AQインタラクティブ/ONE-UP、「ブラウザ三国志」開発者インタビュー
「昨日の敵は今日の友」が真骨頂のMMO戦争型ブラウザゲーム

7月収録

会場:AQインタラクティブ本社



 ベクター株式会社が「ドラゴンクルセイド」に続くブラウザゲーム第2弾として提供する「ブラウザ三国志」は、三国志の世界観をモチーフにした純国産の陣取りストラテジーゲームだ。プレーヤーは、一国一城の領主として、武将を雇って領地を経営し、兵士達を育成して新たなな領土獲得に乗り出していく。

 基本的なゲームデザインは先行作品である「トラビアン」に学びつつも、街の開発でなく領地の獲得と開発で、他プレーヤーの領地を包囲したり切り崩したり、軍門に下した相手に同盟の配下として協力を求めたりと、独特の頭脳プレイが楽しめる。カード化された武将たちも個性的で、この夏注目されるブラウザゲームのひとつである。

 しかし、βテストおよび正式サービスからまだ日が浅いこともあって、プレイの大枠となる設計や目標となる要素について、十分な情報が開示されていない。そこで今回、開発元である株式会社AQインタラクティブおよびONE-UP株式会社にインタビューを行ない、このゲームの大枠と独自の魅力、今後の展開について聞いてみた。「このゲームはどうやったら勝ちなのか?」、「同盟はどう機能するのが理想なのか?」といった、ブラウザストラテジーゲームで重要だが説明が後回しになりがちな事柄を、開発者自身の言葉で明らかにしていこう。



■ 「分かりやすい戦争ゲーム」がオンラインゲームとして魅力的

トラビアンの正統後継となる戦争ゲームを作りたかったと語る、ONE-UP株式会社 代表取締役社長 椎葉忠志氏
AQインタラクティブが取り組むオンラインゲームビジネスの中で、ブラウザゲームが占める位置を語る、株式会社AQインタラクティブ 執行役員 ネットワークコンテンツ事業部長 石井 武氏

編集部: まず、「ブラウザ三国志」を企画した経緯とその構想を教えてください。

ONE-UP株式会社 代表取締役社長 椎葉忠志氏: オンラインゲーム、ブラウザゲームについてはいろいろ研究しているつもりですが、そのなかで「トラビアン」をプレイしたときに、時間の使い方という意味で衝撃を受けました。というのもオンラインゲームとは、みんなが集まって同じ時間を共有しなければならないものだと思っていて、例えばプレイを始めて最初の15分の面白さが重要といった基準で作品を見ていたからです。ところが「トラビアン」は、みんなで共同して戦うといったオンラインゲーム的要素を持ちながらも、全員が同じ場所、同じ時間にいなくてもプレイできる。つまり、同じ時間、同じ画面をほかのゲームと奪い合うことなく、プレイが成立するわけです。

 そうした意味で、隙間の時間を活用するコンテンツとして、非常によく出来ている。実際、MMORPGのプレーヤーが片手間にやっていたりしたわけです。それでいながら、オンラインゲームとしての面白さはすべて入っている。これは、いままで持っていたオンラインゲーム観を崩されるという、非常に衝撃的な体験でした。単に気軽にプレイできるとかいったことではなくて、いろいろなコンテンツがプレーヤーさんの時間を取り合う構図の中で、価値のある方法論だぞ、と。

 また、現時点でオンラインゲームをプレイしていない人の中には、「ヘビーだからやらない」という意見が非常に多いのです。一方でMMORPGの「LEGEND of CHUSEN -誅仙-」もプレイしてみたのですが、このゲームではオートラン機能でアクションを指定したまま放置できて、それで面白いのかどうか最初は疑問だったのですが、ちゃんと面白いんですよ。つまりプレーヤーは、ゲーム内における隙間時間に別のことをしていて、全然かまわないってことなんですね。「誅仙」オートラン機能は、MMORPGにまったく新しい楽しみ方を与えてくれるものだと思ったのです。

編: 確かに自動進行型のゲームはブラウザゲームに限らずいろいろあって、「放置」がキーワードになっている作品も少なからずあります。その中でも「トラビアン」は別格だったのでしょうか?

椎葉氏: 個人的には「放置」の「あっさり具合」と「プレイしてる感」のバランスだと思うんですよ。意識の集中と拡散、オンラインゲームらしい緩急というか。「トラビアン」を見て、そこを「ブラウザ三国志」でも追求してみたいと思ったのです。実を言うと「ブラウザ三国志」でも、戦術を組み立てて「放置」するといった楽しみ方について、開発過程で探求してみた時期があるんですよ。その名残が「デッキ」というゲーム内用語です。

編: 実はそこがずっと気になっていました。ゲーム内での機能としては明らかに“武将プール”なのに名前は「デッキ」。「デッキ」って何だろう? 何を構築するんだろう? と。

椎葉氏: そうなんですよ。陣形とか戦術とか、実はいろいろな模索が続きましたが、最終的になくなりました。というのも、いくら戦術を工夫したところで、1回威力偵察で戦い方を見られてしまえば、いくらでも対抗策が立てられてしまいます。これでは「放置」というプレイスタイルが成り立たちません。じゃあ、雇った武将が適切に対処してくれるようにしたらどうか……などと考え出したら、きりがないなあと。

編: 不定時間、多人数プレイという環境で、“戦術”がどうあり得るのかという角度で、とても興味深い論点ですね。例えばカードにしても、引いてくるというランダム要素にはなり得ても、もはや“伏せておく”ものにはなり得ない、とか。戦術性と具体的なゲームシステムについてのお話はあとであらためてお聞きするとして、MMORPGおよび、それ以外のオンラインゲームで追求されてきたアイボール競争(ユーザーの画面にサービスが表示され、そこに視線が注がれることこそが広告価値を生み出すという考え方)でもステイタイム競争(ひとつの会社やポータルサイトが提供するサービス内に、ユーザーがどのくらいの時間滞留するかが、そのサービスの広告価値を決めるという考え方)でもなく、隙間時間のビジネスというものを、大枠でどうお考えになりましたか?

椎葉氏: 研究のために「トラビアン」をやり込んで、試しにかなりお金もつぎ込んでみたのですが、正直なところ「あまり儲かりそうにないビジネスモデルだなあ……」と思っていました。とはいえオンラインゲームとして確実に面白いですから、人を惹きつける魅力はあるわけです。何事もそこからかな、といまは考えています。

株式会社AQインタラクティブ 執行役員 ネットワークコンテンツ事業部長 石井 武氏: AQインタラクティブはもともとコンソールゲームの会社ですが、昨年10月の中期経営計画の柱の1つとして、オンラインゲームに注力することになりました。そのなかでブラウザゲームは、iPhone向けタイトル、オーソドックスな(クライアント/サーバー型の)MMORPGと並ぶ新規事業のひとつですが、最も可能性のある分野と見ています。現在はコンソールゲーム機もWebブラウザを備えており、そこでコミュニケーションを中核に据えたゲームサービスを成功させることの意義は最終的に大きい、と判断しています。



■ 戦争の損得を勘定しつつ、3カ月スパンでマップ中央の城を奪い合う

「ブラウザ三国志」のスパンは3カ月であると明言した椎葉氏
インタビューでは主に「ブラウザ三国志」の具体的な仕様と、システム設計のベースにある考え方を補足してくれた、ONE-UP株式会社 吉木 崇氏
マップ上に砦を築くことで、遠く離れた敵の本城にも手が届く。攻城兵器を使った場合でも、砦はむしろ本城よりも堅固な設定になっている
「籠城モード」をうまく使って敵をハメれば、兵力差は十分に埋められるという実例。「籠城モード」有効時は城が損害を受けず、兵の防御力は3倍になる

編: では、そうしたブラウザベースのストラテジーゲームのヒットを受けて、新たに作られた「ブラウザ三国志」は、どのようなゲームを目指しているのでしょうか?

椎葉氏: まずは「トラビアン」の正統進化形だと思っています。最終的に戦争に帰結するゲームであり、そのために戦争しやすい環境、戦争をするしかない状況というものを用意しました。そもそも三国志というモチーフを選んだこと自体、武将という要素の魅力もさることながら、戦争ゲームとしてのわかりやすさを狙ったわけです。人と人とが戦うこと、戦うために協力し合うことは、非常にオンラインゲームらしい楽しみ方ですから。

 戦争をすれば兵を失いますし、それは資源を消費することでもありますから、なるべくならば戦わないほうがいい。それでも戦わざるを得ないゲームとして「ブラウザ三国志」は作られています。

編: ゲーム全体が戦争に向けて設計されている、と。「ブラウザ三国志」独特の要素といえば領地の占領ですよね。「トラビアン」がヨーロッパの都市国家を題材にして、村という“点”同士対立抗争で進んでいくのに対し、「ブラウザ三国志」では領地という“面”の戦術要素が問われますね。行く手を塞いだり、包囲したりといったテクニックが重要な役割を果たしますし、同時に資源収入を確保する手段でもあります。βテストをプレイしてみて、実は領地を開発してレベルを上げるよりも、新しい領地を占領したほうが出費が少なく、効率が良いように思えました。これは開発意図どおりのバランスでしょうか?

椎葉氏: 確かに資源収入的に考えると、開発は割高についていたのですが、その点は今後、開発を進めたほうが有利にしていきます。いずれにせよ領地を増やしていくとどうしても、隣の領主と境を接することになります。そこでいざこざが起きるか、仲良くなるかという二者択一を繰り返してゲームが進んでいきます。

 マップ上におけるプレーヤー同士の位置関係でいうと、「トラビアン」では座標の原点を囲むように同心円でプレーヤーが配置されていきます。それに対して「ブラウザ三国志」では、座標の原点近くが四角く空いていて、それを取り囲む形でプレーヤーが順番に配置されていくのです。

編: では、最終的に中央の空白地を制した者が「中原の覇者」ということになるのでしょうか?

椎葉氏: そうです。中央に近づくほどマップが混んできますから、美味しい資源を産出する領地の割合が増えてきます。そこでどうしても取り合いが生ずるわけです。四角い空白地の中央に曹操の城があって、その周囲に6つの城があります。これらをより多く手にした同盟が、ゲームに勝利します。ただし、仮に城が7つとも陥ちてもサドンデス勝利にはなりません。所定の期間、だいたい3カ月を経過した時点で最も多くの城を保持していた同盟の勝ちです。

編: つまり約3カ月でプレイが1回終了になるわけですね。ブラウザゲームのリセットサイクルとしては、割と短いですね。

椎葉氏: そうですね、ただ、半年では長いと思うんですよ。内部でいろいろ話しあいましたが、半年はないな、と。それは早めに意見が一致しました。

ONE-UP株式会社 吉木 崇氏: 先行作品の進行を見て、この時期はこれが面白かったという印象を整理してみました。その結果、3カ月目くらいが、そのゲームを1番面白く終われる区切りのタイミングだと。3カ月スパンであればトップ競争からいったん脱落した人でも、武将を成長させつつ無理なく次のチャンスを待てるのです。

編: なるほど、確かに半年プレイしておなかいっぱいになるよりは、3カ月近辺で切り上げたほうが、プレイの密度が高くなる気がします。プレイの密度といえば、「トラビアン」では軍隊が着くまでに10数時間かかるような遠くの敵には絡みづらいのに対して、「ブラウザ三国志」では飛び地を起点に領地の拡大ができるようになっていますよね?

椎葉氏: ええ。そのあたりが戦争をしやすくした部分です。本拠地から遠く離れても、そこに前線基地を築いてしまえば問題ない、といいますか。……それにしても、みなさんよく戦争してますよね。そこがβテストを開始してみて1番意外だったところです。同盟関係を通じて1対多という構図が出来上がるや、もうバンバン戦争しているというか。

編: 短期間に兵力を整えやすい、遠くにも出兵しやすい、勝利条件の明示がまだ、という条件が重なると、兵力の源たる資源産出領地の奪い合いに熱が入るのかもしれませんね。ブラウザゲームで重要なのは、プレーヤーにどういったペースでアクセスしてもらうかという、時間要素だと考えています。その点で「ブラウザ三国志」は、1日2回の名声値の増加が基本のリズムを作っていますよね。ところがいったん多人数の戦争が始まると、アクセス間隔を選べる余地がなくなってしまいます。攻撃側は意図的に名声値を余らせておいて、畳みかけることが可能ですし、互いに領地の忠誠度を下げあう応酬はものすごい回数になりますから。ここは「トラビアン」のグランドデザインから持ち越してしまった課題だと思うのですが、どうお考えですか?

椎葉氏: 例えば不戦時間帯を作ろうという直接的な対策は、つい先日も検討したのですが、いまのところ見送っています。どの時間帯でどのくらいの長さの不戦を強いるべきか一概に言えないですし、戦闘のタイミングを計ることも戦術要素のひとつであり、それは最初のほうに述べた「プレイしてる感」にも関わってきます。ですので、いまは戦闘タイミングを制約することなく、「籠城」といった特殊ルールで守り手側にある程度安全な期間を用意している、というわけです。

 お客様は必ず、作り手の想定とは違うプレイの仕方を考え出すものだという経験則もあります。ですから最小限の仕組みを作って、お客様の傾向や要望に合わせて手を入れていくほうがよい、と考えています。ただ、何かうまい方法を考えて、戦争時のプレイ負荷は減らしたいですね。ゲームシステム上は、いま最大の改善課題です。

吉木氏: プレーヤー間の戦争だけでなく、NPCの砦を手に入れることのメリットに注目してもらえるようにする必要もありますね。

椎葉氏: NPCの砦は、序盤のプレイ目標として現状400個ほど用意しているのですが、これがうまく伝わっていないですね。戦争の方向性がプレーヤー間から、もう少しNPCのほうに向くよう調整していきます。プレーヤー間の戦争を存分に楽しめるゲームではありますが、そればかりというのもヘビーですから。

 戦争の損得の部分も含めて、いまはゲームのヘルプ項目やクエストなどを通じて、伝えるべきことをきちんと伝えることも大きな課題だと思っています。自分のプレイ経験に照らすとわかりますが、何でも書いてある長大なマニュアルがあっても、それはぜんぜん親切じゃないんですよ。だから、クエストなどの形で学んでもらうのが最も良いと思っています。あとは、必要に応じてヘルプのリンクを用意することですね。

吉木氏: ルール説明に限らず、すでにあるシステムをより分かりやすくしていく必要がありますね。例えば「個人同盟掲示板」はかなり高機能なんですけれども、奥深くに隠れてしまっているせいか、現状あまりうまく活用されていません。

椎葉氏: 他プレーヤーに攻められて城が陥落したあとの「配下同盟」(従属同盟)状態についても、現状うまく機能していないもののひとつです。この状態は、いわば同盟に対する“仮入部”扱いになっていて、システム上は正規の同盟員へと引き上げてもらえるのですが、見ているとだいたい戦争の一方の当事者はやめる、もしくは離反する結果になっていますね。

 負けた側には遺恨が残ることも多いですし、勝った側は高飛車な態度に出がちです。また実際のところ、同盟にはレベルによって人数制限がありますから、従属させた全同盟のメンバーを正規の同盟員にしていくのも難しい……。戦争時のプレイ負荷が大きくなることと並んで、従属関係も、早期に改良したい部分です。

吉木氏: 上位者が従属者の領地を奪える一方で、従属者は完全不可侵を強いられるため、領地を取り返せないというルールも、影響が大きいですね。従属者らしいといえばらしいのですが、現状でお客様に評判の良くない部分ですので、トータルに見たうえで改善していきます。



■ 1度手に入れた武将は次クールへ持ち越せる

無料で引ける「ブショーダスライト」でもすべての武将が出るという。ほっと胸をなで下ろしたファンも多いのではないだろうか

編: 戦争に関連して、現状で明かされていないルールのひとつに、武将の機能があります。武将が持つ「攻撃力」と、兵科別の「防御力」は、武将個人の戦力と、指揮下の部隊の発揮戦力を同時に引き上げるものと考えてよいのでしょうか?

椎葉氏: そうです。兼ねています。例えば「防御力」を上げた武将が率いる部隊は、プレーヤー間の戦争でかなり強いはずです。何がどの程度効いているかを見せていくことも、ストラテジーとしては大切だと認識していますが、まだ手が回っていない部分ですね。

編: 先ほど、トップ争いから脱落したときのお話として、次クールに備えて武将を育てるという話題がありましたが、このゲームでクールをまたいで持ち越される要素には、どんなものがありますか。

椎葉氏: 武将カードとそのレベルアップ結果が次のクールに持ち越されます。ただ、そうなるとクールの合間で参加しても新規プレーヤーに不利ですから、順次新たなワールドを立てていくことで対応していきます。ワールドの演算処理を担当するサーバーの構成については、かなり柔軟に調整できますので。

編: 武将を入手する手段としては、βテストの段階からあった「ブショーダス ライト」のほかに、有料サービスとして「ブショーダス ゴールド」と「同 シルバー」が導入されましたね。有料サービスについては、どんな武将カードが出るか明記されていますが、「ブショーダス ライト」については、そうした説明がとくにありません。βテスト段階と比べて、出るカードの制約が増えていたりするのでしょうか?

椎葉氏: いいえ。無料で引ける「ブショーダス ライト」でも、ごく一部を除き、すべての武将が出ます。コモン/アンコモンについては、単にアンコモンの確率を抑えているだけで、すでに引かれたカードの分布などは参照していませんから、本当に運次第です。お金を払った人、払っていない人を問わず、三国志モノらしい楽しみ方ができることが重要だと思っていますから。

【ブショーダスライト】
無料の「ブショーダス ライト」で入手できるカード一覧と(左)、実際にUC(アンコモン)のカードを引き当てたところ(右)

石井氏は日本産のブラウザゲームの開発に自信を覗かせた

吉木氏: 有料版の「ブショーダス」を使って武将を集めた人も、今度は合成で消費していくことになります。同一カードを合成してスキルのレベルを高めたり、強い武将にスキルを覚えさせる素材にしたり、といった形でカードが使われます。

編: 同じスキルを持つ武将のなかで、最も安い人を買い集めて合成して……という方法論は、現状でもある程度有効ですね。

椎葉氏: はい、初期はそれが強いです。ただカードは現状溜まっていく一方ですから、もっともっと使いやすくしていくことを考えています。消費する方向以外にも、ソートしたり一覧で見たりできるべきだなあと。

 お客様の意見については、細大漏らさず検討しています。その結果、これから直すべき問題は大きなものばかりになってきましたので、十分に検証したうえで反映させたいと思っています。クローズドβテスト段階ではそれこそ、日々アップデートの毎日でしたが、いまはお客様のプレイに直接影響することを、きちんと考えに入れなければならない段階ですから。

編: ここまでのお話で、いくつか個別の改良予定も出てきましたが、「ブラウザ三国志」の展開として大枠で予定されている事柄がありましたら、あらためて教えてください。

椎葉氏: なんといっても、携帯電話でプレイできるようにすることですね。プレーヤーのみなさんが意外なほど積極的に戦争をし、いったん戦争がはじまると、けっこうプレイの負担が大きい部分についても、携帯電話からのアクセスをサポートすることで、かなり状況が改善されると思います。現状ではiPhoneからしかプレイできませんが、普通の携帯電話に合わせた画面構成を用意したうえで、9月末から10月頃には開始する予定です。

編: では最後に「ブラウザ三国志」という作品および、その今後の展開にかける意気込みをお願いします。

石井氏: 予算的にもライセンス等の問題がないことからいっても、ブラウザゲームは参入障壁の低い分野ですから、ものすごい数の競合作品が出てきて、もっともっと普及が進むと思います。そうしたなかで“日本のゲームメーカー”が作るに相応しい、真似できそうに見えてそう簡単に真似できない作品、今後のブランドメイキングの出発点として「ブラウザ三国志」を作り上げていきます。ご期待ください。

椎葉氏: さきほども話題に出てきましたが、ご意見は必ず読んで検討しています。お客様がいま感じている問題点については、私達もほぼ同じ認識を持っていますので、今後も改善を続けていきます。それが、国産タイトルの大きな利点だと思っていますので。いま楽しんでくださっているお客様には本当に感謝しています。

吉木氏: お客様の意見を積極的に取り入れていくことで、継続的にプレイしている方にも、新たに始められる方にとっても、より良い作品となるよう努力していきます。今後ともよろしくお願いいたします。

編: 本日はありがとうございました。

【カード合成】
同一カード2枚を合成することで、スキルのレベルを上げられる。失敗すると2枚目のカードが失われてしまうとはいえ、メリットを考えると積極的に挑戦したいところ(左)、βテストの時代から、運のよいプレーヤーが入手してはオークションに出し、高値を呼んできた曹操カード。領地争奪戦で果たす役割を考えれば、高値も道理である(右)


 「ブラウザ三国志」という作品の大枠については、今回のインタビューである程度埋められたことと思う。それに加えて、インタビュー後の雑談でAQインタラクティブの石井氏が述べていたエピソードが非常に示唆的だったので、ぜひ書き添えておきたい。自らが事業に携わっている関係上、石井氏は知人に「ブラウザ三国志」を紹介する機会も多いそうなのだが、ふだんゲームをしない人ほどハマる率が高いのだという。

 アクションゲームやMMORPGなどを代表とする普通のゲームは、ある程度の時間集中してプレイする必要があるのに対して、ブラウザゲームはまったく異なる、隙間時間のリズムを持っている。そしてそのリズムには確実に、新しいプレーヤー層を開拓する力があることを、裏書きするような逸話といえるだろう。

 そうしたブラウザゲームらしい魅力をフルに備えつつ、国内メーカーの作品らしい細部へのこだわりと、プレーヤーの声を素早く反映する開発サイドのレスポンスの良さを併せ持っているところが、「ブラウザ三国志」の基本的な強みだ。ようやく正式サービスが始まったタイミングであり、ゲーム各部の数値バランスなどについてはまだまだ煮詰めるべき部分も多いと思うが、合従連衡、競争と協力がきちんと活きる、三国志らしいストラテジーゲームとして構想された部分が、真価を発揮する日を心待ちにしたい。

(C) AQ INTERACTIVE Inc. All Rights Reserved. Published by Vector Inc.

(2009年 7月 24日)

[Reported by Guevarista ]