「Mafia」は、'30年代アメリカの都市をそのまま再現した広大なゲームフィールドの中、プレーヤーは主人公のトムとなり、マフィアの一員として犯罪行為も含めた様々なミッションをこなしていくアクションゲームだ。ゲームシステムは「Grand Theft Auto III」とよく似た、3人称視点でのアクションとカーアクションがまじったものだが、若者の勢いが前面にでていたGTA3とは違い、「Mafia」は大人のギャングアクションである。ストーリー、時代設定、音楽、グラフィック、それぞれの要素がうまくまざって良作に仕上がっている。アル・カポネが生きた時代を思わせる都市の雰囲気に酔いしれながらマフィアとしての危険な人生を送ってみよう。 |
■ マフィアの中で成り上がっていくクライムアクション
「Mafia」は'30年代の架空のアメリカの一都市を舞台に、マフィアの一員として成り上がっていく様子を描いたクライムアクションゲームだ。「Grand Theft Auto III」でおなじみとなった、カーアクションと3人称視点アクションがまざったミッションクリア型のアクションゲームで、ストーリーに合わせて次から次に出される指令を受け、マフィアの一員として様々な犯罪行為に手を染めていくという内容である。
プレーヤーは主人公のトミー・アンジェロとなり、ちょっとした偶然からマフィア同士の抗争に巻き込まれ、ついにはマフィアの一員となって悪の道に身を染めていく。
ゲームは、今ではマフィア内で重要な地位となったトムが昔を回想する形で徐々にストーリーが進んでいく。トムは元々、タクシーの運転手をしていた。だが、銃撃戦をしていたマフィアを車で運んだことから、敵対するマフィアに狙われるようになり、そのため、自分の身の危険と大金の誘惑に負けて、彼はサリエリ・ファミリーに職を求め、マフィアの一員となってしまうのである。
古いフィルム風のムービーで物語の幕が明く | 店に入ってきたのがトムだ | 薄暗い店内の雰囲気が良く出ている |
マフィアであるトムが会うのは刑事……!? | ファミリーのボスに狙われていると語る主人公トム | トムの回想を聞くことになったノーマン刑事 |
ゲーム画面。歩きの状態から車にシームレスに乗り込める | 合間にはムービーが流れて物語が把握できる | 車での移動時にはスピードメーターなどが表示される |
■ 「Grand Theft Auto III」ライクな軽快なゲーム性もグッド
ゲームはその時々に提示される任務や目的をこなすことでストーリーが進んでいき、また新たな展開と共に新しい任務が下されることになるミッションクリア型だ。
基本は主人公を後ろから見た3人称視点で、そのままFPS風な操作で街の中を歩いたり、車に乗り降りすることになる。プレーヤーが操作するトムはアクションキー一発で車に自由に乗り降りでき、遠距離は車で移動したり、指令を受けた場所では車から降りて歩きで目標物に近付いたりする。シームレスに車移動と徒歩移動を切り替えられるため、非常に臨場感溢れるアクションを味わえる。
トムが扱う武器はバット、ナイフ、銃器類と様々なのだが、街中で銃をぶらぶらさせていては警察につかまってしまうため、相手の警戒に合わせていつもは武器は隠しておき、いざという時に素早く銃を抜くといった感じになる。使い終わったらHキーですぐに武器を隠すという感じだ。
ひょんなことからマフィアの銃撃戦にまきこまれ彼らを乗せる羽目に | リトルイタリーにあるサリエリのレストランに向かう | 車で追いかけてきた敵をふりきって目的地に到着する |
助けた男が戻ってくる。急にスローになるムービーにドキドキ | 腕を懐につっこんで男がこちらにやって来る。口封じか……!? | マフィアを助けた謝礼を前にして今後を悩むトム |
また、ミッション中は、警察につかまらないように注意しなくてはならない。例えば赤信号を無視したり道路の制限速度を超えた運転をしていると、警察車両がやってきて違反切符を切られてしまう。違反切符程度ならいいが、あまりにひどい行動を取っていると逮捕されてしまうような事態もあるわけで、警察が見ていないかどうかドキドキしながら犯罪行為をすることになる。アクションをこなしストーリーを進めながらのミッションなわけだが、1つのミッションの中にはいくつものサブクエストが用意されており、ミッションを1つ終えただけでもかなりの満腹感があるボリュームだった。全20ミッションとのことなのでかなり充実したプレイが満喫できるだろう。
この前の銃撃戦にいた敵マフィアがいきなり襲ってきた | サリエリファミリーの人間を助けたのが気に入らないようだ | タクシーの中から仰向けにひきずりだされてしまう |
発砲してきた二人組みから命がけで逃げ出す。頭に弾が当たるとダメージも大きい | 街の人の悲鳴が聞こえる中、矢印の指示に従って路地を抜けながら逃げていく | サリエリの店に駆け込め! ちなみにこの後、慌てて横断したため車に轢かれ、ミッションをやり直した |
サリエリの店に逃げ込んだ後は、ファミリーのものが助けてくれた。ついにマフィアになるトム | あたりを用心深く見回してから閉店の札にするサリエリの店の店員 | 先ほどの襲撃者は片付けられどこかに運ばれていった。ほっとする瞬間、「これで俺ももう戻れない」といった気持ちになる |
「Mafia」のカーアクションは、基本的に「GTA3」とよく似たゲーム性を備えているが、ドライブゲームとしても充実した内容だ。ゲーム中に運転する車は種類によって挙動が異なり、マニュアル運転も可能となっている。このため、「GTA3」のように次々に車を奪って乗り換えていく軽快感はないものの、単に移動する手段というのではなく、実感を伴ったドライビングアクションが楽しめる。
ちゃちなドライブゲームだと路面をホバーですべっているような気分になってしまうものだが、「Mafia」は慣性による動きも良く、登り坂ではスピードが出せず、反対に下り坂では出過ぎてしまう。3人称視点ではあるが、右にハンドルきれば、それにあわせて車の中の人間もきちんとハンドルを回していたり車のタイヤも動いていたりして、中々、芸が細かい。また、運転中の車の窓から手を突き出して、銃をぶっ放すことも可能なのが面白い点だ。
ファミリーのドン、サリエリに面会して初仕事を受ける | 車に乗り、ミッションに合わせて変わるコンパスにしたがって目的地へ | 自分を襲ったモレロ・ファミリーの車を叩き壊す |
■ とことんリアルな大都市を舞台にマフィアとしての人生を味わせてくれる名作
「Mafia」は「GTA3」に負けず劣らずアクションの舞台となる都市が広い。マフィアとして暮らしているこの街は、12マイル四方(約19.2km四方)もの広さなのだ。都市の中には路面電車がはしり跳ね橋が開いたり、大きな釣り橋が存在したりする。都市内にはダウンタウン、リトルイタリーといった各種エリアもあり、NPCたちはそれぞれの生活圏の中を動き回っている。
驚くのはNPCたちが実に細かいところまで実際に動いている点だ。路面電車にNPC住人が乗り降りする時は電車が止まるし、中にいる人が見えている状態で街の中を走っている。道路を行き来する車の中にもきちんと人がいて、左に曲がる時はちゃんとハンドルを動かしているのだ。
街並みのテクスチャはやや粗いものの、NPC住人と共に全体的に素晴らしい効果を上げていて、冗談ぬきで実際の街中を走り回っているような気分にさせてくれる。また、ゲーム中に登場する武器や車は'30年代当時に実際に使用されていたものをモデルにしており、街や人々と併せて非常にリアリティのある世界となっている。
一方、ミッションストーリーに登場するキャラクタたちも実に生き生きとしている。イタリア語なまりでしゃべるファミリーの面々との物語が、きちんと合間のムービーなどでフォローされ、自分がどんな立場にいるのか、仲間はどんな性格なのかといったことが自然に伝わってくる。この辺の、登場人物のひとりになりきらせてくれる自然な演出が大変良かった。
ゲームシステム的にも犯罪を主題としている部分的にも「GTA3」に似すぎていると言われてしまうかもしれないが、「Mafia」は「Mafia」で独自の世界をきっちり構成しており、ゲームでは中々味わえない種類のクラシカルで重たい世界観は心地よい。細かいディテールにまでこだわったゲームフィールドは、さすが名うてのデベロッパーIllusion Softworksの作品だけあるといった感じだ。
犯罪ものながらも自分の生きる道をどんどんと突き進んでいた「GTA3」とは異なって、「Mafia」はトムの回想で物語の幕が明けるため、全くの堅気だった彼がファミリーの重要なポジションにおり、そして現在はファミリーのボスに狙われているのがすでにわかっている。それがなんとなくゲーム全体に落ち着いた、かつ切ないような雰囲気をかもし出しているのも好印象だ。
また、ギャング映画風のレトロな雰囲気ばかりでなく、一度ゲームが始まってしまった後の怒涛のように進んでいくストーリー展開も見逃せない。合間合間に入るムービーやトムのモノローグによって、プレーヤーはトムとすっかり同化し、現代とは感覚の違う'30年代にすんなりと入り込めるよう工夫されている。
しかも、ゲーム中のプレーヤーは生きるのに必死で、ミッションによっては派手な銃撃戦や爆破作戦、手に汗握るカーチェイスのような爽快アクションを知らぬ間に続々とこなしてしまう。運命に流されていくトムと一緒に悪いこととは思わずに犯罪に手をそめ、気が付くとマフィアとしての自覚ができていたりするのである。
「Mafia」はプレイしている間中、次々とこなしていくアクションと先の読めないストーリー展開、古いレコードから流れてきているような素晴らしい音楽、生き生きとした登場人物たち、大人な雰囲気の世界観が一体となって、大変迫力のあるゲーム世界を堪能できる。プレイ感よし、物語もよし、そして予測のつかない様々なミッションに身も心も翻弄されてプレイに夢中になれるという久々の秀作タイトルだ。じっくりと腰をすえて長くプレイしたいと思わせるアクションゲームである。
リアリティのある都市空間が広がっている。一番始めのミッションは、マフィアになる前のタクシードライバー時代のため、客を乗せて都市の中のあちこちを移動し土地勘を養った。大きな橋などでつながった各エリアは驚くほど広い |
(C)2002 Gathering of Developers
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■ 気になる直輸入ソフト
海外ゲームの愛好者には欠かせなかった、秋葉原にあるOVERTOP2階のゲームソフト売り場が、3階に移転して広々としたスペースになった。ゲームは日本語版、直輸入もの両方を扱っており、先日、ソフトを買いに行なった際はセール品なども並べられていたので、買い逃したソフトがある人はチェックしに行ってみよう。
また、今回の買出しではラオックスゲーム館では期待の経営シミュレーション「Spring Break」を手に入れることができた。棚の最後のひとつだったので、買いに行く人は在庫があるか問い合わせて行こう。また、エレクトロニック・アーツ・スクウェアから日本語版が発売中の「Battlefield 1942」の直輸入版(実売6,750円~7,200円程度)が並べられている店があった。
その他では「Heroes Might & Magic」シリーズがひとつのパックになった「Heroes Platinum Edition(4,980円)」や航空会社を経営する「Airline Management Evolution(4,750円)」、暗殺者となって戦うFPS「SNIPER: PATH OF VENGEANCE(6,000円)、未来世界を舞台にしたロボットRTS「Earth 2150: Lost Souls(5,250円)」、湾岸戦争を題材にしたアクション「 Conflict: Desert Storm(6,180円~6,190円)」なども並んでいた。
「Spring Break(UK版タイトルはBeach Life)」はEidos会長イアン・リビングストン氏お墨付きのリゾート経営シミュレーション。箱庭ちっくなグラフィックもさることながら、様々な施設を使って思う様リゾートを整えていけるのが素晴らしい、今年一押しの箱庭系シミュレーションだ。
(C) Eidos Interactive Ltd 2002. All rights reserved.
第二次世界大戦を舞台にした極細密な描写で人気のストラテジー「Sudden Strike」のシリーズ最新版が、英語版で登場した。今回は日本軍が追加され、様々なシチュエーションでの戦いが楽しめる。描きこみまくられた美しいグラフィックも健在だ。
(C) 2002 CDV Software Entertainment AG
(2002年9月25日)
[Reported by 西尾ゆき]
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