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【連載第9回】 気になる海外ゲームをピックアップ


西尾ゆきの海外ゲームレポート

日本語版ベータテストも順調! 人気沸騰のMMORPG
「Ragnarok Online」

 2001年の11月下旬に日本語版ベータテストが始まって以来、かなりの数の日本人プレーヤーを獲得した「Ragnarok Online」。この韓国発のMMORPGは、可愛らしいキャラクタと美しいグラフィック、それぞれに特色あるキャラクタ職業などがあいまって、シンプルで遊びやすい内容となっている。一見するとパステル調2次元RPGに見えるのだが、その実、かなりの勢いでぐりぐりと動かせる3Dグラフィックも見ものだ。

可愛らしいキャラとシンプルなゲームシステムが合わさったMMORPG

 韓国のGRAVITYが開発中の「Ragnarok Online(以下ラグナロック)」は、11月下旬に日本語版ベータテストが始まり、わずか1カ月の間に大量のプレーヤーを獲得したオンラインRPGだ。可愛らしいキャラクタとパステル調の世界が親しみやすく、シンプルなゲームシステムが遊びやすい。各キャラクタ職業の特徴が明確で、しかも各職業スキルはどんどんレベルアップしたくなるように工夫されている。また、明るいファンタジー色を前面に押し出した世界観もあってか、ゲーム内の雰囲気も「楽しくまったりのんびりと」という感じで、ネットワークコミュニケーション好きな人々の心もがっちりとつかんでいるようだ。ベータテスト中ということで、まだまだ実装されてないシステムなども多いのだが、これからを大いに期待させる一本である。

2Dの雰囲気とうまく融合した斜め見下ろし型の3Dグラフィック。これがぐるんぐるん動くので気持ちいい。色使いも落ち着いていて、海辺の街などはさわやか 橋の上でも商売をしているキャラクタがちらほら。キャラクタの出している金袋マークの吹き出しをダブルクリックすると、NPC店舗と同様の売買ウィンドウが表示される 街中は常に大勢のプレーヤーであふれている。ゲームを始めたばかりの時は、プレーヤーに埋もれたNPCを探すのに苦労してしまった

転職によって各職業に分かれる

ステータス画面の下にある2本のバーがキャラクタレベル(Base LV)とスキルレベル(Job LV)。バーが経験値で満タンになるとレベルアップする
最初の職業となるNovice。文字通り基本的な機能を習得するための職業。早く一人前になりたいがために戦闘に熱中してしまう
 ラグナロックは基本的に戦闘がゲームの中心で、敵を倒して経験値を得て、倒したモンスターが落としたアイテムを拾って転売し、そのお金でさらに装備を整えていく。

 キャラクタは戦闘によって得る経験値で、キャラクタレベルとスキルレベルの両方がアップしていく。キャラクタレベルが上がると基本能力値に割り振るボーナスポイントがもらえ、スキルレベルが上がると自分の好きなレベルをひとつレベルアップさせられるという具合だ。

 ゲームを開始するとプレーヤーはまずNovice(初心者)キャラクタでしばらくプレイすることになる。まだ、どんな職業にもついていないという設定で、Noviceが持っているスキル「基本機能」をLV9まであげないと、Swordman(剣士)やAcolyte(僧侶)といった他の職業に転職できない。「基本機能」というスキルは、LV1で他のプレーヤーとのアイテム交換が可能になり、LV3でキャラクタが座れ、LV7でようやくパーティが組めるというもの。プレーヤーとしては早く一人前になりたくて黙々と戦闘を続けてしまう。「LV9になれば転職、LV9になれば転職」とブツブツ言いながら熱中してぷよぷよなモンスター「ポリン」を叩きまくること請け合いだ。

 ちなみに基本機能がLV9になるには半日~1日かからなかったので、ラグナロックの真髄に到達する前にプレイを止めてしまうということもない。この「最初はNoviceにしておいて一人前を目指させる」というシステムは、ゲームにプレーヤーを引き込む絶妙な導入となっている。

 基本機能がLV9まで上がったキャラクタは、転職したい職業ごとに特定の場所のNPCに話し掛けて転職を申請することになる。ベータテストのせいか、たんにNPCに話し掛ければいいだけの職業があれば、ちょっとしたクエストをこなさなくてはならない職業もある。

 転職をするといよいよ一人前ということで、職業にあわせた装備品なども身につけられる。それぞれの職業で習得できるスキルは何種類ずつかあり、「Diablo II」のようにパッシブスキル(いちいちスキルを発動しなくても効果があるもの)やアクティブスキル(その都度、使用するもの)が用意されていて、どのスキルをどのような優先順位でレベルアップさせていくかがプレーヤーの腕の見せ所だ。

Swordman(剣士) 接近戦に強い、直接攻撃要員。弓と杖以外のすべての武器が扱える Archer(弓使い) 自分にダメージがこないよう遠距離からちくちくと敵を攻撃できる Magician(魔法使い) さまざまな攻撃的呪文を扱える魔法のスペシャリスト

Merchant(商人) どこでも簡易店を開いて商売できる。お金を投げて攻撃することも Thief(盗賊) 短剣の素早い攻撃が得意。モンスターからアイテムを盗み出したりもできる Acolyte(僧侶) 回復系の魔法を使える聖職者。刃がついていない鈍器系の武器を扱える

序盤の装備はこんなものだが、転職後ならば装備できるアイテムもぐっと増え、がんばって稼ごうという気になる スキルは職業によってまるっきり異なる。スキルレベルはちょっとずつしかあげられないので、何を優先するかが重要

気楽だがメリハリのある戦闘

 戦闘は、モンスターをクリック連打するだけ。もしくはCtrlキー+クリックで自動的に攻撃を続けてくれる。ゲーム序盤であれば、ポカポカと敵を叩いて合間に休んでヒットポイントを回復、そしてまたポカポカと叩きに行くという感じで、非常にお気楽だ。転職後は習得したスキルをショートカットに割り振って使いながら、またポカポカ。

 レベルアップスピードと戦闘のバランスとがなんともゆったりとしていて、自分の能力から見れば弱い敵からでもそれなり経験値が得られるため、敵を探してイラつくことがない。たとえばポリンならLV1~LV9まで十分に経験値の足しになるといった具合。特定のモンスターで経験値を得られるレベルに幅があるので、レベルアップした途端「次どこ? 次どこ?」と高レベルモンスターを求めなくても良く、じりじりせずに落ち着いてプレイできる。

 武器・防具に関しても性能が良ければさくさく敵を倒せるし、安物であってもそれなりに冒険は続けられる。RPGをプレイしていると、装備品と敵の強さとのバランスがすぐ煮詰まって頻繁に買い換えることが多いが、ラグナロックではそれが比較的緩やかに感じだ。

 また、ベータテスト中ということもあってか、パーティを組む必要性は今のところあまりなく、1人でお気楽にポカポカ叩いていて十分レベルアップしていけるのも良かった。死ぬか生きるかの緊迫感を感じつつ、Raidに何十時間もかけるような戦闘とは対極で、ラグナロクでは、キャラクタごとのスキル特性を生かしたメリハリがありつつも、気楽で、良い意味でゲームらしい戦闘が楽しめるのである。

 戦闘関連でおもしろいのは「MVP System」と呼ばれるシステムで、ダンジョンやフィールドのボス級のモンスターを倒したとき、一番ダメージを与えたり受けたりしたプレーヤーがMVPとなって特殊なアイテムをもらえるというもの。直接打撃が得意でない職業はどうなるのかちょっと興味がある。また、パーティを組んだ場合もダメージを一番多く与えたキャラクタが経験値をより多くもらえるらしい。また、キャラクタレベルによっても経験値の分配は変わっていくようだ。

与えたダメージの数字がポンポンと小気味良く飛びだす。これに、ザシュッザシュッという効果音もつくので戦闘がテンポ良く感じられる フィールド全体を見渡すとこんな感じ。街のそばのフィールドはどこもプレーヤーで立て込んでいた レベルアップすると頭の上に天使らしきものがふわっと表示され、反対に死亡するとなにやら悪魔か死神みたいなのが浮かんでしまう

ぐるんぐるん回るゲームフィールド

 ラグナロックでもう一点強調しておきたいのは、そのフィールドのぐるぐるさ加減。マウスの右ボタンをクリック&ドラッグするとゲームフィールドを360度好きなようにまわせるのだ。普通、3DRPGというと、プレーヤーの視点で周りを見渡すのだが、ラグナロックの場合は「ドラゴンクエストVII」のように、キャラクタを支点にしてその周りのフィールドをコマのようにぐるぐるまわせてしまう。しかも、木や建物などのオブジェクトがダイナミックかつ丁寧にまとめられているので、キャラクタの2D加減と落差がでず、全体的に「立体水彩画」みたいな印象をかもし出している。ゲームフィールドが実になごやかなせいか、ゲームをし続けていてもあまり殺伐とした気持ちにならないのが不思議だ。

フィールドをまわした状態の連続画面。これが360度ストレスなくぐるんぐるん動く

アイテムを右クリックすると詳細解説が。かなりの部分で日本語化されているのがうれしい
 また、ゲーム中にはさまざまなアイテムが登場し、お金がない序盤は指をくわえてみているしかないものも多い。「いつか、あれを身につけたい」と思わせる装備品があるのもゲームを続けていける魅力だ。中には、イベント期間限定で手に入ったサンタ風帽子などもあり、この辺の、時期を逃すと手に入りにくい限定アクセサリがあるあたりは、「ハビタット」などを思い起こさせる。こういったレアものに限らず、武器や防具、アイテムのプレーヤー間取引は盛んで、大勢のMerchantキャラクタが道端でアイテムの買取や販売を行なっていて、街が常ににぎやかなのも、プレイしていて心浮き立つ要素だった。

 一方、ラグナロックに対する不満点としては、キャラクタグラフィックの色のメリハリが少ないこと、ぐるぐるフィールドを回しているうちに方向を見失ってしまうこと、キャラクタの移動速度が遅いこと、モンスターを倒したときにアイテムがぼろぼろ散らばって第三者がルートし放題なことなどがあった。また、フィールド上のモンスターに他のプレーヤーと同じタイミングで攻撃を仕掛けてしまい、お互い譲り合うような合わないような状況になり、「この振り上げた手はどこにもっていけばいいかしら」みたいな、どうにも気まずい場面が多かった。これはラグがかなりきついことも影響しているので、日本サーバー設置などを含めてこれからの改善に期待したい。

 多少文句はあるものの、どれもベータテスト期間だからしょうがないかなあと思う程度。根本的に違和感を感じる要素はあまりなかった。直前まで徹底的に「Dark Age of Camelot」をプレイしていたせいか、ラグナロックのスクリーン画面を見ただけの時は「ううーん2Dの可愛い系RPGかあ。チャット中心なんだろうなあ」という印象しかなかった。

 だが、今回プレイしてみた途端、そのぐるぐるまわる水彩画のようなグラフィックにやられ、シンプルだけど上を目指させるスキル構成にやられ、上級プレーヤーの身に付けてるウサギ耳や猫耳装備品にやられ、とことん親切なプレーヤーのあたたかさにふれ、といった具合にラグナロックの魅力に取り憑かれ通しだった。

 ベータテスト中ということで、既存のMMORPGに比べるとクエストが豊富なわけでもレア物が豊富なわけでもないのだが、なぜかついついログインしてプレイしたくなる手軽さがある。今のところのゲームバランスが、パーティ不要のせいもあるのかもしれないが、のんびりプレイし始めて、好きなときに惜しげなくサッとログアウトできる気軽さが何よりだった。欧米ゲーム至上主義の人も「今どき3頭身キャラクタのしかも見下ろし視点のRPGかよ」などと食わず嫌いをしないで、無料で気軽にチャレンジできる今、ラグナロックをぜひプレイしてみてほしい。

モンスターを倒して手に入れたアイテムの中には、プレーヤーキャラクタに高額で買い取ってもらえるものもある レアものや準レアなアイテムはウン十万単位の価格で販売されている 街のお店で売られているマフラーやマント、サングラスなどは割とお手ごろな値段で手に入る

日本語版ベータ開始1カ月にもかかわらずラグナロックは人であふれている。街はもちろんのこと、フィールド上でちょっとでも人通りがある場所では商人が店を広げる

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【RAGNAROK Online】
  • ジャンル:3D MMORPG
  • 開発/発売元:GRAVITY
  • 価格::無料ベータテスト中
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • CPU:Pentium II 400MHz以上
  • メモリ:64MB以上
  • HDD:400MB以上
  • ビデオメモリ:8MB以上


□「Ragnarok Online」公式ホームページ(英文)
http://www.ragnarokonline.com/
□「Ragnarok Online」公式ホームページ(日本語)
http://www.ragnarokonline.com/jp/r_main.htm


今週の気になる直輸入ソフト:番外編

韓国で人気ゲームのひとつ、ネクソンの「闇の伝説」
 今週は年末年始ということで目立ったタイトルの入荷が見かけられなかったので、韓国製ネットワークゲームに関してのお話を。最近は、韓国発のネットワークゲームの日本語ローカライズがとても盛んで、有料・無料とりまぜて利用者も多くなっている。

 韓国のネットゲームは、「Diablo」風アクションRPGや「Starcraft」風RTS、「Ultima Online」風MMORPGばかりだった一時期に比べて、かなりバラエティに富んできており、特に最近は、ライトゲーマーから中級者向けのチャットを中心にすえたMMORPGが充実しているように思える。韓国発のネットゲームは「Ever Quest」や「Dark Age of Camelot」といったあたりの濃さとはまた違ったテイストのものが多く、日本の漫画・アニメ文化圏に近い絵柄もあって日本人にも受け入れやすい。これは日本でアニメーションを学んだ数多くの韓国人がゲーム開発スタッフとして参加している結果だと見られる。

 また、日本に上陸した韓国のネットゲームは、ゲームの手軽さや楽しさもさることながら、いずれのゲームもアカウント登録・課金登録がスマートで、日本のネットゲームにありがちな「ゲームは面白そうなのに、登録がわかりづらくてやる気が萎える」ということがない。その上、ゲームは常に更新され、プレイし続けたいと思うような工夫がてんこ盛り。この辺は、国内での熾烈な競争に勝ち残ってきた経験が生かされているのだろう。これからも、「ラグナロック」やハンゲームのように、韓国発の遊びやすく熱中しやすいネットワークゲームがどんどん日本語ローカライズされていくことだろう。

 3~4年前にネットワークRPGというと、それは限られたごく一部の洋ゲーマニアのものだったが、最近では「クロスゲート」や「ディプスファンタジア」などのコンシューマよりの絵柄と内容のものが人気を博し始めている。韓国産のネットゲームも含めて、Ever Quest的な洋ゲーよりもそういった遊びやすいネットゲームのほうが市民権を得てきてるのだろう。

(2001年1月9日)

[Reported by 西尾ゆき]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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