「ベルアイル」はビービー・サーブが1月26日よりクローズドβテストを行なっている国産MMORPGである。制作は「ディプスファンタジア」などを手がけるヘッドロック、企画にはテーブルトークRPGやトレーディングカードゲームを手がけるオーアールジーが参加している。 本作は生産、戦闘、魔法に独自の解釈を加えており、さらに時間の概念を取り入れたユニークな作品になっている。プレーヤーはいたるところでスタッフの強いこだわりを感じることができるだろう。今回のレビューではこの“こだわり”を中心に「ベルアイル」の魅力を語っていきたい。
■キャラクタ作成の特徴と注意点
この時間の概念のため、本作ではスタート時に16~30才までの幅のある年齢のキャラクタを作成させることができる。スタート時に作成できるキャラクタは1サーバーにつき一人。子供を作ると使用できるキャラクタが増えるという。キャラクタにはSTRやWISなど7つの能力値がありスタート時に自由に設定可能だ。 作成時に年齢を上げることで最初の能力値が増える。ユニークなのはキャラクタモデルにちょっと不細工なモデルが用意されており、これを選ぶとボーナスがつく。16才で美形なキャラクタと30才の不細工なキャラクタではスタート時にずいぶんステータスに差がつく。しかし実際のプレイで時間を過ごせば短時間ではるかに強力なキャラクタに育成可能だ。今のところ年齢が上であることのペナルティーはないが、“老い”の概念や年齢による成長率の修正などのアイデアが導入されることも頭に入れておきたい。キャラクタモデルは16~17歳は子供モデルで、18歳以上が大人モデルとなっている。キャラクタの外見でスタート時の年齢を決めるのもアリだろう。 能力値の設定後にはキャラクタのスキル設定だ。本作はスキル制のゲームシステムを採用しており、さまざまな行動をすることでスキルを磨き、能力値を上げることで成長していく。多彩なスキルが用意されているが、ゲームを始めたばかりではどんなスキルが必要になるかわかりにくい。そういう場合は、レンジャーやソルジャーなどあらかじめ用意されているスキルセットを選択するのが良いだろう。プレイし続けることで、「最初からこのスキルがあったらなあ」と思うことがある。最初のキャラクタはゲームになれるつもりで作成するのがいいかもしれない。 つづいてスタート時の国家を決めることとなる。「ベルアイル」にはアリアバート、カルガリオン、ボーダーという3つの国がある。アリアバートは魔法の研究に優れた国、カルガリオンは重装備の騎士達を多く要す国、ボーダーは軽戦士と職人達が集う国である。3つ国はいまのところ行き来はできないようだ。 ここで気をつけなくてはいけないのが、それぞれの国に“所属”するためには能力値が必要となることだ。アリアバードではWISとMINが10、カルガリオンではSTRとCONが15、ボーダーではDEX、AGIが15必要になる。できればキャラクタ作成時にこの条件は満たしておきたい。 国に仕官するメリットは詳しくは後述するが、仕官していなければ銀行を利用するのに料金がかかり、これがべらぼうに高い。できるだけ早めに仕官をするとゲームの展開がかなり楽になるのだ。現在のバランスでは能力値によっては上がりにくいものもあり、コツをつかむのに少し時間がかかる。あらかじめ国の要求する能力値を満たしていれば仕官もスムースになるのである。このポイントはこれから本作を始めようとする人には覚えておいて欲しいところだ。
■細かく設定された「装備」と「行動」で生まれる冒険のリアリティー
戦闘訓練では武器の装備の仕方、接近戦のやり方を学ぶ。画面上部のアイコンをクリックするか敵をダブルクリックすることでキャラクタは武器を抜き戦闘モードになる。この状態で敵に近づくことで戦闘開始だ。戦闘には“オート”と“マニュアル”があり、マニュアルに設定するとタイミングに合わせて連続攻撃を行なったり、溜め攻撃が可能なアクション性を持つものになる。最初は兎相手に武器を振るタイミングを体得を計る。 チュートリアルで与えられる武器は両手剣だが、ナックルや斧、片手槍など武器には様々な物が用意されており、それぞれモーションも凝ったものに仕上がっている。チュートリアルで得たお金でこだわりの武器に切り替え、極めていくのが良いだろう。 戦闘訓練では敵の攻撃の他、倒した敵からさまざまな素材を収集する方法を学ぶことができる。まずハンティングナイフに装備を入れ替え、死体をダブルクリックすることで“解体”が行なわれる。死体が宝箱に変わり、それを開けることでアイテムが手に入る。兎や豚などをナイフで解体するのは理にかなっているが、オークのような獣人型モンスターも“解体”できてしまうのはちょっとユニークだ。この解体作業は、倒した敵からアイテムを取るのに必須となるアクションである。 生産訓練ではツルハシを渡され、鉱石の採取と精製を命じられる。ツルハシを装備することでフィールドに設置されている鉱石を掘ることができ、それを街に持ち帰り、「工房」で精製を行なう。この時は“火かき棒”を装備しなくてはならない。鉱石を精製することでアイアンのインゴットができる。このインゴットはさまざまな鉄製品を作るための素材となる。 魔法訓練ではキャラクタは右手には羽根ペンを、左手には魔法書を装備する。使う魔法を選択するとキー入力画面が出現する。プレーヤーがキーボードで直接呪文を打つことで、魔法が発動する。本作の魔法は頭の上に綺麗な魔法陣が浮かび上がり、非常に派手な演出が楽しめる。魔法には攻撃系、回復系、強化系の3タイプがあり、スキルを上げることでより高度な魔法を使うことができるようになる。 キーボードで直接呪文を撃ち込むという感触は最初期の「ウィザードリー」を彷彿とさせて、筆者のようなオールドゲームファンはニヤリとさせられる。どんな時でも冷静さを失わなず、正確なキータッチを求められるこのシステムはプレーヤーに「魔法使い」としての自覚を生んでくれるだろう。 魔法を使うにはペンと魔法書、インゴット生産にはツルハシと火かき棒、動物の解体にはハンティングナイフなど、本作の装備品は非常に細かく、数多い。特に生産はこの傾向が顕著で、木を切るためには斧が、農作物収穫には収穫バサミが、解体した兎の肉を焼くにはフライパンが必要となる。この詳細に設定されたアイテムとルールが冒険者の生活に独特のリアリティーを与えてくれる。さまざまな生産物にあわせて道具を集め、技能を高めていく。ちょっと複雑なこのシステムが、職人へのこだわりを強めてくれる。 何を作ればいいのか、どんなアイテムが役に立つのかは、初心者はちょっと手間取ってしまうところだ。その点は、銀行前で露店を出している人達が良い手本になってくれる。売れるアイテムとは、冒険に必要なアイテムは何か? そこから考えてキャラクタを育成するという方法もある。 キャラクタは技能を上げることでそれに関連したステータスが上昇、より強力なキャラクタに成長していく。しかし、魔法を使うだけ、特定の武器を振るだけでは偏ったステータスしか成長しない。戦闘だけを繰り返してもステータスに偏りが生じてしまうバランスになっている。そこで有効なのが生産作業だ。伐採作業をすればSTRが、植物採取をすればMEMが成長する。特定のステータスアップのために生産作業は非常に有効だ。多彩なプレイを行なうことでキャラクタに幅ができ、より「冒険者としての生活」を楽しむことができるだろう。
■生き抜く事への楽しさを教えてくれるゲームバランス
お金がなくなってしまったのだ。本作はアイテムに耐久度があり、武器やツルハシなどは極めてもろい。これに気がつかず、調子に乗ってチュートリアルで得た金を鎧につぎ込んでしまった。兎や豚を倒してスキルを磨いていたのだが、まさかこんなに早く武器が壊れるとは知らなかった。武器がなければ一番弱い兎も倒せない。戦闘でお金を稼ぐことができなくなってしまったのである。 それならば生産だと、最後の希望を託して銀行に預けてあったツルハシを手に取ったがこれもうまくいかなかった。あっさりとツルハシも壊れてしまったのである。ツルハシをつぶして重量制限ギリギリで持って帰った鉱石はほんのちょっとのお金にしかならなかった。これでは次のツルハシも買えない。ゲームを始めたばかり、借金を頼める人もいない。ほんとうに途方に暮れてしまった瞬間だった。 もうこうなったら素手で兎を倒しどうにか利益を出すしかないと、半ば自棄になって再び狩り場に行った筆者の前にごろりと転がっている“肉”が。よく見るとフィールドには木や鉱石などがぽろぽろ落ちている。本作の重量制限はかなり厳しく、ちょっとでも所持重量がオーバーすれば一歩も歩く事ができない。そのため、フィールドに余計な物を捨てるプレーヤーも多いのだ。筆者は藁にもすがる思いで、それらを集めまくった。 しかし、そのアイテムを売ってもわずかな稼ぎにしかならない、いったい何度繰り返せば……。そこでまた思いついたことがあった。「ひょっとして店によって買い取り価格が違うのでは?」。予想は的中した。木材は素材屋、魔法の触媒は魔法屋、肉は食材屋、それぞれの店で売るとそこそこの値段で買い取ってくれるのだ。無頓着に店を選ぶと必要とされる素材以外はすべて1ゴールドで取り引きされてしまう。ちょっと売る店を選ぶだけで、あっという間に予備の武器が買えるだけのお金を得ることができた。考えてみれば納得できるシステムである。 筆者がこの経験で覚えた教訓は2つ。「武器や装備品は壊れやすいので常に予備を心がける」「アイテムを売る場所はちゃんと考えなければならない」ということだ。この二つの鉄則を体得したことで、本作の楽しさ、快適さが何倍にも跳ね上がった。“生きていける自信”をゲームで体験できたのは、なかなか貴重な体験だった。 「食料」も本作では大きなウエイトを占めるファクターだ。キャラクタには“空腹度”というパラメーターがあり、これを常に上げておかなければ最大HPなどの各パラメーターががくんと減ってしまう。キャラクタの能力を充分に発揮するには常に多めの食料を持ち、かなりの頻度で食べなくてはならない。序盤の豚や兎を倒している時ならば問題はないが、オークと戦えるころになると、武器をすり減らしてまで食料を自分で補給するメリットが薄くなる。プレーヤーが売っている安い食料を買ってしまった方が早い。お金をうまく稼げるようになれば、冒険はさまざまな点で楽になるのである。 他に、お金を得る方法としては戦闘やプレーヤー間の取り引きの他、「ミッション」がある。街の斡旋所には住人達からさまざまな依頼が寄せられている。これらをこなすことでお金を得ることができる。依頼内容は街の中を歩くだけですむもの、初歩的な冒険ですむもの、そこそこの強さが必要な物など実にさまざま。街にはふたつの斡旋所があり、それぞれミッションの内容が違う場合があるということも覚えておきたい。 パーティープレイにも少し触れておきたい。本作でもパーティーは冒険を楽にしてくれる大事なシステムだ。仲間と共に戦う心強さはMMORPGならではの興奮を体験できるし、冒険中に得たアイテムは共有空間に置かれるなど工夫のあるシステムも導入されている。 ただし、本作では駆け出し冒険者がパーティーさえ組めば強い敵を倒せるというバランスにはなってない。格上のモンスターにはとにかく攻撃が当たらない。本作は敵の強さに関しては特に厳密なバランス設定がしてあるようで、適正レベルでなくてはかなわないのである。パーティーを組むことのメリットはソロプレイで倒せる敵をはるかに速いペースで倒すことができるという点にあるようだ。 現在は街の周辺で狩りをしてキャラクタを鍛えているというプレーヤーが多い。街のある地域から一つ離れたところには強力なモンスターがひしめいていて、やがて来る冒険者を待ち受けている。どんなモンスターや、どんなダンジョンがあるのか? 強力なモンスター群を蹴散らし、他の国にまで行くことができるのか? まだこの「ベルアイル」の世界は始動したばかり。今後の変化が楽しみである。
■広がっていく世界、今後の実装が楽しみな「輪廻・遺伝システム」
国に仕官することでさまざまな恩恵を得ることができる。銀行の利用料はなくなり、街での買い物は税金分割引される。さらに一年ごとに国王から給料を渡されるようになる。国に所属する恩恵は大きい。だからこそ、本作において初期ステータスと国選びはきちんと考えておきたいポイントなのである。国民になれば国王のまわりの大臣に彼らの指定する献上品を収めることで街の発展に貢献することもできる。現在では、学校のシステムや病院、占い師など街では現在まだ未実装の部分が多い。他の国家がどのような関係を持ってくるのかも興味のあるところだ。 プレーヤーの間で大きな期待を寄せられているのが「輪廻・遺伝システム」だろう。公式ページの説明では18歳以上の男女のプレーヤーキャラクタが結婚することで子供を作ることができるシステムとなっている。子供は親の遺伝子を受け継ぎ、さらに子供の時の育成によってさまざまな特性をもたせることができる。子供は新しいプレーヤーキャラクタとなる。「より強いプレーヤーキャラクタを生み出すためのシステム」といえるだろう。 「ウルティマオンライン」や「ラグナロクオンライン」に見られた、ロールプレイとしての結婚よりも、かなり実利的な面が大きいようだ。時の流れの中、現在使っているキャラクタはやがて老い、冒険ができなくなる。多くのプレーヤーが子孫を作るためパートナーを捜し始めるだろう。男女のプレーヤーが結婚して子供が産まれるならば、子供の親権はどうなるのか? 男女それぞれに新しいプレーヤーキャラクタが与えられるのか? 現在では疑問も数多い。今後の詳細情報の開示が待たれる。 個人的には時の流れがNPCにも影響するのかにも期待したい。彼らも成長し世代が変わっていくとすれば、世界の厚みはより増していくだろう。世界がどんどん変化していく中、一人のキャラクタの人生だけでなく、一族を、そして国そのものを見守ってきたプレーヤーがどんな感慨を抱くか、今までにない感触を持った作品になるのではないだろうか? 現在はまだ魔法使いのMP消費が激しすぎてパーティーの足を引っ張りかねない問題や、早すぎる空腹度のスピードなど、バランスの面でも「これから」を感じさせる作品である。βテストの間に、本作がどんなバランスを持つゲームになるのか、「時」の存在が、キャラクターのみならず、プレーヤー達にどんな影響をもたらすか、興味がそそられる部分は多い。今後の展開に期待したい。
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□ビー・ビー・サーブのホームページ
(2005年2月8日)
[Reported by 勝田哲也]
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