ネクソン、「メイプルストーリー」開発・運営インタビュー
「エヴァン」と「デュアルブレイド」2つの新職業を日本オリジナル仕様で実装
株式会社ネクソンは、MMORPG「メイプルストーリー」において7月14日に2種類の新職業「エヴァン」と「デュアルブレイド」を追加する。「メイプルストーリー」ではこれまで「海賊」や「シグナス騎士団」、「アラン」など様々な新職業を追加してきた。韓国サービスでは、エヴァンを昨年12月に、デュアルブレイドを今年2月に実装しているが、日本サービスでは2種類の職業が同時に追加される。韓国版ではそれぞれ独立した追加だったが、日本版では両者が対立するような、オリジナルストーリーが展開するという。
エヴァンはドラゴンと共に成長していく魔法使いタイプのキャラクター。この職業の詳細は昨年のG-Starで開発者インタビューを行なっているのでそちらも併せて参照して欲しい。デュアルブレイドは“忍者”をモチーフとした職業で、日本版ではさらにストーリー要素が濃くなる。デュアルブレイドの故郷はドラゴンに襲われ、ドラゴンマスターであるエヴァンを敵視するようになってしまうという。
今回は実装に先がけ、NEXON海外ライブ1チーム チーム長のチョ・ドンヒョン氏、同じく海外ライブ1チームで日本パートのパート長を務めるクアック・キョンス氏、そして日本運営のネクソン運用部ゲーム運用3チームの中西啓太氏に話を聞いた。通訳担当はNEXON海外ライブ1チーム日本パートのキム・ヒョジン氏だ。
■ 新職業は敵対関係に!? 日本オリジナルでストーリー要素を濃くして実装
NEXON海外ライブ1チーム チーム長のチョ・ドンヒョン氏 |
NEXON海外ライブ1チーム日本パートのパート長を務めるクアック・キョンス氏 |
NEXON海外ライブ1チーム日本パートのキム・ヒョジン氏 |
日本運営のネクソン運用部ゲーム運用3チームの中西啓太氏 |
編: 最初にアップデートの概要を教えてください。
クァック氏: 7月の14日に、「エヴァン」、「デュアルブレイド」の2つの新職業が実装されます。今回、日本実装に当たり韓国とは違った形でのアップデートとなります。デュアルブレイドではドラゴンを使うエヴァンと対立するようなストーリーが展開します。
デュアルブレイドは短剣を使う「盗賊」に近いタイプのキャラクターです。デュアルブレイドはその名の通り両手に武器を持ち、攻撃力が高いです。この新キャラクターでは性能はもちろんですが、ストーリーに注目して欲しいですね。「ニンジャマスター」が登場する“忍者”そして“日本”をイメージしたストーリーが展開します。ストーリーとしてはエヴァンと対立していくものになります。
エヴァンは魔法使いのようなポジションですが、「ドラゴンと共に戦う」というところが大きく異なっています。平凡な冒険者を夢見る普通の少年が、ドラゴンの卵を拾い、ドラゴンマスターとしてともに強くなっていくというストーリーが展開します。デュアルマスターとの対立という要素が追加され、展開するストリーも韓国版とは異なっていきます。
チョ氏: 特に日本のオリジナル色を持たせたのは、デュアルブレイドのストーリーですね。韓国版ではデュアルブレイドのストーリー要素は少なかったのですが、「楓城」など従来からある要素も入れて、忍者をテーマとしたストーリーを展開します。
韓国版では新職業に合わせて追加された新マップでのストーリーでしたが、日本版では従来のマップでもストーリーが展開します。忍者など日本色を強化しています。両職業ともスキルなどキャラクターの性能は韓国版と同じですが、ストーリーとクエストのところで変化をつけました。
編: デュアルブレイドは戦闘力が高く、ソロ向けの職業かなと感じました。
クァック氏: 1人でも楽しめますが、パーティーでは先頭きって敵陣に突っ込んでいくような職業ですね。一方、エヴァンに関しては後衛のキャラクターといえます。両職業とも韓国でも人気が高く、特にエヴァンは年末に実装したのですが、同時接続で24万人を突破するというほどの人気を獲得しました。デュアルブレイドは2月末という時期だったのでエヴァンほどではなかったのですが、人気は高かったです。
編: 対立がテーマになるとなると、今回はじめるエヴァンとデュアルブレイドはパーティーを組めなくなったりするのでしょうか。
チョ氏: 対立というのは、“誤解”から生まれ、ストーリーを進めていくことでデュアルブレイドはその間違いに気がついていきます。なので従来のキャラクターと同じように自由にパーティープレイも楽しめます。
中西氏: デュアルブレイドは「ニンジャの里」というところの出身なんですが、そこは竜に襲われて壊滅的な被害を受けてしまいます。そこで「竜使い」であるエヴァンは敵なのではないか、というストーリーになっていくのです。完全に敵対しているわけではありません。また、デュアルブレイドとなるキャラクターは実はメイプルストーリーの“現代”の人間ではなく、過去の時代の人物なのです。
現代の時代、ニンジャの里が竜に襲われ、ニンジャの里の人々は竜に襲われた原因を調べるため過去へ時間旅行をするのですが、過去の世界でもニンジャの里は竜に襲われており、生き残ったのはプレーヤーキャラクター1人だけなのです。生き残った少年を現代に連れてきてストーリーが進行していくのです。ストーリーは「転職クエスト」を通じて進行していきます。ストーリー要素については転職クエストだけでは完結せず、今後も追加していければと思っています。
エヴァンの方でもこれまでの「アラン」や他の職業共通の部分で、これまで以上にストーリー要素を強めていきたいですね。特に日本のユーザーはストーリー要素を好む傾向があり、現時点で「必ず追加する」という断言はできないのですが、ストーリー要素を強化できればと考えています。ストーリーを重視するのはこの前の職業アランから顕著になっています。
チョ氏: 日本で2つの職業を実装するのは、既存の「シグナス騎士団」やアラン、そしてエヴァンもそうですが、これらの職業は「暗黒の魔法使い」と戦うために強くなっていく、というストーリーがありました。しかし、日本での実装に際し、開発側からも「新しいものをやりたい」という意識があり、“職業間での対立”という要素を入れてみることにしました。エヴァンとデュアルブレイド2つの新職業が対立するようなストーリー展開はどうだろう、ストーリーを濃くして、ユーザーを没入させたいと思っています。
また、エヴァンは魔法使い系、デュアルブレイドは盗賊系の職業で、同時に実装することでプレーヤーの選択肢が広がる、というゲーム的なアプローチもあります。「楓城」などは日本で実装されてから韓国で実装されていますし、これまでも日本オリジナル要素の実装はありました。今後も日本専用のマップの追加も考えていますし、「ストーリー要素」というところでも、日本ユーザーのニーズに応えていきたいと考えています。
編: NEXON海外ライブ1チームは中国や台湾地域も担当しているとのことですが、台湾や中国でも日本と同じような仕様でアップデートしていくのでしょうか。
チョ氏: 中国や台湾ではまずエヴァンが実装され、その後にデュアルブレイドが実装される予定で、日本のように同時ではありません。このため対立構造などの要素は入れにくいと思っています。ストーリーに関しては日本版の要素も盛り込んでいきたいとは思っていますが、文化的な背景もあり、検討中です。
編: 今回に関しては「日本独自」という要素が強いな、と感じますが、これらに関しては韓国側からの提案なのでしょうか、それとも日本の要望側から企画を出して実現した、というところなのでしょうか。
中西氏: お互いに提案して、それが実現したというところですね。日本への実装の場合は、日本ユーザーを意識してカスタマイズしていきますし、今回に関しては、韓国版にはないオリジナルストーリーが入っています。2つの職業を絡ませ、ストーリー性を豊かにすると言うのは今回が初めてのアプローチなので、期待しています。
編: 2つの職業が追加されると言うところで、キャラクタースロットはどうなるのでしょうか。
クァック氏: これまでの新職業同様、各アカウントに2つの新スロットが追加されます。これまでのプレーヤーでも新職業を楽しんでもらえます。
編: 「忍者」がモチーフのデュアルブレイドですが、何か参考にした作品などはあるのでしょうか。
チョ氏: 様々なアニメーション作品を参考にして、スキルなどの職業を作っていきました。
クァック氏: 見てもらいたい、お気に入りのスキルとしてはデュアルブレイドでは「サドンレイド」というものがあります。歴代のニンジャマスターが画面内に登場し、敵を攻撃する派手で見応えのあるものです。エヴァンではドラゴンが高速で移動し、分身を作り出し、敵を攻撃する「イリュージョン」というスキルがいいですね。
【「エヴァン」ムービー】 |
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【「デュアルブレイド」ムービー】 |
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■ 新職業実装により古参ユーザーと新規ユーザーが交流、今後も新職業や高レベルコンテンツも
編: 少し方向を変えて、韓国の「メイプルストーリー」ユーザーのレベル別の分布状況についてお聞きしたいです。他のゲームだと、コアプレーヤーは高レベルキャラクターばかりになり、一方すぐプレイして止めてしまう低レベルのキャラクターも多いため、中間のレベルのキャラクターが少なくなる2極化がはっきりしていきます。しかし、「メイプルストーリー」は新職業を積極的に追加することで、古参と新規ユーザーが同じスタート地点に立つ場合も多い。バランス良くキャラクターが分布しているのではないかなと思います。
チョ氏: 「メイプルストーリー」では新職業の他に、高レベル向けコンテンツに関しても追加していますが、高レベル向けコンテンツはやはり既存ユーザー向けのものです。「メイプルストーリー」はサービス開始から7年たっていますが、それでも新規プレーヤーを獲得する方法として「新職業」を追加しています。新職業は、新しいユーザーが獲得できる良い機会になっています。
新規ユーザーと従来のユーザーの“交流”というのはMMORPGのテーマですが、「メイプルストーリー」では新職業を追加することで、古参ユーザーも1レベルからスタート地点に立つことで、パーティープレイ等も行なわれています。「メイプルストーリー」がスタートしたときには、小学生、中学生だったユーザーも7年の間成長してきて、周りには「メイプルストーリー」に触れたことがない新しい友人もたくさんいます。
彼らに対して「新職業が追加されたから、一緒に1レベルからはじめてみないか」と誘うユーザーも多いです。新ユーザーは新職業だけをプレイするのではなく、既存の職業で新職業の古参プレーヤーと遊び、ゲームのルール、プレイの仕方を学んでいく人も多いようです。
また、「メイプルストーリー」でのユーザーのレベルごとの分布に対しては、私達は、「転職」クエストに挑戦するころで成長が止まっているユーザーがいるところに着目しました。転職がネックとなってユーザーの意欲が止まりかねない、転職前に意欲が止まってしまう。
この点に対して新職業では逆に「職業クエスト」の機会を多くすることでユーザーに「成長の実感」をより得やすい方向にしてみました。エヴァンでは職業クエストが10回、デュアルブレイドでは6回用意されています。アクセントを増やすことで、キャラクターを成長させる意慾がとぎれないようにしてみました。
中西氏: 日本ではまだ企画段階ですが、低レベルユーザーと高レベルユーザーの繋がりを補強するために、「レベルに関係なくパーティーが組めるダンジョン」を考えています。まだまだ検討中ですが、システム部分でいくつかの点がクリアできれば実現できるかもしれません。
新職業が新規と既存を繋げるきっかけになる、というのはアラン実装時、既存ユーザーはアランで、誘った人は既存の職業を選んで遊んでいる、ということも聞きました。「メイプルストーリー」では低レベルでしか挑戦できない「グループクエスト」もあり、そのクエスト向けのキャラクターを持っている人もいます。彼らが新規ユーザーを誘って繋がる、ということもありますね。編: 今後のアップデートでもまだまだ新職業は追加されていくのでしょうか。
チョ氏: 韓国では新たにもう1つ職業が追加されています。この職業は日本でも実装されると思います。また、まだ公開はできないのですが、日本向けに新職業以外のコンテンツの実装も考えてます。こちらに関しては今年の冬には何らかの形で発表できればと思っています。
クァック氏: 韓国で実装されている新職業は、これまでの「シグナシス騎士団」のようなきらびやかな英雄ではなく、“市民”として一般の人の代表として暗黒の魔法使いに立ち向かっていくキャラクターとなります。名前は「レジスタンス」になります。ただ、ゲーム的なバランスでは、他の職業と比べて遜色のない強さになります。日本での実装に当たりどうなるかはまだこれからですが、“市井の人”という立場が楽しめる新職業です。
編: 「エバープラネット」など「メイプルストーリー」の雰囲気に近い、低年齢向けアクションMMORPGが登場したりと、ネクソンでサービスしているタイトルの中にも作品のカラーが似ている物が出てきていますが、これらとどう差別化をしていくのでしょうか。
チョ氏: 「メイプルストーリー」はネクソンの“先頭”に立つゲームだと思っています。この地位を守るため、スタッフ達は悩みながら開発しています。ただ他のタイトルを意識するよりもまず、ユーザーからの意見を聞き、ユーザーの考えを反映するという姿勢を重視しています。
編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
チョ氏: 7年間日本でサービスできているのは、日本の皆様が変わらず「メイプルストーリー」に関心を寄せていただいているおかげです。これからもよろしくお願いします。7月14日の新職業も皆さんぜひ遊んでみてください。
クァック氏: 「メイプルストーリー」は現実では味わえない、ときめき、楽しさ、冒険があります。これからもそういった体験を提供していきたいと思います。
中西氏: まだまだユーザーの皆さんから「やりづらい」とご指摘を受けるところもあります。例えばアランのポイントシステムによるインベントリーが共有されていない問題がありまして、こちらは6月30日に対処し、新職業はスタート時点で共有できるようになっています。夏休みはぜひ新職業をお願いします。
キム氏: 私は韓国と日本どちらの「メイプルストーリー」もわかる立場として、韓国、日本のユーザーが楽しめるコンテンツから更に、日本の方ならではの楽しめる要素、日本らしい要素を今後も追加できればと思っています。ご期待下さい。
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※画像は開発中のものです
(2010年 7月 7日)