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「もうダメだ」から一変「ニヤリ」。ストーム久保選手が「Red Bull Kumite」予選で見た勝ち筋

魔王的強さのINFILTRATION選手を撃破し本戦出場へ!

12月21日~22日 開催

 「Red Bull Kumite」のLast Chance枠にはドラマがある。フェスティバルやエキシビションマッチ的なニュアンスが強い本大会において、そう感じざるを得ないほど12月21日の前日予選はドラマに溢れていた。

 優勝したのは、TEMA iXA所属のストーム久保選手。直近の主な実績としては、EVO Japan 2018の7位タイ、CAPCOM CUP 2018の9位などであり、上位に食い込む実力はありながらもビッグタイトルの優勝は未経験だったプロ選手だ。

優勝インタビューを受けるストーム久保選手(右)

 今回の「Red Bull Kumite Japan 2019」の前日予選では、DetonatioN Gamingの板橋ザンギエフ選手、もけ選手、CYCLOPS athlete gaming所属のどぐら選手など、実力者がきっちり上位に残る展開の中で、ストーム久保選手のアビゲイルが光っていた。

板橋ザンギエフ選手
もけ選手
どぐら選手

立ちはだかるは超実力者INFILTRATION選手

 Winners側でベスト16まで勝ち上がったストーム久保選手は、板橋ザンギエフ選手、どぐら選手などを撃破して見事に決勝まで進出。暴れだしたら止まらないアビゲイル(とG)の大躍進に、会場の全員が目を見張っていた。

 そして、ドラマは決勝戦で待っていた。ストーム久保選手に待ったをかけたのが、Losers側から上ってきた韓国出身のINFILTRATION(インフィルトレーション)選手。INFILTRATION選手はEVO 2016で優勝し、EVO Japan 2018でも優勝している超の付く実力者。ここ数年大会に出ていなかったが、「Red Bull Kumite」に出てきたということは、本格的な復帰とみていいかもしれない。

INFILTRATION選手。日本語も話せる

 そのINFILTRATION選手は、トーナメントでずっとエドを使用していたが、Losers側で板橋ザンギエフ選手のザンギエフ相手にメナト、どぐら選手のベガ相手にジュリを出してから、恐ろしいほどの快進撃が始まった。

 INFILTRATION選手が扱うメナトとジュリの恐ろしさは、正確な防御と強烈な差し返しを武器としながら、距離をとって戦うところにある。そのためなかなか近づくことができない。安易に近づけば反撃され、距離が開けばINFILTRATION選手有利で時間だけが過ぎていく。油断をすればガッツリ体力を削られるコンボも突き刺さるので、一旦有利を取られるとそのままジワジワと殺されていくような戦いが展開される。

 この戦いが板橋ザンギエフ選手にもどぐら選手にも強烈に効き、2人は陥落。その勢いでケン使いのけんぴ選手も倒し、「これ誰が止めるんだ……?」と会場が感じ始めたところで、ストーム久保選手との決勝戦となった。

ストーム久保選手はなぜ笑顔になったのか

 決勝戦の風景はかなり奇妙だった。INFILTRATION選手に倒された日本選手勢が、ストーム久保選手後ろの席に座り“ストーム久保応援団”を結成。魔王のように構える圧倒的なINFILTRATION選手の力に対抗するため、自然と組み上げられたダムのような形だった。

ストーム久保選手&ストーム久保応援団(手前)と魔王のような表情を見せるINFILTRATION選手(奥)
なりふり構っていられない日本勢

 試合はお互いキャラクターをどんどん入れ替える、めまぐるしい対抗戦となった。ストーム久保選手がアビゲイル、INFILTRATION選手がメナトでスタートした試合は、G対メナト、G対エド、リセット後はG対ジュリ、アビゲイル対ジュリ、アビゲイル対メナトへと移り変わった。

 この試合で追い込まれていたのは、リセットからカウント0-2まで持ち込まれたストーム久保選手だったはずだ。あと1セット落とせば負け。しかし、アビゲイル対ジュリ戦で1セットをなんとか取り返したように見えたとき、ストーム久保選手は確かにニヤッと笑った。

 それまで「もうダメだ……」というような表情しかしていなかったストーム久保選手が、急に落ち着いている。落ち着いているどころか、余裕を持って笑顔を見せている。

 最初はたまらずGに変えたアビゲイル対メナト戦でも勢いは止まらず、2ラウンド連勝でフルセットに持ち込むと、アビゲイルの集中攻撃は止まらない。INFILTRATION選手のメナトはアビゲイルの繰り出す攻撃に耐えきれず、ついにストーム久保選手の優勝の瞬間が訪れた。

喜び合う日本勢

 ストーム久保選手は優勝後のインタビューで、「途中から、攻撃を自分がいつもやっていることと全部逆にした」と話した。投げから打撃中心に切り替えた作戦がINFILTRATION選手には効果的にハマり、カウント0-2からの逆転劇を生んだという。切り替えたのはおそらく、あのニヤッと笑った試合に違いない。

 ストーム久保選手は本人がTwitterで明かしている通り、「大きな大会で優勝するのは初めて」という。しかもあのINFILTRATION選手を倒しての優勝であれば、文句なしだろう。なんというドラマだろうか。

 この結果により、ストーム久保選手は12月22日の「Red Bull Kumite Japan 2019」本戦へ出場することとなった。世界トップ選手に囲まれてどこまで順位を伸ばせるのか。こちらも注目だ。

泣くストーム久保選手
板橋ザンギエフ選手もちょっともらい泣き?