去る12月9日に、FF XI拡張データディスク第2弾「プロマシアの呪縛」の発売後3度目となる、大型アップデートが実施された。アップデートの概要については本誌でも既に紹介しているが、それらの中のひとつだけ、記事中ではほとんど触れられなかった要素があった。それが、食事システムの大規模な変更である。 実は今回の食事システム変更は、単純にヴァナ・ディールにおけるライフスタイルが変わるだけの代物ではない。調理合成を活性化させ、一部の高級アイテムに対する代替品としての要素をもたらし、更にゲームシステム側からプレーヤー側へ大量に流出中のギルを抑制する効果まであるのだ。今回は食事システムの改革によって、ヴァナ・ディールにどのような変化がもたらされたのかに迫っていこう。 |
■ あらゆる冒険者にとって必須の食事システムが大きく変化
食事効果は永続的ではないものの、一目でわかるほどの効果がある。値段もそれほど高くないため、冒険用として広く普及しているのだ |
調理は合成の中では特に人気が高い。それらの中でもジュース類はスタックできないため、後衛ジョブのキャラクタは現地で合成できると助かるだろう |
そしてこれらの調理品は、冒険者自身が「調理」によって生み出すことができる。食材も合わせると調理品は数百点以上にも及び、いかにも現実世界にありそうなレシピも多いため、合成の中ではライトユーザーにとって敷居が低い。しかも調理品はすべて消耗品となっているため、他合成に比べると常に安定した需要が存在するのも大きな特徴である。これらの点を総合的に見ると、調理はもっとも人気の高い合成ジャンルといえよう。
このように冒険と合成の両面で大きなウェイトを占める食事システムだが、先日の12月9日付アップデートにおいて突如として異変が走った。能力値の上昇や効果時間を始めとする、大半の食事効果が根本から見直されたのだ。元々食事というものは実際に食べてみないと効果が判らず、しかも数値といった直接目に見える形で反映されないものも多い。
そうしたことから現在FF XIのプレーヤー達は、ちょっとした混乱状態にある。例えばアタッカージョブでプレイする読者の中には、これまで通り「ミスラ風山の幸串焼」を食べ続けてよいのだろうか? と不安に感じている人も多いだろう。
そこで本稿では、食事システムが具体的にどのように変わり、そして各冒険者は今後どの点に注目して食料品を選べばよいのか? という点に迫っていこう。
■ 食事時のブースト効果に上限が設けられ、状況に応じた選択が必要に
さて、本題の12月9日のアップデートにおける食事システムの変更だが、これを簡潔に説明するのがなかなか難しい。というのも過半数の調理品において、ステータスの上昇値や効果時間、他にも合成時の作成数やスタック数等といった項目が個別に変わっているのだ。本連載では各調理品の詳細データはあまり意識せずに、プレーヤーが選ぶ際の指針となる情報をいくつか紹介しよう。
まず食事を行なった際の効果については、調理品のジャンルによって11種類に改めて大別された。実際の冒険時には、パーティ編成等の環境に応じて、必要とするブースト効果が変わることも多い。食事効果の分類が明確になったことで、状況に応じた食事を選びやすくなっているのだ。これが食事システムにおける総ての基本となるため、FF XI公式サイトのバージョンアップ情報を元に、一通りおさらいしておこう。
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A:100×1.2=120
B:300×1.2=360、しかしブースト上限があるため実際には「350」
そして同系統の調理品でも、「ブースト率は高いが上限が低い」や、または「ブースト率は低いが上限が高い」といった特色があることに注目してほしい。その点を踏まえた上で、次に「攻撃力+40%・ブースト上限30」の食事を行なった場合を考えてみよう。
A:100×1.4=140、しかしブースト上限があるため実際には「130」
B:300×1.4=420、しかしブースト上限があるため実際には「330」
画面上が初級者、下が上級者と想定しよう。食事によって攻撃力がどのように変化するのかに注目してほしい |
「54÷41=1.3」及び「280÷264=1.06」のため、ブースト率は30%。そして下のキャラクタは+16で制限されていることがわかる。つまり、この場合上級者はブースト率を生かし切れていない |
公式発表によるとブースト上限の概念は、攻撃力以外の各能力にも導入されているとのこと。しかもブーストの上限値は、アイテム説明欄には記載されない隠しステータスとなっている。そのため食事効果の詳細データを得るには、複数のキャラクタで検証を行なわねばならない。総ての食料品において綿密な検証を行なおうと思ったら、途方もない時間が必要となるのは想像に難くないだろう。
では、読者が実際に冒険する際、どのようにして食料品を選べばよいのだろうか? 基本的には、元々の能力値が低いキャラクタは、「ブースト率が高い(その代わりブースト上限は低い)」調理品を選ぶとよい。そしてキャラクタが成長するにつれて、「ブースト上限が高い(その代わりブースト率は低い)」調理品へ次第にシフトするのがおすすめである。
しかし、ブースト率や上限の基準がわからなければ、この判断も行なえないだろう。そのような場合は、合成コスト、つまり流通コストを基準に選んでいけばおおむね間違いない。また、レベル上げパーティーに入った際は、情報交換をするのも一興だろう。調理スキルを専攻する人であれば、合成時の難易度を照らし合わせるのも効果的である。
肉料理を例に挙げると、「野兎のグリル」と「ダルメルステーキ」を見比べれば、普通に考えて後者の方がなんとなく高級に思えるだろう。この推測は正解で、前者は初級者、後者は中級者に適している。この方法で大まかに絞り込んだ後、残った候補を実際に味見してみるのが現実的な方法といえるだろう。
山串の価格は2倍に アタッカー御用達の「ミスラ風山の幸串焼」は、合成時の本数が従来の約半分になってしまった。多くの調理品において、何らかの仕様変更が行なわれている |
食事効果を消すNPC 前回のVU時に、下層ジュノにこのようなクエスト用NPCが追加されている。食事効果の検証時に役立つだろう |
■ 装備品の選択基準すら変えてしまう「寿司料理」に注目!
競売で確認すると、寿司の種類が意外と数多いことに驚く。ただし肝心の命中率は数値として表示されないため、それぞれの違いはわかりにくい |
寿司を作るには指定生産品クエストの「活魚合成」と、タブナジア特産品の「ねりわさび」が必要となるため、値段が少々高めになっている |
どうやら寿司の命中率アップ効果は、遠隔攻撃に対しても有効なようだ。総てのアタッカージョブにとって歓迎されるだろう |
寿司料理に向いているのは近接/遠隔系のアタッカー系全般で、暗黒騎士や竜騎士といった両手武器を用いるジョブにとっては、特に歓迎されるだろう。また、寿司料理を食べることで命中率に余裕ができ、装備品の選択肢に幅を持たせられるようになった点も見逃せない。これまで命中率アップの装備品は、総じて相場価格が高騰していたので非常に助かるはずだ。例えば、現在のゲームバランスで「アーチャーリング(命中+2等の効果)」を50万ギルで購入するのなら、そのお金で寿司料理を食べ続ける方が遙かに効果的である。
ただし、寿司料理の入手は困難で、調理時には「指定生産品クエスト」を3万ポイント使って得られる「活魚合成(だいじなもの属性)」が必要となる。また一部の食材は、モンスターから直接得られないため、自ずと販売数も限られるだろう。具体的には筆者がプレイするサーバーでは平均単価が2,000ギル前後と、常時食べ続けるには懐が厳しい値段設定である。しかし、武器の空振りに頭を悩ましているプレーヤーは、騙されたと思って是非とも一度試してもらいたい。
同様に高額装備品の代替という面においては、「キノコ料理」の敵対心マイナス効果は、後衛ジョブにとって要注目である。例えば黒魔道師のマジックバーストや、白魔道師の高位回復魔法で、敵のターゲットが意図せずに切り替わることは多い。パーティー編成やキャンプポイントなどを踏まえ、そのような事態が予測できる際に食べるとよいだろう。
キノコ料理はINTやMPが増えないため、一見する限りでは黒魔道師のキャラクタにとって微妙に思うかもしれない。また、敵対心マイナスの効果はその性質上検証作業が難しく、公式発表でもない限りは当分の間正確なデータは判明しないだろう。よってキノコ料理は、一般プレーヤー層へはなかなか行き渡らないと思われる。だが、例えばパーティー中に敵対心をコントロールできるジョブが居なくて、ナイトや忍者がターゲット保持に苦労しそうな場合等、状況に応じて食べ分けてみてはどうだろうか。
後衛用をもう一種類紹介すると、「スナック類」の効果はユニークである。「せんべい・クッキー」といった軽食類が当てはまり、効果時間が3分と短い代わりに99個単位でスタックできるのだ。具体的な用途法としては、HPやMPが無くなったらポリポリと食べてヒーリングを行ない、食事効果が切れる頃には完全回復といったイメージである。スナック類は他の食事効果とは効果が重ならないものの、従来のジュース系のようにピンポイントで活用するのがよいだろう。
■ 新規に調理合成を始める人にとってはチャンス
今回の食事システム変更については、大半のユーザーが、既存の方法論が適用できなくなったことで、ややこしくなったと感じていることだろう。しかし冷静に観察すれば、これが様々な面において実によく錬り込まれたシステムであることを理解できるはずだ。何よりも、「とりあえず山串を食えば良いだろう」といった安直さが消え、状況に応じて選ぶのがゲームとして純粋に面白いのである。
しかも、これを合成の観点から見た場合、有効な調理品が多様化することによって、売れ筋が広がっている事も見逃してはならない。つまり特定の調理品に需要が集中しないため、極度の値下げ競争が回避され、ひいては調理スキルを上げやすくなっているのだ。さらに調理スキルの上級者にとっては、指定生産品クエストを用いたご褒美までもが設けられている。これらを含めて現在の調理環境を総合的に見ると、他の合成専攻者が羨むような絶妙なバランスといってよい。
現在はまだ新システムの導入直後にあるため、食事効果の詳細は明らかになっておらず、プレーヤー達は少々戸惑っている。とはいえ、例えば同じ肉料理でも明確なランクは存在し、きっと数カ月も経てば能力値に応じたジャンル別の定番調理品も割り出されてしまうのだろう。だが、それぞれの冒険者が思い思いの調理品を、自分の舌で確かめながら選んでいる今の状況の方が、個人的には気に入っている。
FF XIは、取得経験値を明確に数値化することによって「時給」という概念を産み、皆が自然とそれを意識してしまい、効率的なプレイがいつの間にか求められるようになってしまった。そしてこの効率的なプレイというのは、食事や装備品といった多くの面においてプレーヤーを束縛している。もちろん効率を求めるのもゲームとして十分に面白く、また冒険者が最低限知っておくべき知識もある。
だが、自分以外のプレーヤーにまで、必要以上の効率主義を押しつけるのは行き過ぎていないだろうか。そもそも、数百回の検証データを採らねばわからないような違いなど、誤差といっても差し支えはない。そんな事より大切なものは、きっと他にあるはずだ。
少なくとも今回の食事システム変更に関しては、本稿で説明した11種類の基本種別とブースト上限の仕組みさえ知っておけば、あとはゲーム内で実際に食べて確認する位が個人的にはおすすめである。現在の食事システムの完成度が極めて高いからこそ、自分自身で試行錯誤する楽しみを満喫して欲しいと強く思う。そして、新たに調理合成を始めようという人にとっては、またとないチャンスの到来だ。
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(2004年12月22日)
[Reported by 川崎政一郎]
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