インタビュー

「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏「パッチ3.2」ロングインタビュー

「態勢が整ったら『ザ・フィースト』の公式大会を開催したい」

「態勢が整ったら『ザ・フィースト』の公式大会を開催したい」

中央の円形に近い部分のみを使う4対4マッチのステージ
8対8マッチのステージでは周辺の段差があるエリアも使う

――対人コンテンツの「ザ・フィースト」についてお伺いします。トレーラーにも出ていますが、あれは新しいステージですか? 段差があったりして、以前よりも広くなっているように見えましたが。

吉田氏: あれは、実は4対4と8対8のバトルを両方動画に入れてしまっているので、そう見えるのです。段差があるのは8対8だけです。今回は2隻の船の間に渡しをつけてバトルステージにしているという考え方で、8対8の時には“パドル”が浮上していて、4対4の時には“パドル”が海中に沈んでいるという状態です。中央には視線切りのための壁がいくつかあるので、円形に見えますが、さほど気にならないと思います。

――「ウルヴズジェイル」では、円形のステージをぐるぐる鬼ごっこするようなことがありましたが、今回のステージでは違った形になりますか?

吉田氏: 「ザ・フィースト」では、スプリントを全ジョブでTP消費なしに使えるようになっているので、“逃げる”という先述も当然アリですが、逃げるよりも味方にカバーして貰う局面の方が多くなると思います。

――今回、4対4と8対8がありますが、レーティングマッチを4対4にしたのは、組みやすさを重視したからですか?

吉田氏: バランスの取りやすさ、マッチングまでの時間、固定のチームの作りやすさ、などが理由です。また、1チームの人数が多いと、偶発性が多くなりすぎるのでプレーヤーのスキルの差が出しにくく、スポーツライクな対人戦ではあまり好まれません。時流的には3対3か4対4なのですが、「FFXIV」はライトパーティが4対4なのでその数字という考え方です。

――今は対人スキルが記憶できずに、ジョブを変えるたびに設定しなおす必要がありますが、ああいったところには調整が入るのですか?

吉田氏: ジョブ毎のPvPアクション取得状況のセーブ機能は、サーバーの拡張課題のひとつとして現在も検証中です。パッチ3.2ではテキストコマンドでPvPアクションリセット、PvPアクションのセットなど、マクロ化できるようにテキストコマンド対応を行ないました。マクロを組んでいただく手間があるので、未だ面倒だとは思いますが、まずはマクロ化してスイッチしていただけると助かります。この先も使い勝手向上は課題ですので、改善を続けていくつもりです。

――今回からレーティングも入って、かなりe-Sports的になっていますが、今後どういった展開を考えていますか?

吉田氏: まずはプレーヤー人口の拡大が最優先で、観戦やデュエルリストなどの準備ができ次第、オフィシャル大会を運営していこうと考えています。チャンピオンもシーズンごとに決まりますし、そのあたりを利用してイベントの中でも日本一決定戦みたいなことはやっていこうと思っています。

――オンラインで予選をやって、どこかの会場で本戦をやるような大会ですか?

吉田氏: そうですね。今、残りの要素として開発しているのが1対1でテストや練習ができる“デュエルモード”と、パーティを組んだ状態で、相手を指定してマッチングする“カスタムマッチ”、試合の“個人観戦モード”と、“公式放送モード”になります。公式放送モードは試合をわかりやすく中継できる専用のモードになる想定で、仕様策定がほとんどできています。これらの準備ができ次第、大会の実施に向けて本格的に動く予定です。

――どのくらいのスケジュールになるのですか?

吉田氏: これら機能は「3.X」シリーズ中には揃える予定で進めています。

――それが全部揃ったら世界戦みたいなものを開くのですか?

吉田氏: 世界大会をやるためには、スポンサーも必要になりますので、水面下で色々な話はさせていただいています。

――例えばBlizzardの「オーバーウォッチ」のように、これはe-Sportsですという売り方をしていくのですか?

吉田氏: いいえ、そこまで全面的に押し出すつもりはありません
「FFXIV」はMMORPGです。やはり、PvPのみに特化して全コストを掛けられるわけではないので、じっくりと準備をし、長く遊べるように、そして何よりもプレイ人口を拡大し、定着させることが最優先です。

――今後、「ザ・フィースト」ばかりプレイするプレーヤーも現われると思いますか?

吉田氏: 今でも僕のリアル友人は、ずーっとシールロックにいたりしますので、もちろんそういう人が増えてくれるのは大歓迎です(笑)。PvE装備は最低限禁書だけ集めているみたいです。今後はPvPだけを無料で体験できる、PvPフリートライアルも試してみたいと漠然と思っています。ただ、これはまだ妄想の段階なので、まずはゲームを練り込んでいくことが最優先ですが。

――それは「ザ・フィースト」だけが遊べる無料体験版ですか?

吉田氏: ザ・フィーストやシールロックなど、PvPコンテンツにしか入れないけど、任意の1ジョブをレベル60にでき、最低限のPvP装備が渡されている状態で遊べるというイメージです。PvPから遊んで貰い、興味を覚えたら、アカウントを購入し、月額課金をしてPvEコンテンツも遊んで貰う。今のご時世、MMORPGの人口を爆発的に増やしていくのは非常に困難です。ですので、色々なルートでエオルゼアに入って貰うことを模索しています。これも新しい試みかな?と思っているところです。しかし、先ほどもお話ししたとおり、これはまだ僕が車を運転しているときにふと思い付いたレベルで、開発でも協議すらしていないので、まずは仕様を明確化するところからですね(笑)。

――先ほど言われたものがすべて3.X中に実装されるとすると、大会などの展開が本格的に動くのは2017年からですか?

吉田氏: そのあたりからやれたらいいなと思います。もう中途半端はやめようと思っていて、必要なものはキチンと揃えてしっかり準備をして実施しようと思っています。MMORPGをプレイする方のPvP特性、あとは「FF」というものから入ってきた方のPvP特性が「シールロック」まででかなり見えてきました。シールロックはいまでも毎日うまくマッチングが回っていて、「フロントライン」ではシールロック系のルールが、一番安定性が高いと分かりました。フロントラインの新コンテンツも既に次の制作に入っていますが、シールロックの流れを汲む企画になっています。大規模戦はシールロック路線で作り続けていこうと思っています。

――PvPだけでも楽しめるゲームになりそうですね。

吉田氏: もちろん、PvEにもこれまでとは違った新コンテンツの制作を進めていますので、両輪どちらでも楽しめる、を目指していきたいと思います。

――今後、PvPだけでなにかマネタイズを考えておられますか?

吉田氏: いいえ、今のところは考えていないです。

――「League of Legends」ではキャラクターのスキンを変えたりなど様々なアイテム課金を用意していますが、そういうニーズにはどうやって答えるのですか?

吉田氏: PvPから入って、PvPのみプレイしていく中で、おしゃれ装備が欲しいとか、装備の色を変えたいということであれば、月額課金していただいて、モグステーションから、カララントなどをご購入いただければいいかなと。

――なるほど、そういう意味ではもう実装されているということですね。

吉田氏: そうですね。おしゃれ装備もミンフィリアのコスプレで戦いたいなら、それを買っていただければいいし。

――本格稼働が楽しみですね。

吉田氏: 時間をかけてしっかりやろうと思っています。「ザ・フィースト」はかなり時間をかけて制作してきましたので、じっくり取り組みます。

インベントリ拡張のためのサーバー増強はすでに始動ずみ

ハウジングエリア拡張は「3.X」シリーズで、インベントリ拡張のためのサーバー増強もすでに準備に入っている

――ハウジングですでに発表されているサーバーの増強はいつ頃になるのですか?

吉田氏: ハウジング関係のゾーンの増強はいまのシリーズの中でやります。「3.3」では土地も増やしますし。それ以外も、できるだけ早期を目指してマンションタイプの個人宅も準備しています。

――家具の設置数が増えるのですね。

吉田氏: 家具の設置数はどのタイミングにできるか精査中です。マンションタイプの実装もそうですが、「FFXIV」全体のインフラの増強をさらにしようとしていて、アーマリーチェストやインベントリに持てるアイテムの数を増やすための作業が、本格的に始動しています。かなりの金額の投資ですが、必要だと判断しました。とはいえ、これだけの規模で運営しながらインフラを増強するのはすごく大変なので、プレーヤーとサーバーの通信量が爆発的に増えるアーマリーチェスト周りや所持品枠の拡大は今少し時間を頂きます。

――データセンター内のサーバーの数を倍にするとか、ラックを増やすとか、そういう感じなのですか?

吉田氏: ある程度の数のサーバーは物理的に追加になりますが、基本的にはサーバーに使用しているハードの性能を大きく上げる、という考え方です。データセンター内のインフラでもっとも高コストになるのが、ラックの土地代です。性能の低いPCは安く買えるのでたくさん購入してもイニシャルコスト(初期費用)を押さえられますが、サーバーをたくさん並べると、それだけ土地面積が増えて、月々のお金がすごくかかるのです。だったら、1回に掛かる投資は大きくなりますが、マシン性能をあげてサーバー台数を大きく増やさず、サーバーを置くラック数を減らしたほうがいいわけです。一時的な出費はありますが、長い目で見るとそのほうが安定したサービスを長くご提供することが可能です。すでに進行していますが、みなさんの大切なデータを壊してしまわないように、テストも時間をかけて慎重にやらなければいけないのでもう少しお待ち下さい。

――インベントリやアーマリーチェストも増えるのですか?

吉田氏: はい、今回の増強でそれも可能になる予定です。今でも他のMMORPGに比べれば、持ち運びできるアイテム量はかなり多い方ではありますが、今後のジョブ追加を考えても、今の数ではもう限界だと思っています。

 第1世代のMMORPGは着替えるためにバンクや倉庫まで移動し、そこで荷物の整理をしていました。月額課金のMMORPGは時間を消費してもらわないと継続的にお金を落としてもらえなかった。「エバークエスト」では、魔法を唱えるため、スペルブックに新しい魔法を登録するたびに15分ぐらいの時間が必要でした。あの時代は、それも世界観やリアリティのひとつだったんだと思いますが、これだけゲームが氾濫する時代では、即冒険にでかけるためにも、“待ち時間”は極力減らすべきなんだと思います。

――時代が変わりましたね。

吉田氏: はい。でも、それが“進化”ということでもあります。だから、やるしかないですね。ハウジングもそうですが、皆さんからいただいた利益を、しっかり皆さんに還元するという形で、サーバーを増強していくつもりです。

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(中村聖司/石井聡)