多くの人がストラテジーゲームをRTS(リアルタイム・ストラテジー)と認識するようになってどれぐらいの時が経過しただろうか。ゲームに使われるコンピューターやプログラム技術が進歩するにしたがって、リアルタイム・同時進行型のゲームが大勢を占めるようになってきたのは時代の確実な流れではあったが、それは必ずしも非リアルタイム型のゲームが劣っているということを意味しない。 それは囲碁や将棋をみれば明らかなように、ターンベースだからこそ優れたゲーム内容を実現できる構造は確かに存在する。それでいてPCのストラテジーゲーム界がリアルタイムのゲームで溢れかえってしまったのは、それが一時期においてテクノロジーの証明であり、ゲーム界のトレンドであったからかもしれない。だが、いまやそんな区別はナンセンスだ。 今回紹介する「サイレントストーム日本語版」は、骨太なターンベースのシステムを採用した戦術級のストラテジーゲームだ。第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、決して表に出ることのない特殊作戦に従事する少人数の部隊を中心に展開していく。RPG的な成長システム、精密に作りこまれた建築物の構造、そして極めて現実的な物理現象の再現がゲームに深みとオリジナリティをもたらしている。ゲームを次の段階に進めるタイミングを自由に決定できるターンベースだからこそ可能な、じっくり観察して分析して決定を下すストラテジーゲームの醍醐味を味わうのに十分なポテンシャルをもったゲームだ。
■ 基本システムは「ストラテジー+RPG+物理シミュレーション」
第1に、本作はターンベースで時間が進行する。基本的にはプレーヤーのターン、NPCのターン、敵のターンの3つのフェイズがあり、かならず順番に進行していく。また、それぞれのキャラクタ(ユニット)にはターンごとに与えられるAP(アクションポイント、行動力)というパラメーターがあり、これが1ターン内に可能な行動量を規定する。キャラクタは移動や射撃などの行動をひとつ起こすたびにAPを消費していき、APがなくなった時点でそのターンの行動を終えることになる。ある程度まとまったAPを残してターンを終えれば、それを使って敵のターンに「割り込む」ことも可能だ。リアルタイムにゲームが進行するモードもあるのだが、それは敵と接触していないときの例外的なものだ。 第2に、本作ではRPG(ロールプレイングゲーム)的なレベルとスキルツリーのシステムを採用している。プレーヤーは、最大6名からなる小隊をひきい、部隊員のキャラクタを操って数十ミッションにわたる長大なキャンペーンを進めていくことになる。キャラクタには兵士・擲弾兵・狙撃兵・偵察兵・工兵・衛生兵の6つのクラスがあり、戦闘経験を経るごとにレベルアップしてクラスに応じた特殊能力(アビリティ)を選択的に獲得していく。また、各キャラクタには射撃や投擲、敵の発見等の戦闘能力にまつわるスキルポイントがあり、戦闘で使えば使うほどそのスキルが向上していく。基本的にそれぞれのキャラクタがよく行なう行動、よく使う武器に関して特に成長していくので、隊員どうしが互いの能力を補い合えるようなチーム構成を考える必要がある。 第3に、本作の物理モデルはきわめて現実的である。榴弾だけでなくライフル弾さえも重力や空気抵抗の影響を受けて飛ぶ。弾丸が壁に衝突すれば材質や角度に応じて貫通したり、跳弾となって部屋中を飛び回る。貫通力のある武器で建物の中にいる敵を外から直接倒すことも可能だ。攻撃を受けて倒れたキャラクタの体は物理演算にもとづいて壁にもたれかかったり、斜面を転げ落ちたりといった挙動をみせる。こういった機能は最近のFPS系ゲームでは多く再現されるようになったものではあるが、ストラテジーゲームでこういった技術が徹底的に導入されているものは他に例を見ない。 第四に、本作の最大の特徴というべきものとして、建築物に対する完璧なまでの物理的な作りこみが挙げられる。外見のみの中身のない建物はひとつとしてない。ゲームに登場するすべての建物は壁や屋根裏の空間まで完璧にモデリングされている。さらに、それらの建物を構成するすべての壁、床、柱、屋根などの構造物は数センチメートル単位のブロックから形成されており、現実的な「破壊」が可能だ。部屋の中で手榴弾を使用すれば、爆風や破片によって壁に穴が穿たれる。 破壊の効果は3次元空間に及ぶので、爆風によって床や天井にも同様の効果が発生する。爆発だけでなく、機関銃などの貫通力のある銃弾によっても建築物の破壊が起こる。そうして発生した風穴は単に映像上の存在ではなく、それを使ってフロア間をよじのぼって移動したり、地下に飛び降りたりといったアクションが可能だ。当然、敵のいる床を破壊して落下させて倒すこともできるし、こういった現実にできそうなことはほとんどゲーム内の選択肢に含まれるといっても過言ではないだろう。極端な例を出すならば、大量の敵が潜む建物に対して強力な榴弾やバズーカを大量に使用して完全に破壊しつくし、直接敵を撃つことなく全滅させることすらできるのだ。 ここでグラフィックやサウンドにも言及しておきたい。本作のグラフィックは完全な3Dで構成されており、すべてのキャラクタに非常に細かいモデリングが成されている。当然ながら戦場となるマップもすべて3次元の構造をもっていて、ストラテジーゲームとしては異常ともいえる作りこみがなされている。ゲーム中にNumLockキーを押すと表示されている頂点の数等が確認できるのだが、それによると1シーンで最大500万頂点近くにもなる精密なデータを使用しているようだ。それでいてまるで2Dのゲームのように簡単な操作で遊べるのは、よく練りこまれたユーザーインターフェースのなせる業だろう。 また、本作ではDirectX 9のピクセルシェーダに完全対応しており、非常に精緻で質感に富むレンダリングを実現している。もっともリッチな表示モードではすべての陰影がリアルタイムシャドウとなっており、パーピクセルシェーディングによる光源処理や反射等の処理とあいまって、現時点で見られるすべてのゲームの中でも最高クラスのグラフィック品質といってもいいだろう。また、こうした光と影の演出はゲーム内容にもきちんと影響している。影の中を移動すれば敵に発見されにくく、攻撃を受けたときの命中率にも影響するといった凝りようだ。 加えてサウンドも非常に秀逸である。武器の発射音や弾丸の跳ねる音、オブジェクトに弾丸が命中したときに破壊される音などすべてのクオリティが高い。さらに、3Dサウンドと音響効果の技術もきっちり作りこまれており、音源の発生する環境によって反響音等の演出も施されるため、戦場にいるという雰囲気を音の面からも味わうことができる。
また、これはゲーム性とはあまり関連しないかもしれないが、キャラクタの顔のモデルはすべてパラメータ化されている。プレイを始めるときのキャラメイクで、顔立ちを決めるさまざまなパラメータを操作して自分好みの顔を作成することができるので、キャラクタへの思い入れは強くなる。また敵を含む他のキャラクタも同様のシステムで顔立ちが作られているので、1人として同じ顔のキャラクタはいないわけだ。これと同様のシステムを持つゲームは、都市環境シミュレータの側面を持つゲーム「Republic」が思い出されるが、よもやストラテジーゲームでこういった技術が使われるとは。まさに、ターンベースストラテジーではあり得ないほどのテクノロジーの洪水である。
それではゲーム概要の紹介はこれくらいにして、実際のゲーム内容を見ていこう。本作は第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台とする。プレーヤーは特殊作戦に投入された小隊の隊長となり、大戦の裏側でひそかに進行する破滅的な陰謀を打ち砕くためのキャンペーンの中で数十のミッションをこなしていくこととなる。 キャンペーンは枢軸国側、連合国側の2つのサイドからプレイすることができ、その選択によって大きく異なったゲーム展開がプレーヤーを待ち受ける。また、キャンペーン内で発生するミッションはシナリオの本筋に沿った上で細部はランダムに生成されるので、毎回のプレイでまったく同じミッション内容に直面することはない。同じマップであっても、敵味方の配置やミッション目標がプレイごとにかなり違っていることが普通だ。そのため攻略面ではマップを覚えたり敵の行動を覚えたりというよりは、キャラクタや部隊の特性を理解した上で戦術上のセオリーを習得・開発していくことが求められるだろう。
■ ゲームプレイの基本はAP(行動力)のマネジメント。詰め将棋のように考え、敵を追い詰めろ
たとえば1マスの移動には2APを消費、ライフルの射撃に20APを消費、ハンドガンの射撃に6APを消費、直立状態から伏せ状態に移行するために8APを消費……といった具合である。プレーヤーはキャラクタに与えられたAPを最大限に使用して敵を射程にとらえ、攻撃し、物陰に身を隠すといった一連の行動をうまく組み立てる必要がある。ある程度じっくり計算した上で物事を進めていかないと、敵の目の前に身をさらけ出したままターンエンド、次のターンにそのキャラクタは死んでいる、といった状況に直面してしまうだろう。 APは基本的にはキャラクタの持つ行動力のスキルに基づいており、レベルアップに応じてその数値も増え、1ターンで可能な行動量が増えていく。キャラクタが負傷した場合などにはペナルティとしてAPの低下がありうるので、敢えて危険をおかして行動するときなどには、仮にそうなった場合の対処もあらかじめ計算しておくことが必要になる。 APを消費して行なう各種行動には非常な多岐にわたる選択肢が用意されている。移動について言えば、「走る」、「歩く」、「しゃがんで移動する」、「伏せて移動する」の4つのアクションがあり、1マスの移動に必要とするAPコストはそれぞれ2、4、6、8である。当然、走るよりは歩くほうが音を立てずに済み、敵に悟られにくい。また歩くよりはしゃがんだほうが、あるいは伏せたほうが照準が安定して射撃が正確になるし、隠密性と攻撃を受けたときの回避率にボーナスがある。これらの姿勢変更にもAPコストがあるので、移動だけで全てのAPを使い切ってしまうような選択は避けたい。 射撃についても同様で、APコストが最小となる「速射」、AP消費の多い「狙いを定めた射撃」、そして利用可能な全てのAPを消費する「慎重な射撃」の選択がある。これらの選択は射撃の命中率に多大な影響を及ぼすので、ターゲットとの距離をよく吟味して選択する必要がある。さらに、使用する武器がマシンガンであればAP消費の少ない「バースト射撃」全APを消費する「連射」があり、スコープ付のスナイパーライフルであれば、照準動作に複数のターンを投入できる「狙撃」の攻撃コマンドがある。また、武器の種類によってもAPコストは変化する。同じライフルでも、ガーランドMk1ライフルよりはSVT40ドラグノフのような性能の高い銃のほうが扱いが簡単で、低いAPコストで射撃できるといった具合である。 基本的に、与えるダメージや命中精度が高い攻撃方法はAPコストが高く、移動や姿勢変更の余裕がなくなってしまうことが多い。敵に有効な打撃を与えるためには、接近したほうが良いが、それは同様に敵に対してもチャンスを与えるリスクの高い行動だ。このジレンマをうまく克服するためには敵と味方の能力や行動範囲をうまく把握しなければならない。 また、どうしてもこちらから仕掛けることが難しい時は大部分のAPを残してターンを終了するという選択もありうる。キャラクタにある程度まとまったAPが残っている場合は、敵のターンに「割り込み」を行なって残りのAPをつかうことができるのだ。割り込みを行なえる確率はキャラクタの「中断」スキルにもとづいて計算されるため確実ではないが、敵が出てくるのを待ち伏せて対応するときなどには非常に強力な選択となる。
以上で説明した部分は本作の基本中の基本で、実際はもっと多様な要素がからみあってゲームが進行していく。リアルタイムのゲームではありえないほどの複雑さではあるが、ターンベースであるがゆえに考える時間は常にたっぷりあるわけだ。戦況に影響を及ぼす全ての要素をよく吟味し、最適な対応を納得いくまで考えて、期待通りの展開を呼び込むことが本作の醍醐味といえる。
■ フィールド内に存在するすべてのものを利用して戦術を組み立てよう
ゲーム中で戦闘を有利に運ぶには敵をうまく発見することが大前提となるが、敵の姿を見つけるためには、その敵がキャラクタの視野に入っている必要がある。その判定にはキャラクタの視線と索敵スキル、敵の姿勢と隠密スキル、障害物の有無などが影響する。本作では建物の壁等はもちろん、地面に転がっている死体なども視線をさえぎる障害物になりうるし、果てはプレーヤーが装備してかまえている武器も障害になることがある。 たとえばキャラクタが右側にライフルを構えて伏せている状態では、そのライフルの銃身がキャラクタ右側の視界の一部をさえぎることになる。その部分に敵が入っていればその敵を目で見ることはできず、思わぬ奇襲を受けることもありうるのだ。 射撃についても同様だ。ゲームのフィールドにあわせてスケーリングされてはいるものの、現実的な跳弾や貫通時の屈折を含む弾道計算がモデリングされている。したがって貫通力のある武器を使えば壁の向こう側にいる敵に対しても有効な打撃を与えることが可能であり、偵察兵が敵の位置をポイントし、その敵を狙撃兵が見えない位置から一撃するといった戦術がきわめて有効である。 また、先に述べたように建築物を構成するすべての構造物は破壊が可能になっている。建物内部に隠れた敵に手を焼かされる前に、バズーカや機関銃で壁に大穴を開けて露出させてしまうのも有効な戦術といえるだろう。もちろん構造物の破壊が思わぬ事態を招くことも多い。味方が身を隠している壁を流れ弾が崩壊させてしまったり、投げそこなった手榴弾が移動経路の階段を吹っ飛ばしてしまったり・・・。こういったアクシデントによって既定の作戦に変更を余儀なくされることもあるが、こうしたことが起こるべくして起こるのが、本作の大きな魅力のひとつといっていいだろう。 また、キャラクタが攻撃を受けたときに発生する現象、いわゆるダメージモデルも単純ではないが理解しやすいルールに基づいている。弾丸が命中した部位によってダメージ量が変化するほか、さまざまな現象が発生する。足に被弾すれば移動力の低下をひきおこし、腕に被弾すれば射撃精度の低下が起こりうるし、当たり所が悪ければ武器を落としてしまうこともある。頭に攻撃を受けた場合は最も深刻なダメージを負うが、さらに視力や聴力を失って索敵能力の低下やスキルポイントの著しいペナルティを受けたり、しばらくの間一切の行動がとれなくなってしまうこともある。
このように本作に取り入れられているルールは複雑で多彩だが、しかしすべてが現実的であって理解しやすい。構えたライフルがキャラクタの視界をさえぎるといった細部にいたるまで現象を再現している内容だけに、画面上に表示されているグラフィックを単なるゲーム的な記号として捉えるのではなく、実際の現象として見て解釈するセンスが必要になるだろう。
■ 本格的な成長システムと多種多様な武器・アイテムが変化に富んだゲーム展開をもたらす
キャラクタの基本能力パラメータは「力」、「器用さ」、「知性」である。このパラメーターは他の二次的なスキル値の成長可能な度合いを決定するため非常に重要な位置付けにある。基本能力から派生する二次能力として「体力」、「行動力」、「回避」の三つがあり、これらはそれぞれHP、APを決定する直接的な要素だ。 また、戦闘時の行動に直接影響するパラメーターとして「射撃」、「発見」、「医療」などの10種類の戦闘スキルがあり、これらはそのスキルに関係した行動を取るたびに向上していくシステムとなっている。つまり、銃を撃てば射撃スキルが向上し、回復アイテムを使用すれば医療スキルが向上するといった按配だ。したがって普通にゲームを進める限りにおいては、それぞれのパーティメンバーはある特定の仕事に特化したスペシャリストに成長しやすい。逆に言えばなんでもこなせるジェネラリストを育てるのは至難の業、ということでもある。 上記のようなスキルベースの成長システムに加え、各キャラクタにはそのクラスに応じたアビリティ(特殊技能)の概念がある。これはレベルアップのたびに一つづつ習得が可能になるツリー形式の成長システムで、「DIABLO」などのスキルツリーによく似たものだ。アビリティには特定の行動に対するAPコストを軽減したり、射撃の命中率や威力を向上させたり特殊効果を付加するものなど、クラスの特徴をいかした強力なものが多い。
本作ではキャラクタが到達可能な最大レベルがそれほど高くないため、アビリティのアビリティを習得することは不可能だ。どのクラスのアビリティツリーもおおむね4系統ほどのルートがあるのだが、実際に習得できるのは1系統+αといったところである。当然、前提条件の多いアビリティのほうが強力な効果をもつことが期待できるので、広く浅く習得するよりは1つの系統に集中したほうが有利なことが多い。しかし、そのあたりはよく行なう戦術や、部隊の編成の嗜好によるところが大きいので、自分の部隊に必要なアビリティをよく吟味して習得させたいところだ。
キャンペーン序盤では非常に限られた装備しか与えられないのだが、ゲームが進行していくにしたがって次第に強力な武装が手に入るようになる。基本的には倒した敵の落とした武器を捕獲して武装を強化していくため、敵が強力になるにしたがってプレーヤー側の装備も充実していくというわけである。 ここで気をつけたいのが武器に対する「熟練」の要素である。本作ではキャラクタが一種類の武器を長く使いつづけることで、その武器に対する「熟練度」が向上していき、次第に大きなスキルボーナスがつくようになる。十分に熟練した武器ならば、より優れた武器よりも効果的であることがありうるのだ。新しい武器を手に入れたときに、長く使い続けた古い武器を捨てるか、新しい武器に切り替えるか、選択が非常に悩ましい場合もあるというわけだ。 こうした成長システムのおかげで各キャラクタの能力とそれを組み合わせた部隊の構成にはとても気を使うことになるが、同時にそれがゲームの深みをもたらす一因にもなっている。手塩にかけて育てるほどキャラクタに対する理解や愛着も湧いてくるので、ストラテジーゲーム的な楽しみだけでなく、ロールプレイングゲーム的な楽しみもあるというわけだ。 育て方によって各ミッションの最適な攻略方法や、その難易度もやはり変化していく。たとえば重火器での正面突破戦術を中心に戦ってきたパーティは、隠密行動が役に立つミッションでは大変な苦労を強いられることもあるだろう。だが、もちろんパーティの構成によって特定のミッションがクリア不可能になるようなことはない。難易度や攻略方法に変化が現れるということであり、やはりプレーヤーの工夫次第でどうにでもなるのである。それもまた楽しみの内であろう。 攻略方法が多様であること、逆にいえばそれは、多様なプレイスタイルをゲームが受け入れる、ということでもある。筆者などは、2周目のプレイで「パーティを組まず、主人公キャラ一人だけでクリアする」ことを目標にしてみた。主人公のクラスはスナイパーを選択し、狙撃+隠密+近接戦闘を主に強化するべくキャラクタを成長させていく戦略をとったのである。
実際のところ、さすがに敵の多いミッションでは1人で真っ向勝負などできないので、敵に悟られないよう隠れながら背後をこっそり移動、ナイフを取り出して音も無く殺害……気づかれてやばくなったら大急ぎで距離をとり、スナイパーライフルの一撃を見舞ってはすぐに隠れてほとぼりを冷ます。まったくこれは「Thief」か「Hitman」といったスニーキングアクションのごときプレイスタイルである。実際、プレイ感覚としてはまったくそのとおりで、そういった遊び方も可能な本作の懐の深さに驚きながらプレイしていたものである。
■ 総合的に見て極めてクオリティの高い大作 かなり特殊で珍しいゲームシステムを採用した作品だけに、システムやゲームプレイ内容の説明にかなりの文字数を使ってしまったが、本稿を読んでくれた読者のみなさんはどのような印象を抱いただろうか。 最近のPCゲーム市場に溢れるゲームは、○○の要素をもつ○○クローン、のような表現で説明が事足りてしまうものが多く目に付くようになってしまったが、今回、本作をプレイしてみて、まだまだPCゲーム界には開拓すべき余地があるのだと強く実感した次第だ。プレイし始めた序盤には見慣れないシステムに非常に戸惑うところがあったのだが、よく作りこまれた内容にひきこまれて大いに楽しむことができた。枢軸側、連合側のキャンペーンを一通り終えるまで実質1週間のハードプレイとなったが、通常のペースで遊ぶならば一通りクリアするだけでも軽く1カ月はかかるボリュームだと思う。 画面写真をぱっと見ただけでは何も理解できない、まさに「実際にプレイしないとわからない」魅力満載の本作である。このような良作を発掘し、きちんと日本語化して提供するメディアクエストには最大限の敬意と感謝を表したい。翻訳の内容に多少の甘さを感じてしまう部分が残っていたのは残念ではあるが、これだけのオリジナリティと完成度を持つゲームを理解しやすい日本語でプレイできるのは、多くのPCゲーマーにとって良い知らせであると信じる。
オリジナル英語版でははやくも続編「Silent Storm: Sentinels」のリリースが予定されている。この続編、海外では前評判が高くかなりの注目作品となっているので、日本語版をひととおりプレイしてゲームシステムを理解してから、英語版の続編に挑戦してみるのも面白いかもしれない。骨太なゲームに飢えたゲーマーにはぜひお勧めしたい一本である。
(C)2003 Nival Interactive. Silent Storm is a trademark of Nival Interactive. Published by JoWooD Productions Software AG. All rights reserved.
□メディアクエストのホームページ http://www.kids-station.com/game/ □関連情報 【6月18日】本日到着! DEMO & PATCH「Silent Storm: Sentinels」Playable Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040618/demo0618.htm (2004年7月9日)
[Reported by 佐藤"KAF"耕司@ukeru.net]
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