今年の春はD&Dが熱い。「NeverWinter Nights(日本語版)(以降NWN)」の発売を追走するように、メディアクエストから「Pool of Radiance(日本語版)(以降PoR)」が発売された。この「PoR」、英語版の発売は約2年前。「Baldur's Gate II: Throne of Bhaal」と同時期に製作されているため、昨年発売された「NWN」とは一概に比較できない作品だが、「PoR」はシングルプレイゲームとしてのシナリオが高く評価されている。Fogotton Realmsのファンタジー世界、荒廃したMyth Drannorを舞台にした一大叙事詩だ。
■ BioWareのD&Dシリーズとの違い
つまり、ベースそのものはNWNと同じわけだが、ゲーム性には大きな違いがある。PoRが、BioWareの作品と明らかに違うのは、実際のテーブルトークRPGのように、忠実にキャラクタを動かすことができる点だろう。 Bio WareのD&Dシリーズは、ポーズをかけてキャラクタの移動などを細かく指示できるものの、ラウンドという認識はなく、戦闘開始から終了まで自動進行によるコンピュータ任せになっている。その一方、「PoR」では1ラウンドごとにそれぞれのキャラクタの順番が回ってくる。 このシステムだと移動や攻撃を1ラウンドごとに逐一入力できるため、敵の背後への回り込みによる挟撃など、各人の細かい戦術をひとつずつ指示していくことができる。もっともダイスのロールなどはもちろんコンピュータの担当となっており、TRPGの雰囲気を効率よく味わえるシステムなのである。 また、PoRではレベルの上限は16までとなっている。マルチクラスのキャラクタもすべてのクラスを併せて32レベルが上限だ。ウィザードのクラスが存在せず、ソーサラーのみとなっている。また第3版特有のスキル配分についてもPoRとNWNでは少し趣を異にしている。 NWNではキャラクタのスキルをプレーヤーが詳しく配分できるのに対し、PoRではキャラクタ誕生時に選んだクラスでのプレイに有利なように自動で配分がなされる。また、レベルアップをしても、自分でスキルのカスタマイズをすることはできず(4、8、12、16レベルでの能力値アップはあり)、個別の武器熟練(たとえば、ロングソード、バトルアックスなどの種類別熟練)は行なわれていないなど、初心者でも遊びやすいように適度にシステムの簡略化が施されている。これを弱点と見るか、長所とみるかはユーザー次第だろう。
なお、キャラクタの新規作成は可能。ただし、あらかじめ用意されている6人に比べると、能力的に明らかに低いキャラクタができてしまう。「Baldur's Gate」で何度もダイスをロールしてスーパーキャラクタを作っていた人には激しく残念だが、これこそがD&Dらしい厳しさといえるのかもしれない。特別に思い入れのない初心者の方は、既存のキャラクタでプレイした方が無難だろう。ちなみにパーティは最初4人までで、NPCを含め最大6人で冒険ができるという点は「Baldur's Gate」シリーズなどと同じだ。 ■ さあ、いよいよMyth Dranorへ!!
しかしその任務は危機に瀕する。Myth Dranorからのアサンの助けを聞きつけたプレーヤー達は急ぎゲートへと急ぐが、到着した時にはすでに遅かった。全滅した彼らの後を継ぎ、プレーヤーはMyth Dranorの土地のどこかに復活したという“Pool of Radiance”を破壊しなければならないのだ。 プロローグが終わるといきなり戦闘が始まる。全滅したアサンのパーティーの荷物に、オークどもがたかっているのだ。NWNなどと違ってPoRの戦闘はかなり複雑になっている。基本的に行なっていることは同じだが、先にも書いたようにTRPGにより忠実な仕様のため、わかりにくい部分があるかもしれない。 戦闘での行動はまず、各キャラクタのDEX値修正を行なったイニシアチブのチェックが行なわれ、戦闘で指示を与えられる順番が決まる。画面左上にあるのが、行動順を表す表示だ。ドラゴンの顔で表示されているのはモンスター、宝石で表されているのがキャラクタだ。 まずキャラクタが行動できる番(アクティブ)になると、キャラクタはハイライト表示になり、足元に丸いインジケーターが現れる。これはHPを表しており、ダメージを受けていない状態では3重に、瀕死の状態では1重になっている(モンスターも同じ)。戦闘中の移動は、キャラクタを動かしたい地点を左クリックすることでできるのだが、PoRではカーソルに表示されるアイコンでさらに細かい行動を指示できる。 カーソルをあちこちに動かすと、アイコンが「歩く」、「走る」、アイコン横に「+」表示などに変化することに気づく。まず「歩く」のアイコンの時に左クリックをするとその地点まで歩いて移動してターンを終了する。「走る」の場合、より遠くまで移動できるが、そのラウンドでのACへのDEXボーナスを失ってしまう。アイコン横に「+」表示がある場合(主に短距離の移動時)は移動後に攻撃やスキルの使用など、追加行動ができることを表している。 オプションによってはモンスターを左クリックするだけで、移動+攻撃がセットできるようにするモードもあるが、自在に移動できるPoRならば、移動と攻撃は別々に行なった方が戦略的にもいい。もうひとつ重要なことがある。このゲームでは、キャラクタを一定時間内に行動させなければならない。 カーソルの下の緑のラインはその時間を表し、もしできなかった場合パスになってしまう。わかってはいても、移動してから魔法を唱えたり、アイテムを使う場合には、ちょっと気を抜くとタイムアウトになってしまう。この制限時間との戦いは「PoR」独特の楽しみだ。 それからD&D第三版の大きなルールのひとつとして、敵と近接しているときに魔法を唱えたり、背を向けて逃げようとする時に敵が自動的に攻撃できる「機会攻撃」の発生がある。もちろん「PoR」でもそのルールが盛り込まれているのだが、実際にどこまでが機会攻撃可能な範囲なのかが、いまひとつはっきりしない。こればかりは実戦を積んで勘で掴んでいくしかないだろう。 なお、非戦闘状態での移動は右Shiftキーで「走る」と「歩く」を切り替えるようになっている。走っていると不意打ちをくらいやすくなるので、初めての場所では歩いた方が無難だ。またこのゲームには集団モードと個人モードがあり、画面右下で切り替えられる。普段のパーティーの移動は集団モードで行ない、全体が隊列を組んで移動する。
一方、斥候や罠の解除には個人モードにする必要がある。隊列の変更もできる。まず個人モードにして自分の好きな隊列にキャラクタを並べる。その後に画面右下にある色つきの玉が並んでいるボタンを押すだけで、集団モードになったときにはその隊列が形成される。隊列というと予め用意されたものしかないゲームが多かったが、「PoR」では上の方法でキャラクタ間の距離もきちんと再現でき、かなり柔軟なシステムだ。 ■ 困難なクエストがひしめく広大なダンジョン
地上での情報収集を総合すると、どうやらコアマンソー城に住み着いた者たちがMyth Drannorを守ってきた魔法ミソールを歪めたため、“Pool of Radiance”が復活したのだという。そして魔法を歪めたのは謎につつまれた「傷の魔道師達」の集団だ。アサンはそれをエルミンスターに告げるためフランに戻るゲートを開いてみるつもりだったらしい。そのためにはこのダンジョンからMyth Dranorの高台に出る必要があるのだという。高台への最後の扉を開けるのに必要となる希求の指輪は、前の持ち主の白骨化した腕に挟まったまま抜けなくなっており、それをダンジョン内で探し出さなくてはならない。おそらく、傷の魔道師達の一人がそれを持っているのではないか。 かつては栄華を誇った都市も荒れ果て完全に無法状態になっている。プレーヤー達が入ったのは「中心階層」。階下には「深き階層」、階上には「石の階層」、「光の階層」、「浅い階層」などが存在することが話に伝わってくる。このダンジョンでは、様々なモンスターたちがそれぞれ縄張りを主張するようにして勢力争いを繰り広げている。中心階層は完全にオークの巣窟となっているが、東や南の方には強力なアンデッド達が勢力を張っている。オーク達の中でもさらに、ザッドと呼ばれる大ボスとそれに対抗するオーク達が内輪もめもしていたりいる。 深き階層ではより強力なオークである「オーロッグ」の大群が待ち受け、上層では魔道師達がアンデッド達に何か仕事をさせているらしい。先に勢力争いといったが、実際ダンジョン内ではモンスター同士の戦闘も行なわれており、漁夫の利を得るようにプレーヤー達が戦う場面も度々だ。さらに各地からやってきていた数々の冒険者達が、ダンジョンの中で朽ち果て亡霊となったり、あるいはクエストとなって謎を絡み合わせている。 ドワーフの地下都市のマップの第3レベルとして中心階層がマニュアルにも掲載されているが、これがこれまでの地上の様子と比べて呆れるほど広い。PoRは、ダンジョン探索の要素がかなり強い。「Baldur's Gate」のダンジョンくらいでは満足できない人には、血が沸騰しそうなくらいの興奮ものだ。地上での噂話はほとんど探索の最中に登場するクエストとなって待ち受けている。シナリオは「Baldur's Gate」にも劣らずに詰め込まれているといえよう。丹念にクリアしていこう。 このダンジョンからは、いよいよプレーヤーも魔法や各種スキルの必要性を感じてくるだろう。魔法は右クリックからポップアップメニューにしたがって唱えられる。プリースト呪文なら"D"、ソーサラー呪文なら"A"のショートカットキーを使おう。ソーサラーがSleepの呪文を唱えた後にファイターが攻撃したいときはファイターがアクティブになった時に「戦闘オプション(ショートカット"C")」の中の遅延を選択しよう。するとファイターの順番はイニシアチブの一番最後に変更になる。コンバットオプションにはファイターの強攻やプリーストのターンアンデッドなども含まれているので使わない手はない。 ダンジョンではモンスターに囲まれてしまうとかなり厄介。非肉弾戦キャラには接近されないよう気をつけていても、すぐに囲まれてしまう。悪くすると前衛までもボコボコにされて倒されてしまう。そうなった場合、とっさにロードしたくなってしまうが、パーティーの呪文に余裕がある場合は「ちょっと待った」をかけたい。 PoRではTRPGの仕様を忠実に再現するため、HPが-10以下で死亡となる。0以下-9以上の場合は出血、昏倒の状態で、HPが1ラウンドに1づつ減り続ける。この時パーティーの誰かが応急手当のスキルを使い成功すると、出血を食い止めた状態になりHPの低下が抑えられるのだ。この後、呪文などを使ってHPを1以上にしてやれば、キャラクタは再び活動できるようになる。 ゲーム序盤は敵に会う=死亡する確率50%と思ってもらってもいいほど戦いは厳しい。操作ひとつ、戦略ひとつ間違えただけで全滅の可能性もあるので、敵を倒すたびにセーブをするのをお勧めはする。が、ネットワークプレイをする場合など、不必要なやり直しを避けるためにも積極的に試して欲しい。 なお、補足で言っておくと、今回日本語版を再プレイしてみてふたたび痛感させられたが、魔法やインベントリーを開く際のメニューのインターフェイスはかなり杜撰なつくりで、非常に使いにくい。メニューのほかにも、場所や、移動、スキル使用に際してのクリックの有効範囲が不明瞭でかなりイライラさせられる。
さらにこうしたことにビデオカードなどのマシンパワーの影響も加わってくる。敵の数が1、2人程度だと問題はないがが、5、6人と増えるにしたがって、入力に不具合が生じてくる傾向がある。画面の重さが出したい呪文をクリックするのを邪魔する時があるのだ。英語版だとGeforce2 MXの64Mでこのダンジョンをクリアするのは不可能と見て筆者はゲーム自体をやめてしまったのだが、日本語版だとパッチもあたっているせいか、Geforce2MXの64Mではほとんど問題はないようだ。
■ ストーリーが本格的に展開していくのは中心階層の後半から
オークの首領であるオークリーダーのザッドはオークシャーマンに囲まれ、倒すのがかなりやっかいだ。せめてレベルが3になってから魔法戦で対抗したい。所詮はオークなのであっさりと魔法にかかってくれる。ダンジョンを探して手に入れた良い武器や鎧を手に入れていたならなお可だ。ザッドを倒し、手に入れたデスベインを地上で持ち主に返すと、彼らはまた別な話を聞かせてくれる。どうやらオーク達は、魔道師達とはまた別の闇の組織によって動かされているようだと。 中心階層には階下への階段が3、4個ある。それぞれ深い階層につながっているが、階下の全体を探索できるようなところへつながる階段はひとつだけだ。そしてその階段を例の魔道師集団のひとりが守っている。魔道師だけあって、この階の他の敵とは一味違う。ライトニングボルトなど強力な魔法をかけてくるので、何よりも早く接近し、機会攻撃をできるチャンスをうかがおう。この魔道師を倒すと下の階層だけでなく、上への階層へも行けるようになる。さらに重要なことは、この魔道師たちがドラゴンと盟約を交わし地上を支配しようとたくらむ、拝龍教団の者達だと判明するのだ。 上へ行けば拝龍教団のアンデッド集団、アンデッドが湧き出してくるゲートもあるという。また下へ行けばまた謎の組織に動かされたオーク軍団が待ち受ける。これでもまだまだ冒険は序の口。地上の各地へとつながるポータルの噂もある。さてこの先どうなることやら……。 PoRは、2年前の作とあってNWNと直接比較するのは確かに酷かもしれない。しかしそれをヌキにしても、ポップアップメニューの使いにくさや、中途半端なショートカット、機会攻撃範囲のわかりにくさなど、細かい部分に不満がある。
また、クエストもイベントのアピールが淡白で、内容が散漫過ぎて覚えられないものが多く、全体的に演出不足と感じた。が、細かいことは多々指摘できるものの、ムード一杯のハードな世界観は、やはり魅力的といわざるを得ない。ゲーム的にも相当難易度が高く、噛みごたえ充分だ。特に「Baldur's Gate」でダンジョン探索が好きだった人にはかなり楽しんでもらえることだろう。
(C)2001 Ubi Soft,Inc. All rights reserved. DUNGEONS & DRAGONS,D&D,FORGOTTEN REALMS,and the Wizards of the Coast logo are registered trademarks and POOL OF RADIANCE is a trademark of Wizards of the Coast,Inc. a subsidiary of Hasbro,Inc. Ubi Soft Entertainment,the Ubi Soft logo and the SSI logo are registerd trademarks of Ubi Soft,Inc. All other trademarks are the property of their respective owners. For Sale in Japan Only.
□メディアクエストのホームページ http://www.mediaquest.co.jp/ □製品情報 http://www.mediaquest.co.jp/por/index.html □関連情報 【2003年2月24日】PCゲームファーストインプレッション「Pool of Radiance: Ruins of Myth Drannor」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011026/por.htm 【2002年10月3日】ECTS2001 Ubi Softブースレポート Pool of Radiance、Battle Realms、Tom Crancy's Ghost Reconほか http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010903/ubi.htm (2003年4月1日)
[Reported by 嶋村智行]
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