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【連載第176回】 あの、おもちゃを徹底レポート




一世を風靡したインテリア型トイが復刻!
バンダイ「SPACEWARP5000」

「SPACEWARP5000」
発売 バンダイ
価格 5,250円
電源 アルカリ単2電池×1(別売)
発売日 発売中



 今回は、名作の誉れ高い「SPACEWARP5000」の復刻版を紹介したい。現在30代から40代までの人ならば、その正確な名前や詳細は知らなくても、一度は目にしたことがあるのではないだろうか。

 何本も立ち並ぶ黒いパイプ。ジェットコースターのように、いやそれ以上に複雑に曲がりくねったレール。そして、レールの上をいつまでも転がり続けるボール。玩具のようでもあり、インテリアのようでもあり、そして何より“知性”を感じさせる全体のフォルム。

 「SPACEWARP5000」のオリジナル版は、'84年にバンダイから発売された。単なる玩具の枠にとどまらず、幅広い層のユーザーに好評を博し、販売を継続していた4年間で約100万個を売ったという大ヒット商品だ。

 筆者の個人的な思い出を語れば、「欲しいけど手が届かない商品」だった。遊んでみたいのはやまやまだが、価格的にも技量的にも、自分にはまだ早いと感じていた。「SPACEWARP5000」が放つ“大人の香り”に圧倒されていたのだ。

 そうした印象は、今回の復刻版でも色褪せていなかった。復刻版にありがちな古臭さやノスタルジアは、微塵も感じさせない。最新発売のトイとして、東急ハンズなどに陳列されていたとしても、何ら違和感はないだろう。


単純作業とクリエイティブ、両方の楽しさを味わえる

 覚悟はしていたが、パッケージを開けると目に飛び込んできたパーツの多さに圧倒された。出てくる、出てくる。ベース、シャフト、レール、アーム、レールサポート、ギアボックス、レールジョイント……種類だけでも21ある。これは腰を据えて取り組まないと完成しない、と思いを新たにする。

 失敗や混乱を避けるために、まず取扱説明書を熟読する。作業の工程はこんな感じだ。

 すべての土台となるベースを作り上げる。次にレールを支えるためのアームをたくさん組み立てる。アームをシャフトにさしたら、ボールを低地から高部へ運ぶエレベーターを構築する。最後にアームからアームへレールを張り巡らし、ループなどを作って完成させる。

パッケージ。難易度が「LEVEL3」と表示されている 取扱説明書は大判で、図も見やすく描かれている パーツすべて。種類別に袋に小分けされている
レールを支えるアームは、特に多く用意されている ベースには、シャフトを自由にさせるように多くの穴が開いている レールは、約16,000mm分ある


 パーツが多いので、作業の量も膨大なものになる。筆者も最初は「大変だな……」とひるんでいた。しかし、作業を進めるに連れ、「SPACEWARP5000」の組立は、単なる作業ではないことがわかり、俄然と楽しくなってきた。

 アームを組み立て、シャフトへ差し込み、シャフトをベースへ取り付けていくまでの流れは、単純作業。地味で単調だが、量が多い分、「ここまで進んだんだ!」という達成感を味わえる。

 対して、アームの中にレールを通し、ボールが通る道を作る作業は、頭脳を要求される。重力に従ってボールが勢いよく転がっていくように、軌道を考え、微調整を重ねなくてはならないのだ。基本的な完成型はあるのだが、カスタマイズも自由。作り手の創造性を刺激される工程になるわけだ。単純作業と創造性のバランスが絶妙で、当時の大人たちが熱中した理由をようやく理解することができた。

6種類のパーツに分割されていたベースを接合する ボールを下から上へ運搬する電動エレベーターの組み立て エレベーターは3本のシャフトから成り、中央にボールを運ぶウォームを重ねる
アームを組み込んだシャフトをベースに刺していく シャフトを刺し終え、骨組みの完成だ レールをアームにはめこみ、説明書通りにカーブなどを作る



ボールが走ったら、今度はオリジナルへ……

 作業を続けること、4時間。筆者の「SPACEWARP5000」は、一応の完成をみた。完成後のサイズは、横幅にして約60センチ。高さは、約30センチだ。普段打ち合わせに使っている仕事場のテーブルに飾ると、ややもすればベースの一部がはみ出してしまいそうな大きさだ。大きいゆえに、どの角度から眺めても非常に映えて、惚れ惚れとする。

 しかし、そんな筆者の喜びもすぐに醒めることとなる。ボールをレールに落とし、転がしてみる。……ボールは数センチと転がらない。すぐにレールとレールの間から落ちてしまうのだ。あわよくばカーブを回ったとしても、その遠心力で外へ振り落とされてしまう。

 ここで筆者は、ようやく「SPACEWARP5000」の真価を悟った。

 鉄道模型なら、レールは固定されている。自分でコースを組み上げるといっても、レールのパーツはすでに存在している。しかし、「SPACEWARP5000」は、そのレールそのものを自分で作るトイだったのだ。レールのパーツは、手で自在に曲げることが可能。つまり、ボールが淀みなく転がるのも、ジェットコースターさながらに疾走するのも、作り手に委ねられているのだ。

余す部分なくレールを張り巡らせる コースのハイライトといえる360度ループ
ボールを転がし、勢いよく滑るその軌道を眺める さらなる調整を加え、ボールの走り具合に磨きをかける


 レールにボールを落とし、転がす。落ちる。その原因を調べて、レールの形や角度を調整する。ひとつの部分を触ると、レールの別の箇所にゆがみが出ることがあるので、さらにボールを転がして再チェックをかける。

 そうこうしているうちに、ボールがスムースに転がる範囲が5センチから10センチ、20センチ、30センチ、50センチと次第に広がっていった。コース最大の坂を一気に降下し、360度のループを見事に回りきったときは、小躍りしたくなるくらい嬉しかった。

 なるほど、これも「SPACEWARP5000」の面白さなのだな。こうしてボールを転がすスキルを身に付けたら、今度は自分だけのアレンジを加えたり、オリジナルのコースを作ったりして、より奥の深い遊びに挑戦できるようになるわけか。文頭に「知性を感じさせる」と書いたが、まさにその通りの遊び心地だった。

 それにしても、クリアパーツのレールの上を駆け抜けるボールの美しいこと。完成後、相当長い時間眺め続けているのだが、まるで飽きない。

(C)BANDAI 2005


□バンダイのホームページ
http://www.bandai.co.jp/
□「SPACEWARP5000」のページ
http://www.bandai.co.jp/item/item/4543112266590000.html


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(2005年3月10日)

[Reported by 元宮秀介]


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