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悲しきクローン人間「47」の暗殺者人生を描く スニークアクションの傑作シリーズ最新作 ヒットマン:コントラクト |
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スキンヘッドがトレードマークの暗殺者「47」。彼の背負った宿命はあまりにも暗く、悲しい |
パリでの任務に失敗した「47」は腹部に銃弾を受け、重傷を負いながらもようやく滞在するホテルにたどり着く。そこで組織の医師による治療を受け一命を取り留める「47」だったが、朦朧とする意識の中、自らの過去がフラッシュバックしていく……。
という設定の中、本作でプレイすることになるミッション内容は「HITMAN: Codename 47」のリメイクステージも多く含まれることになった。リメイクといってもグラフィックが格段に進化しているのはもちろん、ステージ内の構成にはかなりの変化がみられ、一作目をプレイしたことがある筆者にも新鮮な感触があった。
本作「ヒットマン:コントラクト」のパッケージには前作「ヒットマン:サイレントアサシン」が同梱されているので、これから「HITMAN」シリーズをプレイするのであれば内容・ボリューム共に最適な選択になるだろう。ちなみに、「ヒットマン:コントラクト」→「ヒットマン:サイレントアサシン」の順番にプレイすれば、ストーリーの時系列的には正しい順番になる。
■ 最高の暗殺者から最低の大量虐殺者まで、プレイスタイルはいろいろ
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今回は一作目のラストから始まる。そして語られる後日談 |
「ヒットマン」という表題の通り、各ステージで実行するミッションの目的の大部分は速やかな暗殺の実行となる。ターゲットの息の根を止める手段は状況によって様々で、射殺、絞殺、毒殺といった具合になんでもアリだ。それと同時にほとんどのステージで対象の殺害以外の目的(囚われた人物を助け出すなど)も与えられるが、敵の目を盗んで目標を達成するという基本においてはおおむね同じだ。
各ステージはそれぞれのテーマに沿って生活感たっぷりに作りこまれている。例えばパーティ会場の屋敷では護衛が巡回し、バーテンやコックが料理を運んだりといった各キャラクタの役割が機能している。そんな中で重要なテクニックとなるのが「変装」だ。「47」の平服は黒い背広にバーコード入りのハゲ頭という個性的ないでたちなわけだが、通常、こんな怪しい格好のまま標的のアジトに入っていこうものなら即座に射殺されてしまう。そこで、標的のボディガードや専属コックを背後から襲って眠らせ、服を奪って変装。何食わぬ顔で敵地深くに進入していくわけだ。
そんなわけで主人公「47」は変装の天才といっていいほど巧みに現地に溶け込むことができるわけだが、さすがに特徴的なハゲ頭を間近で観察されると正体がバレてしまう。また、そのステージ中で最も周りの人相を知っているキャラクタ(執事など)に鉢合わせしようものなら、即座に銃撃されてしまう。特に潜入する場所が異国の地なら、なおさら慎重な行動が要求される。したがって、ハデな騒ぎを起こさずにミッション目的を達成するためには緻密な計画が必要になるだろう。
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変装したものの、突入してきたSWAT隊にいきなり正体がバレる「47」。行動は慎重に | 気を取り直して、SWAT隊員のふりをしつつそそくさと表に出る「47」。うまくいきそうだ | 車を奪い、ものすごい勢いで脱出する「47」。ホっとする瞬間である |
スマートな暗殺者になるための基本となるのは、ステージ中の各キャラクタの動きを細かく観察することだ。特に殺害対象のターゲット自身や特別な役割を持つキャラクタについて、時間の経過とともに何が起こるかを把握することがスマートな攻略への第一歩となる。同時にミッション内容の詳細に目を通したり、会話可能なキャラクタが教えてくれる情報を理解することも重要だ。
この点、完全日本語版となったことでミッション内容が正確に把握しやすくなったことはうれしいポイントだ。何回かの失敗を繰り返しつつ、ステージの構造や重要キャラクタの動き・習性を一通り把握したなら、最適な攻略方法が見えてくるはず。刻一刻と変わる状況を的確に判断しながら、スリリングな潜入ミッションを堪能しよう。
ゲーム全体を通して共通しているのは、各ステージの攻略法が無数に存在すること。変装するにしてもボディガードに成りすますのとコックに成りすますのとではその後の展開はまったく違ったアプローチになるし、ターゲットを殺害する方法も銃殺や毒殺、はたまた絞め殺しても良いし、その仕込み方も千差万別。慎重に慎重を重ねて緻密な計画を立てるも良し、それも面倒ならかたっぱしから射殺するも良し(ただし、相当キツい)。どのようなプレイスタイルでも「これが正解」という攻略法はなく、プレーヤーの考え次第でどのような展開にもなるのが本作の醍醐味といえるだろう。
本作では前作同様、ステージクリア後にミッション遂行の内容が評価される。正体を見破られた回数、敵に接触した回数、敵を殺害した数、一般市民を殺害した数などが統計され、その内容をもとにランク付けがされるという寸法だ。最高の評価「サイレントアサシン=静かなる暗殺者」を得るには誰にも気づかれずターゲットだけを殺傷し、すみやかにミッション目的を達成して脱出しなければならない。逆に、出会う人間を片っ端から殺戮しまくって強引にクリアすることも可能で、「大量虐殺者」の烙印を押されてしまうがこれもまた楽しいプレイスタイルのひとつだ。
ちなみに各ステージを「サイレントアサシン」の評価でクリアすると新しいボーナス武器をもらうことができる。それに加えてステージ中で拾った武器はトレーニングステージで利用可能になるほか、一度全てのステージを完了した後のステージ単体の再プレイで使えるようになる。ただ、本作では連続してミッションをプレイする場合、初期状態で手にする武器はあらかじめ決まった組み合わせのみとなっており、1作目や2作目にあった連続的な武器の持ち越しシステムがなくなっているのは残念だ。この点、前作の経験者にとっては少々物足らなさを感じるところかもしれない。
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冒頭、重傷をうけて倒れる「47」。薄れ行く意識に蘇る記憶 | 変装し、ロシア軍の基地を行く「47」。フードを被ればスキンヘッドも気にならない | 調理中の食べ物をみつけたらものすごい勢いで毒を投入するのが「47」の習性 |
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下痢をもよおしてトイレに駆け込んできたVIPを即座に殴り倒す | そして剥く。世界中のコスチュームは俺のもの | VIPに成りすまして案内をうける「47」と、中身が入れ替わっていることに気づかない兵士 |
■ ウォークスルーで理解する「ヒットマン:コントラクト」
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肉屋を締め上げる「47」。今回のミッションはこいつに成りすますところからスタートする |
このステージは序盤ということもあって、難易度はさほど高くないが「ヒットマン」らしい複数の解法を試すことができる。射撃の腕に覚えがあれば、出会う敵を全て皆殺しにしてもOKだ。けれどそれでは暗殺者ではなく単なる戦争屋になってしまうので、ここでは「サイレントアサシン」の称号を得るべく、誰にも気づかれないまま終わってみれば標的だけが死んでいる、というもっとも難易度の高い潜入プレイをやってみよう。
このステージの目的はルーマニアの肉屋キャンベル・スタロック通称”ミートキング”と、その弁護士アンドレイ・プスクスを殺害し、誘拐された依頼人の娘の生死を確認することだ。ミートキングはこの日パーティを開催しており、これが潜入する絶好の機会となっている。
スタート地点はミートキングのアジト近くに停車した食肉輸送用トラックの荷台。「47」が肉屋の従業員をしめ上げて娘の居場所を聞き出したところからミッションがスタートする。
まずは足元に倒れている肉屋の服を奪い、肉屋に変装してパーティ会場の中を目指そう。トラックを離れるときに外から荷台を閉じておくことを忘れずに。これをしておかないと、気絶した肉屋が目を覚ましたときに半狂乱で走り回り、パーティ会場に駆け込んで騒ぎを起こしてしまう。
最初の関門はアジトの入り口だ。肉屋もここで身体検査を受けるルールになっている。あらかじめ手持ちのピストルを路上に捨てておけばここは簡単にパスできる。本物の肉屋を締め上げたときに使った肉フックは懐にしまったままでOKだ。そしてパーティ会場の奥へ。
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今回のミッション目標。2人の殺害と、1名の存在確認が必要だ | 武器を捨てて、トラックの荷台を閉じておく。これで準備完了 | 入り口の警備は厳重で、ここで身体検査をうける。銃を所持していたらアウトだ |
1.バーテン 怪しげなパイプを客のところに配達して回っている。コックの話によればこのパイプを吸うと即座に深い眠りにつくとのことだ。
2.コック 肉屋の兼任らしいが、定期的に二階のミートキングのところへチキン料理を運んでいる。ミートキングの傍への通行を許されている唯一の一般人らしい。
今回の「サイレントアサシン」クリアではこの2つのキャラクタの役割を利用する。まずは弁護士のアンドレイを片付けることにしよう。こいつは定期的にダンスホールとベッドルームを往復し、たまにトイレも巡回している。移動中は常に専属のボディガードをつれているので、バレずに殺すためにはベッドルームで1人になる瞬間を狙う。弁護士の居るベッドルームに立ち入りを許されている一般人はバーテンだけのようだ。
というわけで早速更衣室でバーテンに成りすます。会場内にバーテンは1人だけなので、本物のバーテンと鉢合わせしないように気をつけよう。本物には注射をして眠ってもらっておいてもいい。しばらくすると弁護士がパイプを頼んでいるとの情報が入る。カウンターでパイプをもらい、ベッドルームに入ると弁護士は一人で横たわっている。ここでいきなり殴り殺すと声を上げて護衛が反応してしまうので、パイプを吸わせて昏倒するのを待とう。弁護士が眠りについたらおもむろに肉フックを取り出し、さらに深い眠りへご招待。
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バーテンにうろつかれると面倒なので、後ろから注射して眠っていただくことにする | バーテン47。標的の弁護士のところへパイプをお届けする | ヤバい煙を吸って弁護士は深い眠りへ。そこに肉フックを一撃、永遠の眠りへ |
厨房に入ると「料理をミートキングのところへ運んでくれ」と料理長に命令される。しめしめというわけで、この手頃な大きさの料理皿に肉フックを隠してデリバリーを開始。ダンスフロアを抜けて二階に上がるとボディガードに呼び止められて本日2回目の身体検査。ここで肉フックを懐にしまっていると射殺されるので注意されたし。きちんと料理皿にしこんでおこう。
料理を運ぶ忠実なしもべになりすましつつ、ミートキングのもとへ。チキンを渡す前に部屋のカーテンを下ろし、これから始まる行為を外から目撃されないようにしよう。両脇に侍る女性は、ミートキングが食事をする間は外に出払うので安心だ。ミートキングがうまそうにしてチキンにむさぼりつくその隙に、肉フックを取り出して脳天に一撃。贅の限りをつくした肉屋の首領もあっけなく一巻の終わりというわけだ。あとは武器を懐に仕舞い、何食わぬ顔で室外に出れば第2の目標も完璧に完了。
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肉屋47。二階に上がるときの身体検査もOKだ。武器の肉フックはチキンの中に | チキンの丸焼きを受け取るミートキング。ものすごい勢いでガッつくぞ | おもむろに肉フックを取り出し、脳天に一撃。最後の晩餐は美味かったかい |
依頼人の娘が既に殺害されていることを確認し、その証拠として体の一部(腕)を拾い上げれば最後のミッションも完了。あとはそそくさと現場を立ち去り、脱出ポイントに到達すればステージクリアとなる。ここまでの行程がうまく実行できていれば、最高の評価である「サイレントアサシン」が得られる。誰も気づかない間にターゲットだけが死んでいる、なんと美しい暗殺者か!
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ミートキング弟の部屋は、凄惨なカルト部屋だった。吊るされているのは…… | 依頼人の娘は既に死亡していた。証拠品として体の一部を持ち帰ることを連絡する「47」 | あとは脱出してミッション完了。評価は隠密度最高の「サイレントアサシン」だ |
■ リプレイ性の高い内容は高評価。2作同梱で初プレイにはボリューム満点
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トレーニングミッションにある武器庫。本番ステージでゲットした武器が並ぶ |
しかしながら、1作目のリメイクステージが半分以上を占める本作では、1作目をプレイして一通りの攻略法を知っている人にとって手ごたえが不足してしまうところは避けられない部分だろう。各ステージともに細部にいたるつくりこみは見事というほかがない完成度なだけに、既存プレーヤーに対するボリューム不足は多少ながらも残念なところだ。
しかし本作のパッケージには前作「ヒットマン:サイレントアサシン」の日本語版が完全な形で同梱されており、初めて「ヒットマン」シリーズをプレイする人にとっては1本で2度おいしいタイトルということになる。1作目のステージと2作目、そして3作目のオリジナルステージと、シリーズ全体を1本のパッケージで楽しめることになるわけで、かなりハードにプレイしても、これ1本で数カ月は余裕で遊べるボリューム。非常にお得である。
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夜、熟睡するターゲット。これから起こる惨劇も知らずにのんきなものだ | その場にあったクッションで窒息させる「47」。ヒットマンは道具を選ばない | 厩舎の水源にものすごい勢いで毒を投入する「47」。毒殺は得意中の得意だ |
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道行く人を見つけては、背後から注射するヒットマン | 服を奪い、何事もなかったかのように歩く | 頭隠してバーコード隠さず。しかし相手は気づかない |
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[Reported by KAF@ukeru.jp]
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