Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
「GGS」は毎年開催。好調を維持する台湾大手の次の一手を聞いた


2月収録

会場:Gamania本社



 日本法人を置く数少ない台湾メーカーであるGamania Digital Entertainment。今年もTaipei Game ShowのタイミングでGamania本社を訪問し、今年サービス開始を予定している新規タイトルの取材と、GamaniaグループCEO Albert Liu氏のインタビューを行なってきた。

 新規タイトルでは、今年サービスインを予定しているPlayCooの最新作となるWindows用MMORPG「ドリームドロップス」と、「ドリームドロップス」のモバイル版をはじめとしたスマートフォン向けのタイトルをいくつか取材することができた。また、毎年恒例となっているGamaniaグループCEO Albert Liu氏にも今年の戦略について話を伺ってきた。



■ 2011年はグループ全体で20%成長。課金通貨「GASH+」が追い風に

Gamania Digital Entertainment CEO Albert Liu氏
2011年9月に台湾台北市で開催されたGamania Game Show
台湾のファミリーマートのプリペイドカード売り場。見ての通り「GASH+」は販売していない

編: 2011年のGamaniaグループの状況はいかがでしたか?

Albert氏: 全体でいうと、去年は70億元(約182億円)の売上があり、2010年比で20%の成長を達成しました。新しいチャレンジもできて、良い1年になりました。

編: 新しいチャレンジとは?

Albert氏: Gamania Game Show(GGS)を初めて開催し、成功できたことです。評判が良くて効果もあったので、ぜひ今年も開催しようと思っています。ただ、台湾だけで見ると、去年1年は、売上が成長ができず横ばいでした。香港と日本が20%の成長で過去最高の売上を達成してくれたのが成長の要因です。

編: Gamania以外に目を移すと、2011年はXPECやX-Legendが上場するなど、台湾のゲームデベロッパーが元気な印象がありますが。

Albert氏: そのとおり。成長できてないのは大手企業ばかりで、台湾のオンラインゲーム業界そのものは賑やかになっています。ただ、Gamaniaも課金プラットフォームの「GASH+」などの分野では成長できました。XPECやX-Legendが上場したことは我々にとっても嬉しいし、彼らをパートナーだと考えています。今後は提携もあるかもしれません。

編: Userjoy、Funyours、Chinese Gamerなど、台湾のメーカーが日本でも見聞きする機会が増え、台湾のオンラインゲームが日本でも見直されている印象がありますが、こうした動きについてどう見ていますか?

Albert氏: 弊社のコンテンツだけでなく、台湾で制作しているコンテンツが日本に受け入れられていることは嬉しく思います。

編: 2011年はGamaniaがSoftworldを抜いて台湾で売上トップになったと聞きました。

Albert氏: 台湾エリアのオンラインゲームの売上ではSoftworldを超えて1位になりました。ただ、単体では勝ちましたが、連結ではまだ負けています。成長要因は長期間かけて世界中に子会社を設立して、各地の数字も立ってきたことです。ずっと赤字だった韓国の子会社も、日本のブラウザゲーム「Web 恋姫夢想」のサービス開始によって黒字化が見えてきました。2点目は「GASH+」の成長です。台湾では「GASH」はチャネリングのコストが高くてなかなか利益が出ませんでしたが、今はすべてのコンビニの提携を止めて、「GASH+」として再スタートさせました。この決断は正しかったと思っています。

編: ちなみに台湾のコンビニがプリペイドカードの販売代行で受け取るロイヤリティは何%ぐらいなのですか?

Albert氏: NDAを交わしてるので正式には言えませんが、台湾地域のコンビニチャネルコストは非常に高いです。もちろん日本よりも。「GASH+」はすべて自社で販売することにしたので、利益率が上がりました。「GASH+」のロイヤリティは言えませんが、コンビニより安いのは確かです(笑)。「GASH+」はオンラインショップと、コンビニ以外の店舗で販売しています。ネットカフェ、家電ショップ、宝くじ屋などです。

 コンビニのチャネルコストが高いのは、今のようにインターネットが普及する前は、プリペイドカードやクライアントを買うのはリアル店舗でやるのが普通だった時代から手数料が変わってないためです。現在では明らかに不合理なので、手数料を値下げしてほしいとお願いしてきましたが、聞き入れて貰えないので、2011年の1月からコンビニとの提携をすべて辞めて自社で始めました。今後、コンビニと提携する必要はないと思ってます。

編: 日本ではまだ「GASH+」というバーチャルマネーは販売されておらず、「GASH」という課金プラットフォームのみの提供ですが、日本展開についてはどのように考えていますか?

Albert氏: 日本市場でもやりたいです。日本のGASHはもともとはそんなに影響力がないので、やり方を考えながら展開していきたいです。



■ ハードコアMMORPG「Core Blaze」は2012年末から2013年の年明けにサービス開始

「Core Blaze」に期待を寄せるAlbert氏。今回の取材では時期尚早として取材は叶わなかったが、Gamaniaの期待作となるのは間違いないようだ
上がMMORPG「ドリームドロップス」で、下がそのモバイル版。モバイル版はシューティングゲームになっていて、MMOとの連動機能はないものの、無料で楽しむことができる

編: GGSで発表した自社製タイトルの状況はいかがですか?

Albert氏: GGSは海外からの反応が良くて、海外の媒体に次回開催について問い合わせが来ているので、毎年やることに決めました。次回は日本か香港でやる可能性が高いです。タイトルについてはスケジュールに変更はありません。今年の下半期から順次リリースされる予定です。

編: GGSで出展されたタイトルは、台湾内よりむしろ海外を意識したものが多いように思いました。特にここ数年は欧州展開に力を入れていますが、なかなか結果が出ない状況が続いていますね。欧州にこだわる理由は?

Albert氏: 現在の状況は、現地の運営チームの経験不足に起因していると考えています。売上も高くなく、その貢献度はわずかですが、欧米の運営チームは今のうちにたくさん経験を積んで欲しいと思っています。

編: 今のところ、欧米に向けのタイトルは限られていますが、具体的にどういった形で展開していくつもりですか?

Albert氏: そのとおり(笑)。確かに自社開発しているコンテンツに欧米向けのものは少ないですが、「Core Blaze」と「ラングリッサーシュヴァルツ」は欧米で成功させたいと考えています。欧米市場に関して、2つわかってたことがあって、ひとつはシミュレーションのWebゲームがヒットする可能性が高い。もうひとつはハードコアのMMORPGの可能性です。

編: というとハードコアのMMORPGを新たに作る?

Albert氏: それが「Core Blaze」だと考えています。「Core Blaze」は2012年の末から2013年の年明けにリリースしたいと考えています。ブラウザ用のシミュレーションゲームについては、北米で提携開発しているものがあります。それはHTML5で開発しており、それは完全に欧米向けです。

編: 「Core Blaze」に関しては欧米展開が最初ですか?

Albert氏: まずアジアでサービスを開始し、1番ベストな状態で、欧米に持ち込みたい。香港が最初で、次に日本か台湾でやります。アジアで成功できれば、欧米で成功できる可能性が高まるので。

編: Gamania開発トップのAlanさんは中東が有望だと言っていましたが、その他の新しい地域についてはどのように考えていますか?

Albert氏: 中東以外にも、いくつかの地域を重視しています。具体的にはロシア、東南アジア、ブラジルです。これらを重視する理由は、ゲーム市場の成長率が凄く高いことと、競合が比較的少ないことです。

編: 日本でも東南アジア地域に熱い視線が注がれていますね。

Albert氏: Gamaniaでも台湾、日本、中国で成功したコンテンツを東南アジアで展開していくことを考えています。インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナムなどです。新規タイトルについては、まだ予定はありません。理由はまだ正式に進出することを決めていないからです。進出が決まれば、現地に特化したコンテンツを開発していくことになると思います。

編: 日本発ブラウザゲームのグローバル展開についてはどのように考えていますか?

Albert氏: 「Web 恋姫夢想」の日本での成功によって、グループ内で関心が高くなりました。現在海外展開は韓国と香港で、今後、欧米で展開していくことを考えています。現在開発中のそのほかのどれを最初にリリースするか、日本といま話し合っているところです。「Web パワードール」や「Web ファントムブレイブ」などは日本でリリースしてから、台湾を含む、その他の地域でリリースしていく予定です。

編: 台湾発のブラウザゲームは?

Albert氏: 自社開発を進めています。台湾オリジナルです。詳細はまだ発表できませんが、シミュレーション系のゲームです。

編: 「SUB CAT」、「GU MORNING」など、Gamaniaのソーシャルゲームやモバイルゲームのほとんどは無料サービスでビジネスになっていませんが、今後どうしていくつもりですか?

Albert氏: もちろん課金することも考えていますが、正直にいうと、これまでのモバイルコンテンツの成績はそれほど良くないので、課金しろという圧力は与えたくないです。Gamaniaのモバイルコンテンツはまだまだなので、無料ゲームで経験を積んでからやっていきたいと考えています。まだ、マーケットを理解する段階だと捉えています。

【Core Blaze】
Albert氏が一押しとして上げてくれた開発子会社REDGATEが開発しているオンラインアクションRPG「Core Blaze」。Albert氏はサービス開始時期について2012年末から2013年の年明けとはじめて踏み込んだ発言を行なった



■ 今年も海外展開を拡大、登山活動も継続

「日本のユーザーは厳しい意見をキチンと伝えてくれるから好き」というAlbert氏。今後も日本市場を重視する姿勢はかわらないようだ
CEO室には登山時に使う防寒具とスキーセット一式が飾ってある

編: 2012年の目標、抱負を聞かせてください。

Albert氏: 今までと同じで、自社タイトルが、展開しているマーケットで、現地に受け入れられること、安定して運営できることです。戦略的にはガマニアをグローバル企業に成長させていくことです。

編: 個人的にはどのような目標を立てていますか。最近は登山や自転車で台湾一周したりしているそうですね。

Albert氏: 今年の個人的な計画は2つあります。1つは若者と一緒に自転車で台湾1周すること。それも様々な理由で学校に行ってなかったり、両親のいない子と一緒に走りたいです。それから山登りも続けていきます。台湾には3,000メートル級の山が300個もあって、有名な山が100あるが、生きてる間にこの100個の山をすべて制覇したいと思っています。今年は3~8個の山を登るのが目標です。

編: 1度聞いてみたいと思ってましたが、なぜ危険な冒険を趣味にしているのですか?

Albert氏: 実はようやく去年、自分なりの答えが出せました(笑)。現代人は何でもある中で生活を送っているので、それが当たり前だと思ってしまいますが、実際はそうではないですよね。この何でもあるのが当たり前というのは、企業経営の部分から見ると、非常にダメな状態です。チャレンジする心が養われない。ですから、苦労して山を上ったりすることで、今後の成長に繋がるパワーを育てることができると考えています。

編: 私も旅好きなので共感できる部分が多いです。今年、日本法人には何を期待していますか?

Albert氏: 実は浅井にも同じ事を聞かれたばかりです(笑)。浅井に伝えたことは、日本市場は世界規模のゲームマーケットのひとつなので、グループ全体が成長する中で、もっと日本の割合を高めていってほしいということです。今は台湾が70%、海外30%ですが、今後は台湾が30%、海外70%ぐらいにしたい。70%の30%ほどをガマニアジャパンが占めていってほしいと思っています。

編: 日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

Albert氏: Gamaniaグループにとって日本市場は年々重要度を増しています。なぜなら日本のユーザーは意見を言ってくれるからです。ですからGamaniaグループのコンテンツが日本で支持されるのは何よりも嬉しいことです。Gamaniaのコンテンツをこれからもよろしくお願いいたします。


【台湾と日本】
Gamaniaは台湾本社と日本法人で驚くほど方針が異なる。台湾本社は、依然として韓国NEXONタイトルが主力なのに対して、NEXONタイトルをサービスできない日本法人は、日本発のブラウザゲームを軸に独自路線を歩んでいる

(2012年 2月 17日)

[Reported by 中村聖司]