インタビュー

「SEGA AGES SHINOBI 忍」インタビュー

「シークレットナビ」や「時間戻し」など新機能たっぷり。アップライト型筐体表示の見事な再現ぶりにも要注目!

【SEGA AGES SHINOBI 忍】

10月31日配信開始

価格:999円(税込)

CEROレーティング:B(12才以上対象)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第13弾は、1987年にアーケードゲームとして発売された作品を移植した、「SEGA AGES SHINOBI 忍」(以下、「SHINOBI 忍」)だ。

 本作は、主人公の忍者ジョー・ムサシを操作して、手裏剣や刀、各ステージで1回だけ使用できる強力な忍術などを駆使して敵を倒し、敵に捕らわれた子供忍者を全員救出してゴール地点に到達するか、最終ステージでボスキャラを倒すとステージクリアとなる横スクロールアクションゲーム。家庭用でも多くの機種で移植・アレンジ版が発売され、「ザ・スーパー忍」や「シャドーダンサー」などのシリーズ作品も登場している。

 Nintendo Switch版では、オリジナル版を忠実に移植した「アーケードモード」と、数々の便利機能を搭載した「AGESモード」が遊べるようになっている。今回もGAME Watchでは配信に先駆けて、毎度おなじみの「SEGA AGES」シリーズ開発スタッフインタビューを敢行した。ご参加いただいたのはリードプロデューサー/ディレクターの小玉理恵子氏、「SEGA AGES」シリーズのスーパーバイザーであるセガゲームスの奥成洋輔氏、開発を担当したエムツーの駒林貴行氏の3名に加え、同社ディレクターの松岡毅氏のボイスチャットによる初参戦も実現した。今回スケジュールの都合で不参加だったエムツーの堀井直樹社長からもコメントを頂いている。配信開始に先駆けて、知っておくと便利な隠し仕様の使用法もお聞きすることができたので、ぜひ最後までご一読を!

【「SEGA AGES SHINOBI 忍」ゲーム画面】

【インタビュイーのみなさん】
左から順に、エムツーの駒林貴行氏、セガゲームスの小玉理恵子氏、奥成洋輔氏
ボイスチャットで参加していただいたエムツーの松岡毅氏(忍仕様)

初心者にもマニアにもうれしい、快適なプレイ環境を実現

――本日もよろしくお願いいたします。まずはいつもどおりの質問となりますが、「SEGA AGES」シリーズのラインナップに本作を加えたのはなぜでしょうか?

松岡氏: 小玉さんから、「 SYSTEM16(※1) から何か入れましょう」というご要望がありましたので、「SHINOBI 忍」、「ゴールデンアックス」、「獣王記」のいずれかでどうすかとお話をしたところ、「じゃあ、『SHINOBI 忍』にしましょう」と言われましたので配信が決まりました。

小玉氏: 「SHINOBI 忍」でしたら、海外でもたくさんのお客様に喜んでいただけるだろうと思ったからですね。

※1……システム16: アーケード用システム基板の一種で、初期型は16A、追加機能を盛り込んだ後期型は16Bと呼んで区別している。「ファンタジーゾーン」「エイリアンシンドローム」「テトリス」などもこの基板を使用している。

――以前のインタビューでも、「SEGA AGES」は当初から全世界に向けて展開するコンセプトがあるとのお話がありましたが、まさに本作はその方針に合致するタイトルだったということですね。

小玉氏: そうですね。「SHINOBI 忍」という名前を聞いただけで、アメリカの方もヨーロッパの方も、どんなゲームなのかが皆さんわかりますので。

松岡氏: 我々も移植をするにあたって、海外の皆さんにも喜んでいただけるようなものにしようと、頑張って開発をさせていただきました!

――「SHINOBI 忍」は、これまでに続編やシリーズ作品がたくさん登場していますよね。本シリーズは、セガにとって今も昔もかなり重要なIPなのではないかとお察ししますが?

奥成氏: そこは、 「忍者プリンセス」(※2) を作った小玉さんに聞いていただければと。

小玉氏: 忍者つながりってだけですけど(笑)。「SHINOBI 忍」については、まずアーケード用として出してから、以前上司でもあった大場(規勝)さんが開発を担当したメガドライブ版の「ザ・スーパー忍」が出て、シリーズとしての方向性が決まっていきました。その後も 「シャドーダンサー」(※3) ですとか、いろいろなシリーズ作品が出るようになりましたね。

※2……「忍者プリンセス」: 1985年にアーケード用ゲームとして登場した、ヒロインのくノ一、「くるみ」を操作して敵の忍者を倒していくアクションゲーム。家庭用でもSG-1000、MSXなどで移植版が発売された。「SEGA AGES」シリーズではデモ画面に登場することがあり、「SEGA AGES コラムスII」では、「アーケードモード」で5面までクリアすると宝石箱内に「くるみ」が出現する。

※3……「シャドーダンサー」: 1989年に登場した、主人公の忍者ハヤテと忍犬ヤマトを操り、敵と戦うアーケード用アクションゲーム。1990年にはメガドライブ版「シャドーダンサー ザ・シークレット・オブ・シノビ」も発売された。

――小玉さんは、元祖「SHINOBI 忍」の開発を担当されたのでしょうか?

小玉氏: いいえ。このゲームを開発していた当時は、私はコンシューマーのほうにいたので関わっていません。でも、ボーナスステージで忍者が飛び出て来る場面とかは、今でも印象に残っていますね。

奥成氏: 「SHINOBI 忍」はアーケード用として、第1作目からヒットしたのが大きかったですね。ただ、アーケードで出たのは「SHINOBI 忍」と「シャドーダンサー」だけで、実は家庭用で出した数のほうがずっと多いんです。セガサターンとかプレイステーション2版ですとか、ニンテンドー3DSでも「Shinobi 3D」を出していますし、特に90年代前半までの時代には、いろいろなハードで続編が発売されて、日本人ですら知らない「SHINOBI 忍」シリーズが海外でもたくさん出ています。

駒林氏:「The GG忍」(※4) なんてのもありましたよね。

小玉氏: プレイステーション2でも、 「Shinobi」や「Kunoichi -忍-」(※5) とかを出しましたよね。

奥成氏: オーバーワークスという、当時セガのCS7研から分社化した会社の、実質的なタイトル第1弾がプレイステーション2版の「Shinobi」で、世界的にご好評をいただいたんです。最後に出たシリーズ作品は3DS版の「Shinobi 3D」で、その後も移植版をいくつか出しましたが、今回このタイミングで「SHINOBI 忍」を出すのは原点回帰という面もありますね。

※4……「The GG忍」: 1991年にゲームギア用ソフトとして発売されたアクションゲーム。ステージをクリアするごとに能力の異なる仲間の忍者が増え、最終的には5人が揃う特徴がある。

※5……「Shinobi」や「Kunoichi -忍-」: 「Shinobi」は2002年にPS2用ソフトとして発売され、忍者の当主である秀真(ほつま)を操り敵と戦うアクションゲームで、敵の背後に素早く回り込む「ステルスダッシュ」や、強力な敵を一閃のもとに斬り捨てる「殺陣システム」などのアイデアが盛り込まれている。「Kunoichi -忍-」は2003年に発売され、くノ一の緋花(ひばな)で、手裏剣や刀、忍術のほか、多彩な蹴り技が繰り出せるのが特徴の作品。

セガゲームスの小玉理恵子氏

――本作の開発期間は、だいたいどのぐらい掛かりましたか?

松岡氏: 8~10カ月ぐらいですね。

奥成氏: すでにエムツーさんで移植の実績がありましたので、動かすこと自体はそんなに大変ではなかったと思いますが、今回の「SEGA AGES」として出すにあたって、どんなアプローチをしようかという点で頭を悩まされされたのではないかと思います。

松岡氏: そうですね。Wiiのバーチャルコンソール版「SHINOBI 忍」を2009年、ちょうど10年前に出していますので。今回の移植は、いかに遊びやすくするかを重点的に考えて作りました。

――そこでお尋ねしたいのが、本作オリジナルとなる「AGESモード」の内容についてです。本モードの仕様を考案されたのは松岡さんでしょうか?

松岡氏: 「AGESモード」では、最初からパワーアップした状態で遊べるようにして、ダメージも1回分だけ耐えられるようにして、2回ダメージを受けたらミスになるという形に変えて、パワーアップしてくれる子どもは体力回復に変更してあります。この体力回復パネルは新規で描いてあります。0.5秒ほどしか表示されませんが、じっくり見ていただけるとデザイナーの高橋が喜びますのでどうぞよろしくお願い致します(笑)。それはそれとして、実はここに至るまで、開発初期にはかなり試行錯誤がありまして、色々考えたのですが、実現できないアイデアがたくさんありました。たとえば 「ESWAT」(※6) の主人公もそのひとつで、見た目にたのもしく、カッコ良く、強く、笑顔もまぶしい。ぜひ実装したいと思っていたのですが、ド派手なサブウェポンや強力なアーマーを忍に実装したらどうなるかを考えると、これはもう確実にゲームデザインを破壊してしまうのですね。

※6……「ESWAT」: 1989年にアーケード用ゲームとして登場した、主人公の警察官を操作して、ガトリングや、プラズマ砲、マルチランチャーなどの武器を駆使して敵と戦うアクションゲーム。1990年には、アーケード版から半世紀後の世界を舞台にした、メガドライブ版「ESWAT:サイバーポリス イースワット」も発売された。

【「AGESモード」のスクリーンショット】
ジョー・ムサシが常時パワーアップした状態になり、なおかつダメージを1回受けてもミスにならない。ダメージを受けると、服の色が白から赤に変わる。

奥成氏: それと、メガドライブ版の「ザ・スーパー忍」のジョー・ムサシも最初は出そうとしていませんでしたよね?

松岡氏: それも考えていましたが、八双手裏剣は、ステージが縦に広々としていてはじめて栄えるワザなんですね。八双手裏剣は、それを活かせるゲームデザインあってこそなんです。だからスーパー忍のジョー・ムサシも見送りました。

 ほかにも、シャドーダンサーの犬(ヤマト)も考えてました。背が低いから、的の冗談工芸はすべて自動的にスルーできるデザインです。難易度がナチュラルに下げられる。見た目にもかわいいし、それでいて世界観も壊さない。いいぞ、これは! と思っていたんですが、「どこから手裏剣を撃つの?」って訊かれまして。どこから撃つんでしょうねえ(笑)。どっかから撃ってくんねえかなあ。今もアイデア募集中です。

 ですから、初期研究の段階でいろいろなことを試していましたので、ここでかなり時間が掛かってしまったんですね。「ESWAT」、「ザ・スーパー忍」と、それから「シャドーダンサー」とPS2版からも何か持ってこようかなと考えて奥成さんに相談したところ、「それで“スタイリッシュ”になるの?」というご指摘がありまして、全部やめちゃいました(笑)。

奥成氏: PS2の「Shinobi」の主人公 秀真(ほつま)は、スタイリッシュじゃないとダメなんですよ。「プロジェクトクロスゾーン」の参戦の時も、かなりうるさく直していただきました。「SHINOBI 忍」シリーズの歴史としては、まず初代はアメリカ映画の勘違い忍者映画的な世界観がモチーフになっていて、メガドライブ版と比べるとちょっとコミカルな雰囲気があるのが、このゲームの味になっているんですね。それを見た大場さんが、メガドライブ版の「ザ・スーパー忍」を開発する時に、「もっとスタイリッシュな、カッコイイものにしよう」ということで、普通の移植にはしないでスタイリッシュな方向へと舵を切ったんですね。

 逆に、「シャドーダンサー」は初代アーケード版の方向性が多少残っているのですが、「ザ・スーパー忍」以降に出た「ザ・スーパー忍II」や「The GG忍」などの家庭用のシリーズはカッコよさの方向性に進んでいまして、確か小玉さんも開発に参加されたメガドライブ版の「シャドーダンサー」も、アーケード版に比べると断然カッコよくなっていたりするんです。

小玉氏: 「シャドーダンサー」の時は、私は自由の女神像が出てくるステージの背景しか描いていませんけどね。「これを描いてほしいんだけど」って、突然頼まれたので描いた記憶があります(笑)。

奥成氏: PS2版「Shinobi」の秀真もすごくカッコイイ忍者ですし、秀真や「ザ・スーパー忍」のジョー・ムサシとかが一緒に出てくると、初代のジョー・ムサシだけが浮いた存在になってしまうので、思考錯誤をいろいろとした結果、また元に戻ったわけですね。

松岡氏: 昔話の「ねずみの嫁入り」のようなもので、やっぱりアーケードの忍にはアーケードのジョー・ムサシが一番いいというところに落ち着いたわけです。

――我々の見えないところで、実はさまざまなチャレンジをなさっていたんですね。

奥成氏: 今回の白ムサシは実用さでいうととても良いですね。

松岡氏: 八双手裏剣はまだ使えないけど、ちょっとダメージに耐えられるし、白装束にもなっているので、今回のAGES モードは「スーパーになりかかっているジョー・ムサシ」なのかもしれません。そのうち、頭からじわーっと頭巾が生えてきて、最後には立派な「スーパー忍のジョー・ムサシ」になります。

奥成氏: 「The G・G 忍」に登場する修行中のムサシも八双手裏剣は撃てないので、問題ない解釈ではないかと(笑)。いろいろなキャラが出てくる「SHINOBI 忍」を遊んでみたいと思った方もいるかもしれませんが、また10年くらい経ったら松岡さんがきっと移植をしてくれるだろうと。2029年になれば、きっと新しいハードが出ていると思いますので、松岡さんが引退していない限りは、必ずエムツーさんがやってくれるものと信じています(笑)。

松岡氏: きっとその頃には、セガさんが新しいハードを出してくれると思いますので、それ専用で開発しますよ!

(一同爆笑)

スーパーバイザーの奥成洋輔氏

――「AGESモード」では、敵の配置や攻撃パターンなども変えたりして難易度を下げているのでしょうか?

松岡氏: 敵の配置や耐久力はアーケード版そのままですね。

奥成氏: アーケード版の「SHINOBI 忍」から、メガドライブ版の「ザ・スーパー忍」になって最も変わった点は、ジョー・ムサシが体力制になったことです。メガドライブ版は、いわゆる「一発死に」がなくなったことで割と強引に進むことができますが、アーケード版のほうは1プレイ100円という設定だったこともあって、「一発死に」するゲームだったんですね。ですから、メガドライブ版しか知らないプレーヤーが、もしいきなり突撃したらすぐにやられてゲームオーバーというシチェーションに陥りがちですよね。でも、「AGESモード」であれば、例えば対ボス戦では「1ミスしてもいいから、とにかく倒せればいいや」という強引な倒し方もできますし、精神的なプレッシャーがかなり違うので遊びやすくなったと思います。

松岡氏: ええ。かなり突撃できるゲームになりましたよね。

奥成氏: この辺のゲームバランスの調整とかは、駒林名人が担当したんですか?

駒林氏: 私が担当したのはプレーヤーとしての「アーケードモード」のチェックだけですね。あとは、「こういうものを入れてほしい」というお願いを、いろいろと提案させていただきました。

奥成氏: 駒林名人は「SINOBI 忍」もかなり上手なので、今回のSEGA AGESで本作が選ばれた理由のひとつが彼の存在もあるかもしれませんね。……そうか、そもそも駒林名人がプレイするとミスをしないから、「AGESモード」はプレイしてもしようがないですよね(笑)。

駒林氏: ええ。「SHINIBI 忍」と言ったらミス、イコール死ですから(笑)!

数々の便利機能に加え、隠し仕様の「シークレットナビ」も本邦初公開!

――ほかにも、「SEGA AGES」版のオリジナル機能などは何かありますか?

駒林氏: Rボタンで攻撃すると、 必ず近接攻撃が出るようにしました(※7) 。私がテストプレイをしている最中も、これをずっと活用していたんです。

奥成氏: これは駒林名人の、たっての希望で実現したものですね。

駒林氏: そうです。ぜひ入れてほしいと直訴しました。

松岡氏: 「近接攻撃ボタンと、連射機能を入れてほしい」と言われましたね。近接攻撃ボタンは確かに必要だと思ったのですが、連射機能については「 3面ボスのマンダラ(※8) をやっつけるためにだけ欲しい」と言われまして、たった1箇所のためにわざわざ作るのはどうかとも思ったのですが、結局実装しました。駒林の言うことは、もう絶対ですから(笑)!

駒林氏: 私は携帯モードでプレイしますので、そうすると毎回必死の形相でジャンプと攻撃ボタンをガチャガチャ連打することになるんです。でも、これって世間的には許される姿ではないなあと思ったんですよ(笑)。

※7……必ず近接攻撃が出るようにしました: 本作では、敵が近くにいる時は刀を振り、遠くにいる場合は手裏剣を投げるよう、自動で使用する武器が切り替わるようになっている。

※8……3面のボスのマンダラ: 耐久力のあるマンダラが大量に迫って来る場面のこと(※詳しくは下記写真を参照)。

――近接攻撃しか出ないようにすれば、いわゆる「忍ボーナス」(※9)も狙いやすくなりますよね。

奥成氏: そうなんです。近接攻撃で敵を倒すという、「SHINOBI 忍」ならではの遊び方を極めると、ゲームがもの凄く面白くなるんですよ。「忍ボーナス」を狙う時に一番怖いのが手裏剣の暴発で、これもある意味ゲームのキモではあるのですが、近接攻撃で敵を倒すこと自体がとても気持ちいいんです。あまりにも楽しいので、プレイステーション3とXbox360に「ザ・スーパー忍」を移植する時には、「忍ボーナス」が存在しないのに、わざわざ近接攻撃だけで倒すモードを松岡さんに作ってもらったぐらいですから。

※9……「忍ボーナス」: 手裏剣を一切使わずにステージをクリアすると2万点が加算される、隠しボーナス得点のこと。ちなみに、忍術を使わずにクリアした場合は5千点が加算される。

【新機能「近接攻撃」と「連射」ボタン】
設定画面で、近接攻撃と連射を設定することが可能。近接攻撃を設定すれば、誤って手裏剣を放つミスを完全に防げるようになる。
3面ボスのマンダラ戦より。連射機能を使用することで、後方に押し込まれるリスクを減らすことができる。

松岡氏: 実は、手裏剣の暴発を教えてくれる機能も用意してありますよ。 ステージセレクト画面でXボタンを押すと、「シークレットナビ」がオンになって画面の右上に「SECRET」と表示され、もし手裏剣を投げてしまった場合は、この文字が消えるようにしてあります。 ささやかなものではありますが、手裏剣が暴発したかどうかが、これですぐにわかるようになりました。

――いかにもエムツーらしい、素晴らしいこだわりぶりですね!

松岡氏: 実は「シークレットナビ」は、小玉さんからご要望をいただいたアイデアだったんですよ。

小玉氏: 弊社のチェックチームのアイデアですね。「ぜひ、この機能を入れてほしい」ということでお願いをしました。

奥成氏: チェック担当のスタッフが、「忍ボーナス」の面白さにハマってしまったんです。このゲームを遊び始めると、どうしてもボーナスを狙いたくなっちゃうんですよ(笑)。

小玉氏: ユーザーの皆さんにとっても、わかりやすいものができたのではないかと思います。

【便利な「シークレットナビ」も搭載】
画面右上に注目! 「シークレットナビ」をオンにすると「SECRET」と表示され、手裏剣使用の有無がひと目でわかるようになる。

――今、実機を触らせていただいたら気付いたのですが、「時間戻し」機能もあるんですね。

奥成氏: はい。「SEGA AGES ゲイングランド」とかに入れたものと、基本的には同じですね。

松岡氏: 「ゲイングランド」や「ワンダーボーイ モンスターランド」よりも、機能がさらに進化しています。今回の「時間戻し」は、戻した分を「なかったこと」にしてリプレイのいいとこどりができますので、カッコイイ場面だけを選び出した動画を作って保存することが可能になりました。

――先程教えていただいた「シークレットナビ」と組み合わせれば、もし「忍ボーナス」獲得に失敗したら即やり直しができるので、こちらもとても便利そうですね。

松岡氏: 失敗したらまたやり直して、成功した場面を継ぎ足しながらプレイすればノーミスクリアのリプレイが作れますし、ランキングにアップすることもできますよ。ただし、何度も何度も「時間戻し」をする必要がありますので、出来上がるまでの間はちょっと手間が掛かりますが、ぜひTASみたいなプレイをしていただければと思います(笑)。

駒林氏: それから、ステージセレクトもできるようになっていますので、とても練習が捗りますよ。アーケード版の場合は、もし途中で失敗したら、また1面からやり直さなくてはいけませんからね。

松岡氏: これを使えばいいリプレイが作れますので、ぜひカッコイイ動画をアップしてください。私は仕事が終わった後に、酒を飲みながら皆さんのリプレイを見て楽しませていただきます(笑)!

【「時間戻し」機能もパワーアップ】
ミスを帳消しにできるだけでなく、いいとこ取りをした動画の作成も可能となった。

【ステージセレクトも可能に】
新たにステージセレクト機能を追加し、最終面でもコンティニューが可能になった。

――ステージセレクトもできるんですか! これもアーケード版には存在しなかった、「SEGA AGES」版のオリジナル機能になりますよね。

奥成氏: そうです。一度クリアしたステージであれば、いつでも選んで遊べるようにしました。

松岡氏: それから、アーケード版は最終面だけコンティニューができないようになっていたのですが、今回は最終面でも無制限にコンティニューができるようにしました。

駒林氏: これさえあれば、皆さんも「SHINOBI 忍」が絶対うまくなりますよ!

奥成氏: と、いうことで、今回は「SHINOBI 忍」をやり込むための細かい要素をいろいろと用意しました。ちょっとお話は変わりますが、敵にぶつかってもミスにならないのも、「SHINOBI 忍」の面白いところなんですよね。

駒林氏: ほかにも、アーケード版にあったバグ技を消すための調整もしてあります。例えば、手裏剣を256発撃つと0発扱いになって、「忍ボーナス」が入ってしまうバグなどを使えなくしておきました。

松岡氏: バグはいろいろ消しましたね。今の手裏剣のお話で言えば、256発撃つとゼロに戻る、つまり元々は8ビットだったわけですが、今回は16ビットにしました。ですから、65,536発撃つと多分ゼロに戻りますけど、もしそこまでできる人がいたら、「忍ボーナス」をあげてもまあいいかなあと(笑)。

奥成氏: そこまで頑張ったプレーヤーがいたら、それはまあ許しましょう(笑)。

――確かに、65,536発を自力で数えながら空撃ちするのは実質不可能ですよね(笑)。

エムツーの駒林貴行氏

ビジュアル面でもこだわりの演出を追加。シリーズ作品の知られざるエピソード(?)も初公開

――ゲーム画面を拝見しますと、「SEGA AGES ワンダーボーイ モンスターランド」の時に駒林さんが考案した、テーブル筐体を模した画面デザインを今回も採用していますよね。この演出も、もうすっかり定番になった感がありますが?

駒林氏: そうですね、あれからずっと使われるようになりましたね。私はセガのT-13テーブル筐体が大好きなので、今回も実装されてよかったです!

奥成氏: 「SHINOBI 忍」の発売は1987年ですから、ちょうど時代も合ってますしね。それからもうひとつ、「だてに開発期間を長く掛けていたわけではないぞ」という新機能をお見せしましょう。(と、ここで実機を操作する)

――何と! 今度はアップライト型の筐体、すなわちキャビネットの絵も表示できるようにしたんですね。

奥成氏: いつも画面設定で用意しているドットバイドット、フィット、フルのほかに、新たにキャビネットも選べるようにしました。エムツーさんによる、 スキャンラインとスムージング(※10) を使った、アーケードのブラウン管モニター風の表示はかなり極まっている感がありますが、そこからまたさらに進化しました。

駒林氏: どこまでブラウン管に近付けるのかなあと。ゲーム画面がくっきりと映ってないところが、いかにも年季の入った昔のゲーセンぽくていいですよね。

小玉氏: ちょっと横に走査線が走っていたりもしていますよね。

奥成氏: Nintendo Switchのスペックを生かして、ゲーム自体の操作感を悪くすることなく、キャビネット画面を作ることができました。

※10……スキャンラインとスムージング:ここでは、前者は走査線エフェクトの有無、後者はドットのなめらかさの有無が設定できる機能のことを指す。

――キャビネット設定時は、背景をよく見ると懐かしのアーケードゲームの筐体とかが描いてあって、昔のゲーセンをイメージしたデザインになっているようですね。

松岡氏: さらに設定を海外バージョンに変更すると、キャビネットのデザインも変わるようにもしてありますよ。

――海外版のキャビネットも選べるとは、これまたすごいこだわりですね。

駒林氏: 私がアメリカに行った時に、シカゴのゲーセンで撮影した写真を元に作りました。

奥成氏: (実際の画面を見て)アレ? 小玉さんがあんなに苦労して探し出したアップライト筐体のフロントパネルが、ちょっとだけしか映っていないんですけど!

小玉氏: 私も、そこは用意してくれた方に言えなかったですね(笑)。もうちょっと見えるようにしてほしかったけど、筐体を見せると画面が小さくなってしまうので、ちょっと残念ですが致し方なく。それからキャビネットに設定すると、「ゲームセンターの音」も流れるようにしてありますよ。

――確かに、いかにも店内がザワザワしているような音が聞こえます! 毎度のことながら、次から次へと新しいアイデアが登場するので本当にびっくりです……。

駒林氏: はい。いったい何のゲームが置いてあるのか、ぜひ皆さんで当ててみてください(笑)。

奥成氏: 自らを追い込んで、さらなる高みを目指すところが、「松岡SHINOBI」の真髄ですね。

松岡氏: キャビネット2台分のデザインを作るだけで、1カ月半ぐらい掛かっております!

【キャビネット表示でゲーセンの雰囲気を演出】
懐かしのアップライト筐体、「エアロシティ」のデザインも選択可能に。背景にも古いゲームの筐体やポスター類が描かれている。
メニュー画面で海外版に設定すると、何と筐体のグラフィックスも海外版に変わる。

――ところで、プライベートでもテストプレイでも本作をやり込まれた駒林さんから見て、「SHINOBI 忍」というゲームの一番の魅力はどんなところにあると思いますか?

駒林氏: 敵に体当りされてノックバックしても、ダメージを受けないのが素晴らしいですよね。「忍ボーナス」を知らなくてもクリアすることはできますし、失敗しても別にペナルティもありませんので、こんなプレーヤー思いのゲームがあったのかなあと。ステージ1-1では「忍ボーナス」を狙って、もし成功したら1-2でも狙ってみようとか、ステージごとに目標を立てながらプレイできますから、モチベーションを維持しやすいのもいいところで、アクションゲームのお手本みたいな存在だと思います。

奥成氏: 「ワンダーボーイ モンスターランド」もそうでしたが、うまい人のプレイを見ているのも楽しいゲームなんですよね。

松岡氏: 皆さんも、アップされたリプレイ動画を見て、ぜひうまい人のプレイを スパって(※11) ください(笑)!

※11……スパって(スパる): 他人のプレイを見て攻略パターンを盗むこと。ゲームセンターに集うハイスコアラーが使用する、古くからの業界用語(?)の一種。

――忍者アクションゲームだけに、スパる、スパられるの戦いが白熱しそうですね(笑)。

奥成氏: 実は、この「SHINOBI 忍」がヒットしたおかげで、「チームシノビ」というアーケードゲームのひとつのブランドと言いますか、ひとつのチームができました。あの「ソニックチーム」よりも、こちらのチームのほうが早くきでたんですよね。「チームシノビ」の第2弾となるのが「獣王記」で、この時に内田(誠氏)さんが新人で入ってきて、後に「ゴールデンアックス」や 「エイリアンストーム」(※12) を作ることになるんです。一方で、菅野(豊)さんはこの後に、 「クラックダウン」(※12) を作っています。

松岡氏: 「エイリアンストーム」や「クラックダウン」も、いずれ出したいですよね。

※12……「エイリアンストーム」、「クラックダウン」: 前者は1990年に発売された、ステージによって2Dのアクションや3Dシューティングゲームなどに舞台・ルールが変化するアーケードゲーム。後者は1989年に発売にされた、マシンガンやパンチ、キックを繰り出して敵を倒すアーケード用アクションゲーム。

――つまり、「SHINOBI 忍」は、セガという会社の歴史を語るうえでも欠かせない存在というわけですね。

奥成氏: これは余談になりますが、「クラックダウン」は「上から見た『SHINOBI 忍』」なんですよ。こちらも弾を撃つだけでなく、近接攻撃を出して敵を倒せますし、子供忍者を助ける代わりに爆弾を設置するというルールで、しかも近接攻撃だけで敵を倒すとボーナス得点が入るという、まさに「SHINIBI 忍」そのままの内容です(笑)。機会があれば遊び比べてみて下さい。ちなみに、「SHINOBI 忍」のラスボスはナカハラという名前で、実は主人公の師匠だったという設定なのですが、主人公の名前がジョー・ムサシで、師匠がナカハラというのは……。

――もしかして、JR南武線の武蔵中原駅から名前を取ったんですか?

奥成氏: はい。当時、セガの寮が武蔵新城にあったので、主人公の名前がジョー・ムサシで、師匠の名前がナカハラになったんですね(笑)。

――楽しいお話が尽きませんが、そろそろお時間のようです。では最後に、皆さんからGAME Watch読者へのメッセージをお願いします。

松岡氏: 私から申し上げたいことはただひとつ、あの憎き駒林名人を、皆さんで力を合わせて倒してください(笑)! たとえ駒林名人を倒せなくても、全ステージクリアするまで遊んだいただけたらうれしいですね。それから、別のスタッフに土下座してHD振動にも対応させましたので、ぜひ楽しんでください。

小玉氏: すでにお話したような、たくさんの要素を盛り込んでいますので、国内はもちろん、海外の方にも喜んでいただけるようなものができたのではないかと思います。日本の皆さんには、まずは駒林さんに挑戦をしていただきまして、その後は海外の方にもやり込んでいただいて、いずれランキングに入ってこられるようになったらうれしいです。駒林さん、発売日になったらランキングにもちろん参戦されますよね?

駒林氏: はい。でも、「開発者がランキングを荒らしてもいいものだろうか?」という議題が定期的に挙がっているんですけどね(苦笑)……。これだけ至れり尽くせりの内容にしましたので、1カ月ぐらいミッチリSEGA AGES版で修行すれば、私のスコアを抜けられるかと思いますよ。皆さんもぜひ遊んでみてください!

奥成氏: セガのゲームにはマイナーなものだったり、あるいは好きだったのに全然クリアできなかったというものが往々にしてあったりするのですが、「SEGA AGES」はそんな人に向けた面がとても大きいんです。ただ遊ばせるのではなく、追加要素のひとつひとつにちゃんと理由があって、ゲームをより面白くするというところを、ディレクターである松岡さんが特に大事にしてくれているんですね。

 今回の「SHINOBI 忍」は、ゲームがシンプルでわかりやすいので、面白くした部分がより見えやすくなっているのではないかと思います。ほかのシリーズ作品から遊び始めたという人も、この機会にぜひ初代の面白さも知っていただけたらうれしいです。

――ありがとうございました。

【エムツー代表取締役社長堀井直樹氏】

インタビューに参加できなくてすみません。「忍 -SHINOBI-」は、普通にプレイするだけならボクもそこそこイケるんですが、SHINOBIボーナスを狙い出すと、通常の256倍奥が深いゲームになるので、駒林のプレイを見るほうが楽しかったりします。でもやっぱり「プレイしてなんぼ」なので、その奥深さに少しでも多くのプレイヤーを連れて行って、深い沼に引きずり込みたい! というコンセプトを SEGA AGES チームに伝えて、プロジェクトを進めました。操作遅延の対策もずっと言ってたけど、プロジェクトの後半にかなりよくなりました。よくなったよね?(よくなりました:松岡)できることはわりと全部やった感はあるので、みんながちゃんと沼落ちしてくれたら本望です。