コーエーテクモ、PS3/Xbox 360「DEAD OR ALIVE 5」
Team NINJA&セガAM R&D 2スペシャルインタビュー!
先日公開されたトレーラームービーより。「バーチャファイター」シリーズから「サラ」の参戦が明らかにされた |
株式会社コーエーテクモゲームスは、プレイステーション 3/Xbox 360格闘エンターテインメント「DEAD OR ALIVE 5」を9月27日に発売する。価格は通常版が各8,190円、コレクターズエディションが11,340円。今回は「バーチャファイター」シリーズからの参戦キャラクター「サラ」のインプレッションと、Team NINJA&セガAM R&D 2のスペシャルインタビューをお届けする。
3D格闘ゲーム史上に残る“奇跡のコラボ”ともいうべき「DEAD OR ALIVE 5」への「バーチャファイター」のキャラクター参戦。その当事者に直撃インタビューを敢行すべく、6月某日コーエーテクモゲームス市ヶ谷事業所にお邪魔した。インタビュー前に「DEAD OR ALIVE 5」最新版がお触り可能といわれ、しかもE3バージョンにはいなかった「サラ」が動くとのこと。「こりゃもう、やるしかないでしょ!」と、僭越ながら一足お先にプレイさせていただいた。
会議室に設置された大型液晶TVでまじまじと拝見する「DEAD OR ALIVE 5」版サラは、なんというか、こう……実に“艶っぽい”。先日配信が開始されたPS3/Xbox 360「バーチャファイター 5 ファイナルショーダウン(以後:VF5FS)」版サラのスポーティさとは好対照というか、個人的には相当ツボ。コスチュームの自然なフィット具合は「素晴らしい!」のひとことだ。
持ちキャラではないうえに、人様の前で偉そうに口に出せるほどやりこんでいるわけではないのだが……一応インプレ的なことをお伝えできればと、広報氏から指導を受けつつ筆者なりにがんばってみた。先日購入した「VF5FS」と比べても、操作感はほとんど一緒。一部技のフレームなどは「DEAD OR ALIVE 5」向けに調整されているはずだが、そのあたりもキャラクターのテイストを損なわないよう細心の注意が払われていることがコントローラーから如実に伝わってくる。基本操作と干渉するコマンドはさすがに変更されているが、それ以外で「本家でやれたことが全然できない」といったことはないはず。研究すれば「DEAD OR ALIVE 5」版サラ限定コンボが見つかるかもしれないが、それはそれで面白いと思う。
今回のバージョンは14キャラクターが実装されていたが、最終的には20キャラクター以上を予定。ステージ数は15以上で、それぞれデンジャー(本シリーズ独自のシステムで、ステージ中の仕掛けにハマったキャラクターに大きなダメージを与える)の有無が選択可能。相手を任意の方向に飛ばせる“パワーブロー”は、PS3/Xbox 360「NINJA GAINDEN 3」収録の体験版から条件とコマンドが変更されており、筆者がプレイしたバージョンでは体力ゲージが半分以下の状態で、各キャラクターごとに異なるコマンドとパンチ・キックボタン同時押しとなっていた。
パワーブローで飛ばす方向は、方向キー入力で調整できる。最初は「どちらに飛ばせばいいか判断するには、ちょっと短すぎないか?」と思ったが、ステージ構成が頭に入ってくると意外と狙える。ただし「あれ、どっちに飛ばせばいいんだっけ?」など一瞬でも躊躇すると間に合わない。
クリティカルバーストについても、念入りに調整されている様子がうかがえる。相手に一定以上のダメージを与えるとゲージにインフォメーションが表示され、その間にキャラクターごとに異なる特定の技をヒットさせると「相手をよろけさせた状態」にできる。念のため「確実にコレを狙える状況は発生しえるんですか?」と質問したところ「表示が出ている側もホールドが狙えるため、読み合いになります」とのこと。
クリティカルバースト状態の相手にパワーブローを叩き込むと、各ステージ固有のド派手な演出が挿入される。例としては、戦場ステージは吹っ飛ばされた相手が空中の戦闘ヘリに激突するといった具合。オススメをうかがうと、E3で海外のユーザーに大好評だったというサーカスステージ。クリティカルバースト時、パワーブローで巨大なピエロのある方向に相手を飛ばすと、吸い込まれた直後に人間大砲でズドン! と打ち出されるという実にコミカルな演出が見られた。手足を揃えてすっ飛んでいくキャラクターの姿は、なかなかシュールだ。
【スクリーンショット】 | ||
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■ Team NINJA&セガAM R&D 2スペシャルインタビュー!
ここからは、タイトルにあるとおりコーエーテクモ「Team NINJA」とセガ「AM R&D 2」、両社開発陣によるスペシャルインタビューをお届けする。お越しいただいたのは、コーエーテクモからはプロデューサーの早矢仕洋介氏とディレクターの新堀洋平氏、セガからは第二研究開発本部スペシャリストの片桐大智氏、同じく第二研究開発本部アシスタントチームマネージャーの羽田隆之氏。「DEAD OR ALIVE」と「バーチャファイター」シリーズのファンはもちろん、興味がある方はぜひぜひご一読願いたい。
● セガ「登場するコラボキャラクターは、凄く妥当な人選」
早矢仕洋介氏 |
新堀洋平氏 |
片桐大智氏 |
羽田隆之氏 |
――今回のコラボ企画を打診されたとき、セガ側はどのように思われましたか?
片桐大智氏(以下:片桐氏):まず、コラボ企画というか。新しい「DEAD OR ALIVE」を作っていますということで……突然ですよね? きていただいたのは(早矢仕さんを見て)。
早矢仕洋介氏(以下:早矢仕氏):そうですね(笑)。
片桐大智氏(以下:片桐氏):こちらにいらっしゃるので「ちょっと会ってください」くらいのテンションですよね? そのときにお会いしたら、もう2体キャラが動いて……。
――えっ! もう実装したものを持参されたんですか!?
早矢仕氏:いえ、こんな感じのことをやりたいよね、っていうテスト映像を作って、見ていただいたんです。
片桐氏:「あっ、『DEAD OR ALIVE』だ!」と思っていたら、色々とダイナミックに動く何か、壊れる何かがあって「何か、凄いことになっているな!」という映像を最初に見せていただきました。
――今回のキーワード“格闘エンターテインメント”、デンジャーの新しい要素なども既にプレゼン映像に入っていたんですね。
片桐氏:そこをまず強調してお話されていました。今回はエンターテインメントを強く出していく、キャラクターについても今までとテイストを変えて、という話は当初からうかがっていました。
早矢仕氏:うちの部署でも、Xbox 360「DEAD OR ALIVE 4」でこのシリーズはいったん終わりだ、というような空気があったんです。これ以上、どうやっていいのか。どう格闘ゲームを進化させていいか正直わからなくて。月日が経ってきて、色々なゲームが出てきてるなかで「やっぱり『DEAD OR ALIVE』を作りたいよね」っていう話が内部であった。
でも、ナンバリングを名乗れるゲームって、どうしたらできるんだろう? というのを模索するなかで、見た目はエンターテインメントなんだけど、しっかりしたファイティングゲームを作れるんじゃないか。それは「『DEAD OR ALIVE』として“正しい未来”じゃないのか」と、作ってみようと動き出したんです。
――リアリティとエンターテインメントの破天荒さは、二律背反するようにも思われますが?
早矢仕氏:そうですね。他の格闘ゲームが行っていない方向だと思いました。「DEAD OR ALIVE」ならやっていいでしょ! と。我々の得意分野。そう思ってやっていましたね。
――そんな作品が突然「頼もう!」みたいな感じでやってきたわけですか。
片桐氏:「確かに、そうでしたね!」っていう話をさせていただいて(笑)。そのときに「できればコラボを」という話で、もうキャラクターも「このキャラクターをぜひ使いたい!」と……。
――わらべ歌の「あの子が欲しい」みたいに?
早矢仕氏:指名しました(笑)。
――正直、どう思われました? こちらの要望をきく前に……とか?
片桐氏:いやいや、そんなことはないです。恐らく「出すと言ったらこういう人選だろうな」というのは押さえていただいていた。
羽田隆之氏(以下:羽田氏):凄く妥当な人選、ご指名だなというのは当初から感じました。
片桐氏:「DEAD OR ALIVE」であれば女性キャラクターも欲しいだろうし、そのなかの主人公格というか、人気どころはサラだろうと。「ですよねー!」っていう感じでした。
――セガさんも、当然そこは稟議にかけられると思うんですけど。
羽田氏:いや、そういうお話でしたら是非! っていう(笑)。
片桐氏:キャラクターの決定については、異論は特にありませんでした。「あぁ、『アイリーンとかではないんだな』とは思いましたけど。でも妥当なところを選んでいただいたな、というのが第一でしたね。
――ユーザーさんって凄く贅沢ですから、最初はゲストで驚いても、すぐ次に意識がいってしまうじゃないですか。ゲストじゃなくて“バーサス”とか。コラボの話を聞いたとき「ゲストじゃなくてバーサスでもいい」とは思われませんでしたか?
片桐氏:やることについては、どこのタイトルに対しても可能性は全然否定しません。どことどんな形をやるのかは色々想像していたので、これもひとつの形だろうなと思います。
早矢仕氏:気をつけていたのは「クロスタイトル」ではないこと。「DEAD OR ALIVE」のゲーム性のなかに、この人たちが出てきたらどうなるか。「DEAD OR ALIVE」でも「バーチャファイター」でもない別のファイティングゲームを作ろうという気はなかった。「DEAD OR ALIVE」の“遊び”のなかにきてもらう。先ほどのアイリーンの件も、各IPを最初から背負ってきたキャラクターに出てもらいたかった、というのがあります。「アイリーン」は、ディレクターとしては出したかったようですが(笑)。
新堀洋平氏(以下:新堀氏):かわいいな、出そうかな! でもまぁ、確かにそう(だめ)だよね、って(笑)。
――ちなみに新堀さんの「バーチャファイター」の持ちキャラは?
新堀氏:エル・ブレイズです。
早矢仕氏:歴史を背負っているという感じではない(笑)。
新堀氏:あと「鷹嵐を出そうぜ!」とか。そういうのは全部却下されました(笑)。
――そのへんは最初に結構揉まれるんですよね?
早矢仕氏:うちも格闘ゲームが好きなスタッフが多いので、結局自分の持ちキャラをあげてくるんです(一同笑)。アキラはわかるけど、自分は使えないからアキラじゃなくて……とか。そんな感じでした。
新堀氏:本当に楽しく作っています。変な話ですけど、休み時間にテストプレイしていると「DEAD OR ALIVE」のキャラじゃなく「バーチャファイター」のキャラばかり使われている。みんな、うちのかすみちゃん忘れてませんか!? とか(笑)。
――今作については、セガが全面監修されているんですよね?
片桐氏:そうです。動き、キャラクターの見た目、ちゃんとチェックさせていただいています。
羽田氏:そもそも、キャラクターのモデルやモーションのデータなどの素材をお渡ししているんです。落とし込む際に多少アレンジしていただいていますし、格闘部分についてはギャップがありますので、そこの埋め合わせはその都度行なわさせていただいています。
――かなり頻繁にやりとりが行なわれているんでしょうか?
新堀氏:ちょっと何かできたら、すぐ。実機を持ち込んで「触ってください!」、「見てください!」と。
羽田氏:本当に、何度も。密なときは週2回、時期的には毎週のときもありましたよね。
片桐氏:それこそ土日の朝から晩まで、時間に関係なく色々ご足労いただいて……。
早矢仕氏:「大鳥居(セガ所在地)に夜8時からチェックです」とか。今からいってきます! って。「今からいくんだ!」みたいな(一同笑)。
羽田氏:僕らも「遅い分には大丈夫です」って、そういうお話をさせていただきましたから(笑)。
――業界的に、朝か夜かといわれれば夜ですよね。その様子だと、日々進化する様子をご覧になられていたわけですね。セガ側としては、我が子じゃないですけど……我がキャラクターが跳ね飛ばされ、ヘリにぶつけられ、というシーンを目の当たりにしていたわけですが。その印象は?
片桐氏:最初に「だいぶ『DEAD OR ALIVE』色が強いなぁ」という状態を見せていただいて「凄くわかるんですが、ここだけは譲れないんでお願いします」と何度か意見させていただきました。かといって「バーチャ色」になってしまってもいけないので、両者のいいところを踏まえたやりとりを経ています。
たたずまいにしても、「DEAD OR ALIVE」の構えは結構動くんですけど、アキラはどっしり構える形でいてほしかった。他のキャラクターから浮くかもしれないけど、ここはちょっとおさえてくださいとか、そういった細かいところまで、それこそ「背中の角度が少し前かがみすぎる、もう少し(後方に)下げてください」とか、そういうところも含めて対応していただいています。
新堀氏:「バーチャファイター」のキャラクターなのに「DEAD OR ALIVE」にきたら「違う!」ってなると、ガッカリされますよね。そうならないように心がけながらアドバイスもいただいて、やっとここまで落とし込むことができました。
● 操作系などは、ほとんどそのまま持ってくることが可能
――最初にキャラクターが動いているところを見たとき、どんなふうに感じられましたか?
片桐氏:アバウトな話なんですけど、たとえば「バーチャファイター 4」が出たとき、ちまたで「『バーチャファイター 5』ができてるらしいよ!」っていう噂をよくきくんですね。実際できてるわけがないし「そんなの作れる人がいるんだったら、作って欲しいよ!」って(笑)。でも作ったらどうなろうんだろうな? って常々想像していたのが「ここにあった!」っていう感じ。
「バーチャファイター 5」の次、たとえばシステムを変えたとして、手触りはバーチャっぽいやつで、どんな感じになるんだろうな? と思い描いたものがここにあった! くらいの感動がありました。違うものなんだけど、でもやると納得できるものがそこにあった。それが今1番思っていることですね。
――変ないい方ですけど、2年後の自分を見たような?
片桐氏:そうそう。何かシステムをかえて「途中で割り込めるようにして作ったら面白くない?」、「そんな簡単にできないよ!」っていうのが、「おぉ、あるじゃないか! これは凄いぞ!」って(笑)。
――そんな、人事みたいに!
片桐氏:最初にパッと見たとき、チェックのときとかもそうなんですけど、人事のように思っていた(笑)。「ここもうちょっと軽いといいですよね」とかオブザーバー的なことをいうんですけど、実際プレイすると「……面白いぞコレ! ちょっと話をしててください、もうちょっとやってますから!」って、そんな感じ。チェックの人が夜こられていて「早く帰ったほうがいいんだろうな」というときも「もうちょっとやっていますから!」というくらいやらせていただいた(一同笑)。
羽田氏:E3出発直前で、凄く時間がないときだったと思うんですけど(笑)。
片桐氏:月曜日に発たれるっていうときに「サラが丁度できました」と。このコンボ、楽しいですよね! これは入りますよね! ってずっと遊んでました。
新堀氏:それを見て安心して飛行機に乗れたというか(笑)、大丈夫だなと。
――それで確信がもてた?
早矢仕氏:いや、開発スタッフみんな、本当によく頑張ってるよね!(一同笑)。いや、嬉しいです、ここまでいっていただくと!
――あれ、こういう話ってあまりされないんですか?
早矢仕氏:私、実は「格闘ゲームをあまり上手くなるな」という指令を受けているんです。「バーチャ」でいえば2段くらいまでで、「それ以上上手くなるな」といわれている。だから、あまり細かいところに入らせてくれないんです。上手くなると「上手くなりすぎた!」って怒られる。
――一般サンプルみたいな扱いを受けているんですか。
新堀氏:できれば5級くらいで止まってるほうがいい。勝手に上がっちゃうんで(笑)。「絶対、フレームとかいうなよ!」ってくらい。
――そういう用語を口にすることも許されない!?
早矢仕氏:新しいものが入ったとき、私が出せるかどうかで判断するんです。「早矢仕くらいのレベルが出せるなら」って。酷い扱い方ですよ、プロデューサーの(一同笑)。います? バーチャチームでそういう役割の人って(片桐さんを見て)。
片桐氏:正直、今は上手い人がほとんどなので、それこそ触ったことがない他のチームの人たちに「ちょっと、すいませんけど……」とやってもらったりとか。あとは初めて入った人に「ちょっとこれ、上手くなるまでやってみて」と、どのくらいで上手くなるかサンプルをとったり、ということはしました。
早矢仕氏:大崎さん(「バーチャファイター5」シリーズプロデューサー)さんとか、上手いんですか?
片桐氏:大崎は全一とってるくらいのゲーマーなんで、あの人は。
――元スコアラーは多いですね。
片桐氏:多いですね。僕もまぁ、そこそこ……。
早矢仕氏:片岡さん(セガ第二研究開発本部 本部長)も上手いですよね?
片桐氏:片岡さん……はそっち側ではないです。一般人オーラ出してる(笑)。
早矢仕氏:片岡さんとは仲間意識がありますよ。(ゲームが)上手くないチーム(一同笑)。
――えーと、話を元に戻して、羽田さんはいかがでしたか?
羽田氏:途中の段階で何度か見せていただいたんですが、どこかのタイミングでスクリーンショット……「DEAD OR ALIVE」キャラとの対峙カットがあったんですけど、そこで「あぁ、凄く馴染んでるな!」って、そこを境に感じましたね。たとえばアキラのモデル単体でいうと、アレンジされている部分が新しく見えましたし。サラの髪の毛も、細くこまかくバラけるように見えている。今時というか「DEAD OR ALIVE」アレンジというか。
――以前、早矢仕さんにお話をおうかがいした際「操作系などは、ほとんどそのまま(『DEAD OR ALIVE 5』側に)持ってくることが可能」とのコメントがありました。逆に、そのまま持ってこられない部分などは、どのようなものがあったんでしょうか? コマンドがかぶるので、変えざるをえなかったとか。
片桐氏:きっとそれは凄くご苦労されていると思います。
新堀氏:しましたというか、まだしてて(汗)。アキラの技で「崩撃雲身双虎掌」があるじゃないですか。最初の1発目が3つボタンなんですけど「DEAD OR ALIVE 5」はタッグモードの交替コマンドがそれ。アキラとサラだけ交替できないということになるので「それはマズイだろ」と。じゃぁ、どのコマンドに何を入れればいいのか。たとえばP+Kは後ろ押しでもいいんじゃないの? とか、そういう組み換えをしましたね。サラのスイッチステップも丁度揉んでいるところです。
――ここはユーザーさんが1番気にされる部分でもありますよね。
片桐氏:今おっしゃったような状況なので、変えざるをえない。極力ユーザーさんに不利益がないような形でおさえたいですよね、というお話をさせていただきました。E3前に「サラ」をどうしようかという話になって「方向性としては、こんな感じで」とお願いしていあります。
新堀氏:コマンドは最終調整までどうなるかわかりません。なので、どう変わったか今言い切るのは……。1番いい落としどころの判断を通すのが先。技が少なければいいんですけど、一杯コマンドがあって……。
――これを変えると、これが押し出される、とかありますよね。こっちに元々設定してあったとか。
新堀氏:でも技の廃止は絶対にしない! って約束でやってます。あと、サラにはホールドがない。当身がないので、それをどうやって作ろうか。全部新たに作るのもいいけど「せっかくだから懐かしの技を入れたいよね」という話になったので、相談させていただきました。
羽田氏:そこで「じゃぁ、こういうのがありますけど」とか。「バーチャファイター 4」で使われていた投げ技のモーションですとか、「バーチャファイター 5」を2バージョンくらい遡って「このへん、いかがでしょうか?」とお渡ししました。ですから「VF5FS」のアキラにはない投げ技が当身として復活していたり、サラであれば「フロントスープレックス」や「フォーリンエンジェルスロー」とか「バーチャファイター 4」に入っていた技が“とある段の当身”をすると、その技にシフトするというふうに作っていただいています。当身から自然にシフトしている。昔を知るファンも「あれっ!?」と目を見張るというか、ビックリしてもらえるんじゃないかと思います。
新堀氏:「フォーリンエンジェルスロー」が実は好きだったので……「あっ、きた!」って。
――それ、新堀さんは提案する側じゃないんですか?
新堀氏:「いただけたらいいな」ってものがそこにあった(笑)。
羽田氏:モーションデータも形式が昔のものだったんです。
片桐氏:「バーチャファイター 4」と「バーチャファイター 5」ではコードがちょっと違う。「バーチャファイター 5」のデータにはなってないですけど、お渡ししますという形。
羽田氏:ガイドくらいにはなるかもしれないですけど、って。「読んで解釈していただけるんであれば」と首をかしげながらではあったんですけど、お渡ししたらアッという間に形にしていただいて。
新堀氏:もう、楽しんでやらせていただいています。コマンドに関してはちょっと苦しんでますけど(笑)。
――アキラ三段とか、キャラクターを象徴するような技のコマンド変更は、色々と気を遣う難しいところですよね。
新堀氏:そうですね、そこは……申し訳ないですけど、やらせてもらうしかない。新しい、別のアキラとして楽しんでいただきたいです。
片桐氏:今回は「バーチャファイター」が「DEAD OR ALIVE」にお邪魔しているので、システムには干渉しないほうがいいだろうな、っていうのは思っています。お互いのゲームのキャラクターを使って別のゲームを作るのであれば「3つボタンでお願いします」という話もすると思うんですけど、コンセプトがそうではない。
● 「サラ」が選ばれた理由
――先日「サラ」の参戦が明らかにされました。アキラは「VF」シリーズを象徴するキャラだから説明不要として「サラ」が選ばれた理由はなんでしょうか?
早矢仕氏:「バーチャファイター」の女性キャラクターといったとき、1番みなさんがイメージするキャラクター。もっというと“タイトルを背負っている”というか、このキャラクターが出てくると、そのタイトルを即連想する。みんな主人公ですけど、「DEAD OR ALIVE」でも何人かだと思うし。「バーチャファイター」で女性キャラクターといえば、“サラ”だろうっていうのがありました。
細かい話をすると「DEAD OR ALIVE」にも金髪の女性キャラクターがいるので「それと被るんじゃないか」というのは提案する前に話があったんです。「金髪の女性キャラクターは止めたほうがいいんじゃないか?」。だけど、そこは違うだろうと。サラは金髪でくくれない。そういう名残があったので、E3のムービーでサラとティナを間違えるという。あれは現場のネタを元にしているんです。
新堀氏:間違えるわけはないんですけどね(一同笑)。
――そういう意味で、あてがいやすいのはザックだったのでしょうか?
新堀氏:キャラクター的にザックなら間違えてもいいんじゃないかって(笑)。
――まぁ、今のザックならだいたい何やっても許されるみたいなところはありますよね。ちなみに、現時点で明らかにできる他の「バーチャファイター」キャラクターは……いないんですよね?
早矢仕氏:いないです(笑)。
――「DEAD OR ALIVE 5」は過去シリーズ以上に“リアリティ”を重視しているのでしょうか? たとえば女性キャラクターの顔立ちなどは“かわいい”、“きれい”に“凛々しい”といった引き締まった感が強調されているように、男性キャラクターは力強さがより増したように感じられます。背景ディティールなども同様ですが、このあたりいかがでしょうか?
新堀氏:リアリティというよりは、その世界に人がいる存在感、空気感を重視しています。リアルという話にしちゃうと、何もデフォルメされていない、そういう印象になってしまう。あくまでもキャラクターはキャラクターだし、そのキャラクターが世界のなか、そこにいる。そういうところを描こうと思っています。
早矢仕氏:格闘ゲームで大事なのは、ステージとキャラクター。「バーチャファイター」でも、いつもあると思うんですけど、キャラクターが戦いづらくならないよう凄く気を遣うんです。ライティング……普通のゲームは光と影で立体感を出すんですけど、3D格闘ゲームは色々動くので、一方向からやると影がついて見づらくなる。「バーチャファイター」もCGスタッフとゲームデザイナーとの間で駆け引きがあると思うんです。
片桐氏:リアルにすると見づらくなる、見やすくするとチープになる。そのせめぎあいは、デザイナーと作る側で常にやっています。
早矢仕氏:ステージの存在感でいうと、戦いづらくなってはまずいですけど「立体感は、感じられなくてはダメだろう」っていうので、他の格闘ゲームと違って光の方向とかフォグなどをキャラクターの前にかけるようにした。従来であれば、キャラクターの手前にフォグがかかる格闘ゲームなんてないんです。それを今回やっているので、その存在感みたいなのはある。ただ、ちゃんと遊べるようにしよう!と、今も絶賛調整中なんですけど。
新堀氏:だいたい、自分が怒るんです。ちょっと油断すると「下段キックが見えないじゃないか!」って。そういう部分があると、格闘ゲームとして、ちょっと。
――そういう要素を、あえて利用しようとする人もいますよね。キャラクターエディットで色がかえられたりすると、保護色的に……。
新堀氏:ありますよね。暗いところだと足元が見えづらいとか、どうやってもでてきてしまう。そこを本当に見せようとすると、凄くチープになっちゃう。落としどころを見つけるのに四苦八苦、喧嘩しながらやっています(笑)。
――比率的には、どちら優先という感じなんでしょうか? 表現? ゲーム?
新堀氏:どっち、というわけでもないですね。ここはビジュアルが重要だからここまでOKとか。ここは本格的な格闘をやりたいステージだから、もう少し明るく見えやすくして欲しいとか、そんな感じですね。
羽田氏:凄く……よく聞く話ですね(片桐さんを見ながら)。
片桐氏:「あれ、自分のところの話をしている?」みたいな。ステージのコンセプトに声かけて「それだったら、コンセプト変えて、ここ真っ白にしろよ!」とか言っちゃいますよね(一同爆笑)。ステージがたくさんあったらバリエーションをつけなくちゃいけないので、すべてが均一だと面白みがない。じゃぁ、どっち? となると、先ほど仰ったとおりだと思うんですけどケースバイケースで「このステージは、こっち側を少し上げていこう」、「ここはもう、悪いけどそういう格闘をするステージだから、ここはこっちを優先してくれ」とか。
早矢仕氏:だいたいゲームをやると「あぁ、ここはコレだな」って。
片桐氏:「こういうふうに見せたいんだな!」というのが、なんとなくわかってもらえると思います。
――格闘ゲーム開発者“あるある”ですね。解決方法は会社ごとに違ってくるのでしょうか?
片桐氏:ディレクションで変わってくるんじゃないでしょうか。
新堀氏:基本的には“ゲームコンセプト”なんですよね。どういうゲームなのか、何が売りでどこを見せたいのか、というところ。より自然なことなんです。あとの細かいところは人によって微妙に判断が違うことはあるでしょうけど、そこはディレクター次第というか。お互いの立ち位置があって、本気で喧嘩しているので、そこにたやすい道はなく、ときには力づくで……(笑)。
――言葉尻だけ捉えられると、読者の方々に「おい、格闘ゲームの開発者って仲が悪いらしいぞ?」とか思われかねない発言で怖いんですけど……まぁまぁ、だいたい喧嘩しますし。念のため、仲が悪いわけじゃないですよね?
片桐氏:開発って、想いと想いのぶつけあい。喧嘩といっても取っ組み合って何かをするわけではないので(笑)。お互いのポリシーとか、そういったものがぶつかって、その結果を皆様にお届けするもの。それの繰り返しだと思います。
新堀氏:それぞれの想いと、手にとってくださるお客様を想像して「どうすれば1番いい形になるだろうか」と知恵を出していますね。
――リアリティを重視した背景には「VF」キャラクター参戦が関係しているのでしょうか?
新堀氏:それはないですね。我々も「DEAD OR ALIVE 4」を出してから時間が経っていて「次はどういうゲームを作ろうか」というなかで出した答え。「この路線でいくなら、こういうのもアリじゃないか」という順番なんです。
早矢仕氏:なぜ「バーチャファイター」のキャラクターに出てもらいたかったか、というと、“格闘エンターテインメント”というコンセプトを掲げたとき、軽い格闘ゲーム、本気で遊ぶというよりは派手な技を出すというゲームになるんじゃないか? と思われかねない点について「いや、違うよ。本物の格闘ゲームなんだ」と。「バーチャファイター」のキャラクターがきてくれるのは、その証明になってくれるんじゃないかというのがあったんですよね。
羽田氏:早矢仕さん、たとえば今回って「バーチャファイター」以外のキャラクターは検討にあがったりしたんですか?
早矢仕氏:それは、本当にしてないです。やっぱり「バーチャファイター」があったから「DEAD OR ALIVE」があるんです。セガさんから基板をお借りして、ぼくらはそもそも動き出したというのがある。動き出すとき「バーチャファイター」以外なかった。お世辞なしで、それが本当です。
● 今も絶賛調整中!
――格闘ゲームでは、キャラクターの性能差がよく話題になります。今回の場合、「バーチャファイター」シリーズのファンはアキラやサラに強くあって欲しいでしょうし、「DOA」ファンも同様かと思われます。このあたりバランス調整が難しい部分もあるのではないでしょうか?
羽田氏:そのあたりは、当初から新堀さんのなかで答えがありまして。ただ、ゲストなのでそれなりのインパクトは出したい、あまり凶悪に強すぎてもキャラクターが憎まれるし、ゲームとして成立しないというお考えはあり、それは最初にご説明いただきました。それであれば、もうあとはお任せします、というのが主なところです。ベースは「DEAD OR ALIVE 5」にのっかるわけですし、そのルールにのっとったうえで「バーチャファイター」のキャラクターがどういう位置になるかは、それ次第。新堀さんのお考えを貫かれれば、それがいいのかなと思います。
新堀氏:設計としては“誰が強いか”ではなく“どう使うか”で結果が変わってくるゲームを目指しているんです。アキラにはアキラの特徴があって、「DEAD OR ALIVE」のキャラクターみたいにPPPがたくさん出るのではなく、1発1発がしっかりしているキャラクター。攻守ともに特徴をいっぱい持っているじゃないですか。そういう個性をちゃんと生かしたい。テクニカルなんだけど、使いこなして「DEAD OR ALIVE」のキャラクターを倒すような、そういうふうに仕上げようと思っています。強すぎもせず、弱すぎず。……まぁ、ちょっと強いかもしれないんですけど(一同笑)。
――フレーム数とかそういう話になると、ある程度は強さとかそういう話になってしまうかと思いますが、いかがでしょう?
新堀氏:フレーム数は、ちょっといじってます。たとえば「DEAD OR ALIVE」のかすみの最速ジャブは9フレーム。それと戦うには、やっぱり肘も14フレームだとダメ。かすみの肘が11フレームで……「DEAD OR ALIVE」の基準が、だいたい12フレームなんです。
片桐氏:3フレームずつ早い、くらい。難しいですよね。
新堀氏:なので、一部の技……割り込みたいときの技が、ちょっと強くなっています。
――「バーチャファイター」側のキャラクター性能、フレームが総じて「DEAD OR ALIVE」によっているということでよろしいんでしょうか?
新堀氏:そうしています。あえて残しているものと、こうしないとダメだろうというものが、ちょっとだけ変わっている。しゃがみパンチなどは「バーチャファイター」側が、実は強い。ちょっと違う、もしかすると懐かしいアキラやサラに出会えるかもしれない。そこは若干いじらせていただいています。
――羽田さんなどは、そこは触って実感されたりしますか?
羽田氏:昔っぽいというよりも「バーチャファイター 5」の感覚で技が出せる。違和感はまったく……最初から全然なかったといっても過言ではないくらい。
新堀氏:基本的に、硬直差までなるべくそろえるようにしてあります。ただ、ゲームシステムの違いで「これはまずいな」というところは現在進行形で直しています。
――まだ調整が終わっていない段階で早計かもしれませんが、「DEAD OR ALIVE」仕様「バーチャファイター」キャラクターの印象はいかがでしょう? 戦い方がこう変わる、とか。
片桐氏:現状は「バーチャファイター」プレーヤーが触ったときにどうなるかという視点で見ているので、先ほども少しお話しましたけど「コンボはこれが入って欲しいよね」となったとき「これはいける」、「ここはちょっと違うんだ?」と。いけるところが7~8割あって、ちょっと違う部分が2~3割あるという感じ。違和感はあるけど、でもアキラだねっていうところには収まってる。まだひとりで動かしているだけなので「DEAD OR ALIVE」の戦い方……連携の途中で割り込んで、それを読んで投げて、というところの戦い方は、まだしていない。「どこまで変わるんだろなぁ」っていう想像しかない状態で、そこはもう凄く楽しみです。
新堀氏:次回は対戦しましょう!
――えっ! まだみなさんで対戦されたことはないんですか?
片桐氏:まだ「触ってください」と触らせていただいている状態。まずやれることは全部途中の段階なので、使うときの印象を優先しています。まず、技が気持ちよく同じように出せないと、対戦してもどこがおかしいのかわからない。そこは切り分けて考えていています。
――羽田さんは、そのあたり凄く気になるんじゃないですか? 元トッププレーヤーですし。
羽田氏:あの……寂しい話なんですけど……アキラとかサラは、僕あんまり扱えないんです(一同爆笑)。
――6月5日よりPlayStation NetworkとXbox LIVE Arcadeで「VF5 FS」の配信が開始されました。9月発売までに、コラボ記念で何か特別なイベントや配信などは考えておられますか?
羽田氏:具体的に決定しているものではないですけど……他媒体さんから話があります。今、動画配信が流行っているじゃないですか。小耳に挟んでいるレベルですけど、「VF5FS」と「DEAD OR ALIVE」はタイミング的に地続きな感じになっていくと思いますし。上手いこといくといいなと思っています。
――楽しくお話をうかがってきたんですが、そろそろお時間がきてしまいました。最後に、期待されているユーザーの皆様にメッセージをお願いします。
羽田氏:先ほどもお話させていただいたんですけど、新しいアキラやサラが味わえると思います。ゲームとしても、こういった“ガッツリとしたコラボ”は初めて。どちらのユーザー様から見ても興味深い内容になっているかと思います。私自身も、今後は新堀さんと対戦が成立するくらいになりたい(新堀さんから「なんでそんな卑屈になるんですか!」とツッコミが入る)。ぜひお手にとってください。
片桐氏:ほぼ羽田と一緒なんですけど、現状触らせていただいているアキラとサラは「バーチャファイター」プレーヤーが納得できる動き、手触りはもうできていると思います。ここから先はまだ私も見ていないんですけど「DEAD OR ALIVE」の世界、システムにのっとった戦い方をするとき、どういった形になるかユーザー様も楽しみにしていると思うんですよ。僕も凄く楽しみ。楽しみを共有しつつ発売日を待って、当日にポチるなり、買いにいくなり、それこそ深夜から並ぶなりして、まず手にとって速攻でやりましょう、一緒に楽しみましょう!
新堀氏:今回「バーチャファイター」のキャラクターがゲスト参戦して、できる限り忠実に再現、といいますか。「本当にアキラが動いている!」、「サラが動いている!」、そういう感覚になっていただけると思うんです。「DEAD OR ALIVE」を遊んだことがない「バーチャファイター」のプレーヤーさんにも、すんなり入ってもらえる。「バーチャファイター」で磨いたスキルを「DEAD OR ALIVE」に見せ付けられるというか。どういうふうに戦えば勝てるのか、みたいな。そういった腕の見せ所が、新しい舞台として用意されていると思います。「DEAD OR ALIVE」のプレーヤーは、自分が慣れたルールでバーチャ勢を返り討ちにする。私はそういうところを楽しみにしています。「DEAD OR ALIVE」プレーヤーはアキラと対戦していないと思うので「VF5FS」を購入して練習して「DEAD OR ALIVE 5」が出るまでに対策して、バーチャ勢力を返り討ちにして欲しいな、と思います(笑)。
早矢仕氏:「DEAD OR ALIVE 5」が9月発売、「VF5FS」配信が6月というのも、別に戦略的に仕込んだことではなく、お互いの会社が作っていたら時期が近かっただけなんです(笑)。何の戦略もないんです。「VF5FS」を今やっていただくと「DEAD OR ALIVE 5」でも自然に使えます……って、コレ最初から仕込んでたら凄い戦略なんですけど、我々ノープランできてて(一同爆笑)。
片桐氏:天が味方してくれましたよね。
羽田氏:あらかじめ決まっていたら、何かできることがあったかもしれない(一同笑)。
早矢仕氏:「DEAD OR ALIVE」新作も7年ぶり。なんでこんな近いタイミングで「VF5FS」が遊べるようになったのかっていうのも、いい意味で“導かれてる”なぁって感じがして。「DEAD OR ALIVE 5」でアキラやサラを初めて触る人が「VF5FS」をやってみよう! となってくれてもいいし、「VF5FS」をやりこんで「DEAD OR ALIVE 5」でいきなり強く……。
片桐氏:強くてニューゲーム、ですよね!(一同笑)。
早矢仕氏:ノープランのわりには、いい感じにきていると思います。予期せずいい方向に回っているんじゃないかと思うので、格闘ゲームファンには“熱い夏”を過ごしていただけるのではないかな、と思います。
――本日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。私も期待しております!
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(2012年 6月 28日)