「moon」レビュー

moon
悲しみがやがて愛に変わる。ゲームファンに「救うとは何か」を問うゲーム内ゲームの冒険
- ジャンル:
- RPG
 
- 発売元:
- オニオンゲームス
 
- 開発元:
- オニオンゲームス
 
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
 
- 価格:
- 1,980円(税込)
 
- 発売日:
- 2019年10月10日
 
2019年10月9日 00:00
「moon」をプレイして、最初に得た感情は「悲しい」だった。何しろ、降り立ったマップの至るところに動物(以下、アニマル)たちの“惨殺体”が転がっているのである。粘土アートでかわいらしく表現されてはいるが、状況としてはまあ酷い。
真っ二つに切られていたり、矢が無数に突き刺さっていたり。あっちでも死んでいるし、こっちでも死んでいる。そして、殺したのは鎧をかぶったいかにもRPG的な紋切り型の「勇者」。彼は世界を救うという目的を与えられ、自身がレベルアップするために見境なくアニマルたちを殺して回っている。アニマルたちが善か悪かは一切関係なく……。そもそも、この世界に悪者がいるようには思えないのに。
しかし、プレーヤー=主人公はアニマルたちのさまよえる魂を「キャッチ」し、体に戻して救うことができる。怪しい方向に進みつつある世界を、慈愛の心と少々のおせっかいで少しずつ良くしていく。RPG世界の中で、そこで暮らす人々やアニマルたちを戦う以外の方法で救う。これが本作が“アンチRPG”と呼ばれるゆえんであり、ゲーム全体に通じているトーンである。
プレイを通して、プレーヤーが感じていた「悲しさ」は、いつの間にかキャラクターたちに対して「なんとかしてあげたい」と思う気持ちへと変わっている。この新たに生まれてきた感情こそが、「moon」が言うところの「ラブ」なのだと思う。
それもラブ、これもラブ。ラブの収集で行動範囲を拡大
本作は「ラブ」を集めてレベルアップする成長要素と、世界を探索して困りごとの解決や謎解きをするアドベンチャー要素が組み合わさった作品だ。画面は見下ろし視点で、城や城下町、草原、洞窟、砂漠、ジャングルなど様々なエリアを探索していく。
その導入は独特で、まずプレーヤーはゲーム内ゲームの「MOON」をプレイすることとなる。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」など当時のRPGのステレオタイプを集結させたようなこの「MOON」では、上記の「勇者」を操作して敵をなぎ倒し、悪のドラゴンを退治するところまでが描かれる。
ここでゲームは中断され、「MOON」をプレイしていた少年の母親から「早く寝なさい」と声がかかる。一旦プレイを止めようとしたところで、少年はゲームの中に吸い込まれてしまう。
そして、世界に降り立った少年が見ることになるのが最初に挙げたシーンだ。少年が見る世界は、少年がプレイしていた「MOON」とはだいぶ印象が違っている。敵に見えたアニマルも賞賛ばかりの人々のセリフも、あくまで「勇者」視点の思い込み。実際は「moon」の人々から「勇者」は気味悪がられている。つまり、棚を漁ったり敵を倒したり、RPGでは当たり前の行動がむしろ本作では迷惑になっているのだ。
主人公の少年は、歩くこと、話すこと、アイテムを手に入れて使うことなどくらいしかできない。やれることは限られている上、就寝を挟まずに行動し続けると気絶してゲームオーバーになってしまう。
しかし、事件解決や魂のキャッチ、謎解きなどをしていくと「ラブ」が溜まり、「ラブ」が一定数集まればラブレベルが上がって行動可能時間が増える。最初は少しの時間と範囲しか動けずとも、「ラブ」を集めることで徐々に広がっていくイメージだ。
そして、本作はこの時間の概念が特にポイント。朝から晩まで1日の流れが決まっていて、1日が過ぎると曜日が切り替わる。曜日は7日間、つまり1週間のサイクルとなっている。プレイ最序盤は昼間しか動けず、すぐに寝に戻らないとゲームオーバーになってしまうが、「ラブ」を集めれば夜も行動できるし、日をまたげるようにもなる。そうして新たな出来事を発見していくわけだ。
1日1日を生きる、いかにも人間的なキャラクターたち
今「moon」には時間の概念があると書いたが、登場人物には性格や趣味嗜好が決まっていて、日々のやることがきっちり決まっている。たとえば、城の王様なら午前は鳥の餌やり、午後は謁見の間でプレーヤーの質問に答えてくれる。夜は自室に帰って就寝……などといった感じ。謁見の間にいるタイミングで話しかけると王様のネームカードがもらえるなど、場合によってはアイテムをくれたり新情報が明らかになったりする。
そして本作最大の仕掛けは、キャラクターの作り込みがセリフも含めてとてもよくできていること。筆者お気に入りのキャラクターの1人、城の護衛兵のイビリーはフレッドというもう1人の護衛兵とコンビを組んでいるのだが、警備中のイビリーに話しかけると「相棒が夜ふかしなので困っている」というような話をしてくれる。
一般的なRPGだったらただのフレーバーテキストとして流すようなところも、本作の場合は夜の間に本当に「夜ふかし」をしていたりする。いわば、セリフの1つ1つが伏線であり、行動の1つ1つが彼らの秘密につながっている。さきほどのイビリーの例で言えば、よくよく話を聞いていると、彼には別れた奥さんと子供がいること、ある日の昼は工作飛行機を飛ばす練習をしていることがわかる。
なぜそんなことをしているのか。練習の先には何があるのか。このあたりをしっかりと追いかけてみると、イビリーがただの護衛兵ではなく1人の人間として見えてくる。何が起きるかはあえてここでは明かさないが、ちょっとの悲しさがありながら、それでも心温まるエピソードとなっていて、少なくとも筆者の心にはじんわりと来た。
そうしたエピソードが、各キャラクターに隠されている。1回か2回話したくらいではわからないキャラクターたちの本音が見えたとき、我々はそのキャラクターをもっと好きになる。そして、手元には新たな「ラブ」が集まっているのだ。
これはアニマルたちの魂も同じで、ある条件が整うことで初めてキャッチできる仕組みだ。昼や夜になればふと現われる場合もあれば、朝の限られた時間だけ登場することもあるし、プレーヤーのある行動で出現することもある。そのヒントは、死体をチェックしたときの紹介テキストがすべて。「それとそれがつながるのか!」というトリッキーなものもあり、これはぜひ、実際に頭を悩ませながら楽しんでいただきたい。
優しい世界。でもプレーヤーにはちょっと厳しい世界
ゲームは「ラブを集めなさい」とは言われるものの、基本的には世界にほっぽりだされる感じだ。序盤はできそうなことで溢れているため「あれもやってみたいこれもやってみたい」とサクサク進めることができるが、ラブがだいぶ集まって中盤を過ぎたあたりで、「次は何をしたらいいんだろう……」と迷う瞬間が来る。
物語が進むヒントは各キャラクターのセリフや行動の中に詰まっているという設計なので、それらを見逃すと「結局何をすればいいんだ?」となりかねない。エピソードの1つ1つは悲しくて優しくてちょっぴり笑えるものばかりなのだが、それらの糸口さえ見つからないとゲームとしては途端に行き詰まってしまう。
そこで必要になるのが、個人的には“根気”だと思っている。待つことも大事だし、アイテムを見せてコメントをもらうことも大事だし、時にはキャラクターたちを入念に追い回すことも必要になるだろう。「あのキャラクターはいつもあそこにいるのに、夜になったらいない」などの場面に出くわしたら大チャンスで、そこにはきっと何かがある。いろいろ操作したくなるところをぐっとこらえて、待ってみて、追いかけてみて、そこで新たに判明することがある。
また情報量が多い上、それぞれの情報は断片的なので、特に謎解き系はスクリーンショットやメモ書きがほぼ必須。やるべきことを片っ端からリスト化するなどの対策も面白いだろう。そして住民たちの願いを叶えていけば、やがて物語はエンディングへと向かっていく。そこで見ることになるのは……。
「moon」とは何だったのか?
本作のエンディングについては、賛否あるところだと思う。実際にプレイした筆者も「どういうこと?」と一瞬戸惑ったし、同時に「かなり思い切ったことをやっている」と感じたからだ。それでも、スタッフロールが流れる映像を見ているうちに「言いたいことがわかってきた」と納得感がどんどん高まってきて、最終的にはとてもいいものを見た気持ちになった。
ネタバレを避けるとなるとほぼ何も言えないのが心苦しいが、「あれはね、きっとこういうことなんだよ」と誰かに語りたくなる魅力がある。
じつは、筆者はこの移植作の発表を心から待ち望んでいた1人だった。なぜかというと、「moon」の魅力に気づきながら今までプレイするチャンスに恵まれなかったからだ。
色々とゲームを遊ぶ中で「どうも『moon』というゲームが面白いらしい」という話を聞いたとき、すでに「moon」は販売終了していた。その後かなりの頻度で中古ショップに立ち寄ることになるが、いくら探しても「moon」を見つけることができなかった(その代わり、同じラブデリックが開発した「UFO -A day in the life-」はしこたまプレイした)。
そんな筆者なので、9月のNintendo DirectでNintendo Switch移植版が発表されたとき、「ついにあの『moon』をプレイできる!」と感動していた。
そして、今回「moon」を夢が叶ったような気分でプレイしていたのだが、そのガチガチに高まったハードルすら見事に超えてくれたことが何より嬉しかった。
本作に付けられた「もう、勇者しない。」というキャッチコピーはあまりにも有名だが、最後まで通してみると「勇者」という存在を真っ向から否定しているわけではないとわかる。どちらかといえば、RPGというもの、ひいてはゲームというものに違う角度から光を当てたような作品だ。
愛すべきキャラクターたちを真の意味で救うには何をするべきか。ゲームを遊ぶということは何か。その問いかけにこそ、「moon」のすべての魅力が詰まっていると筆者は思う。
Published by Onion Games
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