【特別企画】

EVOJ2024「鉄拳8」部門レポート! 発売後の初の大規模大会。シリーズ最新作でも日本VS韓国の激闘が継続!!

【EVO Japan 2024 presented by ROHTO】

会期:4月27日~4月29日

会場:有明 GYM-EX(ジメックス)

 昨年に引き続き、日本で大規模格闘ゲーム大会「EVOJAPAN 2024」が開催された。この1年間で格闘ゲーム界には有名タイトルの新作リリースが行われ、昨年とは開催タイトルも大きく様変わりした。具体的には「鉄拳8」、「ストリートファイター6」、「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」と、昨年のメインタイトルの続編がメイン種目に挙げられている。また長く沈黙を続けていた「UNDER NIGHT IN-BIRTH」の新作「UNDER NIGHT IN-BIRTH II Sys:Celes」、昨年から継続して選出された「THE KING OF FIGHTERS XV」、「GUILTY GEAR -STRIVE-」、そして30年に渡りプレイされて続けてきた「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」がメイン種目に選ばれ、多くのプレイヤーを驚かせるラインナップとなった。

 本稿で取り上げるのは、2015年から長く続いた「鉄拳7」の新規ナンバリングタイトルの「鉄拳8」である。約9年ぶりの新たな「鉄拳」は、“アグレッシブ”をテーマに前作から大きくゲーム性を変化させた。特に新たなシステムである「ヒートシステム」では、強力な打撃技を繰り出せる「ヒートスマッシュ」や特定の攻撃をキャンセルし相手に向かって高速で突進する「ヒートダッシュ」により、大逆転劇が起こることも少なくない。プレイヤーも観客も一瞬たりと気が抜けないゲームになっている。

 そして本大会の「鉄拳8」部門では、今作がリリースされた2024年1月から数えて約3カ月後という、格闘ゲームとしては発売間もないタイミングでの開催となった。つまり「現状で『鉄拳8』が最も強いプレイヤーは誰か?」を決める、初代王者決定戦という大きな意味合いを持つ大会でもあるのだ。

 前作とは全く違うゲームへ変貌した「鉄拳8」では、普段格闘ゲームに関心のない人々にまで「まるで主人公に立ちはだかる新たな強敵が現れた漫画の展開のようだ、こんなことが現実にあるのか!?」という衝撃を与えた前作のパキスタン旋風のように、また新たなスターが誕生するのか? それとも歴戦のくぐり抜けてきた、過去作でも実績を残してきたプレイヤーが今作でも健在であることを証明するのか? その結果を本稿でお伝えする。

【Day 3 Center Stage | EVO Japan 2024 presented by ROHTO】

新作ならではのお祭り感! 名プレイヤーの異種格闘技戦が予選プールで発生

 「鉄拳」といえばもはや欠かせない話題となったのが、パキスタン勢の存在だ。2019年のEVO Japanにて、当時は無名で完全にノーマークであったパキスタン人のArslan Ash選手が優勝し、その優勝インタビュー内で「パキスタンには自分と同等、それ以上のプレイヤーが存在する」という旨の発言をし、「鉄拳」界のみならずゲームコミュニティを越えてSNS上などで衝撃を与えた。今大会では完全新規タイトルとなる「鉄拳8」でもその実力が見してくれるのかと期待されていたが、残念ながら出国関係の問題で参加はできないという結果だった。

 だが、新作リリース直後の大会ならではの話題はそれだけではない。普段は「鉄拳」シリーズをプレイしている機会を中々見られないプレイヤーの対戦も今大会では散見された。

 例えば初日の予選プールの配信台では、主に「ソウルキャリバー」シリーズや「恋姫演武」にて活躍しているプロゲーマー神園選手と、「鉄拳」界でキング使いとして名を馳せているプロゲーマー太平洋の暴れん坊氏の対決となった。

カメラに向けて視線を送る神園選手と……
太平洋の暴れん坊選手
神園選手は本作からの新キャラクター麗奈を使い、ベテランのキング使いである太平洋の暴れん坊選手を追い込んでいくが、最後はヒートダッシュを絡めた連続技で敗戦。筆者はよく「ソウルキャリバー6」のランクマッチにて神園選手と対決していたが、主戦場とするタイトル以外でも高い格ゲースキルに驚かされた一戦だった

 また、その後には「ドラゴンボールファイターズ」にて国内・世界を問わず1強状態と言われていた日本のプロゲーマーGO1選手のライバルとして激戦を繰り広げたアメリカのプロゲーマーSonicFox選手が登場。「ドラゴンボールファイターズ」にて操作の難しいキャラも難なく使いこなす彼らしく、対戦で見かける機会はそう多くないテクニカルなザフィーナを使いこなして勝利を収めていた。

展開の早い「ドラゴンボールファイターズ」でも高水準の反応速度を誇っていたSonicFox選手。この対戦ではリリの下段攻撃のアルトロデオをしっかりしゃがみ防御して、すぐさま確定反撃を当ててKOするという、熟練のプレイヤーでも困難な行動をしっかりこなしていた

 大会2日目には選手として、また様々なストリーマーとのイベントで活躍している関西のプロゲーマーどぐら選手が配信台に登場した。現在どぐら選手は主に「ストリートファイター6」をプレイしているが、「鉄拳」シリーズの経験も長く、方向キー操作が非常に難しい今作屈指のテクニカルキャラクターであるデビル仁を使用していた。

カメラに気づいた瞬間ビシィ! と指差しアピールをするどぐら選手。流石のエンターテイナーだ
デビル仁のヒートスマッシュはモーションの酷似からか「サイコクラッシャー」と呼ばれることもある。「生駒デビル」という名前で「ストリートファイター」シリーズでベガを使っていたこともあるどぐら選手が、デビル仁でもベガの必殺技に似た技を使用しているのは格ゲー好きの方ならばニッコリしてしまうシーンではないだろうか?

過去作でもおなじみの日韓対決の黄金カードが実現した予選ROUND3、知名度がまだ低いプレイヤーの躍進も光る。生き残るのは誰だ!?

 予選ROUND1、2では他タイトルを主戦場にしたプレイヤーの多芸な活躍が多く見受けられたが、予選が進むにつれてそのようなプレイヤーも惜しくも力尽き、最終日への椅子6つを争う戦いには主に歴戦の「鉄拳」プレイヤーが並ぶ構図となった。

 そんな予選ROUND3で、全鉄拳プレイヤーが注目するような黄金カードが実現した。

 日本最強プレイヤーに挙げられるプロゲーマーチクリン選手VS鉄拳がお家芸と言っても過言でもない韓国において長年頂点に君臨し続けるプロゲーマーKNEE選手という決勝戦のカードでもおかしくない両名の対決が予選の時点で実現したのだ。

画像左がチクリン選手、右がKNEE選手
KNEE選手といえばブライアンというキャラクターに定評があるが、この試合では現在の段階で最強キャラクター筆頭の呼び声高いドラグノフを選択。彼は前作「鉄拳7」のランクマッチで最高段位である「鉄拳神・滅」を全キャラクターで到達するというとんでもない偉業を達成しているため、ブライアン以外のキャラクターも高い練度で操ることができるのだろう。弘法筆を選ばずとはこのことかもしれない

 高い防御スキルに定評があるKNEE選手に対して、果敢に攻め込むチクリン選手のリリ。特にリリが相手に背を向けた状態からの攻撃が良く機能してドラグノフに大ダメージを与えて1試合目を制す。

 だが、2試合目ではKNEE選手も高い防御スキルでチクリン選手のリリに確実にダメージを与えていく。そのため3ラウンド目では「鉄拳8」では珍しいタイムアップ直前までもつれる大接戦が発生した。

「鉄拳7」では頻発していたタイムアップ決着だが今作では滅多にない。その理由は新システムのヒートシステムが非常に強力な攻めを構築できたり、防御手段として優れていたバックステップの距離の弱体化などが挙げられる。そんな今作で残り時間1桁まで気が抜けない攻防が行われたのはこの2名のレベルの高さ故だろう

 続けての4ラウンド目。KNEE選手が大幅な体力リードを残したままリリの体力を残りわずかにまで追い詰めるが、そこでリリのトリコロールの3段目のみがカウンターヒットしてしまう。今作では体力が少ないと「レイジ状態」という攻撃力がアップする状態となり、レイジ状態であったチクリンのリリはさらに今作からの新システムである「ヒート状態」を使用。コンボダメージと技性能を向上させ、一気に反撃に転じる! 結果として先程まで大差だった体力差が一瞬で縮まった。

 それでもKNEE氏のドラグノフは致命傷を防いでいたが、リリの放ったフッキングヒールが刺さり、神対神とまで実況に評された日韓対決は、チクリン選手の勝利で幕を閉じた。

最初はここまで大差が開いていた両者の体力だが、たった1発の打撃技のヒットから一瞬でここまで差が縮んでしまった。今作の逆転性の高いゲーム性を証明するシーンだ
このラウンドも残り時間1桁まで長い攻防が続いたが、最後はKNEE氏がフッキングヒールに被弾し、チクリン選手の勝利となった。最後まで息詰まる攻防が2ラウンド続けて起こるという、今大会のハイレベルさを象徴するシーンの1つだ

 また、古豪は決して韓国だけではない、アメリカを代表する鉄拳プレイヤーJimmy J Tranのスーパープレイも光るものがあった。対戦相手は昨年のEVO Japan 2023「鉄拳7」部門にて準優勝の経験があるMeo-IL選手だ。

 Jimmy J Tran選手というとあまり馴染みがないかもしれないが、「鉄拳」シーンを追いかけている方ならMr.Napsという名前をご存知ではないだろうか。彼が現在は本名で活動していることを筆者は初めて知った。アメリカを代表するブライアンのスペシャリストである。

 Meo-IL選手は昨年はギースを使用していたが、「鉄拳8」には参戦していないためか、本作の新キャラクターであるヴィクターを使用していた。

 こちらも強豪対決となったわけだが、そこでJimmy J Tran選手が鉄拳最高難易度テクニックとも称される「挑発ジェッパ」というテクニックでヴィクターに大ダメージを与えた瞬間は実況者と同じタイミングで筆者も絶叫してしまった。

これが挑発ジェッパが炸裂した瞬間。ブライアンは挑発というポーズを取る固有アクションがあり、このポーズで膝を上げたときに相手にガード不能の打撃で一定時間大幅に有利フレームを得ることができる。そのポーズをキャンセルしてジェットアッパーを叩き込むのが挑発ジェッパである。ただし、この操作難易度は非常に高く、筆者が何時間もかけても成功しなかった超高難易度テクニックを目の当たりにして思わず声を上げてしまった

 この様に古豪プレイヤーの活躍がトーナメントが進むに連れ目立つようになったが、決して気を吐いていたのは古豪プレイヤーだけではない。ダークホースもしっかり存在していた。例えば初日ではクウェートで活躍するシャオユウ使いのYOREDZ選手が日本の強豪プレイヤー加齢選手を撃破して大きな衝撃を与えた。

 また、バーレーンからの参戦となったTEKKENMASTER選手は今月リリースされた追加キャラクターであるエディ・ゴルドを使い最終日最後の椅子をかけ2日目最後のトーナメントまで勝ち上がる。しかし韓国のCHANNEL選手とManja選手に敗れ、惜しくも最終日にバーレーン流のカポエイラで魅せることは叶わなかった。

初日予選プールにて日本の強豪、加齢選手のアズセナを撃破するYOREDZ選手。突然の新スター登場を予感させるものだったが、惜しくも最終日まで生き残ることはできず。いつ終わるかわからない連携を繰り出し続けるスタイルは目を見張る物があった
4月にリリースされたばかりのDLCキャラクター、エディを使いこなしていたTEKKENMASTER選手

 過酷な2日目の日程が全て終わり、優勝者を決める3日目に駒を進めたのは、下記の6名であった。

・ウィナーズ側
DRX | Infested選手(韓国)
DRX | LowHigh選手(韓国)
THY | チクリン選手(日本)
DRX | CHANEL選手(韓国)

・ルーザーズ側
ダブル選手(日本)
Mangja選手(韓国)