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★PS2ゲームレビュー★

賞金稼ぎとして自由奔放に生きていくRPG
「メタルサーガ ~砂塵の鎖~」

  • ジャンル:なんでもありありRPG
  • 発売元:株式会社サクセス
  • 価格:7,329円(税込)
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(6月9日)



新たなハンター生活の日々が幕を開ける
 在りし日のデータイースト株式会社が世に送り出した名作RPG「メタルマックス」(※)シリーズ。'91年、ファミリーコンピュータ向けにリリースされた第一作目は「竜退治には、もう飽きた」という刺激的なキャッチフレーズとともに多くのファンを獲得。突然起こった「大破壊」により、地表の大部分が砂漠化した世界で、プレーヤーは前世界の遺産「戦車」を手に入れ、荒野を徘徊するモンスターや賞金首たちを倒して明日の糧を得ていく。当時主流のファンタジーRPGにはない硬派な内容と自由度の高いゲームバランスは、他のRPGでは満足できない“オンリーワン”の楽しさをプレーヤーに与えてくれた。

 “自由度の高さ”は、「メタルマックス」シリーズが今もってなお高く評価されている要因のひとつ。一人旅を目指す孤独な戦士もいれば、レンタルタンクだけでクリアを目指す変わり者まで、そのスタイルはさまざま。そうしたチャレンジを許容してくれる「メタルマックス」シリーズは、当時主流を占めていたコンシューマRPGのなかでも稀有な存在だったといえる。それだけに、発売元であるデータイーストが2003年6月に東京地裁から破産宣告を受けたときは、多くのファンが同社作品群の行く末を心配したものだ。その後、株式会社ナウプロダクションがゲームボーイアドバンスでリメイク作の発売を発表するが、データイーストの破産管財人から管財人解除権の行使を受けたために、2作目「メタルマックスR改」は発売されることなく終焉を迎えた。

 もしや、このまま「メタルマックス」シリーズの新作は永遠に期待できないのか。誰もがあきらめかけていたそのとき、株式会社サクセスが「メタルマックス」シリーズを継承した新作RPG「メタルサーガ ~砂塵の鎖~」を発売することを明らかにした。ことの成り行きなど知るよしもない筆者は「え、なんで?」と、嬉しさよりも先に驚きと不安を覚えてしまった。正直唐突な感が否めなかったのと、GBA「メタルマックス2改」の移植レベルに対するファンのシビアな評価を耳にしていたため「これでダメなら、もはや後が……」などと思ってしまったからだ。

 発売当日。製品版を手にしたときは、最初こそ3Dグラフィックに微妙な違和感を覚えたものだが、ゲームをやり進めていくうちに「あぁ、これは『メタルマックス』シリーズの流れをくんだゲームなんだなぁ」としみじみ感じられるようになり、数時間後にはハンター生活にドップリと腰まで浸かっていた。古参ハンターは発売当日にゲットして隠し要素を含めすでに大半をクリアしているだろうから、まずは「メタルマックス」シリーズを知らない人向けに、ゲーム序盤からの流れを中心に本シリーズの魅力を少しずつご紹介していきたい。


■ “ハンター(賞金稼ぎ)”として生きる ~すべては自分の腕ひとつ~

初手から稼業を継ぐ、幼馴染と結婚という選択肢もあるが即エンディングで終了
 本作の主人公(プレーヤー)は、ハンターになりたいと思っているひとりの少年。ガレージ経営者兼メカニックの母親「ニーナ」、健気に家事を手伝う妹「エミり」と一緒に、ガレージ2Fで暮らす毎日。父親「キョウジ」は高名なハンターだが、今は賞金稼ぎよりも世界を旅する「探索者(エクスプローラー)」に興味が移っているようで、一度旅に出ると滅多に帰ってこない有様。自宅がある街「ジャンクヤード」は辺境の地にあるが、主人公の脳裏にはすでに遠い世界が広がっている。稼業を継いでメカニックになることもできるが(即エンディング)、それでは冒険にならないのでまずは街の右上にある“ジャンク山”を目指すことになる。

 ジャンク山では、ジャンク漁りとモンスターとの戦いが待っている。要領がわからなかったら、酒場にたむろする人たちや、ジャンク山で活動する同業者と会話すべし。特に酒場で得られる情報は、先々の街でも重要になってくるからだ。こうしたアドバイスに耳を傾けつつ散発的に遭遇するモンスターを倒して経験値とお金を獲得していき、クルマ(戦車、AFV、バギーなど乗り物の総称)拾得および賞金首「スカベンジャー」の撃破が当面の目標ということになる。

理解のある家族のもと、主人公はハンターとして第一歩を踏み出す。まずはジャンク山で小手調べ。バギーを拾得すればスカベンジャーなどたいした敵ではない


 ただし、ここで冒頭のポイントとして挙げた“クルマの拾得”や“スカベンジャーの撃破”は、ハンターとして生活していくうえでの“絶対条件ではない”ということに注意して欲しい。根性と気合があれば肉弾戦でスカベンジャーを倒すことも可能だし、それ以前にスカベンジャーをすっとばして他の街を先に目指したっていい。RPGだから、ある程度“流れ”を意識したほうが円滑にゲームが展開していく。だが、そこをプレーヤーの意志であえて曲げていくこともできなくはないのが「メタルサーガ」のいいところ。「メタルサーガ」には「これをやらなきゃダメ」といった要素は極めて少なく、その一方で「これはやれる」といったイベントやネタが各地にたくさん撒き散らされている。それを、どの順番でどんなふうにクリアしていくかは、あくまでもプレーヤーの選択にまかせられているのだ。

街で情報を集めながら少しずつ行動範囲を広げていくのが無難だが、自己責任であちこち見て回るのも構わない。すべてはプレーヤーの選択次第だ


 とはいえ、与えられた自由と自分なりのスタイルを貫くには、それ相応の努力、センス、そして強さが必要とされる。勝算のないまま自分より強い敵に戦闘をふっかけても、それは犬死になるだけ。古参ハンターなら、街を数カ所まわった時点で効率のいいレベルの上げ方がすぐに思いつくはずで、恐らくは気ままなハンター生活も自由自在といったところだろう。特定の防具やアイテムを上手に利用すれば、熾烈な攻撃をアッサリ回避したり強敵を瞬殺できるからだが、さりとてそれを「メタルサーガ」ではじめてシリーズ作品に触れる人にオススメしたいかといったら、筆者的には「それもどうかなぁ」といった感じ。

 トリッキーなプレイは本シリーズにおける醍醐味のひとつではあるが、それがすべてではない。本作のマップは東から西へという大きな流れがあるため、まずは東部エリアの各街とその周辺をジックリ探索するのが、本作を楽しむうえでもっとも無難なスタイルかと思われる。もし行き詰まるところがでてきたら、その時点で気分転換がてらあちこち足を伸ばしてみても、決して遅くはない。街の住人たちとかわされる味わい深いメッセージも、本シリーズにおける魅力のひとつ。まずは焦ることなくジックリとプレイしていただきたい。

街をすっとばしてワンランク上の装備などを調達するのはシリーズの常套手段。今回はそれが容易にできてしまうため、初めてプレイするなら早めに仲間を増やす程度に止めておいたほうがいいかも



■ ハンター家業は日々是戦い ~戦わざるもの食うべからず~

強くなければ生きられない。それがハンター稼業
 本作には、主人公のハンター以外に、クルマの修理を得意とする「メカニック」、白兵戦闘に長けた「ソルジャー」、バイオ兵器兼ペット(?)の「犬」が仲間になる(もちろん、あえて仲間にしなくてもいい)。いずれも特定のイベントを経て仲間になるが、勝手に戦う「犬」以外はすべてプレーヤーが戦闘中に指示を出して行動してもらうことになる。

 戦闘は、人間用の装備、あるいはクルマに搭乗して装備された武器で戦うことになる。人間用装備は、銃や剣などの武器、頭、体、腕、足とそれぞれ部位ごとにわかれた防具、特定のダメージを減らせるプロテクターに大別される。このうち、武器と防具は壊れないが、プロテクターは強烈なダメージを負うと破壊されて「プロテクターくず」になり本来の機能を果たさなくなる。プロテクターくずは、ジャンクヤード入り口ちかくの専門店に売ればポイント数に応じて強力なアイテムと交換してもらえるようになるため、その場で捨てずこまめに交換にいくことをオススメしたい。

 人間用の装備で戦うメリットは、ほとんどコストがかからないこと。プロテクターと「特技」以外で損耗することがないため、基本的には思う存分戦える。「特技」は、ファンタジーRPGでたとえるなら「魔法」みたいなもの。最初から覚えているもの、あるいは「特技仙人」から教えてもらうことで使えるようになるものがあるが、いずれも使うたびにお金を遣ってしまう。モノによっては非常に有効だが、序盤は特に頼ることなくゲームを進められるので、これまた行き詰まったときに思い出して使うといった程度でいいだろう。

戦車にのっていても、シャシーが大破したら人間用の装備で戦わなければならない。いざというときのために装備品は少しでも上等なものを身につけておきたい。プロテクターは破損しやすいので予備も忘れずに 特技は、序盤こそあまり出番がないが中盤からラストにかけて非常に役立つものがある


普通にプレイするならクルマを活用すべし。賞金首を相手にするなら、なおさらだ
 クルマは、人間用の装備では太刀打ちできない強敵とも渡り合えるハンターたちの頼もしい相棒。バギー、一般車両、AFV、戦車と複数のタイプが用意されているが、カスタマイズできるポイントが違うだけで運用方法に違いはない。クルマはシャシー(本体)、主砲、副砲、SE(Special Equipment:特殊武器)、C(Control)ユニット、エンジン、戦車道具の各パーツにわけられており、拾ったり戦車装備屋で購入した部品を好きなように取り付けられる。ただし、搭載したエンジンによりトータルでの積載上限が決まるため、それを超えてしまうと過積載でクルマは動けなくなってしまう。

 クルマには、こうした各パーツのほかに「装甲タイル」と呼ばれる消耗品が存在する。これはクルマの表面に貼り付ける金属板のようなもので、人間や犬の「ヒットポイント(耐久力)」にあたり、敵の攻撃を受けると少しずつ減っていく。装甲タイルがゼロになった状態でクルマが敵の攻撃を受けると、主砲やエンジンなどの各パーツが破損する可能性が生じてくる。基本的にはなるべく多くの装甲タイルを張るのが基本だが、各パーツ同様に装甲タイルにも“重量”があるため、実質的にはエンジンの総積載量から各パーツの重量を差し引いたぶんが装甲タイルにわりあてられる総量ということになる。装甲タイルは多いほど安心だが、ただ枚数だけ多くてもシャシーやCユニットの防御力が低いと損耗ばかり増えてしまう。本作はSP(HP)が低いキャラクタから優先して行動するシステムになっていることからも、目先の枚数より防御力の向上を優先したほうが効率的ということになる。

クルマ、特に強力な戦車は貴重。地面に埋まっているものを探知機でサーチしたり、特定のイベントをこなしたりする必要がある


 主砲、副砲、SEはそれぞれ敵を攻撃するための装備。主砲は攻撃力が高いものの弾数制限があり、その補充にお金が必要となる。副砲は攻撃力の面で主砲やSEに及ばないものの、弾数制限がないため「ある意味これがメインウェポン」といった雰囲気。敵全体をまとめて攻撃できるタイプが多いため、お金に余裕がないときはまず副砲から強化するのがオススメ。SEは、主砲や副砲では届かない位置にいる敵を攻撃したいときに有効な装備。

 賞金首やモンスターには、それぞれ「位置」が設定されている。位置には「通常」、「空中」、「地中」、「水中」、「範囲外」、「高高度」、「ステルス」、「シェルター」があり、それぞれ有効な武器のタイプが存在する。主砲や副砲で対応可能なものもあるが、それ以外の特殊な位置に敵キャラクタがいる場合、攻撃そのものが無効になってしまうので非常に厄介。そんなときに役立つのがSEで、新しい街についたときは一番にチェックしておきたいところ。主砲同様に弾数制限がありコストはかかるが、敵キャラクタを倒して得られるお金を上回るということはまずありえないので、役立つ場面ではガンガン使っていきたい。

空中、地中、水中、範囲外などなど。そのエリアで出現する敵の位置にあわせた武器を常に装備しておきたいところ。賞金首が相手なら後述の改造屋で対応パーツをパワーアップしておくのも有効


新しいパーツを積むときはエンジンの総積載量に注意
 戦車のシャシー、各パーツは、各街のガレージに「改造屋」がいればそこでカスタマイズが可能。武器であれば威力、総弾数、損傷に対する強度アップなどが可能。エンジンは強度と総積載量のアップ、Cユニットは強度アップがそれぞれ可能。能力をアップさせると重量がかさんでしまうが、基本的にはプラス方向で改造しておいたほうが有利な場面が多い。もし総重量の面でヤバイと思ったら、改造屋で元に戻すこともできるから安心。ただし、いずれも最優先事項というわけではないので、お金に余裕があるときに済ませておく程度でいいだろう。

 シャシーに関しては、強度、予備弾の総弾数、穴(主砲、副砲、SE)の変更が可能。強度は防御力に直結するため、なるべく最大レベルまで改造しておきたい。予備弾は、火炎弾などの特殊効果がある砲弾をストックしておける唯一のスペース。穴は、タイプの変更や開閉が可能。穴をふさぐと必要な機構がとっぱらえるぶんシャシーを軽量化できるが、そのぶん火力が落ちるので微妙なところ。このあたりはプレーヤーの嗜好が一番反映しやすいポイントといえる。

 また、ゲームに直接影響は与えないが、ニューフォークにあるガレージではクルマのカラーリングが変更できる。本体はもちろん、砲身など各パーツの細部にいたるまでオリジナルペイントを施すことが可能。ちょっとしたグラフィック編集ツール並の機能を備えているので、人によっては戦闘そっちのけでペインティングにハマってしまう可能性があるほどの充実っぷり。コレ系のエディットが苦手な人でも、デフォルトで用意されているグラフィックパターンを使うだけで雰囲気がガラリと変わる。オリジナルカラーのクルマでプレイすれば、より思い入れをもって「メタルサーガ」がプレイできるというものだ。


■ 性格がマメな人ほどスルメのように楽しめる作品

全体にもう少しボリュームが欲しかった印象
 「メタルサーガ」には、ここ数年のRPGには必ず用意されている“お約束”的な豪華なムービーなどは一切含まれていない。イベントはふんだんに用意されているが、過剰な装飾が施された演出のたぐいはなく、全体に淡々と進んでいくといった雰囲気さえある。語弊を恐れずにいえば“時代に逆行した作り”で作品全体のトーンがまとめられており、この時点でNGを出してしまうユーザーもいるかもしれない。

 だが、本作の魅力はそんなところにはない。用意されたルートを、ただ淡々と進んでいく接待RPGに満足できなくなった人たちが求める要素が「メタルサーガ」にはギッチリ詰め込まれているからだ。漠然とゲームを進めていくだけではなかなか入手できないクルマ(特に戦車)、強力なパーツのたぐいも、金属探知機やこまめな探索を行なうことで少しずつ充実していく。集めたジャンクを「合成屋」に持ち込んで作れるアイテムを模索する楽しさも、またひとしお。ゲームを進めるうえでまったく関係のない「インテリア」を贈るといった小ネタのたぐいも、ちょっとした遊び心を満たしてくれるスパイスのような存在。ミニゲームの内容は、ユーザーによっては安直かつ単調といった印象を覚えるかもしれないが、元々“役に立たないお遊び要素を積極的に楽しむゲーム”という側面もあるので、古参ハンターとしては「そういうものですから」といったところで新規ハンターの方々にご理解いただければ幸いだ。

 全体の作りとしては、古参ハンターには「ダンジョン含め、マップ全域が狭くて浅い」、「レベルアップのシステムが大雑把すぎる」、「萌え要素とか特定のネットコミュニティを意識したような仕様やメッセージを入れることの是非」、「それでも硬派な部分が希薄」、「旧シリーズのような戦闘の緊張感がない」、「今時戦闘中に装備の変更ができないなんて」など多数目に付く点はあるだろうが、新規ハンターがはじめて「メタルマックス」シリーズの世界に飛び込むぶんには、何ら問題ない作りになっているのではないかと思われる。

 古参ハンターの多くはすでに多数の要望をメーカー側に送付しているものと思われるが、願わくばそうした“積年の想い”が無に帰することなく続編という形できちんと昇華されることを期待したい。さまざまなユーザーの祈りが結実して、今こうして新作をプレイできるのは「嬉しい」の一言だが、長年のファンならば「その続きが見たい!」と思って当然。そのためにも、本作がなるべく多くの人の目に触れることを願ってやまない。そして、「メタルマックス」シリーズが、今なおファンに愛されている理由を「メタルサーガ」をプレイすることで断片的にでも感じ取っていただけるならば、いちファンとしてこれ以上嬉しいことはない。

ファンの思い入れが強いシリーズだけに手放しで喜べない人もいるだろうが、筆者的には“復活の号砲”として十分な出来。続編に超期待。もちろん作ってくれますよね!?


(C)2005 SUCCESS/Crea-Tech
※「メタルマックス」1991年、1993年、1995年 データイースト作品・新宿EXP商標

□サクセスのホームページ
http://www.success-corp.co.jp/
□製品情報
http://www.success-corp.co.jp/software/ps2/metalsaga/index2.html

(2005年6月30日)

[Reported by 豊臣和孝]


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