「プロマシアの呪縛」が発売されてから2カ月あまりが経過したが、冒険者たちは、思いの外、CoPを強く意識せず、レベル上げをはじめとした既存のコンテンツを楽しむ人達が多いようだ。筆者は他人のプレイスタイルに口出しするつもりは全くないが、ひとつのMMORPGタイトルを長く楽しむための最大の秘訣は、他人に極端に振り回されることなく、自分が純粋にやりたいと感じたことをマイペースで楽しむことだと思っている。という点では、ヴァナ・ディールにも精神的に熟達した冒険者が増えてきたことを強く実感させられる。 そこで今回はCoPの発売と同時期に行なわれたバージョンアップで追加された「エンチャント/ストックアイテム」に注目したい。「エンチャント/ストックアイテム」は、新戦術の模索と合成活性化の2つの要素に結びつく、意外と重要な新コンテンツだ。 |
■ 回数制限付きで魔法効果を得られる装備品が新たに導入
今回紹介する「エンチャントアイテム」及び「ストックアイテム」は、9月14日のバージョンアップにおいて導入された新たな武具である。CoPの発売と同時期に導入されたため、それほど注目されないうちに現在に至ってしまっているが、今回は基礎的な部分から紹介していこう。
エンチャントアイテムとは、使用することで魔法やアビリティといった特殊効果を得られる武具である。エンチャント効果の一例を挙げると、「デジョン」、「インビジ」、「回避率アップ」、「とんずら」など様々。本来は特定のジョブ固有のアビリティであったこれらの効果を、誰もが使用できるようになるのだ。ちなみに入手方法は、基本的に合成品が大半で、一部はノートリアスモンスターからのドロップ品となっている。
エンチャント効果の使用回数には限りがあり、使った分の再補充は不可能。また、装備してから使えるようになるまでに数十秒を要するといった、独自の制約もある。さらにエンチャント効果を一度でも使ってしまうと、競売に出品もできない。エンチャントアイテムの合成には、錬金術を初めとする高いスキルを必要とし、また現在はシステムの導入後間もないため、まだまだ贅沢品としての印象が強いだろう。
それと、エンチャントアイテムに似たものとして、「ストックアイテム」と呼ばれる装備品も同時に導入されている。こちらは使用すると、「蒸留水」や「ポーション」といった消耗品を取り出せるのだ。現在導入されているストックアイテムは、総てが腰に装備するタイプのもので、ぎっしりと梱包した消耗品を腰に巻き付けるといったイメージに近い。 ストックアイテムの仕組みは、エンチャントアイテムと同等のため、本稿ではまとめて紹介する。
エンチャントアイテムは、武具の装備条件を満たすだけで、これらの様々な恩恵を受けられる。そのため特に、魔法やアビリティといった特殊能力を本来使うことのできないジョブにとって重宝するのだ。これらを活用することで、ジョブの性能に縛られない、より幅広い活動が可能となる。既に競売には多数のエンチャントアイテムが出品されているので、自分のジョブ性能と照らし合わせながら見ると面白いだろう。
エンチャントアイテムをどうやって合成するかについては、それなりに複雑な手順を踏む必要がある。簡単に説明すると下図のような流れとなっているので、参考にして頂きたい。ちなみに「記憶の残滓」とは、CoP用ミッションで訪れる各プロミヴォンエリアで、大量に入手できるアイテムだ。ここで注意すべきは特殊合成(※1)で、実際には指定品納入クエストで、4万ポイントを注ぎ込んで得られる「だいじなもの」が必要となる。ちなみに指定品納入クエストの概要については、本連載の第2回を参照してほしい。
4万ものポイントを貯めるにはかなりの労力を必要とするため、現在エンチャントアイテム合成は上級者専用となっている。その結果合成未経験者にとっては、中間素材品にまつわる処理がブラックボックスになっている印象が強い。なかなか原価を想像しにくいこともあり、エンチャントアイテムの相場はサーバーによって大きく異なっているのだ。これがある程度落ち着いて一般プレーヤー層へと完全に浸透するには、もう少し時間が必要となるだろう。
●エンチャントアイテム合成の仕組み
・記憶の残滓各種
↓ ……錬金術の特殊合成(※1)
・各種アニマ
↓ ……各分野の特殊合成(※1)
・エンチャント素材
↓ ……通常の合成
・エンチャントアイテム完成
■ エンチャントアイテムを選ぶときのポイント
エンチャントアイテムはリキャストタイム等の独特な仕組みがあるため、最初は使い方がよく判らない人もいることだろう。そのような不慣れな人も含めて、とりあえず万人にお勧めできるのが「デジョンカジェル」(Lv36用の片手棍)である。再使用間隔が24時間と長いものの、30回使える「呪札デジョン」と考えれば実に割安だ。これは、黒魔道士を除く全冒険者が最低1本購入して損はない。
それ以外のエンチャントアイテムは、購入コストの兼ね合いもあるため、気軽に使うのは躊躇してしまうかもしれない。どちらかというと普段の経験値稼ぎよりは、イベント戦においてピンポイントで活用するのがよいだろう。具体的には、「ブリンクバンド」(Lv36・頭)や「ストンスキントルク」(Lv58・首)は、前衛ジョブがバーニングサークル戦へ挑む際に役立つはずだ。
ここで注意してほしいのが、エンチャントアイテムは使用時に数秒の硬直時間があり、これはステータス欄に表示されていない点である。硬直時間は意外と長いため、戦闘開始の直前に使うことを前提とするのがポイント。たとえば、ストンスキンやブリンクといった補助魔法系であれば、非戦闘時に硬直時間を気にせず使える。その反面「ケアルガピアス」(Lv42・耳)の場合、戦闘中に敵対心を蓄積させる用途での使用は、実際には難しいのだ。
他には戦闘不能時からの復活に要するタイムロスを、1秒でも縮めたいときに「リレイズゴルゲット」(Lv56・首)は役立つだろう。これは「リレイズ2」相当の効果があり、装備条件のレベルが56である点を踏まえるとかなり優秀である。特にBF戦やHNM戦、そしてデュナミスといった、絶対に負けるわけにはいかない戦闘時に重宝するはずだ。また、「アットワ地溝」のような強力な毒攻撃を受けるエリアを、少人数で探索するような際は、「ポイゾナリング」(Lv14・指)が意外と役立つかもしれない。
一方のストックアイテムでは、遠隔武器の「石つぶて」をダース単位で得られる「ペレットベルト」(Lv1・腰)に要注目。ご存じのように石つぶては、竜騎士やモンクにとっては数少ない遠隔攻撃の手段である。しかし12個と少ない単位でしかスタックできないため、鞄が溢れ帰ってしまうのが問題点であった。そのような時に、ペレットベルトが多いに役立つだろう。敵をおびき寄せる役割を、これまでよりも積極的に行なえるようになるはずだ。
ただし、エンチャント/ストックアイテムには再使用間隔が設定されており、連続して使うことができない。たとえばペレットベルトの再使用間隔は1時間のため、石つぶて1個あたりを5分未満のペースで消費すると、再使用を待たずに石つぶてのストックが底をついてしまう計算になる。仮に敵をおびき寄せる役割を担当した場合、これだけでは実質的に石つぶての供給ペースは間に合わないことになる。
エンチャントアイテムの場合は、使用時の効果が大きいため、メインジョブ保護およびゲームバランス維持の目的で、使用間隔に制限を設けるのはよくわかるのだが、ストックアイテムに制限を設定する意図がよくわからない。状況的には、自分の腰に巻き付けたベルト内の石つぶてを取り出すのに制限が掛けられているわけで、せいぜい結び目を解く程度の待ち時間でいいように思う。これについては今後の状況を見守りたいところだ。
というわけで現状では、この問題を解消するために、少々抜け道的な方法だが、同じペレットベルトを複数持ち歩くことが主流になっている。再使用時間はアイテム毎に個別に設定されており、複数を交互に使うことである程度緩和できるのだ。これはエンチャント/ストックアイテム総てに言えることだが、中でもデジョンカジェルの再使用間隔は24時間とかなり長い。金銭と鞄に余裕のある人は、一度検討する価値があるだろう。
■ 消耗品の要素により合成が活性化される効果にも期待
残滓の用途を把握していない人は結構多い。そのため全体的に相場は低めとなっているが、これは合成上級者にとっては宝の山に見えるのだ |
エンチャント合成が活性化されれば、プロミヴォンへ通う人はもっともっと増えそうだ |
エンチャントアイテムと併用した戦術を模索するのが面白い。FF XIの局地戦の楽しみは、まだまだ大きくなる可能性がある |
少々ややこしいので具体例で説明しよう。CoPの発売と同時に、「シアー装備」や「ガリシュ装備」に代表される、レベル30弱のキャラクタ用の装備品が数多く導入されたのは読者の記憶に新しいだろう。これらの需要は最近では落ち着いているが、高性能でしかも外見がユニークなため、導入直後は爆発的ともいえる盛り上がりぶりを見せた。合成スキルの先行者だけでは供給量が全く足りず、その結果、普段は合成を行なわないようなプレーヤーでも大いに関心を持てたのだ。
当たり前の市場原理だが、需要さえあれば供給、すなわち合成はより活性化されるのだ。そして、消耗する要素を含むエンチャントアイテムは、定期的な需要を発生させ、ゆくゆくは合成の活性化にも結びつく可能性を秘めている点に注目してほしい。ここがエンチャントアイテムの導入における最大のキモである。
これは特に鍛冶や革細工といった、通常の消耗品を合成できないジャンルを専攻したプレーヤーにとって朗報である。エンチャント合成のレシピ次第になるが、もしかすると「ミスラ風山の串焼き」や「プリズムパウダー」、「紙兵」等に続く、冒険時の定番アイテムとして知れ渡るかもしれないのだ。仮にそうなれば、合成の新規参入者も増え、もっと盛り上がることだろう。
先述したように、エンチャントアイテム用の中間素材品を合成するには、指定品納入クエストを経て4万ものポイントを集めねばならない。この部分の敷居が高いため、中間素材品の合成は、スキル上級者だけの特権のような位置付けにある。合成の初~中級者がエンチャントアイテムを作ろう思った場合、必然的に競売から中間素材品を購入するしかないのだ。もっと率直に言うと、中間素材品の合成によって生じる利益は、上級者達が独り占めしている、ということである。
繰り返すが、エンチャントアイテムは、キャラクタの性能を底上げしてくれるという点で、あらゆる冒険者層が利用する可能性がある。だが一方で、それを生み出すエンチャント合成は、ごく一部の人にしか行なえない。個人的に、このバランスが非常に勿体ないと感じてしまった。たとえば「ポイゾナリング」のような低レベル用のエンチャントアイテムは、もちろん中間素材品も含め、合成スキルの初級者が作れても構わないのではないだろうか? エンチャント合成のハードルの高さについては是非とも今後緩和を期待したいところだ。
とは言うものの、主に金策を目的とした素材供給者と、日夜ノートリアスモンスターなどを狙う冒険者、つまり消費者からの視点で見れば、エンチャントアイテムの実装は、各々の可能性を底上げしてくれる歓迎すべきシステムといえる。素材供給者からすればもっと使用素材の選択肢が増えてほしいところだし、冒険者からすればより強力なエンチャントアイテムがモンスターから直に入手できることを望むだろう。さまざまな点で今後の仕様拡充が楽しみなシステムである。
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(2004年11月11日)
[Reported by 川崎政一郎]
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