★ PCゲームレビュー★


CivilizationとAoEのハイブリッド!?
実は新機軸を狙った本年度イチオシのRTS

Rise of Nations ~民族の興亡~

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 開発元:Big Huge Games
  • 発売元:マイクロソフト
  • 価格:9,800円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:7月11日発売


 「Age of Empires」シリーズ(以下AoE)というメガヒットRTSを擁するマイクロソフトが、別系統のストラテジーゲームをリリースする。それが「Rise of Nations」だ。5月20日の北米版の発売に続いて、日本語版「ライズ オブ ネイション ~民族の興亡~」(以下、RoN)が7月11日に発売となる。その副題の通り、古代文明の黎明期から近未来まで、AoEよりも幅広く、人類の歴史すべてをひとつのタイトルでカバーするRoNは、RTSの強者たち、そしてすべてのゲームプレーヤーに、果たしてどんな新たな楽しみを与えてくれるだろうか?


■ CivシリーズのクリエイターがRTSを作るとこうなった!!

 RoNについては、すでに今年2月10日と12日付で、本ゲームの製品発表会の模様と開発元Big Huge Gamesの代表Brian Reynolds氏のインタビューが、2月27日付でIGFのレポートとしてゲームの概要が、さらに6月15日付では一足早い「カウントダウンイベント」の模様が紹介されている。したがって今回は、このゲームの特徴やポイントは一応おさえつつも、随所に実際のプレイ感覚や印象を中心に紹介していこうと思う。なお、以下はレポート内容は日本語β版でのプレイに基づくもので、実際の製品では変更されている場合があることをあらかじめお断りしておく。

 実際のプレイレビューが登場するまで、RoNのイメージは「Civilization」シリーズ(以下Civ)の要素とAoE的なRTSをハイブリッドした新しいゲームだと言われていた。先のReynolds氏が、かのSid Meier氏と共にCivシリーズの開発に長年関わってきた経緯から、そういう期待が高まった面もあったようだ。

 しかし、プレイ感覚だけで語るなら、RoNはAoEあるいは「Empire Earth」と同種のRTSである。Civシリーズを連想する要素が各所に盛り込まれているのは確かだが、それは「AoEの『段取り』をより複雑化し、反射的対応にとどまらず考える余地を持ち込んだ」という成果として結実している。

 とはいえ、RoNがAoEの亜流だと断定すれば済むのか、と言えば、それも少し違う。このあたりの感覚は、すでに体験版をプレイした方なら多少はわかってくるかもしれないが、以下で詳しく見ていこう。


■ 基本システム~都市管理はCiv的、戦闘関連施設はAoE的な印象

クイックバトルモード。インターフェイスはAoEシリーズに近い
 RoNでのプレーヤーの役割は、エジプト、ローマからモンゴル、イギリス、中国、日本まで、それぞれ文化やユニットに特徴を持つ18の民族(国家)のひとつを束ねるリーダー。古代から現代までの民族を横に並べて、その代表的な君主・元首の名でプレイするというスタイルは、CivからAoEに引き継がれてきた伝統を守っている。実のところ古代ローマ帝国が2,500年続いてしまいかねない、この民族選択という形式自体、歴史派ゲーマーとしてはそろそろ変革を求めたい気分なのだが、文明ストラテジーゲームに定着した手堅い手法ではある。

 プレーヤーの目的は、国家の元首として市民を使って資源を集め、都市を整備し、軍事ユニットを生産し、軍事、外交的に他国に対処しながら、古代から現代へと文明を進化させていくこと。ゲームの最終的な目標は、シングルプレイでもマルチプレイでも「偉大な建造物(いわゆる「世界の七不思議」)を一定数作る」あるいは「マップの一定の割合を支配する」などの条件をかなり柔軟に設定できるので、プレーヤーが望めば、決戦で決着を付ける従来のRTS的なゲームプレイのみならず、まったりと文明進化を楽しむプレイも可能ではある。この点は、明らかにAoEと異なる、Civ的雰囲気が濃厚な部分だ。もっとも、マルチプレイでは、「他国の打倒」にいそしむ人がほとんどだろうが。

ゲーム開始画面。普通のシングルプレイは「クイックバトル」と呼び、勝利条件など詳細に設定できる。各民族は、異なる特徴や独自のユニットを持つ。マルチプレイもゲームの設定はクイックバトルと同じ。接続方法はGameSpy経由か、ダイレクト接続(LANまたはインターネット)でプレイできる

 いざプレイ開始。まずは都市で市民を作らないと何も始められない。市民は施設の建設や資源採集、生産に割り当てる。ビジュアルはAoE的だが、実際には割り当てた市民の数に応じて、一定時間あたりの採集量が増減し、リアルタイムで反映されるという、Civのシステムをリアルタイムに置き換えたような処理が行なわれる。

 なお、どの資源も基本的に枯渇することはない。ただし、一箇所の資源に対してアクセス可能な最大人数が決まっており、AoEのように、大量の金が必要になったからといって、ひとつの金鉱に10人も20人も割り振るような無茶はできない。ちなみに、何も指示されていない市民は、自動的に空きのある資源採集などに向かうので(オプションでデフォルト行動を「建設」にも設定可能)、戦闘に忙しいときでもある程度は安心だ。

代表的な市民三景。畑を維持する人びと、木を伐採する人びと、金属を採掘する人びと。畑は1都市に5つまで。木の伐採と金属の採掘は、森林や山の大きさによって従事する市民の数が変わる。マップ左上に表示されている一定時間の採集量(スラッシュの右の数字)は、従事する市民の数をベースに決まる(後々、採集効率の改善は可能)

 資源としては、食料、木材、金属、財貨、知識、石油がある。「太古」の時代にはこのうち食料と木材と財貨しか存在しないが、時代が進むと他の資源も採集可能になる。施設やユニットの建設、テクノロジと時代の進化にはすべて資源が一定量必要だ。そもそも市民を作るにも食料が必要なので、まず、次にやりたい行動に必要な資源量を確保するのが最優先事項となる。おおまかな印象では、序盤は食料と木材、中盤は財貨と知識、終盤は石油の確保を優先して考えるといいだろう。

RoNには「希少資源」という資源もある。市場で生産できる「商人」を送ることで、一定の資源と改善効果が得られる。海上には、魚や鯨といった希少資源に加えて、海上油田も登場する

 さて、RoNのゲームデザインの中でももっともCiv的特色が反映されているのが、内政系施設の建設だ。RoNの各都市(「村」、「街」、「都市」の3段階で発展する)は市民以外何も生産できない。その代わり、都市ごとに円形の範囲が設定されており、範囲内に作った畑、伐採所、採鉱所や神殿、学問所、「偉大な建造物」は、その都市に付属した施設になる。

 Civの施設は都市内マップに自動配置されたが、RoNでは自分の好きなように都市をレイアウトできるわけだ。道路は施設の周りに自動生成されるので、都市範囲内にきれいにレイアウトすると、かなり景観のよい都市ができる。いわば箱庭的楽しみといったところだ。

時代と都市の規模によって変わる景観。財貨は市場の建設と、市場で生産できる「隊商」を他の都市に送ることによる収入が主。知識は各都市に学問所を作り、学者を生産することで得られる。石油は油田から採集されるが、油田のある場所は時代が進まないとわからない

伐採所と採鉱所を除き、施設は都市の範囲円(画面の細い赤線)の中に作らなければならない
緑と赤の太い線が重なっている部分が両国の国境線。城では、将軍とスパイを生産できる。重要な機能なので、仮に防衛上の切迫性がなくても、城と塔は最低1つ、なるべく早めに建設したい
 都市はAoEシリーズの街の中心と同じように、各国とも複数箇所持つことができる。「Age of Mythology」ではあらかじめ建設可能箇所が定められていたが、RoNではそういった制限はなく、資源さえあれば領土内にいつでも建てることが可能となっている。2つ目以降の都市も何となく作るのではなく、付近の森や山といった資源採集地域、また他国の国境沿いであれば防御性も考えて立地を選びたい。

 都市(の中心)が占領されると、その都市に付属する施設は占領国の所有となるので、敵国の都市を攻略するときはできるだけ周囲の施設を破壊せずにおき、占領後に自国の施設としてそのまま利用するほうが賢い。

 逆にややAoE的に扱われるのが、兵舎(歩兵ユニット生産)、厩舎(騎馬/戦車ユニット生産)、武器工場(砲兵、補給ユニット生産)、あるいは塔や城といった軍事施設だ。これらは都市には付属しない(近くの都市を占領されても自国に残る)。

 ただし、自国の国境内、という立地制限はあるので、敵地の真ん中に兵舎や城を建てて前線基地に使う、という作戦は不可能だ。RoNでは城壁という概念そのものがないので、塔や城は国境沿いの要所に建設し、付近に軍を配置、駐屯(施設内に収容する)させて防衛、侵攻拠点とするのがオーソドックスな戦法だろう。

 都市や施設の建設、ユニットの生産にかかる資源は、同種の施設やユニットの数が増えるにつれてその必要量が次第に増えるようになっている。これにより、同じ兵種のユニットを途切れなく生産し続けて力押しする、というゲーム的戦法にある程度の歯止めがかかっている。

 また、他国領内では、自軍の「補給車」がカバーする補給範囲外にいるユニットは自動的に損耗を被る(徐々にHPが減っていく)。補給車そのものは自由に移動できる、という抜け道はあるものの、AoEよりもバランスを考えたユニットの組み合わせによる軍を作る、という現実に近い運用法が有効に機能しそうだ。


■ 文明の発展は直線形、いずれにしても「資源なくして発展なし

図書館で研究できる技術。時代に必要なコストと効果の説明をしっかり把握し、計画的に研究を進めたいところ
 都市やユニットの運用に夢中になるあまり、文明の発展でも他国に先んじる、ということを忘れてはいけない。都市の施設「図書館」で行なう文明の研究は、Civ的な「進歩」(RoNでは「テクノロジ」と呼ぶ)とAoE的な「~の時代」への進化、という両面が、わかりやすく8つのレベルに組み合わされたシステムになっている。

 具体的には、「軍事」、「治政」、「経済」、「科学」の4種類のテクノロジを研究して次のレベルに進むと、「時代」を1つ先へ進められるようになる。これだけならAoE的にも見えるが、各テクノロジは、施設の改善や、ユニットのアップグレードを可能にし、建設や生産の速度を上げたりコストを下げる効果を持っており、Civの進歩に近いイメージなのだ。時代は、太古から現代まで8段階。時代が進化すると、新しいユニットが登場し、城が自動的に「軍事基地」にアップグレードされ、「油田」や「ミサイル基地」が作れるようになる。都市も近代的なグラフィックに様変わりし、道路は舗装される。

 上記のテクノロジとは別に、施設やユニット固有の改善、アップグレードは、各施設の中で研究する。たとえば、税収(財貨の増加スピード)を上げるには、神殿を建ててその中で研究を行なう。同じ神殿で、国境を拡大するための研究も行なえる。軍事施設でユニットのアップグレードが完成すると、RoNではすでに生産済の同種ユニットがすべて新タイプに自動アップグレードされるので、Civのように古代の重装歩兵が近代まで残ってしまうような不自然さは起こらない。

 実際のプレイで留意したいのは、次とその次の行動ぐらいまでに必要な資源を、常に頭に入れておくことだ。たとえば、対コンピュータ戦であれば、軍備より文明の進化を重視しても多少時間的な余裕があるので、「科学」を常に1~2レベル先行して研究することで、他のテクノロジや時代の進化に必要な資源量を下げることができ、資源を効率よく使ってプレイできる。この場合は、科学の進化に必要な資源を優先的に確保する。

 一方、対人戦のときには相手のラッシュを常に警戒し、機会があればこちらからラッシュを仕掛けるケースも考えられるため、テクノロジの優先順位は軍事>科学とする。対人戦でもルールで序盤のラッシュを禁止しているときに、国境を少しでも他人に先んじて拡げるため、神殿とその改善研究、城の建設を優先する(=軍事、治政テクノロジを優先する)、といった具合に、RoNでは臨機応変な対処が必要となる。このような判断も、AoEよりはむしろCiv的と言えるだろう。

 ただし、どんなケースでも共通の注意点として、各資源の増加スピードが「経済規模」の上限を超えたときには、速やかに経済テクノロジを上げたほうがよい。同時に、この時点で上限を大きく下回る資源については、増産の方策を考えるべきだろう。RoNでは、とにもかくにも「文明は資源から始まる」ので、一時的に余剰生産しているように見えても、生産力を極力上げる努力をしておくことは後々絶対に無駄にならないはずだ。

神殿での税収の改善と、製材所での木材採集率の改善。資源の採集率を上昇させる方法として、人海戦術(市民を多数投入して、必要なだけ採集施設を作る)と技術向上(製材所などの施設で採集率を上昇させる研究をする)の2つの方向性がある。神殿のほうは、必要な資源に加えて、「治政」テクノロジをレベル5に上げないとこの研究を実行できない


■ 戦闘はやはり、兵種の「じゃんけん」と物量がモノを言う

 Civ的考え方では、結果的に先制攻撃になる場合も含め、戦争を始める前提として「外交」というプロセスがある。残念ながらRoNの外交は、初代「Civilization」のような単純な「同盟」と資源の「要求/献上」、「宣戦布告」と「和平」しかない。もちろんマルチプレイならチャットを使って細かな個別交渉もできるが、システム側でも「ユニット譲渡」などの選択肢を少し増やしてもよかったのではないだろうか。

外交画面。宣戦布告は剣のアイコンをクリック(費用がかかる)。国名をクリックすると、右の交渉画面が開く。資源の要求や献上、和平、同盟などをこちらから提案したり、相手が提案してきたときに応諾を指示する。相手からの申し出は、メッセージとして突然現れるので、見落とさないように注意

 戦争そのものは、基本的にはRTSの原則に従ったプレイになる。各兵種にはそれぞれ得意な相手、苦手な相手があるので、こちらが有利な相手と(かつ、できるだけ相手よりも多数のユニットで)戦い、撃破できるように操作するわけだ。RoNの歩兵は3フィギュアで1ユニット扱いなので(騎兵と砲兵は1フィギュア=1ユニット)、生産したユニット数よりは多数の兵が戦っているような演出が見られる。AoE系列には存在しない近現代戦では、双方距離を取った銃撃戦が展開されるので、マスケット銃の時代や第二次世界大戦期が好きな人も、十分馴染めるのではないかと思う。

中世とルネサンス時代の中国軍。筆者は今のところ、損害を抑えつつ都市を攻略する目的で、将軍1、補給車1、砲2~4、騎馬4ユニット以上、歩兵は接近型(槍兵系)4:中距離2:長距離(弓兵系)2の比率で計8ユニット以上を、軍編成の目安にしている。経験を積んで、自分の得意な戦法に合わせた編成を作り出してほしい

 兵種のコンビネーションの良い軍をグループにして前進すれば、敵が同等の軍で正面切って対抗してこない限り、軽微な損害で各個撃破できるだろう。敵の襲来が止んだ時点で、予備兵力があれば、ダメージを受けた軍と入れ替えて直近の軍事施設に後送し、駐屯、回復させる。生き延びたユニットがエリートなどに成長することはないのだが、消滅したユニットを再生産するよりは回復のほうが効率がよいので、兵の使い捨ては避けて大事にしよう。

 グループを作る際、重要なのは将軍と補給車だ。補給車の機能は先に述べたとおりだが、将軍の「塹壕掘り」能力も防御戦ではぜひ活用したいし、攻撃に出るときも「おとり」や「奇襲」が有効だ。RoNでは国境ルールなどにより機動面でAoEより制約があり、側面攻撃がしにくい分(不可能ではないが)、将軍の能力は一見地味だけれども、彼我の優劣にじわじわと影響を及ぼしてくるだろう。

 もうひとつ戦争関係で気になるのは、その忙しさ。RoNはAoEに比べ、内政や軍備についてはまだ操作に余裕があると思うが、いったん戦闘が始まるとその対応で忙殺される点は変わらない。筆者のようにCivライクなターンベースストラテジーに慣れたゲーマーは、戦闘に没頭すると内政がお留守になり、2正面以上の戦闘ではどちらかの戦闘にばかり集中してもう一方で損害を増やすか、シングルプレイであればポーズ(一時停止)を押しまくる羽目になる。

 そうならないためには、「2正面作戦を避ける」とか「ユニットが敵を深追いして反撃されないように、陣形や基本行動を防御型にする」とか、実のところ戦略、作戦レベルで手を打っておくだけでもかなり違うのだが、そこへ思い至るには、やはりある程度プレイに慣れないと難しい。同様に、マルチプレイでは基本的ショートカットキーの習得も必須になるだろう。いずれもCivと決定的に異なる「リアルタイム」であるがゆえの、(筆者を含め)プレーヤーが対応を迫られる宿題だ。

RoNならでは(?)の、歴史上存在しない近代ローマ帝国軍。左の光る円が補給車の補給範囲。右は将軍の能力を使って塹壕を掘った防衛線。同じ歩兵ユニットを構成する3フィギュアの位置は、状況次第で離ればなれになることもよくある。ユニットは結構タフに設定されているため、戦力に圧倒的な差がなければ、すぐには壊滅しない


■ もうひとつの戦い――世界征服キャンペーン

世界征服キャンペーンのメイン画面。ボードゲームスタイルで展開するキャンペーンモード
 マルチプレイには手を染めていないCiv系ゲーマーが、RoNに期待を寄せていたのは、「世界征服キャンペーン」だろう。事前には「ターンベースで戦略ゲームを再現」と言われていたこのモード、果たして実態はどうなのか?

 結論から言えば、世界征服キャンペーンは、ボードゲームの名作「リスク」に似たシステムを用いており、その各ターンの戦闘(リスクで言えばダイス振り)が「AoE」的RTSとして解決される、そんなイメージのゲームだ。通常のシングルプレイと別に、「リスク」のようなエリア分割された世界地図を舞台に、18の文明が世界の全エリアの支配をめざして争うことになる。

 プレーヤーは首都を持っており、このエリアが陥落するとゲームオーバーとなる。また、派遣できる「軍隊」の駒を1つ以上持ち、この駒を1ターンに1つ敵エリアに移動させて、RTSに勝利すればそのエリアを支配できる。各エリアには、固有の「希少資源」(全RTS戦闘でその効果を反映できる)、「献上品」(ボーナスカードの購入や外交などに使うポイントを得る)、「補給基地」(使える駒が1つ増える)などが設定されており、そのエリアを支配することで入手できる。また、プレーヤーがボーナスカードを使って自分の支配するエリアに建設した「偉大な建造物」も、その効果はRTSに反映される。

戦略マップでは、軍隊駒を1ターンに1つだけ、敵領土に侵攻させることができる(自国エリア内での移動は複数可能)。このとき、敵味方の別の駒が隣接エリアにいれば、援軍として登場する。外交は、同盟も宣戦布告も献上品ポイントを使って解決する

 各ターンの戦闘は、攻撃側と防御側の1対1のRTSになる(同盟国が隣接エリアから援軍を送ってくれることはある)。防御側は、エリアの防衛力レベルに応じて1~3の都市や施設を所有した状態でゲームを開始する。

 一方攻撃側は、都市ひとつと若干の侵攻軍でゲームを始める場合と、軍は比較的大規模だが補充がきかない(都市がなく市民もいない)ゲームとして始まる場合がある。前者の場合はじっくり内政を行なう長期戦も可能だが、後者では、相手が体制を整える前にラッシュをかけて勝利を目指さなければならない。

 世界征服キャンペーンでは数ターンごとに時代が1つ進むので、RTSモードでは、図書館でテクノロジの研究は可能なものの、時代は1つしか進めることができない。時代の進化という競争がないので、事実上、内政&軍備の戦略+ユニットを率いての戦術、というある種、会戦RTSのヒット作「Cossacks」に似た勝負になる。

 当然、RoNではユニット数の上限からCossacksのような一大会戦には臨めないこと、前記の長期戦対応のゲームでもラッシュがまったく不可能ではないこともあって、RTSとしての歯ごたえは残念ながら今ひとつになってしまっている。各国の首都のような防衛力レベルの高いエリアを除き、慣れれば容易にエリアを攻略できるようになるだろう。裏返せば各ターンのRTS戦がルーティーン的な展開になってしまい面白みが持続しない、ということでもある。

世界征服キャンペーンの図書館。ご覧のようにすぐ次の時代までしか進めないし、戦略マップ上で時代が進まない限り、RTSモードでの時代進化は次のターンのゲームには反映されない。とはいえ、相手より有利なユニットを出せるのは確かなので、時代の進化を軽視しないほうがいい

 それでも戦略マップの展開に面白さがあればいいのだが、こちらにもやや疑問がある。特に気になるのが、各国の首都を占領すると、その国家の全領域が自国に編入されるというルール。序盤はいいとしても、サバイバルに生き残った国家が3~4つ、各国の支配エリアが10前後という状況になってくると、他国の首都のストレートな攻略をねらうのはコンピュータのAIでは困難だ。さらに、敵首都につながるルート上のエリアの「領土買収」申し出にコンピュータが応じてしまうようでは、プレーヤーとしては張り合いがなさ過ぎる。

 エリア争奪というシステムの単純化を徹底するのであれば、2~3年前に日本語版が出ていた「リスク」や「ディプロマシー」レベルの外交ルールを追加しろ、とまではあえて言わないが、AIのレベルがこれら旧世代のゲームを超えていることを期待してもおかしくはないだろう。日本語版が1カ月発売延期になった理由は「さらなるクオリティアップ」と告知されているので、製品版では、世界征服キャンペーンにも改善の手が入っていることを願いたい。

あるターンにロシアの首都に侵攻し、首尾よく陥落させると――次のターンにはロシア領だったエリアはすべて自国領になる。エリア数と時間制限(現代までに全世界を征服というタイムリミット)との兼ね合い上のバランス確保策かもしれないが、もう一工夫欲しいところ


■ まだまだ荒削りな箇所もあるが、そこは今後の熟成に期待

画面上のゲームでは、自国建設9+占領3の計12都市を領有しているが、実際には3都市だけで、食料、木材、金属のすべてを経済上限までまかなえている。学問所も3つあればとりあえず十分、都市が多いほうが有効なのは財貨と石油(油田が少ないとき)ぐらいだ
 「詰め」が気になった部分はほかにもある。たとえば、都市を複数作っていくと、食料や木材、金属といった資源の増加スピードはすぐに上限に達してしまう。経済テクノロジを最大(レベル7)まで上げたとしても、資源を採集している都市に「穀倉」、「製材所」、「精錬所」を作り、増加スピードの改善を行なっている場合、実は各資源の採集が必要な都市の数は2~3で足りるのだ。

 つまり、7つも10も都市を作ってみても、国境の拡大という効果はあるけれども、資源採集面では意味がない。それでも神殿の建設などに伴う効果は見込めるので、5つ目以降の都市には施設が神殿だけ、という光景が効率だけを重視すれば合理的な判断になってしまったりする。

 これでは、RoNに箱庭的内政を期待していたプレーヤーにとって、楽しみが半減してしまう。せめてCivでは何となくそうなる自国都市の役割分担、たとえば、安全な後方都市では経済系の施設を作り、前線都市では防衛用の城壁や派兵用の軍事ユニットを作る、といった理由付けがあればまだ納得できるのだが。軍事施設が都市とは別に存在するRoNでは、極端な話、畑のある敵国の都市を占領しても、食料生産はとうに上限に達しているので畑を放置したほうが効率がいい、ということがよく起こる。

 ポーズをかけなければ1~2時間で現代に到達できるRoN。この時代進化のスピードは、評価が分かれる点だろう。マルチプレイはこのスピードでないとプレイが厳しいことはよくわかる。個人的には、シングルプレイだけでも1ゲーム6~8時間(一晩)ぐらいはかけて楽しめ! という「ポリシーとしてのゆとり」があってもよかったのにと思う。オプションで「低速」にすれば解決するという話ではない。古代や中世を単なる現代への通過点にするのではなく、戦争と平和の局面を織り交ぜながらじっくり楽しみたいのだ。

 前に「『時代』は誰よりも早く進めろ」と勧めたことと矛盾するようだが、プレーヤーがそれを最短で追求しても、実際の1時間程度は次の時代に進化できないようになっていればいい。これまたオプションで、進化のための資源の条件をきつくすることは現行でも可能だが、それよりはむしろ、ゆとりのできた時間に遊べる要素、Civの模倣でもオリジナルでもいいから、もう少し時代の雰囲気を感じられる施設やユニットのバリエーションを追加で挟み込めないものだろうか?

 Civの本家筋(「CTP」系列ではない「Sid Meier印」のほう)のうまさは、重装歩兵が闊歩する絶対政の古代、騎士が強い(けれども進化は袋小路な)王政の中世、マスケット歩兵が出たらいよいよ共和政に変えて近代突入~といった各時代の雰囲気にあふれた演出にあると思う。RoNの古代や中世でも、「一刻も早く次の時代のユニットへアップグレードしなきゃ」とか「敵の時代が進む前にラッシュだ!」とかいう忙しいモチベーションではなく、「最短でもあと1時間は次の時代へ進まないなら、この辺で一発、騎士道の精華を咲かしてみるか」とかいう、楽しいモチベーションがプレーヤーに働く絶妙の仕掛け、こうした要素が是非とも欲しいのである。

 誤解してほしくないが、RoNを失敗作と結論しているわけではない。筆者は、Civ的=ターンベース・ストラテジー要素のように見えた部分が、実は既存のRTSに欠けたものを補うために導入された、温故知新的なエッセンスではないかという期待を持っている。

 つまり、RoNはAoEの亜流ではなく、「文明より戦争」という問題を露呈したままマンネリ化の道を進みつつある文明系RTSの超克を狙ったゲームという位置づけだ。そしてその鍵は、RTSシステムをもっともっと大胆に変革すること、具体的にひとつ挙げれば、マルチプレイとシングルプレイを同一のスタイルで処理する「無理」を止めること、にあるのではないだろうか。幸いにして、RoNはデータの大半がXMLで記述されており、可塑性は十二分にある。文字通りの「新しいRTS」を実現してもらうためにも、今後の熟成に期待したい。

 RTSとしての完成度をみれば、現在のRoNは、短時間でプレイ可能なタイトルとして無駄なくまとまっている。シングルプレイもマルチプレイも、条件をいろいろ変えつつ何度も遊べるゲームだ。どちらかといえばターンベース派の筆者が、部分的なプレイテストのつもりで始めたつもりが、ついつい現代まで通しでプレイしてしまう、という没入ぶりを週末ごとに繰り返しているのだ(笑)。Civファンの方も、ガチガチのターンベース原理派でなければ、まずは体験版を試してみてはいかがだろうか。

他国の軍事ユニットはスパイで買収できるが(コンピュータはこの手をよく使ってくる!)、市民と(学問所の)学者は転向させることができない。どうしてかは謎。都市を占領すると、施設にいた市民と学者が難民化して右往左往するのが何とも物悲しい。こちらが人手不足のときは、ぜひ自国民として都市にとどまって欲しいのだが……

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【Rise of Nations ~民族の興亡~】
  • CPU:Pentium III 500MHz以上(Pentium III 800MHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:1GB以上(実行時、別途300MBが必要)
  • ビデオカード:VRAM 16MB以上(32MB以上を推奨)


□「Rise of Nations ~民族の興亡~」公式ホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/ron/default.asp
□関連情報
【2003年6月15日】マイクロソフト、「Rise of Nations」カウントダウンイベントを開催
養老孟司氏、Halen氏など豪華ゲストが多数出席
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030615/msron.htm
【2003年6月3日】マイクロソフト、「Rise of Nations 日本語版」の発売を延期
延期の理由は修正プログラム組み込みのため
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030603/roenki.htm
【2003年4月30日】マイクロソフト、「Rise of Nations~民族の興亡~」を6月13日に発売。予約キャンペーン、メールマガジン配信を開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030430/ron.htm
【2003年2月10日】マイクロソフト、「Rise of Nations~民族の興亡~」を正式発表
人類の歴史を世界規模で扱った3Dリアルタイムストラテジー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030425/nonline.htm
【2003年2月12日】「RoN」クリエイターBrian Reynoldsインタビュー
「Rise of Nations~民族の興亡~」の魅力を聞
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030212/ron2.htm

(2003年7月9日)

[Reported by culi]


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