インタビュー
「SEGA AGES ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」インタビュー
数々の新機能を搭載し、1本に2本分以上のコンテンツを盛り込んだ新生「ソニック2」!
2020年2月12日 00:00
- 【SEGA AGES ソニック・ザ・ヘッジホッグ2】
- 2月13日配信開始
- 価格:999円(税込)
- CEROレーティング:A(全年齢対象)
セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第16弾は、世界中で大人気を博したアクションゲーム、「SEGA AGES ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」(以下、「ソニック2」)だ。
本作は、言わずと知れた傑作アクションゲーム、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の続編として、1992年にメガドライブ用ソフトとして発売された。世界中のプレーヤーを震撼させた、主人公ソニックが画面内を高速で走り回る、圧倒的スピード感が前作よりもさらにアップしたほか、ソニックのパートナーで2本の尻尾がトレードマークのテイルスがシリーズ初登場し、2人同時プレイが可能になったことでも有名だ。
Nintendo Switch版では、元祖メガドライブ版を忠実に再現したオリジナルモードをはじめ、これまでの移植版には存在しなかった新システムや、初心者に配慮した数々の便利機能を搭載しているという。そんなウワサを聞き付けたGAME Watchでは、配信に先駆けておなじみの「SEGA AGES」シリーズ開発スタッフインタビューを超音速で敢行した。今回も笑いあり涙あり、そしてお役立ち情報が満載のインタビューとなったので、ぜひ最後までご一読いただきたい。
後のシリーズ作品の礎となった、完成度の高い「ソニック2」は鉄板のラインナップ
――今回もよろしくお願いします。まずはいつもどおりの質問となりますが、「ソニック2」をSEGA AGESのラインナップに加えた理由からお聞かせください。本シリーズの配信第1弾となった初代「ソニック」と同様に、やはり「ソニック2」も外すことはできないタイトルだったということでしょうか?
堀井氏: はい。やはり、そこは人気作ですので。
奥成氏: そうですね。「ソニック」と「ぷよぷよ」に関しては定番なので、それぞれシリーズを2作ずつ、第1期のSEGA AGESで出しましょうということで、企画当初から当然ラインナップに入っていました。
堀井氏: 我々としても、何度も移植をした経験がありますので、少しでも開発に掛ける時間を短縮できるものであればと、もろ手を挙げて賛成しました。
奥成氏: SEGA AGESのラインナップが決まった後に、メガドライブミニのラインナップを決める際には、SEGA AGESとは重複しないように収録タイトルを選びましたが、「ソニック」と「ぷよぷよ」シリーズだけは定番なので、どちらで出しても大丈夫だろうということで、両方で出すことにしました。
堀井氏: やっぱり、どちらもセガの「顔」ですからね。
――「ぷよぷよ通」も「ソニック2」も、シリーズ作品として不動の人気を確立した第2弾は、とりわけ必要不可欠だったということですね。
堀井氏: ええ。そういうことになるかと思います。
奥成氏: 初代「ぷよぷよ」が金字塔となったうえで、シリーズとしてシステムを完成させたのが第2弾の「ぷよぷよ通」であったように、「ソニック」もまずは衝撃的な第1作目が出て、その後のシリーズに続く要素が「ソニック2」で完成しているところがあると思うんですよね。
堀井氏: 初代「ソニック」の時は、まだ走り込めないコースがあったりしましたが、「ソニック2」のほうはきちんと走り込めるようになっていましたよね。
奥成氏: 映画でも何でもそうだと思いますが、初代でアプローチしたものに対して、ファンがどのように受け止めたのかを踏まえて、その後どういう形で伸ばしていくのかを作り手としては考えていくわけですよね。この辺りの細かい部分は、実際に開発に参加していた小玉のほうが、それを横で見ていたのではないかと思いますが、実際どうでしたか?
小玉氏: 「ソニック」はアメリカやヨーロッパですごく人気が出ましたので、「『ソニック2』は、欧米の熱気をわかったうえで作ってほしい」というオーダーが日本からもアメリカからもあった関係で、ソニックチームのメンバーがアメリカに行って開発をしました。ですから、背景グラフィックスのハリウッドやラスベガスのようなイメージが、ちゃんと伝わるようなものが作れていたと思います。
――ちなみに、小玉さんがデザインを担当したのはどの部分ですか?
小玉氏: カジノナイトゾーンの背景をちょっとだけ手伝いましたが、製品版にはほとんど残っていません。私が実際にカジノに行ったうえで絵を描いたわけではなかったので、日本人がイメージするカジノの絵になっていました。後から山口恭史さんが全部描き直しています。
奥成氏: この時には、ちょっと面白いお話があるんです。初代「ソニック」を開発したオリジナルメンバーのうち、中(裕司氏)さんや安原(広和氏)さんはアメリカに行って「ソニック2」を作っていた一方で、キャラクターデザインを担当した大島(直人氏)さんなどは日本に残って 「ソニックCD」(※1) の開発をするという、元祖ソニックチームと本家ソニックチームの2つのチームが存在するような形で、2タイトルを同時に作っていたんですよ。
※1……「ソニックCD」: 日本では1993年に発売されたメガCD用アクションゲーム。正式タイトルは「ソニック・ザ・ヘッジホッグCD」で、エミーがシリーズ初登場した作品としても知られる。
小玉氏: 当時の「ソニック」シリーズは社内でも秘密にされていて、私も「ソニックCD」を開発している部屋の中には入れなかったと記憶しています。ですから、最初の頃は「ソニックCD」がどんな内容なのかは全然知らなくて、ずっと機密事項のプロジェクトになっていました。
奥成氏: 初代「ソニック」は、アメリカではSNES(海外版のスーパーファミコン)が発売される2ヶ月ぐらい前に発売されました。またアメリカでは、スーパーファミコンが日本よりも1年遅れての発売になりましたから、いろいろと 比較広告をやったりもしたんですね(※2) 。それから「ソニック2」では、ソニックとテイルスが2人とも後ろを向いた姿で、「coming soon」と書かれたポスターとかも作りましたね。「で、この黄色い子は誰なの?」って(笑)。
※2……比較広告をやったりもしたんですね: 当時、SOA(セガ・オブ・アメリカ)がソニックを使用して、ライバルであるNOA(ニンテンドー・オブ・アメリカ)の看板キャラクターであるマリオとの比較広告を実施していたことを指す。「こちらはソニック、ギュイーンと速いでしょ? こちらではマリオがピッコンピッコン……」、「Nintendon't!」など、かなり刺激的な表現を使用していた。
――SEGA AGESはグローバル展開がコンセプトとのことですので、それを成功させるためにも、海外での知名度がとりわけ高い「ソニック」シリーズの存在は、やはり欠かせないですよね。ほかにも、「ソニック3」や「ソニック&ナックルズ」、あるいはアーケード版「ソニック」(※3)などのシリーズ作品も、計画段階では配信タイトルの候補に挙がっていたのでしょうか?
小玉氏: いいえ。そこまでは考えていなかったですね。
奥成氏: 最初にNintendo SwitchでSEGA AGESを立ち上げるにあたり、開発タイトル数は限られていましたので、その中に「ぷよぷよ」と「ソニック」シリーズを2タイトルずつ、順番に⼊れようということでラインナップを選びました。もし今回のSEGA AGESが無事成功したら、それ以降のシリーズも出すのかどうかを検討したいですね。アーケード版の「ソニック」は、今までに⼀度も移植されていないですし、最近ではマイティーとレイが、「ソニックマニア」でまさかの復活を遂げ、追加ダウンロードコンテンツとして登場するというビックリイベントがありましたが、開発スタッフがラインナップを決める時には、2⼈が追加される話は知らなかったんです(笑)。ですから、「ソニック2」以降のタイトルがいきなり候補に挙がるようなことはありませんでした。まあもっともトラックボールのゲームを移植するにはそれ以外にもハードルが高いですけどね。。
※3……アーケード版「ソニック」: 1993年に発売されたアーケードゲーム、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のことで、キャラクターをトラックボールで操作するのが特徴。ちなみに、2018年に発売された「ソニックマニア・プラス」では、最初からマイティーとレイが使えるようになっている。
――過去にはWiiのバーチャルコンソール版ですとか、最近ではメガドライブミニ版の「ソニック2」も、開発をエムツーが担当されていたと伺っています。移植するのは今回が初めてではありませんし、メガドライブのハード解析のご経験もお持ちですから、開発のほうはスムーズに進んだという理解で宜しいですか?
堀井氏: そうですね。そこは我々のほうでいろいろとやってきましたので。
奥成氏: 3DS版もエムツーさんが作っていますし、今までにずっと苦労を重ねてきましたから、もうゲームの内容はきちんと把握されていますよね。そのうえで、Nintendo Switch版を開発するにあたって、まずは何をやったらいいのかを考えるのがスタート地点になったわけですね。初代「ソニック」の時は、 「メガプレイバージョン」(※4) という珍しいものを収録してご好評をいただきましたので、「ソニック2」でも同様の方針でやっていこうと最初は考えていました。メガプレイ版の「ソニック2」のROMが用意できていましたし、作業的にはかなり面倒なのですが、時間と労力さえあればできるということで作り始めたのですが……。
堀井氏: 実際に触ってみたら、ゲーム自体がメガドライブ版とあまり変わらなかったんですよ。メガプレイ版の初代「ソニック」は、メガドライブ版とは違う要素がかなりあったのですが、「ソニック2」は変わった部分がなくて、ハイスコアランキングも⼊っていなかったんです。しかもアーケードゲームですから、プレイ時間を短くするためにスペシャルステージがバッサリとカットされていて、カオスエメラルドが手に入らないんですね。その代わり、最終面をクリアするとカオスエメラルドを持った状態のエンディングが見られるのですが、でもこれだったらわざわざ手間を掛けてメガプレイ版を遊べるようにしても、元のメガドライブ版のほうが面白いから意味がないだろうということで、今回は見送りました。
※4……「メガプレイバージョン」: 海外でのみ発売された、メガドライブ用ソフトが遊べるアーケード用システム基板、メガプレイに収録された「ソニック」を移植・再現したモードで、制限時間内にステージクリアを目指すというルールになっている。「チャレンジモード」でプレイすると、オンラインランキングを介して全世界のプレーヤーとスコアアタックが楽しめるようにもなっている。
奥成氏: そうなんですよね。初代「ソニック」みたいに、「メガドライブ版と同じように見えるけど、微妙に違う」という面白さがなかったんですよね。じゃあ、それをやめるのであれば何を入れようかということで考えたのが、「ナックルズinソニック2」モードなんです。
堀井氏: 「ソニック&ナックルズ」に「ソニック2」のカートリッジを差し込むと、「ソニック2」のステージをナックルズで遊べるロックオンシステムを再現したわけですね。それにしても、これってよく実装できたなあと。いったいどうやって作ったのか、当時はセガさんにお尋ねしてみたかったですね。
奥成氏: 当時は私もどういう原理で動いているのかわからなくてただ驚いていました。ロックオンシステムについて補足しますと、「ソニック&ナックルズ」に「ソニック3」のカートリッジを合体させると、「ソニック3」のストーリーの続きを遊べるようにしてあるんですね。合体させることで、前編・後編という形で続きが遊べるようにしたのはすごい仕組みだと思いますが、その一方で「ソニック2」を合体させると、ナックルズを使って「ソニック2」のステージが遊べるというのは、まったくもってビックリですよね。ホント当時は「スゲー!」のひとことで済ませていたわけですが(笑)。
堀井氏: で、以前Wiiのバーチャルコンソールでロックオンを再現する際に解析したところ、ナックルズのカートリッジの中に「ナックルズ in ソニック2」がまるまる入っているんです。
奥成氏: 見た目は現代のダウンロードコンテンツのパッチに近いですけど、実際は力業ですよね。「ソニック2」を合体させないと一切遊べないところも徹底しています。この「ソニック2」、ナックルズで「ソニック2」のステージが遊べるということは、ナックルズは壁を登れますから、ソニックとテイルスでは行けなかった場所にもどんどん行けて、なおかつそこにはアイテムボックスが置いてあったりして、ちゃんとナックルズ用のマップに変わるんですよね。
堀井氏: 当時は「ソニック2」のマップデータを「ソニック&ナックルズ」の中にあらかじめ入れておいて、カートリッジを合体させた時に起動する仕組みになっているのかな? って思ってました。
奥成氏: 移植する側としては、実機と同様合体したソフトを用意して中に組み込む形にしたわけですね。今回の第1期SEGA AGESには、「ソニック3」と「ソニック&ナックルズ」をラインナップに入れなかったので、「ソニック2」の追加要素という形で実装したのが「ナックルズinソニック2」モードということです。以前に、Wiiバーチャルコンソール版の「ソニック&ナックルズ」でロックオンシステムを疑似再現したことがありましたので、エムツーさんが本モードを作れることはもうわかっていたのですが、いざ実装しようとなると、これでまたひと手間掛かっちゃったんですけどね。
――つまり、本作において最もご苦労されたのが、ロックオンシステムを再現することだったわけですね。
奥成氏: そうですね。1本で2本分の内容を作ったような形になりましたので。
堀井氏: 「もう何度目の移植だよ!」って言われても、「今回は、こういうものがあるんだよ」っていうことを、私としても毎回言えるようにしたいと思っていますので、そこは必ず意識して作るようにしています。
奥成氏: 3DS版の「ソニック2」を作った時に、 「リングキープモード」という初心者救済のための機能ですとか、「リングチェイン」というスコアアタックの要素を新たに入れましたが(※5) 、今回のSEGA AGES版にも引き続き実装していますし、しかもこれらの要素を「ナックルズinソニック2」でも遊べるようになっていますよ。
※5……「リングキープモード」、「リングチェイン」: 「リングキープモード」は、リングを10個持った状態でスタートし、ダメージを受けた際に飛び散るリングの数が半分になる機能のこと。「リングチェイン」は、ミスをしないでリングを取り続けた数をカウントする機能で、記録した最大チェイン数はオンラインランキングの集計対象にもなっている。
――過去に何度も移植版を作った経験があったとはいえ、それだけいろいろな要素を盛り込んだ分、開発期間がかなり長くなったのではないかとお察ししますが?
堀井氏: だいたい1年ぐらいですね。途中で出たり入ったりしたスタッフもいましたが、1年の間に最低でも誰か1人は必ず関わっていましたので。
奥成氏: 確か、初代「ソニック」と同時に進めていた時期もありましたよね?
堀井氏: そうですね。若干ですが、両方のラインが同時に走っている時期もあったと思います。
奥成氏: 「ソニック」と「ソニック2」を両方出すという前提でしたからね。エムツーさんでは、開発期間をたっぷりと掛けて作ってくださるので、初代「ソニック」はいったいいつ出したのか、もう忘れちゃってますね……ああそうか、もう2年も前になるんですね!
小玉氏: そうそう。2018年の9月20日の配信でしたね。
堀井氏: いやあ、随分と引っ張ったなあ……。
奥成氏: 当初の計画では、半年間で全タイトルを出すつもりだったんですよね?
堀井氏: そ、そんなことをココで言ってはダメですよ!!
小玉氏: そこは、後から私が反省文を書いて提出するところですよ……。
(一同爆笑)
奥成氏: まあいろいろありましたが、初代「ソニック」が完成したのが8月下旬か9月の頭ぐらいで、その時点で「ソニック2」の開発も始まっていたんですね。
小玉氏: 去年の6月ぐらいの段階で、 ドロップダッシュ(※6) が実装された「ソニック2」が出来上がっていましたので、「ソニック」のプロデューサーである飯塚(隆氏)にも見せてオーケーをいただいていました。
※6……ドロップダッシュ: ジャンプ中に回転エネルギーをためて、着地した瞬間にダッシュすることができるアクションのこと。2017年に発売された「ソニックマニア」で初めて実装された。
奥成氏: 飯塚からは、SEGA AGES版の初代「ソニック」の開発中から、ドロップダッシュを入れてほしいという要望がありました。前回の3DS版「ソニック」を出した時に、「スピンダッシュを追加しておきました」と伝えたら、「じゃあ、今度はドロップダッシュも入れて」と言われたんですよ(笑)。スピンダッシュのほうは、中さんがセガサターン版の「ソニックジャム」を作った時に、初代「ソニック」でもスピンダッシュが使えるようにしていましたから、これを再現すれば大丈夫だろうと。でも、ドロップダッシュはどこにもなかったので、エムツーさんがいろいろ試行錯誤をすることになったんです。
堀井氏: はい。もう泣きながら(苦笑)。スピンダッシュの時も泣きながら実装したのに、今度は「ドロップダッシュ? 何ですかそれは?」というところから開発を始めたんですよ……。
小玉氏: 初代「ソニック」に入れたんだから、「ソニック2」にも入っていないといけないでしょうということですね。
堀井氏: そこはもう、現在の「ソニック」シリーズのレギュレーションを完全に守ったうえで作るべきだと、我々側でも十分に理解したうえでお仕事をさせていただいておりますので!
奥成氏: 実は「ソニック」シリーズでは、主人公キャラクターのイラスト流用を、基本的にはほとんどしていないんですよ。少なくとも、初代「ソニック」から「ソニック2」、「ソニック3」の間はまったく流用されていなくて、それぞれデザインが違うんです。ですから、それを踏まえたうえで「ソニック2」用のスピンダッシュをアレンジして作ってあります。
――では、「ソニック」シリーズの命でもある、ソニックが超高速で駆け回るスピード感を再現するにあたって、特にご苦労されたことは何かありますか?
堀井氏: すでにNintendo Switch版の開発にはだいぶ慣れてきていましたので、その点に関しては特に問題はなかったですね。
奥成氏: メガドライブミニ版では、画面の2分割表示を再現するのにかなり苦労していましたが、Nintendo Switch版ではさほど苦労はなかったと思います。
堀井氏: ええ。Nintendo Switchのほうが、メガドライブミニよりもスペックがだいぶ上ですからね。
HD振動にもさらなるこだわりを盛り込み、懐かしの裏技もバッチリ再現!
――ほかにも、Nintendo Switch版ならではのオリジナルモードや機能などは何かありますか?
堀井氏: 弊社の橋本(享明ディレクター)と、“振動の神童”と呼ばれた古賀(恵介氏、SEGA AGES の振動デザインを全て担当)が、HD振動もかなりこだわって作りましたので、こちらにもぜひ注目していただきたいですね。当初は軽く済ませるつもりだったのですが、ピンボール的なギミックなどにもすべて対応させましたので、HD 振動だけでも相当楽しめると思いますよ。橋本いわく、「別にダッシュをしなくてもいい所でも、ついついダッシュしたくなるんです!」とのことでした。
――先程、私も実機で遊ばせていただきましたが、スピンダッシュ、スプリングで跳んだ時、パドルやバンパーなどのギミックに当たった時など、揺れ方がそれぞれ微妙に違っていたのが面白かったですね。ただ走り回っているだけでも気持ちいい「ソニック2」が、触覚の快感が加わることでゲームがより楽しくなるというのは新たな発見でした。
堀井氏: そうですね。かなり細かいところまで調整してあることが、きっとおわかりいただけたと思います。初代「ソニック」はHD振動に対応できなかったので、今回はその分も取り戻すつもりで、すごいバリエーションで実装しました。
小玉氏: 今回はNintendo Switch版ということで、いろいろとやってみました。
――本作には、クリアタイムを競う「チャレンジモード」も収録されていますが、こちらはオンラインランキングにも対応していますか?
堀井氏: もちろんです。今回はゴールまでのタイムを競うのですが、リングを100個以上持った状態でゴールすることが必須条件となります。ですので、リングを素早く100個集めるためにはどういうルートを進めばいいのか、今はまだプレーヤーごとにかなりバラけていると思いますので、いざ集計が始まったら相当アツいことになるでしょうね。
――「メニュー画面には、ゴールをしてもリングが足りないと失格になるぞ!」と書いてありますが、リングが足りない状態でゴールすると、その瞬間にゲームオーバーになってしまうのでしょうか?
堀井氏: そうです。チャレンジ失敗ということですね。
――これまでに配信した「SEGA AGES」シリーズ作品と同様に、ランキング上位に入ったプレーヤーのプレイ動画を誰でも見られるようになっているのでしょうか?
堀井氏: はい。こちらもぜひ見ていただければと思います。今、弊社内で一番はやってるゲームが、まさに「チャレンジモード」なんです。自身の尊厳を賭けて、もうみんなやり込んでいますよ(笑)。
――それから、SEGA AGESシリーズではスタッフクレジットも毎回いろいろと凝った演出を作っていますよね? 今回の「ソニック2」は、いったいどのような内容になっているのでしょうか?
奥成氏: 敵キャラクターの紹介とかが見られますよ。
(と、ここで実機でスタッフクレジットを起動)
いやあ、今回もエムツーの皆さんは、いろいろなものを仕込んでいますね~。
堀井氏: ええ。今回も「SEGA AGES」版オリジナルのものを用意してあります。キャラクターの種類がかなり多かったですが、そこはもう頑張って作りました。
小玉氏: それにしても、テイルスは今見ても本当にかわいいですよね。デザイナーの山口の気合いが入った、こだわりの作品だなと改めて思いました。
堀井氏: ホント、まさにモフモフですよねコレ!
奥成氏: 私も個人的には、テイルスのかわいらしさもありますし、「ソニック2」のドット絵が一番好きですね。
小玉氏: 実は山口さんは、「ソニック2」では背景も描いていました。彼は元々アニメーターの勉強をしていらっしゃったので、すごく手も早かったですし、尻尾のアニメーションとかも上手でしたね。ちなみに山口さんは、私も開発を担当していた 「魔法騎士レイアース」(※7) のメインデザイナーもやっていましたね。
※7……「魔法騎士レイアース」: 1995年にセガサターン用ソフトして発売されたRPGを指す。
――過去にエムツーで何度も移植を手掛けたタイトルということもありますので、今回の「ソニック2」の移植再現度は、歴代のなかでもベストという手ごたえはお持ちですか?
堀井氏: ええ。メガドライブミニですとか、今までにいろいろなバージョンを買っていただいた方にも、新しい遊び方をたくさん提案させていただいたりもしていますので、「今、遊ぶならこれだ!」という決定版を作ることができたと思います。
奥成氏: メガドライブミニで「ソニック2」を初めて遊んでみて、「お、面白いな」と思われた方は、SEGA AGES版も遊んでいただけるとオンラインランキングに参加できたりですとか、「リングキープ」や「スーパーソニックモード」など、昔のゲームなのに現代風の親切設計がある「ソニック2」が楽しめるのではないかと思います。
メガドライブミニ版にも中断・セーブができる機能はありますが、これは昔のゲームを今のユーザーに対して、発売当時とまったく同じ遊び方を強いるのはちょっとできないだろうと。ラスボスのロボットとリングなしで戦うというような楽しませ方とかは、やっぱり1990年代のゲームですよね。逆に、今となっては「親切設計があるだなんて、こんなにヌルいのはダメだ!」って言われちゃうかもしれませんが……。
堀井氏: まあ、あの頃は、ソフトを定価で1年に2、3本しか買えなかった時代でしたし、今みたいに遊びたいゲームをちょっとずつ、好き放題選べる時代とは全然違いますからね。
奥成氏: 今どきのカジュアルな遊び方もできますし、なおかつ1人でとことんやり込んでオンラインで競える要素も用意されているのが、「SEGA AGES」版ならではの面白さなんです。「SEGA AGES」シリーズに収録している追加要素の内容は、もうある程度は完成されていますので、この時点で単体で買っていただいても、きっと満足できるだけのものが入っていると思います。例えばステージセレクトですとか、あるいは「SEGA AGES」シリーズの標準要素である 「ヴィンテージ」(※8) とか、そういう部分ですね。
「ヴィンテージ」によるブラウン管の疑似再現は、実はメガドライブミニ版と比べて見ると結構違いがあるんです。これはメガドライブミニ上で再現できる技術的な限界と、Nintendo Switch上でできる限界とが違うためで、エムツーさんが開発をこなれている以上にハードウェアの機能を生かして、操作感に影響が出ない範囲でブラウン管を再現しているんです。おそらく、3DS版やメガドライブミニ版よりも、今回のNintendo Switchで作った「SEGA AGES」版が最も凝っていて、なおかつ再現度も高いと思います。エムツーさんは、SEGA AGESを通じてこの技術をかなり極めたなあと。
堀井氏: 以前に、ブラウン管を作っていた人がどうやって画質を上げたのかとか、どんな点が不満だったのかを聞いて回ったことがあるんです。昔の残像がすごく残ってしまう、液晶画面の再現をしたこともありましたが、そうすると昔の技術者たちが、そこを何とかしようと思って頑張っていたのに、誇張して見せるのは失礼じゃないかという話にもなるんですよね。ブラウン管もまたしかりで、端のほうが暗いとか、そういった部分をどこまで誇張してそれっぽく見せるべきなのかという、そんな葛藤も実はあるんですよ。
小玉氏: ブラウン管の時代は、ドット絵を描く時には「にじみ」が出ることをあらかじめ計算しながら描いていたんですよ。
堀井氏: そうなんですよね。当時、そこまで考えて作られていた皆さんは本当にスゴいと思います!
小玉氏: ですから、今のデジタルで見られると非常にイタいんです。今になって、「あの時、1個だけ打ったドットがアダになってしまったか……」と思うこともあったりしますので(笑)。
※8……ヴィンテージ:SEGA AGESシリーズでは定番となった機能の一種で、ブラウン管モニターに表示した画面を擬似的に再現する設定のこと。
――それから、細かい質問で恐縮ですが、メガドライブ版にあった隠しコマンド(※9)は、SEGA AGES版でもそのまま使えるのでしょうか?
奥成氏: ええ。元々メガドライブ版で入っていたものは、すべて消さずに残してあると思いますよ。そうですよね堀井さん?
堀井氏: はい。全部入っています。ただし、もし隠しコマンドを使って遊んだ場合は、オンラインランキング集計の対象からは外れてしまいますので注意してください。
※9……メガドライブ版にあった隠しコマンド: オプション画面でサウンドテストを選択後、特定の曲を順番に聴いてからコマンドを入力することで、コマ送りができるゾーンセレクト、コンティニュー回数増加、キャラクターを任意の位置に配置できる機能などが利用できるようになる。
――最後に、皆さんからGAME Watch読者へのメッセージをお願いします。
奥成氏: 昨年発売したメガドライブミニがきっかけで、「ソニック2」を遊ばれた方もたくさんいらっしゃると思います。メガドライブミニ版が体験版だったというわけではありませんが、「SEGA AGES」版ならではの便利機能ですとか、HD振動などのNintendo Switchの性能を生かした「ソニック2」も、ぜひ楽しんでいただければと思います。
堀井氏: 今回はナックルズも使って遊べるようにしましたので、一見すると1本のソフトに見えますが、我々のほうでは「ソニック2」と「ソニック&ナックルズ」の2本分をきっちり作り込んだうえで配信まで漕ぎ着けました。「ああ、このゲームには2本分の内容が入っているんだな」と、そんな思いを馳せながら遊んでいただけたら、すごくうれしいですね。
小玉氏: 「ソニック2」は、私も少しだけですがアメリカに行って開発をお手伝いしましたので、今でもとても思い出深いゲームのひとつです。当時のソニックチームのメンバーが頑張って作り、アメリカやヨーロッパでも広く受け入れられた作品が、このような形でまた復刻されたことも、また個人的には「ソニック」シリーズのキャラクターのなかではナックルズが一番好きなので、ナックルズを使って遊べるようになったのもすごくうれしいですね。ソニックでもテイルスでもナックルズでも、ぜひ遊んでみてください。
――ありがとうございました。
(C)SEGA