「MHF フォワード.4」アップデートインタビュー

新体制の門出となる充実の内容。5周年イベントでは懇親会も?


5月23日 アップデート実施予定



「フォワード.4」メインビジュアル

 株式会社カプコンがサービス中のXbox 360/Windows用オンラインハンティングアクション「モンスターハンター フロンティア オンライン(MHF)」にて、大型アップデート「フォワード.4“荒天貫く閃晶の瞬き”」が5月23日に実施される。

 今回のアップデートでは、新モンスターとして「晶竜(しょうりゅう)」の異名を持つ海竜種「クアルセプス」が登場する。新たな種のモンスターということもあり、公開されているPVでもこの新モンスターが前面に押し出されている。この他にも、今回初登場となる「奇種」のモンスターや、新たな秘伝書関連のコンテンツ、さらには初心者に向けた各種の手厚いサポートなど、今回もさまざまな新要素が加えられている。

 恒例となっているアップデート関連インタビューでは、今回から「MHF」をまとめるプロデューサーとなった杉浦一徳氏に加え、アシスタントプロデューサーとなった宮下輝樹氏にも同席していただき、「フォワード.3」での反省点から、「フォワード.4」での施策、さらにはその先の5周年記念企画などについて語っていただいた。




■ 「MHF」チーム再編が進行中。「フォワード.3」の反省も活かす

プロデューサーの杉浦一徳氏
アシスタントプロデューサーの宮下輝樹氏

 まずは2月1日に行なわれた「フォワード.3」でのお話しから。運営側がアップデート後の大きな変化と感じているのはプレーヤーの動向で、従来はアップデート直後に人が集まる傾向があったものが、今回はアップデートから数カ月経ったにも関わらず同時接続数や1日のログイン数が落ちていないという。「フォワード.3」で実装されたデイリークエストやポイントボーナスなど毎日もらえるボーナスが効いているようで、杉浦氏も「オンラインゲームにおける安定感という点では今回は抜群」と上々の評価を与えている。

 しかしトラブルがなかったわけではなく、アップデート当初にはいくつかの不具合が発生し、これに対して運営としてどのように対応していくかが大きな課題となったアップデートだったという。この点については、不具合の数自体は普段のアップデートと比較して特別多いというわけではなかったものの、アップデート週というプレーヤーが最も盛り上がるタイミングで発生したことや、誰もが期待する目玉コンテンツで問題があったことなど、重要なタイミングやコンテンツで不具合が起こったことを反省しているという。

 その「MHF」の運営・開発を行なう東京制作部では、「フォワード.4」を前にして組織変更が行なわれた。これまで「MHF」を指揮してきた小野義徳氏がプロデューサーを離れ、杉浦氏が運営・開発を統括するプロデューサーに就いている。最近はソーシャルゲームなども抱えている杉浦氏は、「本当は『MHF』から離れるつもりだったのに、全部見ることになり大変です」と笑いつつも、「MHF」チームの組織改変を行ない、運営・開発を1つのチームとして組織し直すことで今以上にスピーディーに動けるようにし、さらにデバッグチームの強化も進めているという。また新コンテンツだけでなく、従来からあるコンテンツの見直しにも力を入れたいとしている。組織改変については4月26日に公開された運営レポート動画版でも語られているので、そちらも合わせてご覧いただきたい。




■ 「フォワード.4」は春のアップデート……なのに上級者向けコンテンツも充実

海竜種「クアルセプス」。天候変化により、光や雷を使い分けてくる

 続いて「フォワード.4」のアップデート内容について伺った。今回の目玉はやはり新モンスターの「クアルセプス」だろう。アップデート当日の5月23日から登場し、HR71の通常モンスターと、HR100からの剛種が用意されている。

 メインとなるフィールドは高地。「クアルセプス」は天候により攻撃パターンが一変するという特徴があり、晴れているときには太陽光を使い、雨だと雷などを使う。このため天候変化がある高地では、1つのクエスト内で両方のタイプと対峙せねばならない。宮下氏によると、「どちらかが楽というわけではなく、どちらも強い」という。取材時に実際の狩猟も見せてもらったが、体がかなり巨大で、尻尾も長くクセのある動きをする。体に付着した結晶を使ったユニークな攻撃もあり、晴れの時のタイプだけでも一筋縄ではいかない印象だ。「クアルセプス」は他にも樹海頂部と砂漠に登場する。砂漠では2頭クエストとなり、2頭が連携する攻撃もあるそうで、これまでの剛種クエストと比べてもかなり難しい部類に入るという。

 海竜種という新たな種である「クアルセプス」を今回の新モンスターに選んだ理由については、時期的に新規プレーヤーの呼び込みを狙ってインパクトのあるモンスターにしたというのが第1にあるという。その割に強めのモンスターになっているのは、1つは外見や新たな種であることを踏まえてのこと。もう1つは、今後の新モンスターは、HRが高めのプレーヤーを意識して登場させていくという狙いからだという。最近のアップデートではHRが低いうちから挑戦できる新モンスターが追加されており、新規のプレーヤーにはそれらの実装済みのモンスターで十分に新たな出会いを提供できると考えているそうだ。今後は既存のプレーヤーに新たな刺激を与えるという方向に舵を切っていくことになる。

 その他のアップデート内容については、基本的には新学生・新社会人を意識した新規プレーヤー向けのコンテンツが充実している。しかしそれとは逆行する形で、上級者向けのコンテンツである「秘伝書システム」にもかなりのコンテンツが投入されている。秘伝書を獲得しているプレーヤーの割合がかなり高くなってきたことと、秘伝書関連のコンテンツが薄いと言われていたことから、今回はあえてここにも力を入れたという。


赤を基調にした新たな秘伝防具はデザインもユニーク

 具体的には、新たな秘伝防具が登場する。作り方は既存のものと同じような形で、今までの秘伝防具とは違った遊び方ができるようなスキル構成になっているという。ただし秘伝防具の専用スキルは全て同じものが入っているので、既存のものと混ぜて使えるようになっている。

 また「マイミッション」という新たなコンテンツも導入。HR500以上で入れる新たな部屋ができ、そこにいる教官から様々なミッションを受けられる。SR500以上のハンター向けの「秘伝書育成ミッション」を達成すると、武具ではなくハンター自体が成長するという恩恵が受けられる。具体的には、武器倍率の上限緩和や、ダメージを軽減するものなどがあり、ミッションを達成することでその効果を開放していくという仕組みになっている。ミッションの数は武器種ごとに140種類あり、全てのミッションを達成するにはかなりのやり込みが必要なコンテンツとなっている。しかもミッションは次回「フォワード.5」でさらに追加するという。

 これに合わせて、「秘伝書コース」という新たな課金コースも登場する。「プレミアムコース」のSR版といった位置づけのもので、ミッションを免除するチケットがもらえるなど、秘伝書関連コンテンツの時間短縮を狙ったコースとなる。内容的には「アシストコース」と相性がよく、両方買うとダブル購入特典も用意するという。


ヘビィボウガンの進化武器で使える「爆撃弾」

 ほかに上級者向けのコンテンツとしては、ヘビィボウガンの進化武器が登場する。ライトボウガンと同じく専用の弾が用意されており、撃つと放射線状に飛んで行き、着弾した場所に火柱がしばらく上がってダメージを与え続けるといった新たなギミックが仕込まれている。これについて杉浦氏は、「ネタ出しに時間がかかって実装が遅れて申し訳ありませんが、その分だけ凝ったものになりました。ビジュアル的にも目立つし格好いいので、満足感が得られると思います。今後も実装を待っていてよかったと思っていただけるような、じっくり練りこんだものをご用意していきます」と述べた。

 アップデートはまだまだ用意されている。モンスター関連では、「錆びたクシャルダオラ」と「グレンゼブル」の特異個体が登場。また亜種の変種となる「奇種」が新たに登場する。奇種モンスターの報酬素材からは新たなSP装飾品を作れる。その中には「攻撃+25」など、かなり強力なものも含まれている。

 ホルクはLV3が開放される。これまでは初心者ハンターのサポート役といった存在だったが、LV3のホルクはかなり強化され、4匹連れて行けばクリアタイムにかなりの差が出るくらいに調整しているという。またグークは順調に増えて4匹目が登場。この先どこまで増えるのか、という妙な期待も湧いてくる。もちろん新たな毛色のグークや、服、アイテムなども追加されている。


いつでも4人で狩りに行ける「フォスタ」

 初心者向けのコンテンツとしては、「フォスタ」が実装される。「ラスタ」は他のハンターとの契約が必要だったが、「フォスタ」は契約をしなくても誰でも利用できるのが特徴。4人未満となる狩りの際に、人数を合わせる形で登場する。HR1から自動的に登場するため、仮に1人でクエストに出発した場合でも、自分と教官ラスタ、2人のフォスタで、1人プレイなのに4人で狩りをしているような形になる。フォスタはプレーヤーのHRに応じて装備が変わったり、吹き出しで喋ったりという新しい仕組みもあるので、アップデート後は既存のプレーヤーも試しに1人で狩りに出てみてほしい。

 また新規プレーヤー向けのリファインとして、ゲーム導入部分が大幅に変更される。宮下氏によれば、「キャラクターを作って5分以内に大型モンスターを狩猟して武器が作れる」というコンセプトで、キャラクターを作った段階で武器種を1つ選び、すぐさま教官とともに「ゴゴモア」を狩猟して、その素材で好きな武器を1つ作れる。遊び始めてすぐに「MHF」の面白さを体験してほしい、というのが狙いだという。

 猟団への参加希望もシステム化される。猟団募集の掲示板のようなものがゲーム内に用意され、そこに猟団への参加希望を出しておくと、猟団長がリストから検索して、スタイルやプレイ時間などが合いそうな人に声をかけられる。もちろんこれは新規のプレーヤーだけでなく、猟団を探している全てのプレーヤーが利用できる。

 Windows版限定ではあるが、通常1,400円のハンターライフコースが初回500円で利用できるキャンペーンや、友達紹介システムが4月25日から常設化されている。Xbox 360版でもクライアントが無料ダウンロードできるようになっており、「フォワード.4」でのアップデートと合わせて、新規プレーヤーがより入りやすくなる土壌が整えられている。

 そのほかのアップデート内容としては、ガンランスとヘビィボウガンの武器バランスが調整されている。いずれも強化すべきという声が上がっていたもので、それを受けての調整となる。これについて杉浦氏は、「あまり強調すると何倍にも強くなるような期待をさせてしまいますが、実際は10~20%といった割合なので、がっかりさせてしまいかねません。期待しないでというのも変ですが、期待しすぎないでくださいというのも本音です」とコメントに困っている様子。とはいえ開発として考え抜いた調整であることは間違いないので、とにかく体験して違いを感じていただきたい。

 また「フォワード.4」で実装を予定していたものの、「フォワード.5」に実装延期となったコンテンツについても触れておきたい。「フォワード.3」プレビューサイトの次回予告で公開されていた新コンテンツが、「フォワード.5」に実装延期となったという。この件について杉浦氏は、「次回予告で紹介されていたSSは、『狩猟技クエスト』のリファインによってできた新しい部屋だったのですが、システムの調整が間に合わず、『フォワード.4』ではやむなく実装を見送らせていただくこととなりました。お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、新たな狩猟技コンテンツとしてお客様に楽しんでいただけるよう調整しておりますので、今しばらくお待ちください」と述べた。

 このほか「フォワード.4」に合わせて発売されるパッケージでは、内容の見直しが図られた。武器はHC武器まで、防具はFZまで強化が可能で、特典アイテムには剛種チケットやHCチケットを新たに追加。さらにパッケージの購入動機でいつも1位になるというNポイントは従来の150ポイントから250ポイントに増量された。トータルで16大特典となり、特に上級者にも嬉しい内容となった。価格は据え置きの6,090円。




■ 5周年記念大規模イベントにお風呂コラボ?まで広がる「MHF」

5周年イベントに向けて、杉浦氏と宮下氏もかなり盛り上がっている様子

 続いては「フォワード.4」の先の展開やアップデートの方針、ゲーム外の施策について聞いた。

 まずは「MHF」では度々議論に上がる、特定のモンスターを狩り続ける状況の是非について尋ねた。杉浦氏は、「原因は効率という1点に尽きますが、それを我々が蓋をしていくという考え方は間違いだと思っています」と断言した。例えば「HCドスファンゴ」で魂を集めるのに集中しているのであれば、それを取りづらくするのではなく、秘伝書に関する部分をリファインすることで、特定のモンスターを狩り続けるというストレスが発生しないような仕組みにする、という形を目指していくという。

 次は5周年記念イベントについて。以前から話に出ているとおり、このイベントは夏から秋にかけての時期に、東京で大きなイベントが行なわれる予定になっている。500~1,000人規模のイベントで、7月で47都道府県を全て回り終えるネットカフェイベントの完了記念も兼ねたものになる。ここでは今後のアップデートのマイルストーンを伝える発表会や懇親会も行ない、「MHF」の方針を説明したいとしている。


シュールな見た目で話題になった「ポッキー」とのコラボ太刀「ポキカルセイバー」

 続いてはコラボレーション企画のお話し。以前行なわれた「ポッキー」とのコラボレーションでは、ロビー装備の太刀装備者がほとんどポッキーになるというくらいの盛り上がりを見せたが、次のコラボレーション企画も夏辺りに予定しているという。その内容については、「杉浦が風呂好き、というのがヒント」だそうだ。

 次は他のプラットフォームでの展開について聞いた。杉浦氏といえば最近はソーシャルゲームなども手がけているが、「MHF」でも「エッグラン」に続くモバイル向けの新たな展開を企画中だという。「エッグラン」よりもずっと大規模なもので、「MHF」を知らない方を「MHF」に引き込んでいこうという方向性での施策になるという。詳しい内容は秋頃には発表したいとしている。

 それ以外のプラットフォームとしては、Xbox 360に続く新たなプラットフォームの展開にも期待したいところ。PS Vitaなど新たなハードウェアも登場しているが、と尋ねたところ、「年内は何も言えない」という答えだった。

 今回のインタビューはここまで。最後におふたりからプレーヤーへのコメントをいただいた。

宮下氏: 「フォワード.3」では不具合が多めに出てしまい、お客様にはご迷惑をおかけしました。新たなコンテンツに対してのご意見ご要望もいただいておりますので、改めてよく見直して、今後の調整やイベントをやっていきたいと思っています。「フォワード.4」については、新モンスターや新コンテンツがたくさん入りますので、ゲーム内ではイベントでも盛り上げていけるよう考えていきます。

 あとは5周年に向けてアニバーサリーイベントも考えていきます。ゲーム内でイベントするだけではないものや、武器防具をもらうだけではないもの、47都道府県を回った記念のイベントなど、色々なところででも楽しんでいただけるようにしたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

杉浦氏: 私の担当タイトルが10種類以上ある中で、「MHF」にどれだけの時間を割けるかというのが自分の課題でもあり、お客様の問いでもあると思っています。今のところは「MHF」は最優先しなければならないと思っていて、4~5割くらいは時間を割いていきたいと思っています。残りを他のタイトルに割り当てて、他のタイトルには早めに後任を立てながら、きっちり独り立ちさせて走らせていきます。「MHF」では、お客様からそれなりに合格点をいただいてから、宮下に引き継ぎたいと思っています。

 東京制作部は「MHF」1本を中心にスタートしましたが、2~3年前から種を植えてきたものが芽を出し始めて、タイトル数がどんどん増えてきました。10タイトルだからといって人が10倍に増えたわけではないので、これをいかに効率よく運用していくかというところです。「MHF」のお客様からすれば、「MHF」の手を抜かないで欲しい、他のタイトルにスタッフを持っていかないで欲しいという気持ちは当然あると思います。私の仕事としては、組織をきっちり作りこんで、タイトルが手抜きにならないように人の配置や効率性に気をつけて運用しながら、最終的にお客様にご満足いただけるようにしたいと思っています。




 「MHF」のサービスが始まってから約5年で、ゲームを取り巻く状況は大きく変化した。それに合わせるようにして、「MHF」の開発・運営の体制も大きく変わっている。今年度は「MHF」にとって、今後を占う正念場の1年となりそうだ。


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(2012年 5月 18日)

[Reported by 石田賀津男]