インタビュー
「PsychoBreak」ディレクター三上真司氏インタビュー
三上氏が考えるサバイバルホラーの世界観、その醍醐味について聞く!
(2013/4/30 00:00)
米大手ゲームパブリッシャーBethesda Softworks(ベセスダソフトワークス)の元で開発されていた三上真司氏の最新作「Project Zwei」が、ついに「PsychoBreak」として正式発表された。発売は2014年を予定し、現在SCEとMicrosoftが準備を進めているいわゆる次世代機への展開も視野に入れて現在開発が進められている。
今回三上氏は、プロジェクト全体を統括するプロデューサーではなく、開発現場のトップとなるディレクターという点も注目ポイントのひとつだ。4月に日本で実施されたジャパンプレミアで、三上氏自身によるデモンストレーションの模様はプレビュー記事として掲載したが、本稿では三上氏本人に、「PsychoBreak」の魅力について聞くことができたのでたっぷりお届けしよう。
三上真司氏が考えるサバイバルホラーの世界観、その醍醐味について
――正式タイトルの発表おめでとうございます。まず「PsychoBreak」についてですが、このタイトルにはどういった意図が込められているのですか?
三上氏: 「PsychoBreak」は“サイコ”という言葉通りの狂ったクレイジーな世界を作りたかったのです。その世界をユーザーが“ブレイク”して打ち破っていくサバイバルホラーの世界観です。
――すでに海外メディアが取材を終えたということですが、彼らの反応はいかがでしたか?
三上真司氏: デモを見て、期待以上だったという評価を頂きました。
――日本と海外でタイトルが異なる理由は何でしょうか。
三上氏: 本社の意向で海外番の「The Evil within」というタイトルが先に決まりましたが、日本人にはどうにも分かりづらい。日本は違うタイトルを考えても良いかといったところ了承が得られました。本当は統一されればよかったのですが。ジャパンメイドにも関わらず日本人に読めないタイトルはどうなのと思ったのです。
――今回もゾンビらしきものと戦っていましたが、敵は何者なのでしょうか?
三上氏: こういうものですよというものは設定は内部的にはありますが、特にそれを明かすということはしたくありません。世界全体のテーマとしてシナリオは「サスペンス」ではなく、「ミステリアス」な感じにしたかったのです。特にチームのメンバーと話しましたが、「わかりやすい」、「なるほど感」は要らないよねという話になりました。敵であったり、ボスであったり、この世界がなんであるかということに触れる際に「なるほど、なるほど」と進めていける世界ではなく、何が何だか分からない巻き込まれ方のパターンを徹底しようと思いました。
――短いデモの中に4つも5つも謎があって、解消されるどころかどんどん謎が増えていくような感じで。
三上氏: なるほど感を出さないようにしたいと。なるほどって納得した時点で1つのピリオドになってしまう。新しい事実が出てきてなるほどだったら良いのですが、逆に筋が通らない。
――なるほど、登場人物が長々と話をして謎を解明するようなカットシーンもいらないだろうと?
三上氏: カットシーンはそれほど必要ではないですね。演出として必要な場合はカットシーンを含みますが、インゲームとシームレスな作りになっています。ぷつっと切られることによる没入感を邪魔する表現を極力排しています。
――今回はライティングやシャドーなど怖さのあぶりだし方の表現が突き抜けていました。これは三上さんが求めていたものでしょうか。
三上氏: 僕自身がかなりホラー性の強い物を求めていたのと、スタッフの思いも混ざり合ってひとつの形になったと思います。
――今の表現には満足されていますか。
三上氏: 今の段階では満足しています。しかしやらなければならないことはたくさんあります。各セクションのデザイナーのレベルではまだまだ全然やり足りないということはたくさんあります。
――導入シーンは、タランティーノ作品のような印象を受けました。
三上氏: タランティーノはまったく意識していないんですけどね(笑)
――デモ後半のバトルシーンは、「ウォーキングデッド」を彷彿とさせましたが。
三上氏: 「ウォーキングデッド」は僕にはヒットですね。以前のインタビューで、ドラマシリーズの1が多分面白いから2は観たくないと言ったと思います。結局見てしまいました(笑)。おもしろかったです!
――2012年はあのインタビュー後に、「The Walking Dead」のゲームがヒットしましたよね。遊ばれましたか?
三上氏: あれは真っ先にインストールしました。ただ、全部英語版だったので、会話などがさっぱりわかりませんでした(笑)。
――ゲームを楽しむところまでは行けてない感じですか?
三上氏: いえ、それでも演出や流れはすごくよくできています。言葉が分からなくてもそれはわかりました。
――「The Walking Dead」はアドベンチャーゲームでしたが、「PsychoBreak」はデモで見た限りでは、バリバリのシューティングアクションだったので意外だなと思いました。
三上氏: いえ、「PsychoBreak」はバリバリのシューティングアクションではありません。ホラー性の高いシーンと戦闘を交互に繰り返すように作っています。割ととらえ方が人により異なるかなと思います。
――というと、ホラー性の高いシーンでは、アクションばかりではなく、謎解きやパズルのようなものもあるわけですか?
三上氏: あまりたくさんはありませんが用意されています。僕自身パズルはそんなに好きではないのですが。
――プロデューサーの木村さんはストーリーにもこだわっていると発言されていましたが、この意図は?
三上氏: 一般的なホラーでは登場キャラクターが死んでしまって、それが怖かったりするわけですが、「PsychoBreak」では、誰が生き残るかわからないような死亡シーンの入れ方をしているのですが、もう少し一緒に生き残ろうとしている状況での仲間達を魅力的に感じて欲しい、好きになってほしいと思っており、力を入れています。
――今回仲間は何人くらいですか。
三上氏: はっきりとは申し上げられないです。最初に3人で乗り込みます。そこから足したり引いたりみたいな。落ちに繋がってしまうので、ネタバレは悪いかなと。
――現実世界から異世界に飛ぶような演出が目を惹きましたが。異世界を取り入れたところが驚きました。現実世界から異世界に飛ぶような演出はおもしろいと思いました。
三上氏: 設定の事は申し上げられませんが、現実に起こることは当たり前のことが多くて、自由なシチュエーションや自由な表現がしたかったのです。突然敵に囲まれたり、突然違う場所に飛ばされてトラップだらけだったりするといった奇想天外なシチュエーションが欲しかったのです。ゲームをしていて「アレ!困る!どうしよう」となるのが1つの狙いですし、表現的にもカットシーンが無くリアルタイムで変化していくところに面白味があると思います。