今回はちょっとイレギュラーに海外でのゲームイベントをご紹介。「Ultima Online」(以下、UO)の話題を中心に、Electronic Artsのオンラインゲームを紹介するファンイベント「Online Worlds FanFest 2002」が米国テキサス州オースティンで行なわれた。本来は昨年の10月下旬に開催される予定であったが、諸事情から今年の1月に延期されていたもの。ホテルの大ホールを借り切って2日間開催され、開発者によるセッションやプレーヤー同士の座談会、UOの新しい拡張セットである「Ultima Online: Lord Blackthorn's Revenge」やシムピープルのオンライン版「The Sims Online」といった、未発売作品のプレイアブルデモも出展された。 |
■ アットホームな雰囲気のファンイベント「Online Worlds FanFest 2002」
米国テキサス州オースティンで、1月11日から12日(現地時間)まで、オンラインゲームのイベント「Online Worlds FanFest 2002」が開催された。これは'99年に行なわれた同じ趣向のイベント「Ultima Online World Faire」に続くもので、未発売ゲームのプレイアブルデモが遊べるほか、Ultima Onlineの話題を中心に開発者のセッションが開かれたり、コレクターズアイテムのオークションが開かれたり、参加者のコスプレコンテストがあったりと、アットホームな雰囲気の中で行なわれるファンイベントである。
今年はUltima Onlineの新しい拡張セット「Ultima Online: Lord Blackthorn's Revenge(以下UO: LBR)」についての発表があったほか、「シムシティ」や「シムピープル」でおなじみのゲーム・デザイナーWill Wright氏による「The Sims Online」についての講演、その他にも「Command & Conquer Renegade」や「Sid Miyer's Sim Golf」のデモが展示されるなど、Electronic Artsの未発売ゲームにいち早く触れられる機会にもなっていた。
今回会場となったRenaissance Austin Hotelは、「オースティンの中ではベストのホテルだね。値段は高いけど(タクシーの運転手さん談)」というゴージャスホテル。Ultima Online World Faireが行なわれた市内のコンベンションセンターとは趣きの異なる会場だが、セッションなどが行なわれるBallroom(宴会場)の入り口はお城風のセットで飾られて、やはりどこか学園祭風の楽しげな雰囲気を漂わせていた。
かなり規模の大きなホテル。中央には吹き抜けがあり開放的 | 会場の入り口にはお城のセットがしつらえてあり、雰囲気をだしていた | 部屋も広く、Marriott系列ということでイーサネットポートも完備 |
参加者には、参加費支払い時に登録したプレーヤー名やシャードのマーク、ペーパードールなどが印刷されたバッジとそれを首から提げるバッジホルダー、青いビニール袋などが渡される。袋の中身は参加へのおまけやイベントスケジュール表で、UO:LBRのベータCDとパッケージのイラストを利用したマウスパッドなどが入っていた。今回配られたCDによるUO:LBRのベータテストは、イベント後まもなく行われる予定だという。
FanFestは11日の朝10時半に開幕し、まずは基調講演が行なわれた。基調講演といっても大規模トレードショウのような大げさなものではなくて、会場のどこで何が行なわれているかなどがRick"Stellerex"MHall氏によって説明された後、「Ultima Online: Third Dawn」のプロデューサー兼開発ディレクターであるBryan"Tajima"Walker氏による「UO:LBR」の簡単な紹介がされ、デモムービーが流された。ムービーでは新モンスターなどがフラッシュバックで挿入される中、3Dクライアントでのロード・ブラックソンの体が変形し、Todd McFarlaneデザインの近未来的なキャラクタになるというクールな内容だった。
基調講演後は、Ultima Online内のゲームについてのテーマ別セッション―例えばこれからのアルケミー&マジックについて―などが行なわれた。これは開発者に自由に質問ができ、これからへの要望や提案なども発言できるため、多くのUOプレーヤー達が参加するものだ。ジャンルによってはかなり強い要望が出されまくって開発者がたじたじとなるなど、なかなかエキサイティングな場面もあるほか、あれはこうしてほしい、これはこうしてほしいという中には実際になるほどと思わせる意見も多くて楽しめた。
会場内部の様子 | 参加者の受付所にもお城風セットが。自分の苗字の頭文字を申請してバッジを探してもらう | 参加者に配られた袋の中身。一番のおみやげは「UO:LBR」のベータCDか!? |
取材に答えてWill Wright氏自らが解説する場面も |
ちなみに2月12日にアメリカで発売予定の「Command & Conquer Renegade」は、日本でも3月に、エレクトロニック・アーツ・スクウェアから完全日本語版が発売とのこと。ゲームについての詳細は別の機会に紹介するが、Westwood Studios渾身のFPSはグラフィック、スピード感共にかなりの出来だったので楽しみである。
最後のセッションが行なわれた後は解散となり、会場を出てすぐにあるホテルのカフェで食事が用意され、そこで談笑しながらイベントのラストを締めくくれるようになっている。ここでも、ORIGINの開発者達が参加者の中に入っていろいろな雑談を行なうため、開発者のそばで食事をしながらUOのこれからについてたずねる者がいれば、普段は遠隔地にいるプレイ仲間とオフ会風に集まっている参加者もいるといった具合だった。イベントの一日はこうして幕を閉じた。
基調講演で語るRick MHall氏(右)とBryan Walker氏(左)今回のイベントの司会進行役はこのお二方が担当 | リアルUOHOC(http://uohoc.stratics.com/)といった感じのセッション風景 |
開発者やプレーヤーが思い思いの場所に座ってゲームについて語りあうスペース「UO CHAT」。ゲームへの疑問を開発者に直接ぶつけられる | 一日のスケジュールが終わった後は夕食タイム。ここでブッフェから好きなものを取って、お目当ての開発者やUOでのプレイ仲間などと談笑しながら食事を楽しめる | コスプレコンテストの出場者。参加者が投票する。このほかに新モンスターの名前投票なども行なわれた |
■ イベントは「Ultima Online: Lord Blackthorn's Revenge」の話題でいっぱい
イベント会場に用意されたプレイアブルデモで新モンスターを満喫 |
これまで謎だったドーナッツ状のイルシェナーの中心部分を舞台に新たな冒険が繰り広げられるもので、アメコミの「Spawn」で有名なTodd McFarlane氏デザインによる新モンスターが加わるほか、モンスターAIの改善、新アイテムや新しいVirtue Systemの導入、ゲーム中のブラックソン関連のイベントがプレーヤー達の行動次第で結末が変化するなど、さまざなま要素が盛り込まれている。日本では2月中旬に、「ウルティマ オンライン―ブラックソンの復讐―」として新規購入者用のパッケージ(本体が含まれる)とアップグレード版パッケージとがオープン価格で発売される予定だ。
まずはプレイアブルデモで撮影したニューモンスターたちを見てほしい。これまでの、ファンタジー世界に忠実だったモンスターデザインやコンセプトと異なって、Todd McFarlane色が前面に出された独特のものになっている。突然こういったモンスターが登場したら、既存のプレーヤーには拒否反応があったかもしれないが、現在進行中のイベントによって、すでにMacFarlaneデザインのモンスターが登場していることと、それらが侵略者という形で徐々にゲームに入り込んでいるおかげで、拡張パック導入時での違和感は少なそうだ。
また、開発停止になってしまった「Ultima World Online: ORIGIN」(3D視点のUltima Onlineの続編)に登場予定だったプレーヤー種族「Meer」や「Juka」が、「UO:LBR」ではアグレッシブな敵として登場している。すでにExodus Overseerなどが「UO:TD」でのイベント後に登場しているが、これに近いメカニカルな敵キャラがいるほか、SphinxやQuagmireといったモンスターらしいモンスターも数多く用意されている。
ハイライトされているのがSphinx。左下の青いデーモンがFour Aemed Demon | 赤いChaos Demonなどに追い詰められている場面 | ハイライトされているのがSkeltal Horse。左にはArmored Swamp Dragonが |
ぴょこぴょこと歩くモンスター。名前表示はHorde Demon | Juggernautはメカニカルなボディに人間の頭が入っていてぎょっとする | なにやら巨大食虫植物のようなQuagmire |
プレーヤーキャラが乗ったRidgebackもいた | Fire Ant系は画面のFire Ant Queenのほかに、WarriorやWorkerも | 青さが目を引くGiant Beetle。キャラクタと比べると大きさがわかる |
参加者の質問に答えたオリジンの開発陣たち |
いくつかの質問が出された後に、Bryan Walker氏からプレーヤーキャラクタの新モデル、顔バリエーションについての提案が発表された。これは3Dクライアント用のもので、顔バリエーションについてはこれまでは一律だったキャラクタの顔に変化がつけられるようになるというもの。また、披露された女性モデルはこれまでの角がとがったようなキャラクタモデルではなくて、より美しいものだった。最初に新モデルが映されたときは「Beautiful」の声が参加者からもれていたが、すぐ次に映されたおデブバージョンでは爆笑の渦に。もし、プレーヤーが自由に体型を変えられるようになれば、キャラクタメイキングやプレイがいっそう楽しいものになるだろう。
Female Avatarのスクリーンショット |
キャラメイク時に自由に体型が変えられるようになったら面白い | 顔の種類が増えれば、さらにプレイへの没入度が高まりそうだ |
セッション終了後、開発者のRick MHall氏に新しいVirtue Systemについて聞くことができた。今回の拡張パックを機に導入されるVirtue System―徳システム―とは、既存のフェイムやカルマが関連したReputationシステムとはまた異なったもので、ウルティマシリーズの特色である「徳」の思想を前面に押し出したものである。
公式サイトにあがっているインタフェース画面。ウルティマファンにはおなじみのシンボルマークが利用されている |
すでにSacrifice(献身)とHumility(謙譲)についてのコンセプトが昨年10月に発表されているが、例えばSacrifice(献身)であれば、自分のReputation数値を犠牲にして邪悪なモンスターを救済し、徳のランクを上げていき、自分で自分を蘇生できる能力が与えられる。Humilityであれば、Havenなどに赴き、[young]プレーヤーを支援することでランクが上がり、マナやヒットポイントも上げられるという具合である。
開発者のRick MHall氏は「Virtue SystemはUltimaシリーズの中で大きな位置を占めるものだけど、UOには存在しなかった。ほとんどのオンラインゲームのシステムの中心は戦闘だけど、Virtue SystemならばオンラインゲームでのプレイとSocial Actionをさらに促す良いチャンスになると考えたんだ。例えば、Humilityだったら、Newbieのプレーヤーの後援者となって、そのプレーヤーのMiningやBlacksmithなどのスキルがあがると、後援者のHumilityポイントも上がる。そして何ポイントかを達成するとKnight of Humilityになるわけ。
オリジナルのUltimaでは徳をつむような行動をしても、シングルプレイではまわりに誰もいないから、SaclificeやHumilityやValorな行動をしても誰かにアピールするといったことはできなかった。けれどもマルチプレイならば、オリジナルのUltimaにそったようなパーフェクトなプレイを他のプレーヤーに披露してを楽しむことができる。Vitue Systemのおかげで、ポジティブで建設的な行動をゲーム内ですることが意味あることになるんだ。Virtue SystemはLord Blackthorn's Revengeからスタートして、その後12カ月間かけて導入する予定だよ」と語っていた。
「Ultima Online」はUltimaとは離れてしまったというのが、Ultimaシリーズファンがよく嘆くことだが、このVirtue SystemによってUltimaの最大の特徴である徳を積むことを目指したロールプレイングができ、マルチプレイならではの楽しみを得られることになるし、これまで名声的なものから取り残されていた生産系キャラクタにもチャンスが生まれる。ブラックソンやエクソダス、ガーゴイルなどのオリジナルのUltimaにちなんだモチーフがちりばめられた新シリーズにはふさわしいシステムだ。
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(2001年1月15日)
[Reported by 西尾ゆき]
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