コーエー、「信長の野望 Online~争覇の章~」開発プロデューサー渡辺知宏氏インタビュー
7月は「トライアルダンジョン」の内容と報酬を一新!
8月の「出陣の刻」では勢力レイドや新目録を追加!!

6月10日収録

会場:コーエージェミニビル


 コーエーがWindowsとプレイステーション 2(以下、PS2)向けにサービスを提供しているオンラインゲーム「信長の野望 Online(以下、信オン)」は、戦国時代を舞台にしたMMORPGだ。この6月に6周年を迎え、国内でも屈指の老舗タイトルながら、今年に入って毎月のように新コンテンツが追加されるなど活発にアップデートが繰り返されている。実在した戦国武将と共に合戦で戦えたり、日本伝承に出てくる神や妖怪と対峙したりという和風の世界観が人気で、現在は3つ目の有料拡張パックである「争覇の章」を展開している。

 「信オン」の開発チームは、この4月より「真・三国無双Online」の開発ディレクターだった今村一太氏が新開発ディレクターに就任し、開発ディレクターだった渡辺知宏氏が、新しく開発プロデューサーに就任し、新たな開発体制がスタートした。7月、8月に予定されているアップデートは新体制の指揮のもと行なう初めての大規模アップデートとなる。特に「出陣の刻」と名付けられた8月の大規模アップデートでは、同じ勢力に所属しているプレーヤーが協力し合って遊ぶ大規模勢力レイドや、新しい戦闘の方向性を提案する新目録などが実装される。

 そこで、6周年記念イベントで忙しいコーエーにお邪魔して、新開発プロデューサーの渡辺知宏氏と、同じく開発ディレクターの今村一太氏から夏の大規模アップデートの詳細を聞いてきた。また、秋以降のアップデート計画や、合戦などの既存コンテンツの方向性についてもどのように変えていくのか、今後の「信オン」についても質問をぶつけてきた。


■ 生まれ変わる「トライアルダンジョン」。待望の新クエストが追加

「信長の野望 Online」開発プロデューサーの渡辺知宏氏
「信長の野望 Online」開発ディレクターの今村一太氏
「TD」に追加される新クエストのボスは天下の大泥棒石川五右衛門

―― 今回7月のアップデートと8月の大規模アップデート「出陣の刻」が同時に発表されましたが、今回のアップデートは2月から始まった「~の刻」と題された一連のアップデートの中で、どういった位置づけになるのでしょうか?

渡辺知宏氏: 定期的にアップデートを打ち出していくというコンセプトになってから、長期計画に基づいてずっと出して来たわけですが、今回の大規模アップデートはコンテンツの拡充を目指した拡張になります。

――というのは?

渡辺氏: 今までのアップデートでは、既存要素のシステム部分についての拡張を行なってきました。今回はそれだけでなく、例えば「トライアルダンジョン(以下、TD)」のアップデートのようなに、ユーザーの方々に遊んでいただくコンテンツの追加を併せて行なっていくことになります。

―― 7月のアップデートの目玉となる、「TD」のリニューアルについて、どういった内容になるのかを教えてください。

渡辺氏: 「TD」には新しいクエストが追加されます。モンスターやマップのモデリングなどは既存のものを使いますが、クエストの内容は全く新しいものになります。7月、8月、9月に少しずつクエストが追加されて、その後少し間が空いてからまた追加していくという形になると思います。

―― すでに実装されているダンジョンを使って、新クエストが追加されるのですか?

今村一太氏: そうです。でもそればかりではなくて、新しいマップも遠くない将来に追加していこうと思っています。

―― 新クエストの適正レベルはどのくらいですか?

今村氏: ユーザー層が最も厚い高レベルの方が中心になります。レベル55以上の中級から上級者向けになる予定です。

―― どのようなクエストになるのでしょうか?

今村氏: 詳しくはまだ言えませんが、新グラフィックのボスは登場します。

―― 「TD」は自動マッチングが特徴ですが、最近は外であらかじめ人を集めてから入るという方法が一般的になっていますね。

今村氏: 自動マッチングがやりにくくなっている原因の1つが職縛りです。今は同じ職業の人が2人以上は同じ徒党に入れないんですが、その縛りを緩和しようと思っています。それに徒党を組めるレベル差についても、現状のレベル差10までという縛りをもう少し緩やかにして、少しでも組みやすくすることを第一に考えています。

―― 報酬については?

今村氏: 「TD」の宝箱から出る報酬については、お客様からもかなり意見が寄せられていますので、そこを全部見直します。また、銅銭で交換できる報酬も追加します。もちろんコンテンツとして面白いというのは前提ですが、さらに遊んだ結果満足のいく報酬が得られるという形にして、「TD」自体を活性化していくというのが7月のアップデートの目的です。

―― 交換できる報酬にはどのようなものが追加されるのですか?

渡辺氏: 「争覇の章」に合わせた「TD」にするというイメージです。期待しておいてください。

―― 最後に「TD」に新しいクエストが追加されてから、ずいぶん長い間放置されて来ましたがどうしてこのタイミングで手を入れる事にしたのですか?

渡辺氏: 遊びの場をさらに広げていきたいと思っています。遊ぶ人が少なくなっている「TD」を、もう1度「争覇の章」に合わせた魅力的なコンテンツにすることで、さらに多くのユーザーの方に遊んでいただければと思っています。今までも少しずつは手を入れてきたんですが、効果的に力を入れていくタイミングが来たと思っています。

―― ゲーム内での「TD」の位置づけが変化するわけではないのですか?

今村氏: 「信オン」には6年間で積み重ねられてきた膨大なコンテンツがあるんですが、コンテンツは生ものというか、出してから時間が経つとだんだん新鮮みが薄れてきますよね。お客様のレベル帯が合わなくなったり、新しいコンテンツが追加されたりする中で、だんだんと遊ばれなくなっていったり遊ばれる頻度が減っていく。渡辺が争覇に合わせた「TD」という言い方をしましたが、何年も経って遊ばれなくなってきたコンテンツを「争覇の章」に合わせた形にどんどんリニューアルして行こうと思っています。「TD」はそういった流れの第1弾になります。



■ 特化目録の習得状況を記録できる特化変更アイテムを追加

合戦場で名前を表示できるようになる旗指物
「特化変更を楽しめるような遊び方を提案したい」と渡辺氏

―― 長期間プレイしているユーザーへの特典である、長期プレイ報酬に新しい報酬が追加されるそうですが? どのようなものが追加されるのですか?

渡辺氏:1つは、特化の変更ができるというアイテムです。現在覚えている習得の状態を記録したまま、別の特化に変わることができます。

―― 例えば、そのアイテムを使って仏門だったプレーヤーが、密教に特化を変更したいと思った場合、仏門の習得状況を記録した状態で密教に特化を変更でき、再び仏門に戻った時には、記録していた習得状況へ戻るという事ですか?

今村氏:そうです。前の特化の習得を覚えたまま別の特化になることができ、技能をまた習得する必要がありませんので、使った方がお得です。さすがに2つ以上の特化技能を同時に使えるようにとはいきませんが。

―― どうしてこういったアイテムを追加する事になったのでしょうか?

渡辺氏:これまでは成長要素が1つで、レベルが上がっていけばいくほどそれを極めていくゲーム性でしたが、今後はある程度、特化を色々と変えるという遊び方も提案していきたいと思っています。

―― 他にも何かアイデアはありますか

渡辺氏:1つは潜在の振り直しができるアイテムですね。

―― 「星野山千尋窟(せいやさんせんじんくつ)」でもらえる報酬と同じようなものですか?

渡辺氏:そうです。あの報酬に届かないという方もいらっしゃいますので、このアイテムで定期的に振り直しができるようにしたらどうかなと思っています。後は、レアアイテム系のものを出すつもりです。その中でも1番の目玉は合戦場でキャラクター名を表示できる旗指物でしょうか。以前は宝玉の共晶効果として実装したものですが、今回は旗指物を装着することで実現します。戦いの前に名乗りを上げるって戦国らしい要素だと思うんですよね。長期間プレイしているお客様の中には、共晶効果を4つ使って名乗りを上げてくださった方もいらっしゃるので、そういうお客様にとっては欲求の高いものになるかなと思います。



■ 8月の大型アップデート「出陣の刻」ではフィールドで戦う勢力レイドを実装

武将とともにフィールドで戦う、まったく新しいコンテンツ
誰でも気軽に楽しめ、勢力の団結を深めるのがコンセプトだ

―― 8月に実装される「出陣の刻」についてお伺いします。この「出陣の刻」というアップデートの名前にはどういった思いが込められているのですか?

渡辺氏: いざ出陣!ということで旗揚げをしたいなという(笑)。長期アップデートには、システムの追加と、遊びの幅の追加・改良という3本柱が目標としてあるんですが、今回はこの3つをすべてやってしまおうという意図があります。

―― 「出陣の刻」のおそらく1番注目ポイントになる勢力レイドですが、どういったものですか?

渡辺氏: 勢力で楽しむコンテンツです。妖魔陣のイメージが近いですが、妖魔陣と違ってフィールドを使って、みんなでNPCと合戦をするというものです。PvPはいままでの合戦にもあったんですが、こちらは対人のない戦いをみんなで盛り上がって遊ぶというもので、勢力の団結力が増す形での実装を目指しています。

―― どういった要素が、勢力の団結力と結びつくんでしょうか?

渡辺氏: コンテンツを選ぶことで、勢力としての報酬を獲得できる形を考えています。

―― つまり、家に所属しているプレーヤーすべてが報酬を受け取れるような形ですか?

今村氏: そこはまだお答えできないのですが、勢力単位や同盟をしている勢力単位で、みんなで団結して戦います。「信オン」の“戦国ゲームとしての魅力”を体現しているものとして合戦があると思いますが、PvPの合戦は尻込みしてしまう方もいらっしゃると思うのです。そういった方に対して、NPC相手に合戦をして、合戦のおもしろさに触れていただいて、かつ勢力の団結力に繋がればと考えています。

―― このレイドのためのストーリーや設定はあるのですか?

今村氏: 基本的なものはありますが、まだそこはお話できない部分です。舞台は伊勢になります。

―― 伊勢を支配している勢力との関係などは、レイドに影響を与えますか?

今村氏: それとは全く関係のない形になります。

―― 合戦にはソロでも徒党でも参加できますが、このレイドはどうなりますか?

渡辺氏: 参加に関しての縛りはありません。行けば参加できるという感じです。ソロでも徒党でも、それぞれに役割があるという感じです。

今村氏: ただもちろん徒党を組んだ方がより楽しめると思います。

―― 既存の合戦のように、陣の中にいる武将を倒して行くことになるのですか?

今村氏: イメージはそれに近いものになると思います。

渡辺氏: フィールドを使っている部分が最大の違いになります。合戦ゾーンに入るわけではなく、お客様が参加しやすい場所で行なうことになります。

―― クエストの最中、参加できない勢力のプレーヤーがそのゾーンに入ることはできるのですか?

渡辺氏: そういったシステム面に関しては、これからお伝えしていきますので、楽しみにしていてください。

―― 初心者でも参加しやすいとのことですが。

今村氏: フィールドで行なうので、いちいち合戦ゾーンに行く必要がありません。相手はNPCで、PvPもありませんから、誘う側も誘われる側も障壁は低くなると考えています。

渡辺氏: 以前からお伝えしてきたフィールドの見直しの一環として導入します。

―― 発生する条件はどういった形になるのでしょうか?

今村氏: システム的に発生する形で考えています。ただ、発生の条件については検討しているところもありますので、まだ細かくはお伝えできない部分です。

―― システム的というのは、妖魔陣のように一定の条件を満たせば発生するということですか?

渡辺氏: そうですね。所属人数の少ない勢力のプレーヤーの方でも、遊べるように工夫していく予定です。参加条件の緩和など、具体的にはまだ検討中の部分も多いのですが……。勢力を中心に据えてゲームをプレイしてもらおうという事を今村と話していて、かなり長いスパンでロードマップの中に入れていこうと思っています。今後、少しずつお伝えしていけるかなというところです。


■ 全職に新攻撃技能目録を追加して、技能を底上げ

「技能についてはこれからも検討を重ねていきます」と両氏

―― 「出陣の刻」で実装される新技能についてお伺いします。今までもバランス調整のための技能追加がありましたが、今回はどのような内容になりますか?

渡辺氏: これは全面的な技能の底上げという意味で考えてもらってもいいですね。

―― 全部の職にはいるのですか?

今村氏: 関係のない特化はありません。特化目録ではありませんが、新しい目録の形で全職に追加されます。

―― 目録で追加されるということは、1つの職に複数の技能が追加されることになるのでしょうか?

渡辺氏: そうなります。

―― この目録が追加されることによって、従来の戦闘方法に変化はありますか?

渡辺氏: 今までは、例えば職業ごとの戦い方がある程度限定されていたような部分があったのですが、そこが若干緩和されるようなイメージです。特化によっては1つの役割しかなかったりすることがあるので、そういった場合にもう少し選択の幅が広がるような技能を追加していこうというのが発想としてあります。

―― サポート職がアタッカーをしたりできる、というような意味ですか?

渡辺氏: だいたいそのようなイメージです。

今村氏: 歯切れが悪くなって申し訳ないのですが、技能はお客様がとても気にされていて、とてもデリケートな部分だと思うのです。ですので、新しい技能を入れる場合も、これを入れて大丈夫だろうかという検討を長い期間かけて行なっています。今はまだ検討している最中なので、どうしても明言しづらくて。コンセプトとしては遊びの幅を広げることを目指していますが、具体的にこれを入れますというのは、まだお伝えできない状況なのです。

渡辺氏: 少なくとも、1つ上のダンジョンに行けるかもと思わせるような技能が入ると期待していただいてももいい感じにはしていきます。

―― この目録は、現在問題視されているバランス調整への解決にもなりますか?

渡辺氏: ある程度は新技能の追加でカバーできるような形で出すつもりです。

今村氏: バランスは対象となる敵によって、いろいろな問題が出てきます。例えば対人のランダム化もそうですが、それで生きている特化があるので、一概になくすことはできなくて。バランス調整と言うと、どうしても苦しむ特化がでてきますので、今回は全体の底上げという意味合いが大きいかもしれません。

渡辺氏: バランス調整については常に定期的に対応していきたいと思っています。

今村氏: キャラクター側ではなくダンジョンの調整で、いま誘われにくい職業も誘われやすくなるようにしていきたいと考えています。



■ 「凶神の冥宮(まがつかみのめいきゅう)」を、より攻略しやすいダンジョンへ

現在は術アタッカーに人気のある「凶変イザナミ宮」
「道摩根の国」に入るには強いボスを撃破しなくてはならない

―― 「覚醒の刻」で実装された「凶神の冥宮」をリニューアルするという事ですが、現状のどういった部分が問題だと認識されていますか?

今村氏: 特定の職業が誘われにくいという状況なので、最初の意図通りに様々な職業で攻略できるようにしたいと考えています。

―― 具体的にはどうなるのですか?

今村氏: 「凶変イザナミ宮」から次のダンジョンへ行きやすくして、「道摩根の国」の報酬を今よりも良くするという形で考えています。

渡辺氏: 詰まっている箇所があるので、そこを緩和してもっと色々遊んでいただこうというのが狙いとしてあります。

今村氏: 「凶神の冥宮」には、実は物理徒党用、乱射徒党用、術徒党用とNPCを3種類用意してあるのですが、術徒党用の敵が入り口となる「凶変イザナミ宮」にいるので、術徒党ばかりが遊んでいるような形になっているのが見受けられます。そこで、物理徒党用のNPCをもっと攻略しやすい形に改訂することで、別のルートも見つけて欲しいと思っています。

―― 詰まっている箇所というのは「機巧夜叉」ですか?

渡辺氏: そうですね。なかなか倒せなくて困ってらっしゃる方に対する措置ということになります。

―― アルゴリズムを変更するのですか?

今村氏: アルゴリズムの変更はありません。新技能の追加によって攻略が可能になると考えています。



■ 新規プレーヤーが入って来やすい、今時のMMOへの脱皮

新参者クエストに堺などにいく新たな要素が追加される
有名な武将たちもクエストに登場することに

―― 新規のユーザー対策としては、どう考えていますか?

今村氏: 私は、以前は、「真・三國無双 Online」の開発ディレクターをしていましたが、4月になって開発体制の強化ということで「信オン」の開発ディレクターとしてこちらに移ってきました。私は「信オン」をほとんどプレイしたことがないままにディレクターになったので、早速プレイしてみたのですが、わからない部分がとても多かったのです。「信オン」は今月で6年目を迎えますが、ありがたいことに体験版は日々結構な数がダウンロードされていて新しい方が入って来て下さっている状況です。全くの初心者である私にわからない事は、新しくプレイされる方にもわからないに違いない。そういうお客様に継続してプレイしていただけるような方向につなげていく事が、「信オン」の発展にとって重要だと考えています。今後のアップデートでは、新規のお客様に対する配慮をどんどん入れていくつもりです。

―― 例えばどういった部分がわかり辛かったですか?

今村氏: 例えば、「信オン」はマウスでの移動方法が独特だったり、技能目録をもらった後、使用しなければ効果が発揮しないのにその説明がなかったり、食事などもわけがわからないままいきなりおにぎりを食べて、使った記憶がないのに「いつ食べたんだ?」など。そういう部分を1つずつ指摘しながら直して行く方針で動いています。

渡辺氏: 弊社のコンテンツもそうですが、他のMMORPGもどんどん進化してきていますので、機能はどんどん実装していきます。例えば5月のアップデートで入れた新参者チャットなども、「大航海時代 Online」にスクールチャットとして先に実装されていたので、実装の際には参考にしました。

今村氏: 新参者チャットはお客様にも好評なので、そういったものはどんどん入れて行くべきだと思っています。

渡辺氏: マウスの移動方法はこのアップデートで変わります。

今村氏: マウスの移動方法がカスタマイズできるようになります。今までプレイされていた方は今まで通りの操作が選ばれていますが、これから新しく始められるお客様の場合は、マップ上をクリックして移動するいわゆるクリック移動がデフォルトになります。今はクリック移動のゲームが多いですから。クエストでも「信オン」は与えられる情報が少なくて、かなり突き放された印象を抱いてしまったりすることがあるようです。後はドロップする材料に関しても、目的が分かるような工夫をしていきたいですね。

渡辺氏: 常にユーザビリティを向上させていって、新しいプレーヤーの方がプレイしやすいような形を目指していきます。徐々に追加していけば、今のMMORPGの標準的な部分は押さえられるのではないかと考えています。



■ 「妙技祭」はユーザー主導のイベント。観戦できる「道場」という位置づけ

実はユーザー主導で行なうイベントだった

―― 前回初めて行なわれた「妙技祭」では、報酬が何も用意されていなかったためにユーザーから批判が起こりましたね。結果的には報酬が出ましたが、どうして最初から用意されていなかったのですか?

渡辺氏: 今回は、事前に「妙技祭」の説明不足で申し訳なく思っています。元々はユーザー同士のイベントして盛り上がって欲しい、という意図で行ないました。要するに「道場」ですね。ユーザーの方々は、「道場」でいろいろな技能を試したり、デメリットのない形で対人戦を行なうことでスキルアップを図ったりしていますよね。そういう遊び方をして、「上覧武術大会」に挑むという。「妙技祭」はそんな「道場」を観戦できる形にして、ユーザーが報酬を持ち寄って分配したりとか、そういう遊び方を提供するものでした。ですからシステムによる報酬は、本来の意図とは少し違うわけです。しかし、今回はそういった大会の意図を伝えきれなかったところがありました、今回もいつものようにイベントとしての「上覧武術大会」の1つという位置づけで遊んでいただいていたユーザーの方が多かったので、それに対するケアとして、今回だけは「上覧武術大会」の一部分という形にしました。

今村氏: 「上覧武術大会」は7対7という基本フォーマットがあり、だからこそ景品も出せるのですが、お客様は5対5だったり3対3の戦いも好きですよね。ただそうなってくると勝てる人と勝てない人が明確になってしまって、報酬が偏ってしまうこともあります。ですから「妙技祭」では報酬を出すことは考えていませんでした。「妙技祭」は「道場」のように使って欲しいです。



■ 生産は今後UIや材料の面から大きく見直していく予定

多くの人に遊んでもらえるような生産システムにしたい、と今村氏

―― 生産について他に変更する予定はありますか?

渡辺氏: 実装時期はまだ未定ですが、Iレベルでの見直しをしたり、材料についても今とは違う生産の仕方を増やして行きたいです。

―― UIレベルでの見直しというのは?

渡辺氏: いまですと、何に使うのかわかりにくい材料があるので、その辺りのサポートも含めて検討中です。

今村氏: 「信オン」自体が6年前に始まったゲームで、その頃のゲームは今よりも硬派だったというか説明が少ないものが主流でした。そういう昔気質な部分が信オンにはあちこちにあるので、直せる部分は今の時代にあったものに変えていきたいと思います。

―― 生産を今よりももっとカジュアルなものにしていくという事ですか?

今村:カジュアルというよりは敷居を下げるという感じです。遊んでもらってこそのコンテンツだと思うので。

■ 天下統一が最終目標になるようなゲームにしていきたい

―― 「陣取大戦」が導入されたあとの合戦について、さらに変更が入る可能性はありますか?

渡辺氏: いまはケアしたい部分をリストアップして、どのタイミングで入れようかと考えている所です。細かいものでは7月に実装するものもあります。

―― 今の合戦に対してはどのような要望があがっていますか?

渡辺氏: 1番大きいのは、「陣取戦」、「陣取大戦」、「大決戦」の国力に及ぼす比率に関する部分です。ただ、今は大きな変更の後なので、把握している中にはそれほど大きな要望はありません。以前はまとめて大きく変えていこうという流れでしたけれど、これからは細かいケアを少しずつ継続的に入れていくことで合戦の参加人数も増えていくのではないかと考えています。

今村氏: むしろ合戦の中身よりも、やりたい時に発生しないという意見が多いかなと思います。

―― 公式掲示板でももめていましたね

渡辺氏: 公式掲示板は、よく読んでいます。ユーザーサポートに寄せられるご意見なども含め、とても参考になります。

今村氏: 長期的な視点では考えています。ただそう言った部分は直すまでに相当な時間がかかるだろうと考えていますので、もし入るとしてもおそらくはもっと先になってしまうかなと。秋、冬あるいは春……。

―― 開発側にこんな風な合戦になって欲しいというビジョンはあるのでしょうか? 天下統一ができるのかどうかも、ユーザーの間で長い間議論がされていますが。

今村氏: 核心に触れそうな質問なので、ちょっとドキドキしています(笑)。

国勢はワールドによってまちまちだが、いまだにどのサーバーでも天下統一はなされていない

―― 6年経ちますが、まだ天下統一をする勢力は現われていません。開発チームとしては天下統一はあまりして欲しくないということなのでしょうか?

渡辺氏: そんなことはありません。天下統一して頂くのは目標の1つでもあります。

今村氏: 戦国時代のもっとも大きな目標は、やはり天下統一ですから。それができないようなデザインにしようとは思っていないです。むしろ天下統一した後どうするのかが問題ですね。

―― 6年前に立ち上げた時には、何か考えがあったんですか?

渡辺氏: 天下統一した後も復興戦が起こったりして、常に新しい戦国時代が幕を開けるというような動きになっていくのを想定していました。ただ、現状は若干天下統一しづらい雰囲気になっているので、見直していかなければいけない時期には来ているのかなと。

―― ということは将来的にはもっと国勢が動くような仕様に変わるということですか?

今村氏: そうですね。勢力愛的なものを感じてもらえるようなコンテンツをどんどん追加していく予定です。その勢力で最終的には天下を統一させたいという思いが、プレーヤーの最大のモチベーションになるようなゲームにしていきたいです。それが天下統一という形になるかどうかはまだわかりませんが、戦国時代における大きな目標を持つことができるように、コンテンツをくみ上げて行きたいと思っています。



■ 統合ではなく、ワールド間を行き来できるような遊びでサーバーの活性化を

―― 以前のインタビューで、サーバー統合について検討中であると触れられていましたが、その後検討は進んでいるのでしょうか?

渡辺氏: あれ以降お伝えしていなかったのは申し訳なかったと思っています。ワールド間移動については、いま実装に向けて動いているところです。

今村氏: ただ、それがワールドの統合につながるかというと、そうではなくて、ワールドを移動する事が遊びになるような形で組み込めないかと考えています。

―― 遊びというのはそういったコンテンツを用意するということですか?

渡辺氏: 一時的に他のワールドに行く事で交流も生まれますし、例えば違うワールドから何かを持ち込んで、違う何かが起こるようなことも考えられます。

―― では、キャラクターデータを完全に別ワールドに移動させるようなシステムではないということですか?

渡辺氏: まだ具体的には決めていませんが、検討はしています。

今村氏: 作り手側としては、サーバー統合というのは言い方は悪いですが少し安易な解決法だと思うんです。ワールドをまたいで遊ぶことで、すべてのワールドが活性化していくのが1番望ましいので、今はそれを模索しています。

―― サーバーが過疎だという話がありますが、実際のところはどうなんでしょうか?

渡辺氏: 過疎ではないと思います。ただ、現状遊びづらいと感じていらっしゃるお客様がいますので、その点についてはケアしていく必要があると思っています。例えば合戦などの人がいないと困るようなコンテンツに、どのように人を集めればいいのかを考える必要があるとは思っています。これらの対策を実施したうえで、それ以上の対策が必要と判断される場合は、迅速に検討できる体制を整えるべきだとは感じています。



■ 今後もコンテンツを追加、さらに気になる拡張パックの中身は?

―― 他にも屋敷の拡張や、新勢力、ペットなど様々な要望があると思いますが、今後追加される予定の要素はありますか?

今村氏: いま言われた中にも、いくつか考えているものがあります。

渡辺氏: コンテンツは、このアップデート以降にも用意しています。9月辺りには、何かが実装されていくと思います。期待に応えられるよう、毎月レベルでアップデートを行なっていきますので、その中でできるだけ追加していこうという方針です。

―― 無料の拡張でそれだけどんどん出して行くと、逆に有料の拡張パックはさらにすごいボリュームを求められそうですね。

今村氏: 拡張パックでは新CGであるとか、BGMであるとか、新フィールドであるといったリソースの追加がメインとなります。あとは拡張パックの中に毎月のアップデートも含みます。例えば「大航海時代 Online」ではチャプター制のようにしていますが、ああいうイメージで定期的に追加していく内容も拡張パックの代金に含まれるという考え方です。

―― 世の中では戦国ブームですが、そういった新しいファンを取り込むための要素は何か入りますか?

渡辺氏: 実はすでに「争覇の章」実装の際にもそれは結構意識していました。武将に性格付けや設定を作って、歴史ファンの方に楽しんでいただけるような個性的で魅力のあるキャラクターにしていくという試みをしました。今後もその考え方でいきますので登場する武将には期待しておいてください。


「まだまだ『信オン』でやりたいことがたくさんある」と両氏

―― 武将を取り巻くドラマが、より楽しめるようになるということですね。

今村氏: そういった方向も強化していきたいと思っています。

渡辺氏: やはり戦国の1番の魅力は武将ですから、そこに対する期待には応えたいと思います。

―― そろそろ「争覇の章」が発売されてから1年以上が経過しますが、そろそろ新しい拡張パックの話も出てくるのでは?

渡辺氏: そこについては早く皆様にお伝えしたいと思っています。

―― プレイステーション 3(以下、PS3)への移植を望む声もありますが。

渡辺氏: 「大航海時代 Online」がPS3で好評だという事で我々もうらやましく思っています。移植については個人的には実現したいと思っていますが、いろいろとクリアしなくてはならないハードルもあると思うので、今はまだ検討段階のままという所ですね。

―― もしPS3への移植が決まった場合、PS2へのサービスはどうなりますか?

今村氏: SCE様がPS2のオンラインサービスを停止すると言わない限りは続けていくつもりです(笑)。

―― 移植は近いうちに実現される可能性があるのでしょうか?

渡辺氏: 可能性については検討中ですが、近いうちかどうかは分かりません。

―― PS3に移植をするとしたら、PS3用に作り直すことになるのですか?

渡辺氏: そうですね。個人的にはPS3としての「信オン」が見てみたいですから。

―― E3で「FF14」が発表されて、「信オン」のファンの中にも続編を期待する声が上がっています。「信オン2」は発売される可能性がありますか?

渡辺氏: もちろん、考えたいと思っています。個人的な話になりますが、その時にはぜひプロデュースしてみたいという夢もあります(笑)。

今村氏: とりあえずは今の「信オン」を、国内唯一の戦国MMORPGとしてもっと戦国らしさを高めていきたいと思っています。それが実現できた後には「信オン2」のことを考えてみたいです。まだしばらくは今の「信オン」でやりたいことがたくさんあります。

―― 戦国らしさを高めていくというのは、例えば妖怪と戦うのではなく、よりリアリズムを追求するという事ですか?

今村氏: 妖怪と戦うのは、それはそれで戦国時代としてはありだと思うのです。ただ妖怪と戦った結果が、今はお客様個人のレベルで覚醒値を貯めたり、レベル上げをしたりという結果にしかなっていない。それを、妖怪を倒した結果が、自分の勢力を発展させる要素に影響する、自分の勢力のために妖怪を倒して行くという形で意識できるようになれば、戦国MMORPGらしい形になるのではないかと考えています。


コーエー開発ビルの玄関で記念撮影

―― 最後にユーザーの方にメッセージをお願いします。

今村氏: 今まで蓄積されてきたコンテンツを、今の時代にあった形に遊んでいただけるような形で提供していくのが、今後のアップデートのメインになっていくと思います。7月に実装される「TD」のクエストもその後連作ものとしてやっていくことができればいいなと思っています。これからも「信長の野望 Online」をよろしくお願いします。

渡辺氏: 「信オン」にはまだやれる事がたくさんあると考えています。それにやりたいこともまだまだありますから。今後も「信長の野望 Online」にご期待いただきたいと思います。

―― ありがとうございました。


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※ゲーム画面はすべて開発中のものです


(2009年 6月 25日)

[Reported by 石井聡 ]