山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第97回
考えるほどに「Nintendo Labo」はいろんな方向の魅力をフォローしていて恐ろしいって思った話
2018年1月24日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
作って遊んでデコることもできちゃうって言うんですから、そんなんキッズは楽しいに決まってるじゃないですか。いや、大人だって楽しいですよね。
発表されてから約1週間ぐらい経ったので、だいぶ話題として落ち着いた感がありますけど、
「Nintendo Labo」です。
みなさんの感想はいかがだったでしょうか?
「なんだこれ!?」
とか、
「ダンボール!?」
とか、みなさんもいろいろな感想があったと思いますし、実際にTwitterなどネット上は予想外だった的な声を多く見かけました。
面白そうだって多くの人がパッと思えるものになっていますし、ワクワクしますよね。
「やってみたい!」っていう人は多いはず。
一方で、僕は意外と冷静というか、
「あぁー、いよいよこの方向のものが製品になって出てくるんだなー!」
っていう印象でした。最初は。
というのも、「Joy-Conを何かアタッチメント的なものにつければいろいろ遊べるよね?」っていうのは、
昨年にNintendo Switchが発売されるより前……1年近く前にも、近いことを考えていたクリエイターさんが結構いて、そういうお話を聞いていたからなんです。
記事として見られる形に残っているものですと例えば、
こちらの
□Nintendo Switch「ぷよぷよテトリスS」試遊レポート&インタビュー
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1046795.html
は、僕がNintendo Switch発売前にローンチタイトルの「ぷよぷよテトリスS」をプレイをさせてもらい、プロデューサーの細山田氏と片野氏に現地でインタビューもさせてもらったという記事ですが、
このインタビュー内で細山田さんは「コントローラーのJoy-Conが左右に分割できるというところを何かに使えないかなーと思っていまして」とか、「いろんなペリフェラル(周辺機器)やコンソールにくっつけて遊ぶみたいなことも今後広がっていくといいのかなと思っていて」ということを話されているんですよね。
もちろんセガというとアーケードの体感筐体ものを数多くリリースしてきた歴史があって、Joy-Conを上手くアタッチメント的なものと組み合わせると、その体感筐体の操作が再現できるんじゃない?的な発想が生まれやすいし、実際に取り組んでくれそうなメーカー筆頭なわけなんですよね。
例えば、操縦桿的なアタッチメントにJoy-Conを差し込めば「スペースハリアー」や「アフターバーナーII」あたりの操縦桿操作を手軽に再現できそうだったり。
なにしろNintendo Switchの標準コントローラーであるJoy-Conは分離型でありモーションコントローラー内蔵であり、さらにコントローラーとしてはかなり小型・軽量ときていますので、何かと組み合わせて使うというのにもすごく向いているんですよね。もちろん、HD振動やIRカメラも活きてきます。
ただ、これがすぐに実現しなかったのは、「じゃあ、どんな素材を使って、どんなアタッチメントを出すの?」というところで引っかかったのではないかなと思えます。
従来のプラスチック的な素材のアタッチメントでいくと、正直なところあんまり面白みにはかけるというか。Wiiザッパーとかマリオカートのハンドルアタッチメントなどでお馴染み……っていう話になっちゃいます。
なによりコストの面で、それほどたくさんの種類を1度に発売はできないですし、ユーザー側としてもあれこれまとめて買う気持ちにはあまりなりません。
もう一歩何かが欲しい……本来ならここから話が伸びず保留になりがちな話っぽいのですが。
そこで登場したもう一工夫が「ダンボール」です。
ダンボールなら製造コストをより抑えつつ、切り出し方を工夫すれば1枚のダンボールからたくさんのパーツが取り出せる。
しかもユーザーが自分で組み立てて、その組み立てるという行為そのものである“作る面白さ”も製品の魅力にプラスできちゃう。工作の魅力ですよね。
名称も、自分で作るコントローラー「Toy-Con」というキャッチーでかわいい名前がついてます。
この「Toy-Con」、プラスチック素材のアタッチメントとは違ってダンボール切り出しのパーツを使っての組み立て式ですから、図面さえあれば自作するということもできなくはありませんし、そうなると「Nintendo Labo」の図面を基により強固な素材でコントローラーを作ってそれをSNSや動画サイトで公開してみた……なんていうガチな人達もきっと現われるでしょう。そして、そうした人たちの登場もまた、「Nintendo Labo」を盛り上げる話題のひとつになっていきます。
そんなこんなで、「Toy-Con」を作る楽しさ、そして仕組みを理解しての面白さを知ると、新しいオリジナルな「Toy-Con」を考えて、変な遊びを生み出すキッズも登場するかもしれません。
というか、すでにそこまで「Nintendo Labo」の公式サイトに書いてあります。そこまで想定済みというわけですよね。
ダンボールという素材ですので、強度や水に濡れたりなどもありますし、使っていた「Toy-Con」がへたってきたときに補強したり、新しく作りなおしたりすことも必要になるかもしれないですが、そういう補強や作り直しのタイミングに、自分なりに工夫してみようとか、ネットで公開されている工夫を取り入れてみようと思えるものでもあると思います。
工夫や改善の余地、タイミングがあって、それをしやすい素材だからこそ、自発的な工夫が生まれやすい。
そんなところもまたダンボールという素材が1番マッチしています。
もちろ単純に色を塗ったりシールやテープでデコレーションしたりもやりやすいですよね。
そして、そういうところもやっぱり「Nintendo Labo」の公式サイトにすでに書いてあって、想定済みというわけです。
恐ろしい。
恐ろしいですよホント。
諸々のいろんな方向性を考慮してのベストな素材と提供方法が“ダンボールで自分で作ってもらう”になったというわけです。知育トイ的な見え方も加わり、親御さんから見ても、より印象のいいものになっていますよね。
とまぁそんなわけで、発表をみてJoy-Conをアタッチメントに組み合わせるという点ではさほど驚かなかった僕も、ダンボールを使うというところは知れば知るほど考えれば考えるほど、やっぱり「Nintendo Labo」に感心しきり。
爆発的なヒットになるかというと、それはちょっとまた別かもしれないですが(こういう自分で作るものというのは人を選ぶところはやはりあります)、どちらにしろ、任天堂ならではという記憶に残るプロダクトだと思います。すごいっす。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。