カプコン、WIN「モンスターハンター フロンティア オンライン」インタビュー
「シーズン5.5」の狙いと今後のアップデート展開を聞く


6月23日 収録

会場:カプコン東京支店


 株式会社カプコンが運営するWindows用ハンティングアクション「モンスターハンター フロンティア オンライン(MHF)」は、2009年7月で正式サービス開始2周年を迎えた。

 「MHF」はこの2年間で数々のアップデートを実施しており、正式サービス開始当初と比べゲーム内容は大きく進化を遂げている。最近では、4月に「シーズン5.0 “新たなる挑戦、パローネ”」、6月に「シーズン5.5 “未来への絆、頼狩人(ラスタ)”」を実装し、モンスターや武器の追加だけでなく、新規コンテンツの追加も積極的に行なわれている。

 これらのアップデートの狙いから、順次開始される2周年記念イベント、さらにはその先の「シーズン6.0」以降のアップデート計画について、オンライン開発部運営室長 運営プロデューサーの杉浦一徳氏に話を伺った。




■ 同時接続数を塗り替え続け、「シーズン5.5」実装直後に最高記録を樹立

オンライン開発部運営室長 運営プロデューサーの杉浦一徳氏
呑竜「パリアプリア」。狩り以外の方法で様々な素材が入手できる特殊なモンスター

――「シーズン5.0」の感触はいかがですか?

杉浦一徳氏 :非常にいい結果が出ました。ユーザー数は新記録を塗り替え続け、「シーズン5.0」実装から約1カ月後のゴールデンウィークに、今年最高の同時接続数を記録しました。1年ほど前は、アップデートから1週間も経てば同時接続数が減少していましたが、「シーズン5.0」はアップデート実施の1カ月後に同時接続数の記録が塗り変えられたということに格段の差を感じています。

 数字的なもの以外では、「パリアプリア」ですね。あまりにも早く倒せてしまうので、実装当初はお客様から「何この弱いモンスターは?」と思われていたようですが、時間が経つにつれて次第に特徴をご理解いただけてきたようです。厳しい意見というよりは、「なるほどね、こういうのもたまにはありかもね」という感じでしょうか。毎回使えるネタではありませんが、たまにはあってもいいという感じなのかと思っています。

――続いて「シーズン5.5」についてはどうですか?

杉浦氏 :ゴールデンウィークに同時接続数の新記録を達成しましたが、「シーズン5.5」実装初日にそれをさらに塗り替えました。やはりお客様も「ラスタ」に興味があったようです。お客様の中にはアップデート後の土日に遊ぶ社会人も多いのですが、平日にプレイしていただいたお客様の多さには驚きました。

 「ラスタ」に関してどういう評価をされるのかがポイントでした。「ラスタ」は他のゲームのペットや育成型NPCとは異なったコンセプトで実装しようということが大前提にあり、そのうえでプレーヤーキャラクターについてくるペットであったり、育成型のNPCなど、他のMMORPGにあるようなシステムのメリットを色々と考え、今回の「ラスタ」の仕組みを作りました。

 一部のお客様からは、「自分で好きなように育てたい」とか、「自分の分身として他のハンターに協力するのではなく、自分に協力してくれるNPCとして育てて連れて歩きたい」という要望はありますが、「こういうのも面白いよね」という好意的なご意見も結構ありまして、私達が想定していた以上に遊んでいただけているように感じています。実装から約1週間で、アクティブユーザーの半数以上のお客様がすでに誰かとラスタ契約をされている状況で、嬉しさを感じています。




■ ユーザーの意見を取り入れ、改善されていく「ラスタ」

「シーズン5.5」で実装された「ラスタ」。クエスト中はハンターと共に戦ってくれる

――「ラスタ」のコンセプトを教えてください。

杉浦氏 :「ラスタ」は、手ごわいモンスターを狩る場合に募集をしても人が集まらず、1人や2人となった場合の救済的な機能として開発がスタートしました。

――ユーザーからの要望もあったのですか?

杉浦氏 :お客様からの要望もありましたが、私達が「MHF」を特殊なゲームだと考えていたことも一因です。例えば、他のMMORPGだとレベル帯がある程度同じならば経験値を稼ぐパーティーはすぐに集まりますが、「MHF」は主に欲しい素材が同じ人が集まって狩りをしていますので、お客様が分散しがちです。そのフォローの1つとして、HR100以降の素材を減らすために汎用素材を導入しましたが、それだけでは解決できていないのが現状です。そこでいいアイデアはないかと考えた際に「ラスタ」の考えが浮かび、導入に至りました。

 「ラスタ」を導入するとサーバーの処理やデータベースの負荷が増えるので、ヘビーな企画ではありました。また、お助け的な存在として導入してしまうとソロプレイを推奨してしまうところもあり、オンラインゲームとは相性が悪いだろうとも考えていました。そこに人と人との繋がりとしてコミュニティを持たせられないかと考えた結果、最終的に今の仕様に決定しました。

――「ラスタ」の成長は、コミュニティに繋がることを意識しているわけですね。

杉浦氏 :育成が最優先というよりは、「ラスタ」を貸し出す時に相手の役に立ってほしいという、ユーザー同士の思いやりを大切にしました。お客様のブログなどを見ていると、「こういう武器を持たせてほしい」とか、「こういう服を着せてほしい」といった相手への注文も多く見受けられました。笑いをとるために変わった防具を着けて貸し出されることもあるようで、借りた側はこれにどうツッコミをすればいいのやら……という内容のブログもありました。そういうところが「ラスタ」の面白さだと思っています。

 相手が使えば自分の「ラスタ」も育つので、自分もそれなりに使ってあげたくなるという相互関係も考慮しています。お客様としては、どういう武器を持たせれば役に立つのかといった有用性も熱心に議論されているようです。「ラスタ」用の武器や防具は、今のところ装備できるものが限られていますので、それらの装備を持っていないお客様も多く、土日に頑張って「ラスタ」の装備を作っているお客様もいらっしゃいました。

 「ラスタ」に関しては、「シーズン5.5」のサイトで予告しているように、「シーズン6.0」でも強化します。既に武器11種の解放や、ギルド貢献ポイントの使い道などの実装を準備しているので、お客様に喜んで使っていただけているのは私としても嬉しいですね。


剛種の「ラオシャンロン」(上)と「シェンガオレン」(下)。攻撃力だけでなく、移動速度も向上している

――新モンスターとして剛種の「ラオシャンロン」と「シェンガオレン」が登場しましたが、こちらのコンセプトはどういった感じですか?

杉浦氏 :剛種モンスターは剛種武器を生産するためのハードルとして設けているので、それなりに手ごわく作っています。ただ、既に剛種武器を持っている方は比較的短時間で倒せてしまうので、なかなか難しい部分ではあります。

 今までの「ラオシャンロン」と「シェンガオレン」よりも動きが速くなり、違う遊び方を提供できたことに対しては、お客様から予想以上の反響がありました。既存モンスターがリファインされると、お客様には喜んで遊んでいただけることが多く、今回は待ち時間が長いオープニングムービーがなくなったり、最後のエリアまで行かないと討伐できないことが改善されたことを高く評価いただいたようです。

――剛種の「ラオシャンロン」と「シェンガオレン」のほうが、通常のものより早く倒せるということについてどうお考えですか?

杉浦氏 :剛種チケットで受注そのものを制限しているので、問題はないと思っています。逆に、通常の「ラオシャオロン」も同じ仕様を取り入れて早く倒せるようにしてほしいという意見もありますが、剛種は追加モンスターとして極端な変化を持たせたので、それをそのまま通常のほうに取り入れると予期せぬバランスになったり、不具合が起こったりしてしまうので、慎重に検討しているところです。

――次に武器について、一挙に270種類を追加した理由を教えてください。

杉浦氏 :あまり深い意味はないのですが、最近は「0.5」のリファインアップデート回数が減ってアップデート間隔が広がったので、その間を埋めるための武器・防具を投入する必要があると考えています。意識的に数を増やしたわけではなく、アップデート間隔を考慮して投入しています。

 今回投入数が増えたのは、2周年イベント用の武器があったのと、今までと比べてイベントが強化されたことや、開発ペースが順調だということもあります。組織の中での効率化も行なわれているので、武器数が増えたのは順調に開発が進んでいる証のように感じています。

――今後も既存のSP武器や、剛種武器、リーチ武器といった武器種の中で投入されるのですか?

杉浦氏 :SP武器の投入数は徐々に減っていくと思います。「シーズン2.0」から実装されてある程度数も揃ってきているので、実装の優先順位を少しずつ下げています。最も力を入れて開発しているのは剛種武器で、「シーズン6.0」でも凝ったギミックの剛種武器が登場する予定です。

 リーチ武器に関しては、お客様から面白いという評価をいただいているので、これからも投入していきたいと思っています。あとはモンスターやイベントに合わせて武器も増えていくので、人気が出てきたものや、新しいものに関しては力を入れて、評価が低いものはデータベースを分析しながら減らしていくというように調整しています。

面白いモンスターに仕上がっているという「エスピナス希少種」。8月に実装される

――その他のアップデートに関してはいかがですか?

杉浦氏 :「シーズン5.5」でいえば、サブタイトルにも使ったように「ラスタ」が主だったのですが、それ以外には8月に「エスピナス希少種」が登場します。モンスターとしては非常に面白い仕込みがあって、私が遊んでみたところ結構ウケるかなと思いました。

 「シーズン5.5」に関しては、サーバートラブル以外は問題となるお問い合わせがほとんどありませんでした。本当に問題がある場合はすぐに要望や苦情がたくさん届くのですが、オンラインゲームはアップデート内容が面白いと、お客様はゲームに夢中になってお問い合わせが減るという不思議な現象が起こります。この2年間の経験で、お問い合わせが少ない時はまずまずの評価をいただいている時が多いので、今回は悪くない評価だと感じています。




■ 感謝の気持ちを表現した2周年記念イベント

「2周年記念イベント」では、合計20種類のイベントとキャンペーンが実施される

――2周年イベントはどういう方針で進められるのですか?

杉浦氏 :今のイベント自体がそうなのですが、質や量共に十分ではないと思っています。特に質の部分は、ゲームの中と連動したギミックなどもあるので、運営チームだけではできません。今後は、より面白く凝ったイベントを、開発チームと連携して作っていきたいと思っています。

 ただ量だけは運営チームでもどうにかしたいと思い、スタッフの数を増やしてイベント専門のチームを組みました。そこで最低でも月に1つ、できれば2つほどのイベントを実施しています。常駐化している狩人祭や公式狩猟大会は数には入っていませんが、月単位で企画しているクリスマスや、お正月といったオリジナルイベントは、できるだけ数を多くしたいと思っています。

 そこで今回は、2周年を感謝した企画にしてほしいと彼らに指示を出しました。おそらく今回の目玉は2周年記念の防具だと思うのですが、こちらは開発チームが2周年の感謝を表すという意味で、凝ったオリジナルデザインの防具をお客様に提供したいという熱意もあって、かなり力を入れたデザインに仕上がったと思います。

 2周年は力を入れようと考えていたので、量は当然増やしましたが、質はまだまだ物足りないと感じています。3周年の時には量も質も両方とも強化していきたいと考えているので、今は過渡期だと思っています。まだまだといったところですが、1年前と比べるといいものを提供できたかと思っています。

――ちなみにイベントとキャンペーンの違いは何ですか?

杉浦氏 :イベントは、ハンターライフコースに登録しているお客様であれば誰でも参加できるものが主です。そしてキャンペーンは、初回割引や60日登録キャンペーンなど別途お支払いに関連したことで入手できる特典が主になります。今回は感謝を表すという意味で、イベントを重視しています。

――注目してもらいたいイベントはありますか?

杉浦氏 :複数ありますが、オリジナルの武具が入手できるイベントはどれもお薦めです。「ヒプノック」の片手剣もそうですし、この10大イベントで入手できるオリジナル武具が色々ありますので、全部集めてもらいたいと思っています。


今秋に開催予定の「VS. クエストチャンピオントーナメント in Autumn 2009」

――キャンペーンの中にある「VS. クエストチャンピオントーナメント in Autumn 2009」はどういう内容になるのですか?

杉浦氏 :「VS. クエスト」を利用したオフラインの大会で、全国4都市の公認ネットカフェで開催します。前回は参加資格が4名で割と敷居が高かったようなので、今回は2名のペアによる大会を検討しています。景品は、「ゴールドクレスト」(片手剣)以外にも、1位のチームに4,000Nポイント、2位のチームに3,000Nポイント、3位のチームには2,000Nポイントを提供する予定です。クエストは事前にゲーム内で配信するので、練習してタイムを縮めてもらいたいと思います。

 イベントは皆さんで盛り上がっていただきたいという考えですが、私個人としてはお客様の顔や、遊んでいる状況を見ていきたいと思っています。勉強にもなるので、これからも積極的にイベントに顔を出したいと思います。




■ アイルー風防具や「MHF」のサントラが入った2周年記念パッケージ

「2周年記念 プレミアムパッケージ」
アイルーのようなデザインの2周年記念パッケージ特典防具「シャランシリーズ」

――次に「2周年記念 プレミアムパッケージ」についてですが、パッケージの内容はどうやって決められたのですか?

杉浦氏 :ゲームアイテムは今までと違う毛色のものを付けようということで、色々なデザイン案の中から、まずアイルー風の防具が決まりました。今までの記念パッケージは「MHF」の世界観をあまり反映させていなかったので、今回は特別に「MHF」風のものにしました。

――可愛らしいイメージですよね。

 少しだけ苦労話をさせていただくと、「MHF」の女性キャラクターは少したくましく、男性キャラクターも肉食系といった感じで、実際に着せてみるとラフ画像の時のイメージよりたくましい感じになることがあります。そこをラフ画の段階である程度計算に入れておかないと、結構イメージの落差の激しいものができてしまうのです。ちなみに今回は今までのパッケージを購入されていたお客様とは違う層の方に喜ばれているようです。

 他には、オリジナルの楽曲集があります。「シーズン4.0」から新しい楽曲を導入した際にアンケートをとったのですが、お客様からの評価もかなり高かったので、オリジナルの楽曲をまとめてCD化しようということになりました。それで今回のパッケージの特典として入れています。

――今回からダブル特典のアプリケーションが「フロンティア打!」から「MHFプレミアム神経衰弱」に変わっていますね。

杉浦氏 :タイピングより気軽にできるものにしつつも、ミニゲーム性は残しておきたいということで、いくつかある候補の中から神経衰弱に決定しました。今までは店頭でキーボードを必死に叩くこともあったかもしれませんが、それもなくなり、少しハードルと難易度を落としたという感じです。

 今後もパッケージを出す際に、毎回ミニゲームを変えるのは難しいですが、数回で別のミニゲームに変えたいと思っています。ただミニゲームの企画に関してはお客様からのアイデアも採用したいくらいなので、気軽に遊べる企画がありましたらご提案ください。




■ 「シーズン6.0」で新たなモンスターやスキルを実装

――「シーズン6.0」についてはどういう状況ですか?

杉浦氏 :おそらく8月中旬くらいには、特設サイトを立ち上げることになると思います。「シーズン6.0」のメインビジュアルには新モンスターが前面に押し出されているので、すぐに「こういうモンスターなんだ!」と姿はわかってしまうと思います。詳細はまだ言えませんが、古龍種ではありません。メインビジュアルの中に新モンスターの個性は入っていると思うので、ご覧になって期待していただきたいです。

 「パローネ=キャラバン」についてお客様から厳しい指摘を受けているので、「シーズン6.0」、「シーズン7.0」で改善できるようにしていきたいと思っています。「ラスタ」に関しては、「パローネ=キャラバン」と同様に「シーズン6.0」で拡張していきたいと思っています。

 あとは、新スキルの導入も予定しています。武器に大きな影響を与えるスキルで、面白いものになっています。今回は地味なスキルではなく、見た目のエフェクトも検討していますし、色々なバリエーションが用意されています。

――新スキルによって狩猟が何か変わってくるのでしょうか?

杉浦氏 :その新スキルが中核に組み込まれることで、スキル構成にも大きな影響を与えるのではないかと思っています。「飢狼」のように徐々にお客様の間で浸透していくスキルではなく、よりポピュラーなスキルになればいいと期待しています。どういう評価をされるのか見守っていこうと思っています。

――「シーズン6.0」の方向性はどうですか?

杉浦氏 :新モンスターにはかなり力が入っていますが、それ以上に新モンスターの武器・防具のデザインも大多数のお客様の好みに入るものだと思っています。また、「ラスタ」と「パローネ=キャラバン」の拡張もあるので、ボリューム的に大きなアップデートになると思います。猟団に関連したものでは、ドンドルマがなくなったことで遊びにくいという意見もありますが、すでに猟団部屋の拡張が検討内容に入っています。猟団員の方がさらに楽しく遊べるように、「シーズン6.0」にはさらにいい環境をご提供したいと思っています。

――今後のアップデートで「MHF」はどう進化していくのですか?

杉浦氏 :4月には「パローネ=キャラバン」、6月には「ラスタ」を入れているように、2009年は挑戦的なことを行なっています。新しいコンテンツを定着させて、もうちょっと違う「MHF」の遊びを提供していきたいと思っています。狩人祭を実装してからお客様の要望を聞いて調整をしてきたように、「パローネ=キャラバン」と「ラスタ」もお客様の意見を取り入れて、「シーズン6.0」で完成度を高めていきたいと思っています。

 また「シーズン6.0」の新モンスターは、「エスピナス」の極端な2面性、「アクラ・ヴァシム」のように段階分けされたギミック、「ベルキュロス」のクエストに関係したギミック、そして「パリアプリア」で見せたギミックのように、新たな隠しダネが組み込まれています。

 「シーズン6.0」の後には「シーズン7.0」も年末に予定しています。年末年始には、お客様が遊びきれないほどのボリュームのコンテンツと隠しダネをたくさん用意しています。残りの秋と冬は、今年の挑戦的な部分をよりブラッシュアップしていくアップデートになるので、ぜひ期待しておいてください。




■ 「ラスタ」や倉庫の拡張などについて質問

――「シーズン5.5」実装直後、サーバートラブルがありましたが、何があったのでしょうか?

杉浦氏 :サーバー3のダウンは、同時接続数が新記録となるほど多かったこと以外に、負荷がかかった際に運悪く機器にトラブルが起こったことが大きな原因でした。データの巻き戻しが必要になったことについて、お客様には深くお詫びいたします。

――補償アイテムについても告知されていましたね。

杉浦氏 :メンテナンス明けのタイミングで全てをきちんと報告しなければ、お客様に対して失礼だと思っていました。最低限クーポンや利用権の補償はしますが、データが巻き戻ったお客様にどういう補償をすればいいのかと考えました。本来であれば1人1人に補償をするべきですが、メンテナンス明けまでの数時間以内に全ての結論を出す必要があったので、大多数の方々に納得していただける補償ということで今回の結論に至りました。

 コアユーザーの方であればかなりのお時間を遊ばれているはずなので、そういう方からすればライトユーザーと同等の補償は許容しがたい部分もあると思います。できる限りコアユーザーの視線に近い形で補償アイテムを考えましたが、あれくらいの補償でも少ないのではないかと思っています。

 私達はデータの巻き戻しに至った事実について、厳粛に受け止めなくてはいけないことだと考えています。ゲーム中の細かい不具合を100%なくすことは難しいですが、今回はオンラインゲームを遊んでいるお客様に対して絶対にやってはいけないトラブルだったので、深く反省し、私達に何ができるのかを考え、包み隠さず報告し、補償についてできる限り努力しました。

 振り返ってみると、他のやり方もあったかもしれませんが、あの段階で考えられる限界だったと思っています。決して過剰な補償だとは思っていませんが、一部のお客様からは「補償アイテムが多すぎではないか?」という意見もありましたので、それは今後の課題にさせていただこうと思っています。


募集をかけても人が集まらない場合は、「ラスタ」を同行させれば2人で戦える
勝手に睡眠中のモンスターを攻撃してしまうことについては、改善を検討中だという

――「ラスタ」の育成要素が面白いと思うのですが、「ラスタ」の同行を受注条件にしたクエストや、韋駄天などは検討されていませんか?

杉浦氏 :今の段階ではまだ検討はしていません。人が足りなかった場合のヘルプや、コミュニケーションツールとして導入したところが大きかったので、ご質問のようなことに関しては未知数といった感じです。とはいえ、今後一切やらないということではなく、お客様から強い要望が寄せられたのなら検討するべきだと思っています。ただ、現状では「ラスタ」を使ってみた感想などのご意見が多いので、2カ月後か3カ月後に一旦意見をまとめて結論を出したいと考えています。

――「ラスタ」に発言させるなど、より人間味を持たせてみてはどうですか?

杉浦氏 :現在検討しています。ほかにもチュートリアルを強化し、そこに「ラスタ」を登場させることも企画段階に入っています。

――クエスト中は素材の剥ぎ取りを行ないますが、あれにはどういった意味があるのですか?

杉浦氏 :狩りの雰囲気作りですね。ただ、仕様はまだ厳密に確定しているわけではなく、お客様からの要望や意見を聞いて、将来どういう風に反映させていこうかと考えている段階です。著しくバランスを悪くしてしまうようなものでなければ、可能な範囲で取り入れてみたいと思っています。

――今後「ラスタ」が成長するに従って、「ラスタ」はどう変わっていくのですか?

杉浦氏 :今の「ラスタ」では、HR100以降の変種クラスを狩るには戦力不足だと考えているので、まずはHR100以上のお客様にとっても戦力になる存在としてバランス調整が求められていると感じています。ただこれ以上お助け要素を強化するべきなのか、感情移入としての部分を強化していくべきなのかは、お客様の要望を確認しながら反映させていきたいと思います。


追加倉庫は今後もサーバーの安定度を見ながら調整していくそうだ

――次に、倉庫の拡張は検討されていますか?

杉浦氏 :まずは武具屋お手伝いの追加倉庫のアクセス制限を改善したいと考えています。ただ現状では同時接続数が多く、サーバーに負荷がかかるので、慎重になっています。諦めているわけではなく、できる限り追加倉庫を広げていきたいと思っています。まずはサーバーの安定性が第一なので、ある程度安定した段階で回数制限を緩和するお話ができると思っています。

――峡谷のレア素材を入手するのに時間がかかるという意見もありますが、ボーナス的なクエストは検討されていませんか?

杉浦氏 :現状では、ご指摘のようなクエストを配信する状況ではないと思っています。ハードルが高すぎたり、お客様がものすごく重要視しているコンテンツで、多少緩和しなければいけないものに関しては検討を重ねています。剛種クエストの中では剥ぎの奥義を用意していますが、こういったものは乱発するものではないと思っています。

 しかし、お客様が遊べる時間は限られているので、新しいコンテンツのほうがハードルが高かったり、時間がかかるようであれば、過去のコンテンツに関しては、入手難易度を下げる必要があると考えています。その素材を必要としている装備の数が多くなればボーナスクエストも考えますし、モンスターを狩るよりも峡谷で採掘をしている時間のほうが長いというご意見が増えれば、難易度を下げることになります。そこはバランスを取ることが求められると思います。


「シーズン5.5」で新しくなったタイトルロゴ
サービス開始から2年が経った「MHF」だが、次回作はだ考えたこともないという。今後もまだまだ楽しませてくれそうだ

――ちなみに「シーズン5.5」でタイトルロゴが変わりましたが、何か意図はあるのですか?

杉浦氏 :2周年をきっかけにロゴを変えました。前のロゴはデザイナーから、デザイン的に不便だという意見があったので、「フロンティア」という単語を強調したロゴを作りました。

――コンシューマー版の「モンスターハンター」は、新作が出ると1からやり直しになるのがある種よさでもありますが、「MHF」では次回作を作る話はないのですか?

杉浦氏 :スタッフ全員が「MHF」をよりよくしていきたいという一点に向かって進んでいるので、「MHF」の第2弾のようなものは検討していません。お客様からはお金をいただいている以上に、貴重なお時間をいただいているとスタッフには常々言っています。そのお客様の時間をリセットしてしまうことを容認してもらうのは、ものすごく難しい話だと思います。

 それよりも、どうやって来年の「MHF」を盛り上げようかとか、どうすればさらに注目してもらえるのかといった企画が1年以上先まで仕事として予約済みの状態なので、全く考えてもいません。カプコンは自社でオンラインゲームのポータルサイトを持たないので、ゲーム開発に集中できます。心強い仲間である「MHF」のチームは、この2年間「MHF」だけをずっと手がけてきました。何よりも開発と運営チームの仲が非常にいいことが「MHF」の成功の秘訣だと思っています。

――では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

杉浦氏 :2009年は新しいコンテンツを意欲的に投入する年になります。今後は「シーズン5.0」、「シーズン5.5」で導入されたコンテンツをよりいいものにしていくということで、「シーズン6.0」、「シーズン7.0」は確実に手応えのあるものになっているので期待してください。「シーズン6.0」では魅力的なコンテンツを提供できますし、「シーズン7.0」でも「おっ」と思ってもらえそうな新コンテンツを用意しています。

 スタッフも頑張って2カ月や3カ月というスパンでアップデートを繰り返していますので、休止していたお客様も今遊んでみると大きく変わっていると思います。ゲームの中でも、よりわかりやすく新規のお客様に定着していただけるように、チュートリアルを強化していきたいと思っているので、まだ始めていないお客様がいるようであれば、ぜひお声をおかけいただきたいと思います。

 おかげさまでお客様も順調に増えており、感謝しています。オンラインゲームは遊ぶお客様がいればいるほど、出会いや楽しみが増えていくものだと思います。正式サービス以降、お客様が減るゲームが多い中、「MHF」では逆にお客様が増え続けていて、本当にお客様に感謝しております。まだ「MHF」をプレイしたことがない方で、そんな「MHF」に少しでも興味をお持ちになったようでしたら、お試しコースでもあるトライアルコースで構いませんので、ぜひ1度「MHF」を遊んでみていただきたいと思います。

――ありがとうございました。

(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

(2009年 7月 8日)

[Reported by 日高文典]