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SteamVRをスマホで楽しめる技術を試した!

Dacudaが開発するモバイル・ルームスケールVRの可能性

6月14日~16日開催

会場:Los Angeles Convention Center

カールツァイスのブース

 E3 2016のエキスポ会場ではいくつかのスマートフォンVR関連の出展があったが、その中で「SteamVRのルームスケールVRをスマホで楽しめる」という、興味深いデモを体験することができたのでご報告しよう。

 デモが行なわれていたのはカールツァイスのブース内。カールツァイスは8月に129ユーロで発売予定のスマホ用HMDアダプター「Zeiss VR One Plus」を出展しており、これを用いた様々なVR/ARソリューションのデモを披露。その中でルームスケールVRの出展があった。

 それが、スイスのDacudaという企業が手掛ける「vaiaVR」という技術だ。この技術は端的にいうと「スマホVRヘッドセットをSteamVRの端末として使う」というもの。安価なスマホHMDをHTC Viveの代わりにできるのだ。

8月に発売予定のスマホ用HMDアダプター「Zeiss VR One Plus」。4.7~5.5インチのスマホと組み合わせて使える

スマホをHTC Vive互換ヘッドセットと化す「vaiaVR」

SteamVRをスマホで
「theBlu」をスマホHMDで体験している様子

 Dacudaはスマホのフロントカメラを使った3Dスキャン技術に特化した企業で、物体や部屋内の構造を3D空間にマッピングする独自の「SLAM Scan 3D」エンジン(機能的にはGoogle Tangoに似ている)を主力製品としている。

 「vaiaVR」ではこのエンジンを用い、スマホ上で位置トラッキングを実現。さらにOpenVRのカスタムドライバーを通じ、PCに対してスマホをHTC ViveコンパチブルのHMDとして認識させる。PC上でレンダリングされた映像はNVIDIA GameStreamを用いてストリーミングされ、USBを通じてスマホに表示される。

 また、Google DaydreamコントローラーでViveコントローラーをエミュレーションすることも可能。ルームスケールVR+ハンドプレゼンスという、HTC Viveのフル機能をスマホで完全再現できるというわけだ。

 位置トラッキングはスマホ内で行なわれるので、HTC ViveのLighthouseベースステーションも不要で、面倒なセットアップの労力もいらない。使い方は簡単。スマホ側で「vaiaVR」アプリを立ち上げ、USB 2.0でPCに接続するだけだ。

 会場で使われていた機器構成では、スマホにiPhone 6S、HMDアダプターに「Zeiss VR One」を改造したものを使用していたが、技術的にはどのスマホやHMDアダプターでも使えるという。例えばスマホにAndroid、アダプターにGoogle Cardboardという組み合わせでもいい。

【E3 Demo: Simulating a HTC Vive with an iPhone and Daydream Controller】
こちらの動画ではGoogle Daydream コントローラー(エミュレーション)を使ってViveコントローラー代わりにする様子も確認できる

試した印象はほぼ実用レベル!

歩く、しゃがむといった動作がきちんとVR映像に反映される。ルームスケールVRがスマホで実現

 ブースではSteamVRのエクスペリエンス系アプリ「theBlu」を使ったデモが行なわれていた。「Zeiss VR One」とiPhone6Sを組み合わせたHMDをかぶると、SteamVRでレンダリングされたVR映像がそのまま目に飛び込んでくる。映像はPCでレンダリングされているため、スマホVRとは比較にならない美しさ。フレームレートは60をキープしており、なめらかだ。

 この状態で上下左右に動いてみると、位置トラッキングがしっかり機能していることがわかる。遅延はわずかにあるが深刻なものではなく、動きもなめらかだ。ゆっくり動くぶんには自然そのものである。

 壁や床に近づいていくとやや精度が落ち始める感じがあったのが気になるところだが、テンポの早いアクションゲームをするのでなければ許容範囲。ゆったりとしたエクスペリエンス系のVRコンテンツなら全く問題なく楽しめる精度・性能だと感じた。

 ただし、頭を回転させたときに方向のトラッキングが飛び飛びになるケースがよくあった。開発者によると、フロントカメラの視界内に鏡面が入ると、センサーがフィードバックループを起こしトラッキングがストップしてしまうことがあるとのことだ。このため、この会場のセットアプではユーザーがデモ用スクリーンの方向を見た時にトラッキングがジャンピーになりがちになる。このあたりの挙動については今後改善を図っていきたいとのことだ。

 スマホでフルスペックのVRを楽しめる日は当分先のことだと考えていたが、今回、この「vaiaVR」技術を体験して考えが変わった。この技術がベースにしている3Dスキャン技術は日進月歩の分野で、今後、急速な性能向上が期待できる。スマホVRでHTC Viveと同等のことができるようになるのも、もう時間の問題だろう。

 Dacudaが開発するこの「vaiaVR」は現在のところテックデモという段階にあるが、今後は製品化を目指す。近日中にKickStarterプロジェクトをローンチする予定だ。