★ PCゲームレビュー★

中世欧州の封建制度を緻密に再現
家督存続の難しさを実感できる歴史RTS

クルセイダーキングス 日本語版

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 発売元:メディアクエスト
  • 価格:8,379円
  • プラットフォーム:Windows 2000/XP
  • 発売日:12月17日(発売中)


 今回紹介する「クルセイダーキングス日本語版」は、「Heart of Iron」や「Europa Universe 2」など、ハードコアな歴史シミュレーションゲームを作りつづけていることで知られるParadox Entertainmentによる最新作「Crusader Kings」の日本語版だ。

 本作は非常に中毒性の高いゲームで大変な良作と言えるのだが、込み入ったルールを持つためにマニアックな印象がある。そのため、よもや日本語版が発売されるとは予想していなかった人も多いだろう。しかし今回、日本語版の発売で、この難しいながらも奥の深いゲームを多くの人にお勧めできることとなったのは嬉しいニュースと言える。

 オリジナル英語版が発売された当初、本作の持つ難しそうな印象の前に筆者もプレイをためらっていた。しかし、日本語化をきっかけに手をつけてみたところ、これまた大いにハマれる難解ではあるが深いゲームであることがよく分かった。そこで、英語版のレビューが既に掲載されている本作だが、あらためて日本語版をプレイした筆者の感想をもとに、複雑な印象のあるゲームルールを噛み砕いてご紹介したい。


■ 「封建制シミュレーター」と言いたい、極めてユニークなSLG

イタリア半島北部に居を構える公爵でプレイ中。地域の数の多さが非常に特徴的なゲームだ
 本作のジャンルはRTSとして紹介されることが多いが、確かにリアルタイムに時間は進行するものの、「RTS」と言って想像される一般的なストラテジーゲームとは非常に趣を異にしている(画面写真をご覧いただいても一目瞭然だろう)。そのため、本稿ではあえてジャンルとしては歴史シミュレーションゲームという表現を使用したい。

 本作は中世欧州を舞台に、西暦1066~1454年のおよそ400年間、十字軍の時代に生きた各地の諸侯を主人公にして展開する、いわゆる国取りゲームの一種だ。西の果てはグリーランドやスコットランド、スペイン、そして東は現在のイランや白ロシアに至る広大な領域が、ゲームの地図となっている。そして領土の区分は非常に細かい。統治対象はいわゆる「王国」ではなく「属州」が最小単位。イタリア半島だけで30以上の地域があるという込み入りようだ。というのも、本作のプレイ可能な主人公はいわゆる「国王」クラスの人物だけでなく、いくつかの属州を統治する「公爵」や、もっと少ない領土を持つ「伯爵」が含まれるからである。

 そして本作の最大の特徴は、プレーヤーが領土を統治するにあたって、中世欧州の封建制度を再現したルールにのっとる点である。すなわち、王は公爵を臣下に持ち、そして公爵は伯爵を臣下に持つという封建的な契約による忠誠の形だ。

 このゲームでは、どこかに領土を持ち、どこかの国王に忠誠を誓っている公爵や伯爵(封臣)は、自分の持つ範囲の領土や軍隊に対する主権を持っていて、それが君主の絶対的なコントロール化におかれるような事はない。封臣はあくまで、その君主に対して忠誠を誓っているだけであり、決して君主の所有物となってしまうわけではないのである。

 このため、例えば、君主が戦争を始めたときに、その配下にある諸侯が軍隊を出さないこともありうる。またあるいは、君主の意向を聞かずして勝手に対外戦争を始める封臣が出ることもまた普通のことで、その始末をつけるために君主が軍隊を出さざるを得なくなることもよくあることだ。

 また、ゲーム中の国王や公爵や伯爵といった、いわば「領土主権者」間の忠誠と服従の契約というものは、あくまで当事者間のものである。例えば、何人かの伯爵を封臣としている公爵が、ある国王に忠誠を誓っているとき、その公爵の配下にある伯爵たちはあくまでその公爵の封臣であり王の封臣ではない。したがって、国王がそれらの伯爵たちに直接軍隊の動員を指令したり、封土を召し上げたりといった直接的な干渉はできない、といった感じである。

 これがなかなかくせもので、国王をプレイしているとき、多くの領土を安堵してやった封臣が独力で領土拡張を始め、気が付けば、その封臣がプレイヤー自身よりも多くの封臣を持ち、直接動員可能な国力はより上になっている、という状態もありうるわけだ。これを嫌って全ての領土をプレーヤーの直轄地にしたくとも、通信手段の乏しい当時の社会を反映したルールがこれをさまたげる。直轄領を増やせば増やすほど、統治効率は落ち、税収は減り、動員できる軍隊も激減するという悪循環が待っているのだ。王国の国力を健全に維持するためには、適切な範囲で領土を家臣にまかせることも大事。数十州にまたがる大王国ともなれば、国王の直轄地より封臣たちに与えた領土のほうがはるかに広くなるわけだ。

 本作のゲーム開始の時代となる西暦1066年時点、欧州の一大勢力であるカペー朝フランス王国がちょうどそんな状態だ。諸侯の推挙によって国王に即位したユーグ・カペーを祖とする国王フィリップ一世の直轄領はたったの2州で、配下の周辺諸侯たちのほうがずっと領土も軍隊動員力も大きい。つまるところフランス各地を治める諸侯の中で最も弱く御しやすいという理由で王に選ばれているわけなのだが、ゲームにもこうした当時の勢力図がしっかりと反映されており、自分が王様だからといって国の内政を何もかも勝手にするというわけにはいかない。そんなときプレイヤーは配下の封臣たちのご機嫌を損ねないよう腐心するという体験を強いられることもあるが、それもまた楽しいポイントの一つとなっている。

「ヘースティングス」シナリオ開始直後の領土マップ。イングランド、フランス、ドイツの三強が最有力勢力となっている。紋章盾のアイコンは、そこが伯爵や公爵、あるいは王によって直接統治されていることを示している この時代、ビンザンチン帝国は広大な領土と宗教的権威をもつ大帝国だったが、いずれイスラム教国との戦いに明け暮れ疲弊していくことになる ミラノ公爵をプレイ中の「関係図」画面。緑色の地域が直轄領で、薄い緑の部分は配下の伯爵領。薄い青の部分は君主である神聖ローマ帝国の領土、あるいはその封臣の領土だ


■ 一族の血統を維持することが究極の目標。政略結婚で家督乗っ取りも

君主の詳細画面。君主は軍事・外交・陰謀・管理の各能力が高いことが望ましいが、有能な廷臣を補佐につけることで各能力を補うことができる(カッコ内の数値)
 さて、中世欧州の封建制度を再現すべくして、非常にユニークなゲームルールを持つ本作だが、400年間というゲーム時間を続けていくなかで、最大の問題としてプレーヤーに降りかかるであろうものが家督の継承に関するルールである。このゲームにおいては、むしろこれこそが本題といってもいいかもしれないほど重要だ。

 本作でプレーヤーがプレイするのは「国」や「領土」ではなく、あくまでも国王、公爵、伯爵といった一人の君主、ただの人間である。40代を過ぎれば常に老衰死の可能性があるし、病気を患ったり、あるいは戦場で敵に捕えられるようなイベントが起これば、もっと若くして突然死んでしまうこともある。

 こうしていずれ君主の世代交代が必要になるわけだが、そのときにプレーヤーが、自分の領土を統治し続ける権利を得るためには、一族の中から世継ぎを出す必要がある。そのために、君主が若いうちに嫁をもらい、男児をもうけておきたい。もし、君主に適切な世継ぎがおらず、祖を同じくする親戚一同もすべて死んでいるという最悪のケースだったら、そこで君主が死亡した瞬間にゲームオーバーである。血統が断絶してしまえば、血を分けない他家に領土を継がれてしまい、プレーヤーが操作すべき対象がなくなってしまうのだ。

 ゲーム内では、女性を含む全てのキャラクターには軍事・外交・陰謀・管理という4つの基本能力パラメーターがある。君主を勤めるキャラクターならば、外交能力は封臣一同の忠誠心を高くしておくために絶対必要条件で、税収や軍隊の動員力を高く維持するために管理能力も要求される。戦争をするなら軍事能力も平均以下では困ってしまうだろう。

 こうした基本能力は親から子へ、代々遺伝していくようになっており、無能な両親からは無能な子しか生まれない。まれに天才児が生まれることもあるが、その確率は極端に少ない。また、キャラクターには病気・鬱病といった能力値にマイナス属性を与える追加属性がともなうこともある。こうした追加属性も(未確認だが)遺伝する傾向があるようで、病気がちな一族には病気がちな子供ばかり生まれる、という運命を背負ってしまうことも当然のことながらある。

 優秀な君主を戴きつづけるためには、有能な嫁を他家から探し出すことがとても大切だ。君主の嫁だけでなく、後継者候補となりうる兄弟や従兄弟にいたるまで、宮廷内の一族の結婚はプレーヤーが裁可できる。ゲームを通してなるべく優秀な子が生まれる縁組をひたすらとりつづけることになるだろう。

待望の嫡男が生まれた瞬間。ゲームながら、無事に育ち立派な当主になることを願ってやまない
 家督の継承方法は複数のスタイルから選ぶことができる。デフォルトの設定ではほとんどの一家で「サリカ長子相続制」(長男が全ての領地、財産を相続する)が取られているが、長子が無能な子に育ってしまった場合もありうるため、適宜に変更したい。多くの場合でお勧めなのが、「準サリカ親族相続制」。この継承法では、君主がもうけた男児の中で最も優秀な子を選んで家督を相続させることができる。あるいは君主の子が全員無能、ということになれば、親族の中から最も優秀な人間に領土や称号を与えて力をもたせ、継承者候補とすることのできる「選択法」がお勧めだ。

 ただし「選択法」では、一族以外の封臣も力のある者から順番に継承者候補となるため、与える領土や称号の量をうまく調整することが大切となるだろう。与えられる領土がないときには、封臣から領土を召し上げて再割り当てするという方法もあるが、あまり乱暴な召し上げを乱発すると全封臣の忠誠度がぐっと下がってしまい、反乱を気にする必要性が生じてしまう。

 対外戦争を行なって新領土を獲得し、それを分け与えるという方法もあるが、いずれの方法も国家の評判を下げてしまう。評判が悪くなると封臣の忠誠度を高く維持しておくことが難しくなり、下手をすれば王国は大分裂。評判を気にして相続法をいじれないままでいると、無能な君主が家督を継いでしまい余計に身動きがとれなくなるという悪循環。こういった宮廷内の人事内政が非常に難しく、また面白いのだが。

 本格的な継承制度の再現を行なっている本作だが、これを利用して他家の家督を乗っ取ることも可能だ。子が女児しかいない君主の家で、かつ、中継ぎとして女性の相続が認められている「準サリカ」の継承法を取っている家があれば、それはまさに乗っ取りのチャンス。長女を自分の嫁にもらい、男児を生ませることができれば、相手の家の筆頭継承者は自分の子ということになるわけだ。これを利用して、ただの伯爵家が、たったの二世代で王家を乗っ取ることも可能。まさに政略結婚というわけだ。

 しかし、女児しかいない君主なんてものはそうそうあるものではないので、ここで「暗殺」コマンドが活躍することになる。相手のもつ男児をバシバシ暗殺して、乗っ取りをたくらもう。しかしこれも、君主の持つ陰謀能力が高くなければ成功はおぼつかない。たとえ成功しても、陰謀が公にバレてしまえば国家の評判はガタ落ちになる上、報復の暗殺で君主が殺られるかもしれないという諸刃の剣だ。

継承法や税制、また技術開発の選択や進捗の確認はこの画面で行なう。マップ上に薄い緑色で表示されている地域が「準サリカ親族相続制」を採用している地域だ 出産の際に死産することもあり、そのときに母も亡くなることがある。優秀な女性をこれで失うのは非常に痛いが、運命だと思って受け入れるしかない

隣国を乗っ取るために最も安価で平和的な方法が、暗殺である。陰謀が暴露されれば国家の評判は失墜するが、成功すれば王家さえ乗っ取ってしまえるのは魅力 国の内政は税率の調整と、各種建築物の建築が主となる。教会への寄付は手痛い出費だが、これを削ってしまうと領内の聖職者の忠誠心がさがり、異端発生の原因となる


■ キリスト教国同士の戦闘はあくまで「私闘」扱い。十字軍による異教徒討伐を活用して国力を伸ばそう

戦争は各属州で動員した部隊単位で行なわれる。画面はムスリムと戦争中、イタリア半島への侵入を許してしまったところ。赤く表示されている属州は敵国の直轄地
戦争に勝ち、一定の領土を獲得したら、その地域に対する称号を新しく創設することができる。多くの称号を得るほど、君主の威信は高まるというわけだ
 さて、国取りゲームとして最重要項目である戦争である。本作での領地の所有権は、単純に戦争の勝ち負けで即、決まるわけではないところが大きな特徴だ。領土を確保するためにはその領土を所有することを正当なものとする「称号」が必要となる。キリスト教国同士では、戦争の開始に先立って必ず、相手の所有する称号にたいする「請求」を行なう必要がある。でなければ、大義名分がないとして開戦すらできない。

 称号とは、たとえば小さくは州一つごとに当てられる「County of Reims」(ランス伯)といった伯爵号。あるいは複数の州を含む地方を治める称号、例えば「Duke of Normandie」(ノルマンディー公)といったもの。そして「King of France」(フランス王)といった王の称号である。

 本作では、キリスト教国同士の戦争は、こうした称号の取り合いを通じた私闘のようなものとして描かれている。称号の請求を解決する方法として戦争という手段がとられる、という状況がよく再現されているわけだ。相手の称号を自分の物にするには、相手国の軍隊を撃滅し、相手の持つ全ての属州の砦を落城させてから、講和の交渉の中で称号を認めさせるというステップを踏むことになる。

 称号を請求するには君主の持つ「威信」ポイントが必要だ。当然ながら上位の称号になるほど多くの威信ポイントが必要で、地方の小領主がいきなり「Emperor of Bizantium」(東ローマ帝国皇帝)のような最強レベルの称号を請求することは不可能というわけだ。この威信ポイントを高めるためには、より多くの領地と、より多くの封臣を抱えつづけることが必要。ポイントは一ヶ月単位で少しづつ蓄積していくため、称号請求の前に十分な威信を得るために「待ち」を必要とすることも多くなる。しかし、せっかく溜まった威信ポイントも、その君主一人のものであって、代替わりが発生すれば失われてしまうので、親の代のうちに忘れずに、できるかぎりの称号を請求しておきたい。

 しかし、あまり称号の請求を乱発していると、国家の評判がいずれ地に落ちてしまう。評判を高めるには家臣に称号を分け与えるという方法が有効だが、実際のところ称号請求で失われる評判のほうが大きいので、基本的には評判が自然回復する時を待つことになる。これに10年、20年という長大な時間を要するのは日常茶飯事で、無能な君主や、反乱といった事件が重なればさらに国力が伸び悩む時期がかならずくるだろう。

 これを一挙に解決するのが十字軍である。キリスト教国同士の戦争と違い、スペインやアフリカ、中近東に至る範囲に勢力を持つムスリムの国々に対しては、自由に宣戦布告できる上、落城させた州の領土は即座に自分の物となるのだ。さらに、イスラム教の州を占領し、改宗させるたびに威信ポイント、および信仰ポイントが獲得できる。ローマ法王の覚えがよくなれば法王後見人に指名されることも。これもまた封臣の忠誠を維持するのに役立つ。内政がうまくいかない時期には、これを活用しない手はない。

 こうして、キリスト教国同士の戦争で領土拡張、そして評判が下がったらイスラム教国に対して大侵略、そして国家の評判が回復したらまたキリスト教国に称号請求&宣戦という鬼の侵略サイクルが考えられるわけだ。ただし、これには相当の国力をもっていなければ実現は難しい。勝てそうな相手を選んでイスラム教国に宣戦すると、その同盟関係にある強大なファーティマ朝やアッバース朝といった大国が、同盟関係の連鎖で次々に宣戦してくることがある。筆者は、この思わぬ連鎖反応のために自国を滅ぼしそうになったことが何度もある。戦争は外交の延長というが、やはり難しいものである。

 さて、軍隊の戦闘そのものは自動解決で、合戦シーンのようなものは存在しない。その代わり、自分の統治する各属州で召集した部隊が1単位となるため、国が大きくなれば自然と部隊数も多くなる。さらに封臣の統治する属州から軍隊を召集(忠誠度によっては拒否されることもある)するなど、同時に操作しなければならない対象が非常に多くなってしまうのも特徴の1つだ。おまけに大国同士の戦争となると、部隊単位の戦闘が世界各地に分散して同時発生することもよくあり、なかなか忙しい。では、こういった戦闘ではどういった軍隊が勝てるのだろう。本作における軍隊の強さは人数と装備、そしてそれを率いる司令官の軍事能力によって決まる。

 軍隊の人数は、その部隊が属する属州の経済力と、動員可能人数の充実度によって決定される。動員可能人数とは、その属州で兵役に適した人間の数とでも言うべきか。これは徴兵制度なんてものがない当時の時代背景を反映しており、一度消耗した人員がまた召集可能となるまでには、世代を重ねるほどのタイムスパンが必要で、動員可能人数が最大になるまで10年20年と待たなければならないのである。このため、激しい戦争はあまり乱発できないというわけだ。

 また、軍隊の装備はその属州に広まっている軍事技術によってきまる。他の一般的なゲームと違い、さまざまな技術は属州単位で広がっていく仕組みになっている。技術開発そのものは、君主の首都がある属州でのみ行なわれ、プレーヤーはそこで何の技術を開発するかという選択だけをすることができるだけで、いつなんどきに技術が開発完了するかはコントロールできないし、わからないのが特徴だ。これまた、新しい文化がなかなか伝播していかない当時の時代背景を反映しており、ある属州で開発された新技術が、隣の属州に伝播するまでに数年を要することもある。ゲーム開始時には、おおむね欧州は後進国であり、イスラム教徒の国々がある東方のほうが技術的に非常に進んでいるのがおもしろい。こういった技術が西欧の端まで到達するまで、これまた何十年という時間がかかるわけだ。

スペインのムスリムを追い出すべくレコンキスタ中。大国を相手にしたくない場合、独立した小国を相手に戦っていくため、どうしても領土は飛び飛びになりがちだ 持てる全ての封臣に動員をかけ、集結させようとしているところ。属州単位で召集された部隊の数がおわかりいただけるだろうか


■ 中毒性の高いゲーム内容。複雑な欧州史を楽しめるゲームとして高く評価

即位した君主はわずか7歳。貧弱な宮廷をなんとかしなければならないが……先は長い
ファーティマ朝の膨大な戦力に押され、各地から戦力をかきあつめるも、滅亡寸前まで追い込まれてしまった
 さて筆者は、はじめから強い王家を避け、西暦1066年開始のゲーム(ヘースティングスシナリオ)にてミラノ公爵家をプレイしてみた。イタリア半島の付け根に位置するミラノ公爵の治める直轄地は3州で、うち2州は経済的に非常に優れた地域。イタリアの北端でローマ帝国の復活を夢見るという遠大な野望を実現するため、豊かな経済力を駆使していこうという考えだ。

 さてゲームを開始してみたところ、君主はわずか7歳の幼児。そして宮廷内の人間はわずか7人という貧弱さ。幼児は軍隊を率いることができないし、教育が完了していないため、能力パラメータも低い。しかも宮廷に男性の血族がいず、男性は4歳の君主だけ。これではいきなりお家断絶という危険性があるので、とにかく君主の成人を待ち、16歳になった時点で即座に優秀な嫁をもらい、後継者作りに励むという作戦。対外拡張は後回しだ。結局、この7歳の君主はすくすくと育ち、成人し、無事結婚。そして順調に子が生まれ……、後継者作りという所期の目的は達成された。

 結局、74歳で大往生を遂げた君主には、6人の男児、5人の女児、そして数十人の孫、そして大量の曾孫ができていた。ねずみ算的な増殖ぶりに、人類の歴史の偉大さを感じざるを得ないが、統治100年を過ぎると曾孫が子を産み、その子がさらに子を増やし、と宮廷内の廷臣は数百人の凄まじい人口に。およそ1週間ごとに教育課程の採決や、結婚の裁可が必要となるほどの混雑振り。とりあえず血統が絶える問題はなくなったわけだが、これはさすがにわずらわしいことこの上ない。統治150年あたりから、宮廷内の結婚は「特に優秀な男女に限り」行なうこととして、人口を抑制することにしたのだが、この血統はどうやら子沢山が多く、なかなか減らないものである。

 宮廷内の人員が充実するにつれ、徐々に対外拡張に打ってでることにした。優れた経済力により、各属州の建築物は万全、しかしミラノ公爵家は神聖ローマ帝国の臣下であり、さらに国境を接する隣国はフランス王国の臣下。周辺国に対して勝手な戦争を行なうほどの力はない。したがって対外拡張も陰謀と政略結婚とで成されることになる。そして、数十年の苦闘の結果、周辺の数州を表向きは平穏に領土化することができた。結局、属州が10を超えるまで、一度も戦争を行なうことがなかったのである。これもまた本作ならではのゲーム展開だ。

 転機は3代目の時代に訪れた。神聖ローマ帝国に愚鈍な君主が即位し、その著しい外交能力の低さから次々に封臣が離反したのである。結局、わずか数年でドイツ全域は独立諸侯が乱立する戦国時代に。同じく無主の独立勢力となったミラノ公爵家も、対外戦争を決意。

 まずは威信を高めるため、イタリアのシシリー島を占拠しているイスラム教国に対して宣戦布告。その領有を画策するが、これが大きな誤算となった。同盟関係を理由に巨大なファーティマ朝に宣戦布告され、自軍の軽く10倍の戦力を次々に送り出してくる相手に対し、結局イタリア北部にある直轄地を、ひとつを除いて奪われるという大敗北を喫してしまった。完全に滅ぼされる前になんとか講和できたのは大変な幸運だったが。結局、残った封臣の領土を召し上げて直轄地とすることで、国力を高める戦略にでることにした。反乱が恐ろしいので、これにも数年を要している。

 ちょうどその頃、フランス王国が封臣の反乱によって瓦解。直轄地が2州までに減りファーティマ朝に対する失地回復も絶望的だったミラノ公爵家にとり、これは奇貨である。早速、疲弊した元フランス王国封臣に対し称号請求、開戦し領土を分捕りまくる。いよいよ力をつけ、ファーティマ朝に対して失地回復をかけて再度宣戦布告。しかし、これも戦力差に圧倒され、またも滅びる寸前まで追い詰められる結果となった。この後しばらく、ムスリムへの戦争は自粛することに。

 結局領土拡張はキリスト教国中心に対して行なうことになった。政略結婚と称号請求を組み合わせ次々に公爵号を獲得し、統治150年にしてついに、ミラノ公爵はブルゴーニュ王に即位。念願の王位獲得である。早速、周辺の有力公爵家に対し「忠誠を迫り」まくり、さらに領土を拡張していった。4代目にしてフランス、スペイン、5代目にしてイタリア、エジプト、そしてエルサレム周辺の莫大な属州を領有し、宿敵ファーティマ朝を滅ぼしたのは、その僅か60年後のことである。しかし、世界征服は、まだ遠い。

 というわけで、筆者は本作に大いにハマってしまった。このゲーム内容をプレイしつくすまでに、相当な時間を投入してしまったが、まだまだ飽きる気が全くしないのが恐ろしいほどである。確かに、ゲームルールは複雑で、画面は地味だし、イケイケの戦争をガンガン行なえる爽快さはほとんどない本作ではあるが、奥深いゲーム性と、欧州の複雑な歴史を少しだけ理解した気になれる点は非常に高く評価したいと考える。

 大変マニアックな内容のゲームだけに、恥ずかしながら英語版は敬遠してしまった筆者だが、日本語版の発売をきっかけにこのよくできたゲームを多いに楽しむことができた。この、一見地味で小難しそうなゲームを日本語化して発売するという英断を果たしたメディアクエストには頭が上がらない。表現上の制約で人名や地名を原文のまま残してあること、また、各所に目立つ誤訳や意味不明な文章については、残念ながら見過ごすほかなかったが、それでもゲームを楽しむ上ではほとんど障害とはならなかった。誤訳や意味が通じにくい部分については、ユーザー自身でデータを改変することもできるので、気になる方は ゲームインストールフォルダにある \config フォルダ内のデータファイル(テキストCSV形式)を見て、好みの表現に変えてみても良いだろう。

 確かに、万人にお勧めできるとは言いがたい、時間のかかるゲームではあるけれども、手ごたえのあるストラテジーゲームを求めている人であれば誰でも、是非、本作「クルセーダーキングス」を手にとって試していただきたい。長く長く楽しめることうけあいである。

「大動員令」を発令すると、すべての封臣諸侯に軍勢の動員をはかることになる。拒否されることもあるが、封臣の数が多いとこの画面のように凄まじいダイアログ数に 国力を高め、沢山の称号を獲得して威信を高めれば、周辺の小国に対して忠誠を迫り、家臣に加えることができる。めったに成功するものではないが、画面は成功した瞬間

イスラム教国への宣戦布告は、同盟関係をよく調べておかないと凄まじい数の敵を相手することに。この画面では同時に三国から宣戦布告されてしまった 戦争中に王が若くして死に、その子が後継者として即位した瞬間。すべての称号と財産が継承され、王権が引き継がれていく

(C) 2004 by Pradox Entertainment. Distributed by (C) 2004 Typhoon Games (HK) Ltd. All rights reserved.


【クルセイダーキングス 日本語版】
  • CPU:Pentium III 600MHz以上(Pentium 4 1.0GHz以上を推奨)
  • メインメモリ:256MB以上
  • HDD:600MB以上
  • ビデオメモリ:32MB以上


□「クルセイダーキングス 日本語版」のページ
http://game.livedoor.com/pkg/ck/
□関連情報
【2004年6月1日】PCゲームレビュー「Crusader Kings」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040601/ck.htm

(2005年1月27日)

[Reported by KAF@ukeru.jp]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

(C) 2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.