レビュー

「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」インプレッション

育成+戦略+アクションが高次元に融合。「風花雪月」を体現した骨太な「無双」

【ファイアーエムブレム無双 風花雪月】

ジャンル:アクション

開発・発売元:コーエーテクモゲームス

プラットフォーム:Nintendo Switch

CEROレーティング:B(12歳以上対象)

発売日:6月24日

価格:7,920円(税込)

 2022年6月24日に発売予定の「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」(以下、「FE無双 風花雪月」)。本作は、任天堂によるシミュレーションゲーム「ファイアーエムブレム 風花雪月」(以下、「FE風花雪月」)と、コーエーテクモゲームスによる人気アクション「無双」シリーズがコラボレーションしたタイトルだ。

【『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』2ndトレーラー】

 「FE風花雪月」は、前半では士官学校を舞台にプレーヤーは教師の立場にある主人公を操って、キャラクターと交流しながら生徒たちを育成していくという要素が強かった。一方で後半は最初に選んだ学級によって各国の情勢が変わっていき、かつて同じ学び舎で学んだ同窓生たちと戦うことになる非常にシビアなストーリーが進む戦争パート……という二部構成のゲームとなっており、発売当時から大きな話題を呼んだ作品となっている。

 一方で「無双」シリーズは、群がる大量の敵をバッサバッサとなぎ倒していく、爽快な三人称視点の3Dアクションゲーム。これまでにもオリジナルの「無双」シリーズ以外に「刀剣乱舞無双」、「ゼルダ無双」、「ファイアーエムブレム無双」(「FE無双」に登場するのは、「ファイアーエムブレムif」までのキャラクターたち)といったコラボレーションタイトルも多く発売されている。

 本作は、「FE無双」或いは「FE風花雪月」の続編というよりは、「FE風花雪月」の主人公ベレト・ベレスと、級長たちが出会わなかった場合のもうひとつの別の出会いから起こるパラレルワールドのようなストーリーとなっている。「FE風花雪月」で出会うこととなるディミトリ、エーデルガルト、クロードという、フォドラの地を支配する3つの勢力の次期指導者たちとプレーヤーは、今回は全く違う姿形で出会うこととなる。本稿ではストーリーのネタバレの核心には触れないため、安心して本稿を読み進めてほしい。

本作の主人公。姿選択あり。名前はデフォルト名があるものの、変更可能。

「FE風花雪月」の良さをそのまま活かした「無双」に!

 本作の魅力は、「FE風花雪月」で行なえた多彩な育成要素や仲間らとの交流要素などを、ほぼそのまま活かしている点だろう。ただ、舞台は学園ではなく、ほぼ戦場(前哨基地)となる。前哨基地で行なえる要素は、ほぼ「FE風花雪月」と踏襲しつつ、プラスアルファがあると思ってくれれば良い。

 一方で、「FE風花雪月」をプレイしていれば何をすれば良いのかすぐにわかるものの、本作から入りたい、というような人にはあまりにできることが多すぎて、何から手を付けていいか迷ってしまう、という部分もあるだろう。

 やれることが膨大だということは「FE 風花雪月」をプレイした人ならば想像がつくことだと思う。もちろん本作では、新要素が登場するたびにチュートリアルがきちんと入るのだが、原作を踏襲した要素に加え、「無双」という本作ならではの新要素も加わったとあって、本当に様々なことができるようになっているため、原作未経験の人はどうしても最初混乱してしまうこともあるかもしれない。

 そんな原作未プレイの人は、まずはあまり深く考えずにどれか気になる学級をひとつクリアしてみることを目指してほしい。恐らくプレイを進めていくうちに、自ずと多種多様な交流・育成要素などにも馴染んでゆける。もちろん、「FE 風花雪月」をプレイした人ならば全く問題なくシステムに溶け込めるはずだ。

「FE風花雪月」をプレイした人ならば「なるほど……」となるはずだ

 やはり気になるのは、前作の主人公(ベレト/ベレス)とは異なる新たな主人公と、3学級の級長、彼らを取り巻く同級生たちではないだろうか。こちらも詳細は後述するが、まずどのキャラクターも一定の条件を満たすことによって、一部の専用兵種を除き全ての兵種を取得できる。一方であまりに多様性のあるキャラクター育成ができるため、初心者は戸惑ってしまうだろう。ただ、様々なキャラクターに「おすすめ兵種」的なものがあり、各キャラクターの固有スキルが活かせる兵種へのルートも示されているので、安心してほしい。やろうと思えば、盗賊となるエーデルガルトや、メイジのディミトリ、プリーストのクロード、……などという育成もできてしまうわけだ。

育成に困ったら、青の矢印が出ているものを上げていくと良い

 そして、本作は「無双」シリーズであるから、やはりバトルモードは気になるところだ。Yボタンで弱攻撃、Xボタンで強攻撃、Aボタンで必殺技(無双奥義)、Bボタンで回避という、一般的なアクションとほぼ同様の操作となっており、アクションゲームの経験者であれば、すぐに理解できる操作感覚だ。

無双奥義は演出も派手でカッコいい
序盤はコンボの派生解説などもしてくれる(画面左上)

 また、難易度には「イージー」「ノーマル」「ハード」があり、更にゲームスタイルには失った仲間が戦闘終了後に復活する「カジュアル」と失った仲間は戻らない「クラシック」、プレイスタイルとしてミッション発生やレベルアップ、指南発生時に停止する「じっくり」と、停止しない「サクサク」のふたつが選べるようになっており、これら3つを組み合わせて自分なりの「無双」で遊ぶことができる。(ただし「FE無双」とはかなり変わっている点もある)

一番楽なのは、この組み合わせ。プレイスタイルと難易度はゲーム中でも変更可能だが、クラシックからカジュアルの変更はできてもカジュアルからクラシックへの変更はできないので、注意が必要だ。

 ちなみに本稿では、ほぼ「ノーマル」「クラシック」「じっくり」でプレイしているのだが、このプレイスタイルは他のスタイルと比べると、攻略に「時間がかかる」。本稿では物語の前半部となる第一部のラストまでの範囲でお届けするが(繰り返すがストーリーの核心的なネタバレはないので安心して欲しい)、ここまでの時点でプレイ時間は既に25時間を超えている。さすがあの「各ルートを1周するのにおよそ100時間」と言われた「FE 風花雪月」とのコラボレーションタイトルだ。ゆっくり楽しみたい人にはオススメの設定だが、素早くプレイしたい人は別の設定も試してみてほしい。ちなみに選んだ学級は黒鷲の学級(アドラークラッセ)――エーデルガルトの学級なので、必然的に使用SSもアドラークラッセの面々のものが多くなるのは、ご了承願いたい。

今回は「お茶会」ではないが、お茶会に代わって「遠乗り」がある。「遠乗り」では好きなキャラクターと馬に乗って遠出したあと会話が楽しめるのだが、会話が盛り上がれば、キャラクターをじっくりと眺めたり、贈り物をしたりすることが可能だ。そして筆者は3人の級長の中でも、特にエーデルガルト推しである。

主人公は、運命の出会いを果たす

 本作では、まず主人公の容姿から決めることとなる。姿が決まったら名前の入力だ。デフォルトの名前は「シェズ」だったため、本稿ではシェズのままで進めている。

 そして次に決めるのは、「灰色の悪魔」の容姿だ。「灰色の悪魔」という名前と、そしてその姿に覚えがない「FE風花雪月」プレーヤーはいないだろう。

灰色の悪魔も、容姿を決めた後に名前を入力する。デフォルト名は姿に応じて「ベレト」または「ベレス」となる。もちろん「FE 風花雪月」でベレト/ベレスの名前を変えていたプレーヤーは、その名前に変えておくと良い。

 主人公は傭兵団の一員で、冒頭で傭兵団同士の闘いに身を投じ、ジェラルト傭兵団と戦うこととなる。だが、その戦いに姿を現した灰色の悪魔に、団の仲間たちは次々と倒されていってしまう。それでも必死に灰色の悪魔に食らいつく主人公だったが、全く敵わずに敗れてしまうこととなる。だが、そこで主人公に謎の声が聞こえ、そして主人公は謎の力を得たのだった。

 声の主と思しき存在は夢と現の境界にある存在で、ラルヴァというそうだ。正体などはまったく不明だが、何はともあれ、命を落としかけている主人公を世界へと繋ぎとめている存在、といえるだろう。そしてラルヴァは、主人公に「灰色の悪魔を倒すという望みをかなえるために強くなれ」と告げる。「FE風花雪月」の主人公ベレト/ベレスとソティスとの関係性にも似ているように思えるが、ラルヴァの風貌はソティスとは大分違っているのが気になるところだ。原作には登場しなかったラルヴァの存在により、主人公が生き残ったことで物語は少しずつ変化していく。

 ラルヴァに導かれ、主人公が傭兵として旅を続けていると、ある日ガルグ=マク大修道院付属の士官学校の生徒と盗賊との闘いに、巻き込まれてしまった。

 ――ここからさらに、「FE 風花雪月」のストーリーと大きく分岐することとなる。ベレト/ベレスに代わり生徒たちを助けた主人公は、共に戦ってくれたことへの礼をしたい、と、半ば強引にガルグ=マク大修道院へと招かれる。そして主人公は、士官学校への入学を誘われるのだ。

 エーデルガルトが級長を務めるアドラステア帝国出身者が集う“黒鷲の学級”(アドラークラッセ)と、ディミトリが級長でファーガス神聖王国の出身者が集う“青獅子の学級”(ルーヴェンクラッセ)、クロードが級長でレスター諸侯同盟出身者が集まる“金鹿の学級”(ヒルシュクラッセ)、この3つのクラスの中からどのクラスに所属するか次第で、今後のストーリーは大きく変わっていくものだと思われる。3名ともそれぞれに魅力あるキャラクターな上、クラスメイトたちも個性的で選ぶのには決断力がいるところだが、心を決めてほしい。

 なお、筆者はこの選び方が正しいとは全く思っていないが、悩んだ時に一番勧めたいのは「一番自分にとって惹かれないキャラクターの学級にいく」ことだ。(筆者はエーデルガルトの学級を選んでいるが、これはエーデルガルトが好みじゃないからではなく、最初からエーデルガルトにすると誓っていた強い意思によるものである)

 何故かというと、「自分にとってあまり興味のなかったキャラクターでも好きになってしまうのが、FE風花雪月だから」……という理由に他ならない。もしも、それでも級長がやっぱり好みじゃなかったとしても、クラスメイトには絶対ひとり以上推しとなるキャラクターができるはずだ。そうしたら本作を遊べば遊ぶほど、キャラクターに愛着が湧いてくる。キャラクターに愛着が湧けば、ストーリーも楽しめる。そうして「あまり気にならないキャラクターだったはずなのにこんなに面白いのなら、他のふたりのストーリーもやってみたい」という風になる。それが「FE風花雪月」であり、そしてその魅力は本作へも引き継がれているのだ。

もちろん筆者のように強い意思がある場合は、その意思を貫いてほしい。

 ではこのまま学園エンジョイ生活を送り始めるのか……というと、残念ながらそうはならない。ここから先、「FE風花雪月」とはどのように違った未来を歩み始めるのかは、ぜひプレーヤー自身の目で確認してほしい。

 だが、「FE風花雪月」とは異なる未来を歩んだ同窓生たちの近い未来の姿はぜひ紹介したいところだ。3人の統治者のみの紹介ではあるが、各学級のPVも既に公開されているため、興味のある人はそちらも参考にしてほしい。

エーデルガルト。前作のいかつい鎧姿から、随分と女性らしい鎧姿へ変わった。
新たな衣装でも印象が大きく変わらないクロードは、これで良いのだ。それがクロードなのだから。
一番大きく変わったのはディミトリ。ワイルドな彼と、正統派プリンスな彼、どちらがお好み?
【『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』キャラクター紹介映像~帝国編~】
【『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』キャラクター紹介映像~同盟編~】
【『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』キャラクター紹介映像~王国編~】

前哨基地で、戦闘への準備を整える

 本作は基本的に前哨基地で仲間との交流や自軍の強化を行なう軍備パート、そして戦場へ向かう進軍パート、実際にバトルを行なう戦闘パートという3つのサイクルで回していくことになる。

 先程「前哨基地で行なえることは『FE 風花雪月』を踏襲している」と述べた通り、基本的にやれることに多少の差はあれどほぼ同等だと思って良い。主人公が先生ではないので授業や講習といった指導要素こそないものの、代わりに訓練施設で兵種の経験値を取得でき、育成していくことができる。更に訓練施設ではゴールド(通貨)を使用してレベルを上げることができる。(レベルリセットも可能)

 レベルはどうしても使用率に左右されてしまうため、プレイが進むほどスタメンと控えとでのレベル差が激しくなっていくのだが、必要だと感じたタイミングで必要なキャラのレベルを必要分上げられるのは非常にありがたい。

中には使用キャラが固定のクエストなどもあるので、レベルアップ機能は重宝する。

 本作でありがたいのは、武器に耐久度はあれど一定回数使用すると壊れてしまうといったような仕様ではない。また、武器がかなりドロップするため、実質武器を買う必要がなく、得たゴールドの大半はアイテムの購入費用とレベルアップ費用に費やせるところだ。武器が消耗品ではないことで、敵が落とした武器をどんどん換金していったりすることもできるため、比較的ゴールドには余裕のあるゲーム性となっている。

 また、前哨基地では様々な日常の手伝いや、料理を振る舞ったりすることで、仲間との支援値を上げることができる。支援値が上がれば戦場で「副官」に配備した時により有利な効果が発生したりといいこと尽くめなので、よく戦闘に出すメンバー同士は支援関係を上げておきたい。(副官については後述)

日常の手伝いは、馬の世話や、資料の整理、武具の手入れなどなど。ものによって得意不得意があるので、できるだけ得意なキャラクター同士で組ませると良い。
支援ランクが上がるごとに支援会話が発生することがあり、特別なイベントを見ることができる。キャラクターの思わぬ一面を知れる機会なので、ぜひ色々なイベントを見ておきたい。
「遠乗り」は「FE 風花雪月」で言うところのお茶会に近い。選択肢を選んでうまく会話を盛り上げれば、キャラクターをじっくりと眺めたりすることができる。

 このような交流要素は様々あるので、実際にはゲーム本編中で確認してほしい。そして交流以外といえば、次の戦闘の準備だ。武器は耐久度で壊れはしないものの1本しか持てないため、戦闘パートに行く前に見直しておきたい。武器屋や鍛冶屋で強力な武器を買ったり錬成したりと、こちらもできることは様々だ。また、「無双」ならではといえば戦技/魔法を2つまでセットできるのだが、効果範囲や威力などによって使い勝手もまるで違うため、まずは色んな戦技を付け替えて試してみてほしい。「考えるのが面倒だ」という人には、おまかせ装備機能もある。なお余談だが、耐久力で装備は壊れないが、武器の耐久値は戦闘中に戦技を発動するごとに減り、耐久値が0になるとその戦闘中は戦技を使えなくなる。消費した耐久値は、戦闘が終了すると回復する。

自分にとって押しやすいボタン、というのも重要だ。Rボタン+XとRボタン+Yでそれぞれセットした戦技が発動するので、押しやすいボタンにより使い勝手の良い戦技をセットしておくと良い。
魔法系の兵種はエフェクトも魔法の属性にちなんだものになっている

 こういった武器の見直しなどは、戦闘パートに入る直前までであればほぼいつでも可能。足りないものがあったら前哨基地まで戻ってこれるものの、二度手間にしないためにも戦闘に出る前にきちんとチェックしておきたいところだ。

進軍はシミュレーションらしさも

 さて、準備が整ったらいよいよ進軍パート。進軍パートとは、現在の敵陣と、進行可能エリアを確認して、自軍がどこのマップに出陣するかを見極めたりするパートだ。

赤く塗られている場所は、現在進行可能マップ。赤い枠はあるけれど色が塗られていない場所は、敵陣でまだ進行できないマップ。左手にある金色の大きなコマが最終目的地で、そこまでひとつずつエリアを攻略していきながら進んでいくこととなる。

 端的に言うと、進行可能なマップをクリアするとそれは自軍の陣地となり、青色に塗られる。そうしてそこから隣り合う次の敵陣に進行が可能となる。最終的な目的地は大きなコマがある場所だが、そこまで一直線に自軍を進めるのも良いし、あえて寄り道をして他のエリアも全て制覇するも良し。といったところで、この「自軍の陣地をどの順番でどう広げていくか」にはシミュレーション要素も大分混ざっている。

例えばこのエリアは中央に大きなコマが配置され、その左右のどちら側からでも進軍可能だ。ゲームを進めるだけならば、全てのエリアを獲得する必要はないのだが、この進軍にも様々な要素が隠されており、よく考えて進めなければ出会えないアンナの店(道具屋)や、特別なクエストも存在する。

 また、本陣を攻める際には様々な作戦を実行することができる。ただし、各作戦を実行するためには、エリアを制圧することで獲得できる作戦資源というポイントが必要。例えば他のクラスのキャラクターの説得など大掛かりな作戦になると必要な作戦資源も多くなる。つまり使いたい作戦が多ければ多いほど、必然的に進行可能なマップをできるだけ多く制圧する必要がある。それも含め、進軍パートではどのように自軍のエリアを広げながら敵の本陣まで進むかを考えていかなければならないのだ。

 ちなみに筆者は数回、進軍パートで手痛い失敗をして取り返しがつかなくなってしまい、数回前のセーブデータからやり直す羽目になったので、セーブデータをこまめに分けて保存しておくことも重要だと感じた。

エリアをあまり制圧せずに突っ込もうとしたところ、説得だけでほぼ作戦資源を使い切ってしまったが、一度出直して全てのエリアを制圧して再び戻ってきたところ、もう少し他の作戦もいくつか選ぶことができるようになった。無関係そうなマップはただコンプリート欲を刺激するだけのものではなく、きちんとそこを制圧することにも意味があるのだ。

 なお、進軍パートでは制圧したエリアの民家などから物資などを押収できたり、時には御礼のような品がもらえたりすることもある。中にはすごく貴重なアイテムや、本陣での作戦に関係してくるものもあるので、可能であれば全てのエリアを制圧してから本陣に向かうに越したことはない、という印象である。

戦闘は難易度によってまるで変わってくる

 本作では「FE 風花雪月」でもあった「副官」システムが導入されている。基本的には「FE無双」の「ダブル」システムを想像してもらえれば良いだろう。

 副官を連れていると、副官との交代がいつでも可能となり、またAボタンでの無双奥義も副官との二人で行なうため、より大ダメージが狙える。そのため、基本的には副官を連れてのプレイとなると思って良い。

 マップにもよるのだが、大抵出陣は4名まで。マップによっては(主に敵の本陣でのバトル)それ以上の人数が出陣することもあるが、操作キャラの変更ができるのは4名までで変わらず、残りはオートで動くキャラクターとなる。

 「無双」といえば基本的にはひとりないしふたりほどのキャラクターで敵の大群をなぎ倒していく、というものが多いが、本作では「FE無双」同様オートで動くキャラクターも含めた仲間への指示出しが可能となっている。

 「FE無双」をプレイしていればすぐにわかるとは思うが、戦闘中にメニューボタンを押すと見慣れたマス目のマップが表示され、現在の各キャラクターの位置や敵の位置がわかるようになっている。そこから目標地点を指示してやったり、或いは目標ユニットを指定して攻撃するといった指示が可能なのだ。

例えば「護衛しろ」というメインミッションに対して、自身で護衛しながら進むことも可能だが、仲間に「護衛」の指示を出せば、そのキャラクターが護衛ユニットと共に進んでくれるという機能もある。

 このようにシミュレーションっぽさと「無双」っぽさを合わせたゲームとなっており、特に難易度が上がれば上がるほど、この指示が非常に重要になってくるといっても過言ではない。どのキャラクターにどういった行動をさせるかが、勝利への鍵を握るのだ。

 また、どのキャラクターを出陣させるかも重要だ。出陣画面では、そのキャラクターと敵の相性を確認できる。相性が悪い敵が多くても、どこかに相性の良い敵がいるならばそこの攻略を狙って出陣させるのはありだが、相性が悪い敵しかいないことなどもある。そういう場合は他のキャラクターを出陣させたり、場合によってはキャラクターの兵種を変えるなど設定を見直すと良い。

ドロテアは画面上部の敵への相性が良く、画面中央から左下の敵とは相性が悪い。基本北に向かってもらおう。
主人公は、ドロテアが苦手なエリアが得意なようだ。画面中央部の突破を任せよう。

 こういった事前情報から出陣させるキャラクターを決定し、「指示」で相性が良い敵の場所に向かわせる、といった戦術が必要になってくる。

 なお主人公はメインクエストではほぼ強制出陣となるため(サブクエストは強制出陣ではない)、残りの仲間枠は基本的に3枠となる。どうしてもメインクエストでの使用率が高い以上、主人公のレベルを優先的に伸ばすことが多く、仲間に指示を与えつつ、レベルの高い主人公がクラス相性など気にせず圧倒的な力でなぎ倒していく、というプレイになりやすいのだけが残念なのだが、それも難易度や使用したいキャラクター、主人公を含め仲間の兵種(後述)をどのように設定するかによって、戦略が変わってくる。

 イージーであれば主人公ひとりで突き進む「無双」プレイもある程度可能となるが、それでも無指示で全て進めるかというと、それほど甘くはないという難易度だ。使用キャラクターを主人公ではなくお気に入りの「FE 風花雪月」キャラクターで「無双」プレイがしたい場合は、しっかりと育成してレベル差で押し切りつつ、相性の悪い敵用に主人公や相性の良い仲間を副官にしておけば、ほぼ問題ない。

 ノーマルだと副官はほぼ必須で、そのキャラクターが苦手なタイプの敵は素直に副官に変わってもらったほうが良い。そのため、初期配置で操作したいキャラクターと、そのキャラクターの欠点を補える副官を出陣させ、なおかつ操作キャラクターが副官を拾いやすい位置に配置するのも重要となってくる。

 そしてハードでは「無双」感よりも「FE」シリーズらしい詰め将棋感が強くなる。キャラクターに指示するだけでは足りず、その都度操作キャラクターを切り替えながら目標をしっかりと抑えていかなくてはならない場面が多いように感じた。ただ、クリアにあまり時間をかけているとSランクが取れない、というジレンマもあり、ハードではかなり高い戦略性が求められると言っていいだろう。

クリアランクには、クリアタイムも関係している。時間をかけてじっくり攻めれば良い、というものでもないのだ。

 特にSランクでクリアすると「初回Sランククリア報酬」という特別な報酬がもらえるため、これを回収するためにも、オールSでのSランククリアは積極的に狙っていきたいところだ。特にSランク報酬は貴重な品が多く、難易度が上がれば上がるほど重宝するアイテムでもある。

Sランク報酬と、初回クリア報酬を一度に回収できるのがベスト。Sランクを取り逃し、かつSランク報酬がどうしても欲しい報酬だった場合、同じマップを再びプレイし直すことになる。

 ちなみに主人公は、制圧した砦に1マップ3回まで瞬間移動できる能力を持つ。場合によってはこの瞬間移動を使いこなさないとクリアが相当に難しいマップがあるため(最悪、そのマップの最初からプレイし直せば、戦略次第でどうにかできるかもしれないが)、主人公の育成はほぼ必須である。自分で操作するか否かはともかく、そこだけはしっかり頭に入れておきたい。

ちなみに主人公も、めちゃくちゃかっこいい。「FE 風花雪月」で愛着を持っていたキャラクターだけでなく、ぜひ主人公も使ってあげてほしい。

 こういったゲーム性からも、必ずしもそのキャラクターの推奨兵種だけで育成していくのが正しいとも限らない、と感じた。今回筆者はエーデルガルトの学級でプレイしているが、弓系やメイジ系のキャラクターが割と早々にダブってしまった。一方で、ペガサスナイトなど飛行系を目指せるキャラクターや、拳闘士系を目指せるキャラクターがいなかったため、一部のキャラクターにはそちらに転向してもらうなどしてバランスを取った。

 また、「FE 風花雪月」の時にはこのキャラクターにはこの兵種になってもらっていたから、というこだわりもやはり捨てられない。例えば筆者のペトラは『FE 風花雪月』でドラゴンマスターだったため、どうしてもドラゴンナイトにしたいという気持ちが抑えられず、ペトラは盗賊ルートを推奨されていたものの、ドラゴンナイトを目指せる兵種へとチェンジしてもらった。

兵種によっては騎乗での出陣も行なえる。ソシアルナイトなどは馬、ペガサスナイトなどはペガサス、ドラゴンナイトなどはドラゴンを操る。ペガサスナイトなどの飛行系兵種は、一部のマップの閉ざされた道を飛び越えることができるので重宝する場面も

 このように様々なキャラクターに「こんな役割をやらせたい」「このこだわりを貫きたい」といった育成が可能で、しかも他の兵種へ変更したい場合は、なりたい兵種の下位職から徐々にマスターにしていけば良いだけなので、訓練施設などを駆使すれば比較的簡単に行なえる。「FE風花雪月」ほど「槍術がいくつ必要で、剣術が……」というような調整が一切不要なのは有り難い。(むしろ兵種が変わっていけば、各術ランクも勝手に変わってゆく)

 純粋な「無双」らしさ重視で遊びたいのであれば、難易度はイージーにして主人公や好みのキャラクターでひたすら突き進むのが良いだろう。

やっぱりついエーデルガルトを使ってしまうのだが、彼女はデフォルトだと一撃が重い重装タイプなので、爽快感を求めるのであれば兵種を変えてしまうのもアリだ。
エーデルガルトの無双奥義は、猛り狂う炎の渦。カッコイイ。

 なおSランク報酬は難易度関係なく取れるので、まずはイージーで報酬を回収してからハードでじっくりとやりこむ……というようなプレイももちろん可能だ。実際筆者はいくつかでそういう遊び方も実践しているのだが、それもあってかゲームのボリュームが半端なく、前半となる第一部を終えるまでに25時間ほどもかかってしまった。

 だが、遊び方はプレーヤー次第で、もっとさくさくと進めていくこともできるようになっているし、逆に言えば更に時間をかけて遊ぶこともできる。むしろそういった自由性を存分に楽しんでほしいと感じるゲームとなっているので、「FE風花雪月」ファンはもちろんのこと、本作で初めて「FE風花雪月」の世界に触れてみるという「無双」シリーズのファンも楽しめるのは間違いないはずだ。期待して待っていてほしい。