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SCETがPS Vita TVとセットで推進する「NON GAME APP」とは何か?

アジアでPS Vita TVの映像コンテンツサービスを強化するその狙いを探る

1月23日~27日開催予定

会場:Taipei World Trade Center

 SCETは、Taipei Game Show 2014のSCETブースにおいて、PS Vita TV出展エリアに「NON GAME APP」コーナーを設け、そこで3タイトルものゲーム以外のアプリを公開した。本稿では「NON GAME APP」の狙いや魅力をレポートしたい。

大きなTVに映して「ソウル・サクリファイス デルタ」を遊ぶ。PS Vita TVの一般的な遊び方だ
台湾では、セットトップボックスとして動画配信サービスの拡充が重要となる

 史上最小のプレイステーションとして話題を集めているPS Vita TVだが、実は台湾では1月16日にローンチしたばかりというピカピカの新製品だ。まずは「NON GAME APP」に触れる前に、アジア地域における映像配信事情について解説しておきたい。

 台湾を含むアジア各地では、昔からインフラやコンテンツ、ビジネスモデルなど様々な事情から地上波のTV放送が弱く、その代わりにケーブルテレビやインターネット放送が盛んだ。このため、それらを受信するためのセットトップボックスが大きなビジネスになっている。たとえば台湾通信インフラ大手の中華電信は、100MBの光回線とセットトップボックスをセットにした、独自の動画配信サービス「MOD」を展開している。

 昨今では、通信キャリア主導の動画配信サービスからさらに一歩進んで、汎用のセットトップボックスが数多く誕生している。現在主流なのはAndroidベースのセットトップボックスで、HDMI接続でTVモニターに繋ぎ、合法、非合法含めた様々なアプリを使ってインターネット放送や動画配信サービスを視聴するというものだ。価格は、無線対応、拡張性の有無などによって数千円から数万円までピンキリだ。

 おもしろいのは、セットトップボックス用のリモコンが別売されており、これがジャイロなどを使って方向や傾きを検知し、PlayStation Move顔負けの精度で、リモコンを使って簡単にタッチ操作ならぬポインター操作を行なえるのだ。一見、わざわざTVに映して、別売のリモコンを使ってまでしてAndroid端末を利用する意味はないように思えるが、狙いは各種のAndroidアプリを通じて視聴できる映像コンテンツにある。つまり、セットトップボックスはアジア圏にとって、映像コンテンツをいくらでも引き出せる“夢のハコ”というわけである。

 そうしたAndroidベースのセットトップボックスや、通信キャリアが提供する独自の端末に対する強力なカウンターとなるのがPS Vita TVとなる。もちろん、既存のゲームコンテンツだけでは台湾のユーザーは満足してくれないため、ローンチに合わせて3つの映像配信アプリを「NON GAME APP」として準備し、映像コンテンツも充実していることをアピールしたわけだ。映像コンテンツについてはこれで終わりではなく、今後も継続して拡充していくという。それでは以下、3つのアプリを順番に紹介していこう。

【アジアでのセットトップボックス販売状況】
参考までに香港や深センで見たAndroidベースのセットトップボックスの販売風景。セットトップボックスはタバコ箱からルーター程度のサイズで、リモコンが千差万別でおもしろい。SCETがライバルとして意識してるのはこうした製品だ

「HiChannel」

 「HiChannel」は、中華電信が提供している同名の汎用の動画配信サービスが視聴できるPS Vita用アプリ。アプリそのものは無料で、別途中華電信と契約することで、映画、ドラマ、スポーツ中継といった動画コンテンツが視聴できる。利用料金は月額169NTドル(約600円)。

 このアプリのみ未配信で、ブースではお試し映像のみが視聴できるようになっていた。先述したように中華電信には、100MB光回線とセットトップボックスによる独自の動画配信サービス「MOD」が存在するが、こちらは自社独占サービスで、PS Vita TVのようなサードパーティーに対しては「HiChannel」を提供するという形になっている。

 動画コンテンツのボリュームは「MOD」のほうが上ということだが、今後独自コンテンツを拡充し、魅力あるサービスにしていきたいという。

【HiChannel】

「NBA GAME TIME」

 PS4のローンチで、「NBA 2K14」とPS4本体の同梱版パッケージが発売されるほどバスケ人気が高い台湾らしいアプリ。文字通りNBAの試合が視聴できるアプリで、アプリ自体は無料で、録画動画も無料。ライブ中継や、最新データの参照などは有料というレギュレーションになっている。利用料金は月額23.99ドルより。無料動画も試合終了後からあまり時間を置かずに公開されるということで台湾ユーザーの人気が高いという。

【NBA GAME TIME】

「niconico(香港・台湾版)」

 「niconico(香港・台湾版)」は、日本でも公開されている「niconico」をPS Vitaで視聴するためのPS Vita用アプリ。これまでアジア版では権利関係の影響で、「niconico」アプリの公開は見送られてきたが、PS Vita TVの発売に合わせて満を持して香港・台湾版「niconico」が視聴できるアプリの配信がスタートした。

 PS Vitaで利用した人ならご存じのように、生放送配信以外の機能はすべて利用できるようになっており、検索機能やランキングを使って好みの動画/生放送を視聴したり、コメントを付けてコミュニティと一緒に楽しむことができる。ビジネスモデルは日本と同じで、会員登録すれば無料で利用できるが、「niconico」の有料登録をすれば、日本同様のプレミアムサービスが受けられる。

 台湾では「niconico」と同じタイプの動画サービスはないそうで、台湾にもファンが多いという。実際、「niconico(香港・台湾版)」を使って台湾版の動画をいくつか見せていただいたが、日本と同じようなコメントの弾幕が画面を埋め尽くし、日本のアニメなどでは字幕の上部に翻訳テキストを掲示したりして、様々な方法で楽しまれている。

 サービスそのものはPCを利用すれば、PS Vitaを介さずとも簡単に利用できるわけだが、PS Vitaとniconicoは利用者層がマッチすることもあり、今後さらに台湾版niconicoの利用者数が増えそうだ。

【niconico(香港・台湾版)】

(中村聖司)