|
【田中宏和氏】 |
~ クリーチャーズのオフィスにて ~ |
「ポケットモンスター (ポケモン)」などのゲーム制作で知られる株式会社クリーチャーズが2月27日に発売を予定しているゲームボーイカラー用新感覚ゲーム「ちっちゃいエイリアン」。
今回は「ちっちゃいエイリアン」の原案、ディレクションおよびサウンドを担当した田中宏和氏にお話を伺った。前編では「ちっちゃいエイリアン」に至る経過から魅力までを語ってもっらたが、後半では「ちっちゃいエイリアン」へのこだわりから、ゲームのこれからについてまで幅広いお話を伺った。
■ 数々の“こだわり”と“挑戦”
ゲームボーイカラーには、このようにスペクトラムコミュニケーターを装着! カッコエエ!! |
田中宏和氏 要するに「ちっちゃいエイリアン」でゲームボーイカラーは“ちゃいリアン”を捕まえる探索機ですから、「見つけたときに音と振動で知らせてくれたらいいなぁ」と思ったんです。子供達はリモコンをゲームボーイカラーに近づけて遊ぶことが多いと思うんですが、イメージとしては蛍光灯にかざして光に隠れた“ちゃいリアン”を探すという姿があったんです。そうしたとき、画面が見えなくても“ピッ”とか音がして振動してくれればわかるじゃないですか。
振動カートリッジとならんで、今回目新しいのは赤外線通信部に付ける「スペクトラムコミュニケーター」ですが
田中宏和氏 元々なんかしたいねというのがあったんですが、これに関しては開発費がかかるじゃないですか。そうしたとき石原 (石原恒和、クリーチャーズ代表取締役社長) が「やろうよ」と言ってくれたんです。
アイディア段階ではブタを付けてそれが光ったりと、色々考えていたんです。任天堂にいたときは関連部署があったので頼むとこういったものを作ってくれたんですが、クリーチャーズではなかなか実現が難しかったんです。でも、任天堂の技術にも協力してもらって実現することができました。
近々、ゲームボーイアドバンスが発売されますが、なぜ、ゲームボーイアドバンス用として制作されなかったんですか?
田中宏和氏 それは単純にゲームボーイの形です。だって、横長の探索機はおかしいでしょ。「ちっちゃいエイリアン」はゲームボーイカラーの縦長の形があってこそ実現したソフトなんです。やっぱり形ありきというか、そう言ったところから来ていますね。
我々はどうしても画面の中だけでゲームを考えてしまいがちですが、違うんですね。
田中宏和氏 自分がハード込みでやってきた人間ですので、ソフトの中身だけを考えるんじゃないんです。
それと、ゲームってなにかしなくちゃいけないじゃないですか。目的を達成しなくちゃいけないとか。それがないと、“クソゲー”とか言われて評価してもらえないじゃないですか。そういった意味では (「ちっちゃいエイリアン」は) ギリギリだと思うんですよ。でも、今まではこういった価値観は潰されてきた感じもしますね。だから、このゲームはどうしても世に出したかったんです。
音楽とか効果音で気を付けられたことはありますか
田中宏和氏 音楽らしい音楽は、基本的に他のスタッフが担当しているんです。でも、音のような音じゃないような、音楽のようで音楽じゃないサウンドは僕が担当しています。やっぱり長年この業界にいて、プログラム込みで音だけやってきた人間として、誰にも出せないような“音”が自分の中にあるんですよ。アイディアひとつで全然違う“音”が出るとかあるんですよ。ですから、「MOTHER」と一緒で、知ってる人は「あぁ、これは田中さんの“音”だ」とわかると思うんです。音がずれたりするんで、オリジナル度の高い自分の色が出せたと思います。
■ 子供や女性に楽しんでもらいたい
ゲームの開始時は宇宙はこのように“まっしろ”。ロケットを発射してダークマターを宇宙に返していくことで、宇宙は“黒く”戻っていく |
田中宏和氏 ゲームを作る上で、僕の今のレベルって、ゲームの歴史にたとえると“ファミコン”だと思うんですよ。「ポケットカメラ」が“ゲーム&ウォッチ”で、「ちっちゃいエイリアン」が“ファミコン”。次に手がけるソフトが“スーパーファミコン”程度の発想の中から出てきたアイディアを実現できるのかなと思っているんです。ですから、他のスタッフにも言っているんです。「マリオ」のような大きなチームのようなやり方もあるし、それとは別に我々なりの戦い方ができる。ファミコン程度と言うことでレベルを下げているわけではなくて、その当時なかった発想から今に通じるモノが作れると思うんです。
歴史って一直線ではないですよね? 例えば音楽で言えば、音大出ている人が偉くて、そこだけがどんどん進化していくわけじゃない。高度なレベルのものがありながら、一方で初心者は初心者で参加できる。もちろん古いものも受け継ぎながら発展していっている。でもゲーム業界って、大きくなりすぎて動かなくなっているというのが最近チラチラと出てきているじゃないですか。でも、映画も文学などにしても違うでしょ。そういった状況で、僕自身どんなアイディアをゲームにできるのかと考えたとき「ちっちゃいエイリアン」だったんです。
ただのミニゲームであれば消費されてしまいその場で終わってしまうだけなんだけど、それが世界観を作っていけば全く違う意味を持つので、それを我々のできる範囲で探していこうよと言うのが今回のスタンスなんです。
そういった意味合いで、いま、気になるゲームはありますか?
田中宏和氏 ゲームではあんまりないですね。むしろiモードを見てると、いろいろな意味で今変化している最中なんだなぁと感じますね。僕らがやってきたことと同じことが繰り返されているというか。例えば少し前でしたら、ポケベルを見たときに、僕らが昔ハードで音を出していたときのことを思い出しましたね。ポートを上げたり下げたりして音を出すんですが、それと同じでしょ。もちろん、すぐに進化して2音3音と出るようになったけど。その変化のスピードは、ゲーム業界は10年かかったけど、携帯電話などはそれが1年で達成できていますよね。ですから携帯電話はこれからもっともっとRAMなどの容量が増えたりして進化していくと思うんですよ。
僕自身がそう言った変化をどのように捉えているかというと、僕自身はマーケティングとか勉強してるわけじゃないけど、人間を突き動かすものはやっぱり生死とかも含めたセクシャリティな部分だと思うんですよ。これらはエンターテイメントと全く対極のもので、これまであまり関係ないものだったんだけど、最近それが近くなってきたというか、表裏一体となりつつあると思うんです。
たとえばiモードであれば、人と会話ができるという実用的な部分がありつつ、ゲームもできてしまう。そうしたときに、ゲーム業界ってエンターテイメントの部分だけでやってきたけど、視点を変えて現実的なものとの距離感を考えないとこれからは難しいんじゃないかと思うんですよ。エンターテイメントを切り開いてきたのは“ゲーム”だったけれど、生活に浸透していくという意味では、もっと実生活に近い携帯電話なんかじゃないかな。
GPSなんかも同じ意味で興味がありますね。昔、車メーカーと仕事をしたことがあるんですが、GPSで常に監視されていて事故があったらどこにいるかがわかっているわけですから勝手に電話してすぐに救急隊が駆けつけるというシステムがあったんです。それは当たり前のようですけど、カッコエエと思ったんですよ。そりゃゲーム機に搭載されていて、自分の位置情報がゲームに反映されるのも大きいんですが、実用的な方が素晴らしいと思うんですよ。
それで、昔はそういった“技術”は“遊び”と切り離されたところにあったと思うんですが、コンピュータの進歩みたいなところで、それらの距離が縮まりつつあるのかなと。昔は“遊び”を提供することと、“生死”を扱う問題は違っていましたけど、ネットもそうなんですけど、だんだん狭まってきたと思うんです。それでも我々は遊びの分野でやってるんですが、携帯電話なんかにはそういった流れを感じますね。
「ちっちゃいエイリアン」は、どういった人に楽しんで貰いたいですか
田中宏和氏 やってみないとわからない“楽しさ”ではあると思うんですよ。それに、格闘ゲームなんかを楽しんでこられた、コアなゲームユーザー層が、「これは面白い!」って流れてこないと思うんですよ。
逆に今回、次世代ワールドホビーフェアで面白かったのは女性や子供のウケが良かったんです。だいたいこういった新しいものが流行るのは、女性や子供からじゃないですか。ポケモンも子供から始まって、親が「ピカチュウってカワイイんだ」という風に広がっていったでしょ。
だからそういった人たちに広まっていってもらえれば、僕としては嬉しいし、考え方も間違ってなかったのかなぁと思いますね。
このようにして“ちゃいリアン”を探すのが基本! でも、机に載ると危ないのでくれぐれも注意するように | 遊び方のイメージイラスト。蛍光灯を探せ! | 蛍光灯だけでなくリモコンの光からこうやって探し出すこともできる |
□関連情報
【1月19日】クリーチャーズ、新感覚“宇宙救済ゲーム”「ちっちゃいエイリアン」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010119/creat.htm
【1月12日】次世代ワールドホビーフェア開幕
クリーチャーズがちょっと変わったゲームボーイカラー専用ソフトを展示
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010113/whobby.htm
(2001年2月14日)
[Reported by 船津稔]
GAME Watchホームページ |