■海の男としていかに生きるか?
本作の舞台となるのは17世紀のカリブ海。コロンブスによる新大陸の発見により、ヨーロッパ諸国という飢えた狼たちはその戦いの本能を思う様発揮できる場所を見いだした。彼らは欲望のまま南北アメリカ大陸に襲いかかり、侵略と略奪を繰り返し、さらに開拓者によって確固たる根を張っていった。 インカ帝国を滅ぼし、その富を独占しようとしていたスペインだが、ヨーロッパの国々は「一人勝ち」を許さなかった。財宝を満載し、そのため武装が少なくなった船は他の国々にとって格好の獲物だったのである。カリブ海はスペイン、オランダ、イギリス、フランスが激しく争う場所となった。財宝だけではなく、開拓者のためのわずかな資源を奪い合い、覇権を争う無法地帯は、イスラムとキリストの戦いが背景にある地中海とは少し性格の違う海賊を生んだ。国家はその富を多く得るために海賊を利用し、海賊達もまた国家の争いを背景に、一攫千金を狙ったのだ。 混沌渦巻くカリブ海でどう生きるか? 本作はこの舞台の主役、船乗りとなって富を求めていく。誠実な商人を目指しても良いし、跋扈する海賊を追いかける狩人になっても良いし、国家の手先となって思う存分戦いを楽しんでも良い。覚悟さえあれば、見境なしに船を襲いあらゆる国家の敵になることも可能だ。 本作の基本システムは貿易ゲーム。小麦や果物、レンガや肉、さらにコーヒーやココアなど19もの品目の物資を、各街の需要と供給を満たすことで収益を上げていく。カリブ海、メキシコ湾、そして大西洋、南北アメリカ大陸の間にある海は広大で、多くの街があり、さらに国家間のパワーバランスも関係して、初心者はとまどってしまうかもしれない。各街の生産力まで絡んでくるので、コツをつかまないと大きな利益を上げることは難しい。 筆者が本作をプレイして感じたのは、シリーズを重ねた今作は、シナリオである程度初心者への配慮を行なっているという感触だった。チュートリアル的なシナリオだけではなく、用意されているシナリオはオランダの先兵となってイギリスを脅かしたり、海賊を追跡したりと、刺激的なシナリオも用意されている。 これら戦いが中心となる展開は、通常、戦いを行なう船を用意することすら資金がかなりかかるため、難しい。しかし、シナリオではこれらの条件が初期状態として用意されているため、思う存分戦いのみに集中できるのだ。貿易による緻密なプレイが楽しい本作だが、戦いのベクトルも強化されている印象も持った。 ミニゲーム的なものであるが、「決闘」という新要素も加わっている。貿易、戦い、そして冒険。硬派な匂いは残しながらも、初心者も楽しめるように間口を広げる努力を確かに感じさせる作品である。ディズニーの人気アトラクションでもある「カリブの海賊」。本作はその魅力的なテーマを、リアル寄りながら、多くのロマンも詰め込んで再現しているのだ。
■貿易と戦い、物語性も取り入れたゲーム性
ゲームには、チュートリアルと、多彩な要素が体験できるように条件が設定された「シナリオモード」と、わずかな資金と一艘の船で自由にゲームを始める「フリープレイモード」の2種類がある。プレーヤーは船を元手に資金を稼ぎ、いずれは街そのもの、さらには所属する国の重要人物にまでその影響力を増やしていく。
船にはそれぞれ、「船長」がいる。資金が増えてくればその船長に基本的な貿易を任せ、自分は新たな船長による新しい船団を造り、新しい市場を開拓すればいい。経験を積んだ船長は「自動交易」という“マクロ”が可能になり、時々見てやる必要はあるものの、儲けの多いルーチンワークをしてくれるようになる。 ゲームの舞台となる海では、多くの国が島々の港を取り合い、激しく争っている。戦争時ならば、総督から「私掠書」を発行してもらうことで、敵の商船や軍艦を襲うことができる。敵の船を襲い、戦いに勝つことで商品や船を掠奪、それを自国に持ち帰り、売り払うことで資金を増やす。ここで自分で祝賀会を催せば、ちょっとした英雄気分にも浸れるだろう。得た資金で更なる軍事力を得て、国の「用心棒」として活躍することが可能だ。戦闘システムについては後述するが、軍事力を強大化させ、護衛艦隊をうち破り、堂々と敵都市に侵略し、敵の防衛施設を破壊して攻め込む爽快感は、独特の興奮をもたらしてくれる。本作の大きな楽しみといえる部分だろう。
戦争や、海賊の情報などはゲームを進めているうちにイベントとして発生するが、それ以外にも酒場で噂を聞いたりすることで、様々なミニイベントが起こる。財宝の情報や、物資の輸送、さらには暗殺者の排除など多彩なものがあって、基本的なゲーム展開とはまた違った楽しさがある。ただし、ちょっとフラグ性が強く、時間を無駄にしてしまう場合もあるので、ミニイベントに挑戦する前は必ずセーブをしておきたい。 各地の特産、そして需要を見越し、小さな地区で経済を回し利益を得て、軍事力を整えてその使い道を検討する、と言うのが基本的なゲームの展開だが、より経済にのめり込むこともできる。街の中にさまざまな施設を建て、その街を豊かにしていく。街を育成するゲームとしても本作は大きな楽しさを持っている。 特に、国に取り入り、自分たちだけの街を得たときの達成感は相当なものだろう。その街の港は自分たちの母港となり、住人は身内となる。今までは名声を得るために立てていたさまざまな施設も、より住民達の事を思って設置させるようになるだろう。当時の船乗りの大きな夢であった、自分の拠点を得て、カリブ海一番の街に育て上げる、その気持ちを追体験できるのだ。かなり困難な道であるが、挑戦しがいのある大事業だ。 本作は様々なシステムを盛り込むことで、多彩な方向性を持ったプレイが可能になっている。しかし、貿易に関してはリアル指向な点も多く、ちょっと油断してると資金と時間を浪費しかねない。特に一艘の船からスタートし、権力を高めるためにプレイを続けていたら、膨大な時間を消費してしまう。その困難な道のりを達成することこそ本作の大きな楽しみではあるが、取っつきにくいことも確かだ。本作はその不満をシナリオによって解消しようとしている。海の戦いを比較的手軽に楽しめるようにした制作者のサービス精神は、筆者にとって非常に好感の持てるものだった。
■思う存分海戦を! さまざまなプレイスタイルを追求できるシナリオ 本作に用意されたシナリオは、チュートリアルが4本、テーマによって楽しめるものが4本用意されている。本作がこのレビューのために集中してプレイしたのは「オランダに栄光を!」というシナリオ。オランダの先兵となりイギリスの船を襲い、街へ攻め込んでいくシナリオだ。
イギリスの街と街を結ぶ航路に停泊し、獲物を狙う。場所は自国オランダがすぐそばにある海域が望ましい。弱そうな商船を見かけたら、一気に襲いかかるのだ。ここで海図は戦闘画面に変化する。
各国の軍艦は、名声を得て国から支給されるか、このように拿捕することで入手できる。拿捕されてばかりでフラストレーションのたまっていた筆者はイギリスの船を使ってみた。しかし自分で使ってみると、兵員を運べるのは良いのだが、耐久力が低い。どの国の戦艦も一長一短があることを痛感させられた。国ごとに船の性能が違うのは、プレイスタイルにも変化が現れそうな面白い要素だ。 シナリオでは、商船を奪い、その討伐に来たイギリス海軍をさんざんうち破った後は、いよいよイギリスの支配している街への侵攻になる。まず、占領した際に護衛する船団を造り、副王に献上してから、敵の街に突っ込むこととなる。船団をわざわざ造り、副王に渡さないと支配できない感覚などは、「じゃあ国は何してくれるんだろう?」という疑問も生じる。国が支配を拡大するために海賊を利用し、海賊もまた安全な隠れ家を求めて国を利用するという共生関係を実感させるシステムをきちんと再現しているといえるだろう。
陸からを選ぶとRTS風の戦闘画面になる。カトラス(剣)とマスケット銃を装備させた海兵達を、街の護衛軍にぶつけさせるのである。護衛艦隊との戦いに砲弾を消費しすぎる恐れがある場合はこちらを選ぶのが賢明だろう。 街の防衛の最後の砦となるのは守護隊の司令官だ。彼とこちらの船長の一騎打ちで完全な勝敗が決することとなる。画面は雰囲気たっぷりだが、防御と攻撃をそれぞれ右クリックと左クリックに分けた簡単な反射神経ゲームで、難易度的には結構低い。基本的にはまず防御に徹し、敵のスタミナを奪ってから攻撃していけば負けないだろう。攻撃を行なった後、タイミング良くもう一度攻撃すると残像が生じる特殊攻撃が繰り出せる。敵の体力を奪えば完全な勝利である。 支配することをせず、掠奪をして去っても良い。護衛艦隊を献上せずに街に向かってしまうと、掠奪しかできなくなってしまうので要注意だ。 戦闘するためには、そのたびに充分な兵力と、武装が必要となる。オランダの領土だけでは確保できなければ他の国の領土に行くしかなくなるのだが、その際イギリス軍には注意しなくてはならない。与えられた期間は決して長くない、無駄のない補充と戦力の投入をしなくてはならないため、シナリオの“クリア”は難しいかもしれない。しかし、貿易の要素をほとんどなしで海戦に特化した非常に割り切ったバランスになっており、本作の新しい魅力を気付かせてくれる。 この他のシナリオも、街を救うために大規模な輸送作戦を展開したり、自分の街を持ったり、海賊を追跡したりと、テーマ性を強く感じさせるものが用意されている。あらゆる要素を詰め込んだゲーム展開を基本としながらも、条件付けを行なったシナリオを用意することで、多彩なベクトルへのプレイを容易にした本作。少し敷居は高いが、PCゲーム初心者にも今までのシリーズ以上にオススメできる作品だ。 (C)2004 Ascaron Entertainment GmbH
□カプコンのホームページ (2004年11月25日)
[Reported by 勝田哲也]
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