★ PCゲームレビュー★

RTSでありながらユニット単体の操作も充実
新世代のミリタリーリアルタイムストラテジー

ソルジャーズ 日本語版

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 発売元:Mystix Studios
  • 価格:9,240円
  • プラットフォーム:Windows 2000/XP
  • 発売日:発売中


 史実を題材とするミリタリー系のリアルタイムストラテジー (RTS) は、奇想天外なアイデアをゲームシステムに取り込むことに消極的な傾向にある。現在流行のヒーローシステムのような人間離れした活躍は、現実の世界ではありえないからである。しかし、今回紹介する「ソルジャーズ 日本語版」は現実世界と矛盾せず、しかも既存のヒーローシステムとは別のアプローチで、英雄的なプレイを可能にした。革新的な本作の登場によって、今後のミリタリー系RTSのありかたは大きく変わることだろう。


■ 既存のミリタリー系RTSにはない様々な新システムに注目

 今回紹介する「ソルジャーズ 日本語版」は、Codemastersが開発したリアルタイムストラテジーだ。プレーヤーは第二次世界大戦のヨーロッパ戦線に登場したユニットを操り、様々なミッションを経て自軍を勝利へと導くのが主な目的である。

 近年はひとえにRTSといってもゲームシステムがかなり細分化されているが、本作はどちらかというと、少数精鋭のユニットで大規模な敵軍を打ち破る所に重点が置かれている。地形をうまく利用し、敵から兵器を強奪といったように能力をフルに駆使すれば、たった1人の力でもクリアできるステージが多いのである。本作のサブタイトルが“Heroes of World War II”と名付けられている事からもわかるように、戦場におけるヒロイック的な活躍を存分に味わえるのだ。

 よって戦場を大局的に見据えることよりも、個々のユニットのミクロ的な操作が大切である。同じミリタリー系のRTSタイトルを例に出すと、「Sudden Strike」や「Close Combat」ではなく、「Commandos」に近いタイプだといえるだろう。

 しかも本作は「Commandos」タイプのRTSでありながら、単体ユニットの操作により専念するために斬新なシステム「ダイレクト・コントロールモード」を搭載している。この新システムによって、ゲーム性を損なうことなくユニットの緻密な操作が可能となり、面白さが格段にアップしているのだ。この新システムについては、後ほどじっくりと説明していこう。ちなみに誤解のないように補足すると、本作は複数のユニットを操る、いわゆる一般的なRTSスタイルも十分に攻略が可能で、この点でも「Commandos」シリーズとは大きく異なる。

 ゲーム内容はどちらかというとシングルプレイを強く意識してデザインされているようだ。シングル用のキャンペーンにおいてプレーヤーが操作できる国は、アメリカ・英国・ロシア・ドイツの4カ国。それぞれの国毎にシナリオはわかれており、これらを合わせると21本。さらにボーナスマップ5つを含めた、全26シナリオが用意されている。ただし、同じシナリオでも何通りの攻略法が存在するため、実際に感じるボリュームはそれよりも遙かに大きいだろう。

見た目は一般的なRTSタイトルと大差ないが、本作ならではの魅力がぎっしりと詰め込まれている フル3Dグラフィックスを採用しているため必要マシンスペックは少々高い。それだけに迫力十分だ ミッションの内容は多岐に渡る。写真は制限時間内に灯台を破壊するといった内容



■ 総てのオブジェクトが3Dで描画され、建造物や地形までもが破壊可能

一見するとただの瓦礫でも、歩兵にとっては身を隠す絶好の場所である。マップを回転させ、敵が潜んでいるかどうかくまなく確認しよう
建築物の残骸等を含む総てのオブジェクトが、単なる背景ではなく確かなものとして存在している
戦車のキャタピラが崩れ落ちているのがわかるだろうか? このダメージは画面左下に表示され、再起動には修理が必要となる
 昨今におけるRTSタイトルは、ほぼ総てが3Dのグラフィックエンジンを搭載している。とはいってもこれらの大半は、だた単にユニットや背景を3Dで描画しているだけに過ぎない。つまりゲームシステムの観点から見て3Dでなければならないという必然性は薄く、仮にこれが2Dエンジンでも十分に表現可能な場合が多かった。

 だが本作は、ゲームに登場する全オブジェクトが3Dで、これらを「立体的に」破壊できる。例えば戦車が砲撃を行なうと、地面にしっかりと穴が開く。そして穴の上を戦車が通過すると、でこぼこの段差によって車体の挙動が変わり、しかも砲身の照準までもが一時的にぶれる。そういった面では本作は真の意味で3Dグラフィックスならではの要素であり、2Dのエンジンでは実現不可能な領域といえよう。

 総ての建造物が、オブジェクトとしてマップ上に存在するのは実にリアルだ。例えば敵車両を町中の路地で破壊すると、その残骸が邪魔になって、自分までもが通れなくなってしまう。とはいっても道がなければ自分で造ればいいだけの話で、戦車なら脇道の樹木や電柱をめきめきと踏み倒していけばよい。それが無理ならば、家屋を木っ端微塵に吹き飛ばせばいい。この無意味な破壊行為が意外と楽しく、本作をプレイした人の多くがはまってしまうだろう。これも優れた3Dエンジンの為せる技である。

 最近のタイトルを挙げると、「Desert Rats」がユニットと建造物をフル3Dで描画しているが、本作に初めて触れたときの衝撃はさらに上を行く。プレーヤーの操作ひとつひとつに対して、画面内のオブジェクトが物理法則に沿って反映されるのは、ある意味感動的ですらある。筆者などはまるでミニチュアの戦場が、画面内に実在するかのような錯覚を覚えてしまった。

 ユニットの挙動ひとつを取っても、3Dであることを反映してとても緻密だ。例えば戦車や歩兵の照準をマウスカーソルで動かしても、実際には向きを変えるために相応の時間が必要となる。「鋼鉄の咆哮」シリーズのように360度へ瞬時に主砲を発射、ということは本作ではありえないのだ。勿論、ユニットとマウスカーソルの間に遮蔽物があれば着弾位置は変化し、これは常にリアルタイムで表示される。よく見ると弾薬のリロード時は、マウスカーソルとは関係なく着弾位置が一瞬思いきり手元に引き寄せられたりと、実に芸が細かい。

 また、たとえ同じユニットでも、姿勢よって命中率が変わるのも理にかなっている。例えば歩兵がライフルで25メートル先の標的を狙う際、直立姿勢では全然当たらないだろう。しかし土嚢等を利用したり、地面に伏せてから撃つことで、命中率は飛躍的に高まるのだ。マウスカーソルで狙った場所へ100%確実に着弾するのではなく、FPSタイトルのような微妙なぶれが生じ、しかもこれがもどかしいとプレーヤーに感じさせないのである。逆に、実際の戦場ならば当然そうだろうな、と納得してしまうのだ。

森林を燃やすと中に潜んでいる敵歩兵をいぶり出すことができる。歩兵は多彩なアクションが可能だ 歩兵が隠れながら、時折身を乗り出し迎撃する。ユニットの挙動ひとつひとつが実に芸が細かい 照準までの距離が数字で表示されているのに注目。直立状態の射撃では、これくらいの距離が限界だ



■ ユニット単体の緻密な操作を可能にする「ダイレクト・コントロールモード」

ダイレクトモードで着弾位置を調整すると、同じ戦車でも装甲の薄い後部を狙い撃ちできる
戦車用の弾には榴弾と徹甲弾の2種類がある。標的の堅さに応じてダイレクトモードで切り替えよう
まるでRPGのようにユニット毎にインベントリーが設定されている。敵の死体から装備を奪うのは基本テクニックだ
 本作のもうひとつの大きな売りは、「ダイレクト・コントロールモード」という操作スタイルである。これはユニット単体の操作に専念するためのゲームモードで、キーボードのEndキーを押すことで任意に切り替えることが可能だ。

 ダイレクト・コントロールモードの状態では、プレーヤーがユニット単体の操作に専念するため、より詳細な動作が可能になる。戦車ユニットを例に挙げると、通常モードではマウスでクリックした場所に対し、移動と砲撃の2動作が一緒に割り振られている。これがダイレクト・コントロールモード時では、マウスは砲撃の照準指定のみ、そしてカーソルキーで移動といったように操作が分担される。

 これによって、例えば退却しながら後方に弾幕を張るといった、複雑な操作が可能になる。他にも、戦車の装甲は前面部分が頑丈に作られているため、常に前面を敵に向けつつ、全方位へ砲撃を行なうといったことも可能になる。

 一方、歩兵がダイレクト・コントロールモードに切り替えると、自わから照準までの距離(メートル)が画面に常に表示されるようになる。当然ながら銃器の命中率は距離に反比例し、このランクが色で段階的に示されるため視覚的にわかりやすいのだ。例えば、建物の2階に潜んでいる敵兵をスナイプしようとする状況を思い浮かべてほしい。この際にダイレクト・コントロールモードで距離を測り、あまりに離れているようであれば、もっと近くてスナイプに適した場所を探す、といったことが可能だ。

 また、通常モードでは敵が射程範囲内に入ると自動的に攻撃を行なうが、例えば隠密行動を要するミッションではそのようなアバウトな挙動では到底クリア不可能である。物陰の間を縫うように移動し、銃器の使用回数を必要最低限に抑えなければならないだろう。このような場合もダイレクト・コントロールモードであれば、より細かい操作が行なえるのだ。まるで、「Commandos」シリーズの醍醐味を丸ごと取り込んでしまったような印象である。

 しかし本作が「Commandos」シリーズと決定的に異なるのは、ダイレクト・コントールモードを用いずに、複数のユニット操るスタイルでも存分にプレイできる点である。よってミッションを遂行するにあたり、この2種類のモードのどちらを選ぼうかと悩むのがとても面白い。

 もちろん、2種類のモードを併用するのも可能だ。例えば、敵の一個小隊が進軍してくる状況を想定しよう。まず、進軍時に通過するであろう路地に、ダイレクト・コントロールモードで地雷を設置する。その後、敵の先頭車両が地雷を踏んで爆発すると、敵の小隊は一時的に混乱状態となる。その混乱に乗じて、あらかじめ待機させた複数の対戦車ユニットを操作し、一網打尽というわけだ。一般的なRTSタイトルのような集団戦も、ユニット単体でのプレイスタイルも、プレーヤーの趣向に応じて選べるという点が実に素晴らしい。

丘の上に登って遠くから衛兵をスナイプする。ダイレクトモードならではの芸当だ 戦車の後部に4名の兵士が座っている。彼等は戦闘時には散会し、ダイレクトモードでそれぞれ細かい作業を割り振られる 複数ユニットを同時にダイレクトモードで操作するのは難しい。2つのモードの切り替えが大きなポイント



■ ミリタリーファンだけにプレイさせておくには勿体ないタイトル

 近年のRTSタイトルは、「Warcraft3」に代表されるようなヒーローユニットが大きなトレンドとなっている。ヒーローユニットは、通常のユニットとは比べ者にならない能力を持っているため、劣勢から大逆転といったプレイも可能だ。しかし、史実を題材としたミリタリーやヒストリカル系のRTSにおいて、このトレンドを安易に受け入れるわけにはいかない。

 なぜならば、このような人間離れした活躍は現実社会と矛盾しているからである。ヒストリカルRTSの代表作である「Age of Empire」シリーズですら、そのままではヒーローユニットを登場させられないため、苦肉の策として、外伝「Age of Mythology」においてこれに近いアプローチを行なったのは、読者の記憶にも新しいだろう。そういった意味では、上記ジャンルのゲームシステムは、この数年間完全に煮詰まっていたといえる。

 だがしかし、本作は現実世界と矛盾させずに、新しいシステムで英雄的なプレイスタイルを実現した。複数のユニットを操るRTSであるにも関わらず、ダイレクト・コントロールモードを駆使して、まるで戦争映画のヒーローのような活躍も選択できるのである。近年のミリタリーRTSタイトルを見続け、これらの厳しい制約を知っている人であれば、よくぞここまでの革新的なスタイルを実現した! という気持ちになるはずだ。

 しかも、通常モードとダイレクト・コントロールモードの切り替えにストレスを感じさせず、ゲームシステムとしてとして完全に消化しきっている点も素晴らしい。一言でいうとプレイアビリティの幅がとてつもなく広く、同じマップでも新鮮さを失うことなく繰り返し遊べるのだ。複数ユニットを操るRTSで、単体の操作にここまで拘ったタイトルはかつて無かった。この斬新なプレイスタイルは本作ならではの醍醐味である。

 ゲーム中の全オブジェクトが3Dという点については、現時点では最先端であり、本来ならばこれだけでも十分にRTSタイトルとして訴求力がある。だが仮に本作でなくても、恐らく1年後位には他のRTSタイトルが実現していただろう。しかし、ダイレクト・コントロールモードばかりは別次元の話である。このシステムは今後のRTSタイトルがこぞって模擬することはまず間違いない。本作の登場によって、既存のミリタリーRTSタイトルは完全に過去の遺物となってしまった。

 総合評価としては、「Commandos」シリーズのような、ユニットが幅広く活躍できるゲームシステムが好きな人であれば、迷わず買いである。そして、「Sudden Strike」のような正統派ミリタリーRTSのファンも、本作の優れた3Dグラフィックエンジンには多いに満足するはずだ。また、ミリタリーに関心がなくとも、例えば箱庭系のような緻密な動きを好む人にも、是非ともプレイしてもらいたいタイトルである。

実際に繰り広げられた激戦地の再現性は重視していない。これらの地図はあくまでイメージ的なものだ 戦車同士の戦いは大迫力。このような多対多の戦闘時は、ダイレクトモードから通常モードへ切り替えるのがポイント 戦車が木っ端微塵に吹き飛んだ瞬間。スローモーションにすると、本作の3Dエンジンがいかに優れているかを実感できる


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【ソルジャーズ 日本語版】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上 (Pentium 4 2GMHz以上推奨)
  • メインメモリ:256MB以上(512MB以上推奨)
  • HDD:2GB以上
  • ビデオメモリ:32MB以上(64MB以上推奨)


(2004年12月8日)

[Reported by 川崎政一郎]


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