないボスがいるので、それをステージクリアと言ってしまえばステージクリア型のゲームですけど、世界はシームレスで繋がっているので、ステージクリアで「はい、次ー」という展開にはならないですね。
――稲船さんが考える、「ReCore」に埋め込んだ日本的なテイストとは何ですか?
稲船氏:色々ありますが、アートの部分なんかは、「Gears of War」などとは違うということがわかって貰えると思います。このゲームはフォトリアルを追求はしていません。でも、アニメにもしていません。アニメ調にしちゃうと今度は遊び手を選んでしまうからです。日本のゲームが好きな人しか遊んでくれなくなっちゃうので。アニメ調に振り切らずにちょうどいいアートの落ち着かせ方というのが僕らの担当だったので、やはり画面上に出てこないと伝わらないので、そこは何度もArmatureとやりとりを繰り返したところです。
――「ReCore」はマルチプレイには対応していますか?
稲船氏:マルチは入れていません。シングルプレイで遊ぶゲームです。ゲームが好評であれば、そういった希望にも応えられる設計にはしています。
――「ReCore」はリリース後にダウンロードコンテンツの発売は何か予定していますか?
稲船氏:そこについてはまだ明確に何も言えません。ちょっと契約上、いろいろ規制がありますので(笑)。
――「ReCore」は日本では日本マイクロソフトが販売する形になりますか?
稲船氏:そうですね、ファーストパーティーのゲームですので、日本マイクロソフトさんがパブリッシャーになります。
――日本展開する際に、どのようなアピールをしていきたいですか?
稲船氏:「ただの洋ゲーじゃないよ」というところですよね。世界観とかアクション性とか、単なるシューターではなく跳んだり跳ねたりできるアクションゲームなので、このテイストが好きな日本のゲームファンは多いと思います。そういった部分をアピールしていきたいですね。
――このゲームはXbox OneとWindows 10の両方に対応したXbox Play Anywhereタイトルです。この両バージョンの仕様に違いはありますか?
稲船氏:特にありません。両者はハードが異なるので同じになるようにしようといままさに調整しているところです。今回はPCで出していますけど、同じように出せるようにXbox One版をチューニング中です。
――ということは開発はWindows版が先行だったんですね。
稲船氏:そうですね、最初からそうでした。Windows版を出すということは決まっていました。
――それは今回発表されたXbox Play Anywhereが動き出す前から決まっていたということですか?
稲船氏:そうですね、最初からPCで出すということで開発がスタートしました。でも、それって海外では割と普通の事ですよ。それをXbox Play Anywhereに対応させるか、つまりXboxとPCに作ることは最初から決まっていて、それが繋がるかというのは後から決まった話ですが。
――稲船さんが考える、このゲームの注目して欲しいポイントとはどのあたりですか?
稲船氏:世界観に浸って欲しいですね。それはストーリーを追って欲しいという意味ではなくて、この世界観の中でプレイして欲しいなと。ストーリーがどう、シューターとしてどうではなくて、総合的に新しい体験ができるゲームになっているので、ぜひそこを遊んで欲しいですね。
――「ReCore」のシナリオも稲船さんですか?
稲船氏:シナリオの元となった部分を我々が書きました。それをMicrosoftのスタッフが膨らませていった感じです。
――「ReCore」の世界観は、マンガやアニメなどでサイドストーリーを楽しむことはできますか?
稲船氏:そういうのはないですね。このゲームだけです。
――ゲームのボリュームはどれぐらいですか?
稲船氏:このゲームは販売価格が40ドルなんです。
――フルプライスより少し安いですね。
稲船氏:そうなんです。60ドルのフルプライスでも、20ドルのダウンロードタイトルでもないんです。パッケージタイトルだけど40ドルという設定なんです。だからといってボリュームがないかというとそんなことはなくて、クリアするのに10時間から15時間は掛かりますし、すべてを集めていたら何十時間も掛かります。
――集めるとは何を? コアをですか?
稲船氏:色んなものです。ロボップをカスタマイズできるので。コアではなく、そのコアの周りを取り囲むものですね。ロボットのイヌとかもこれだけじゃないです。その辺をすべてコンプリートしようと思うと、かなり遊べますよ。安くしてあるのは戦略的な部分で、ティーン向けに作っているので、あまりお金持っていないゲームファンでも手に取りやすくするためです。
――このゲームのコンペティターとなるのはどういったゲームでしょう?
稲船氏:見当たらないですね。最近はどこのメーカーもこういったゲームは作っていないんじゃないかな。よく比べられるのが「スターウォーズ」ですよね。主人公は「スターウォーズ」のレイに似てるとか、ロボップはBB-8に似ているとか、設定をパクったんじゃないのって(笑)。僕らは「スターウォーズ」を発表する前にこれを出してますからね。それは去年証明していますからね。たまたま一緒になっただけです。よく比べられるのは「スターウォーズ」ですね。「スターウォーズ」好きな人はきっと好きです。
――このE3出展バージョンから3カ月後の発売に向けてどういった部分を磨いていくつもりですか?
稲船氏:バランスや処理のチューニングですね。E3でみんながプレイしている様子を見られるので、自分らが思っているよりも簡単なのか難しいのかなんかをちゃんと見ようかなと思っています。
――最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
稲船氏:ただの洋ゲーではないので、日本人にも凄く入りやすいゲームになっていると思います。僕らが作っていて、日本の魂も入っているのでぜひその辺も見て貰いながら、食わず嫌いにならず遊んでみていただきたいなと思います。
――ありがとうございました。