【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

Cyberathlete Professional Leagueレポート その2
日本代表として世界にその名を記憶させた4DN

7月27日~8月1日開催(現地時間)

会場:GAYLORD TEXAN RESORT & CONVENTION CENTER

 CPLも2日目に入り、各ゲームのトーナメントも強豪同士がぶつかり合う段階へと入ってきた。特に、日本から代表として現地に乗り込んだFour Dimension(4DN)が参加するCounter-Strikeのトーナメントは、各国で開かれる予選を経ずに参加する一般参加チームをふるい落とすシングルイルミネーショントーナメント(1回負けたら終わりのトーナメント)が1日目に開催され、頂点を決めるにふさわしい実力を持った64チームが2日目からダブルイルミネーショントーナメント(2回負けたら終わりのトーナメント)を舞台に激戦を繰り広げられることになる。


■ BYOCエリアで繰り広げられた世界各地のプレーヤーとの交流戦

会場に着いたら早速PCをレンタルして、練習ができるようにマシンのセットアップを開始する。ちなみにPCとモニターのセットを会期中(4日間)借りて300ドル。結構高い
 CPL初日はシングルイルミネーショントーナメントが行なわれた。ここで戦うチームの多くは直接会場に来てCPLへ参加するチーム達だ。そのため、各国の予選や過去の大会で実績を残したチームは1日目は試合がない。こうしたことから代表チームは、BYOCエリアに集まって思い思いのメニューで練習を行なった。

 これは前稿で書いたブートキャンプに近い理由で、LANという実際の試合に近い環境でCPLに集まってくる強豪チーム達と練習試合ができるためだ。4DNのメンバーもこの例に漏れず1日目からBYOCエリアの一角に陣取り、CPL出入りのPCレンタル業者から練習用のPCとモニターを調達して練習を行なうことになった。

 さて、実際に練習を始めてみると、ブートキャンプを通じてメキメキと実力をつけてCPLで上位に入るチームと互角の戦いを演じた事に加え、CPLの前夜祭的な大会である「Pre-CPL LAN Tournament」で4位と実績を残したこともあって、4DNには練習試合の申し込みが続けざまに飛び込んできた。もちろん、4DN側からも世界最強クランと謳われるスウェーデンの「SK」に練習試合を申し込むなどして、自分たちが出場する翌日からのダブルイルミネーショントーナメントに照準を合わせて調整を始めた。

練習試合ということで、チームメイトの動きを確認したりして最終調整を行なう。しかし、強い相手が来ると雰囲気は一変して試合並みの緊張感がその場に張り詰める

 実際のところ、後ろからそういった海外の強豪達との練習をみていると、4DNのAim力(狙いをつける能力のこと。Counter-Strikeの場合、リコイルで暴れる照準を押さえる側面もある)は、決して海外に劣るものではないことを確認することができた。遠距離での撃ち合いや、突然遭遇した際のとっさの射撃、壁や箱といった遮蔽物に隠れた敵を確実に見つけて打ち倒す姿は、練習試合をした強豪達と比べても遜色のないものだったと筆者は感じた。

 しかし、Counter-StrikeというゲームはAim力がすべてに優先される技術ではない。「当たり所が悪ければ一発で死ぬ」というリアル系FPSであるが故に、Aim力以上に「相手の動きを読み、裏をかいて不意をつくか」という戦術面での要素が重要なのだ。練習試合では、4チームと5試合の練習試合を行なったわけだが、4DNが日ごろ得意としているマップでの試合では実力を十二分に発揮して勝利することが多かった。一方で、練習不足や苦手なマップ、または海外では研究され尽くしているマップでの対戦は、Aim力が拮抗しているにもかかわらず一方的にやられてしまうことが多かった。

 こういった1日目の練習試合を通じて筆者が感じた、4DNの課題は「戦術面での掘り下げ」であった。大会前のブートキャンプを通じ、海外の強豪たちと一緒に練習をすることによって「日本にいたころに比べると格段に戦術面での上達を見た(XrayN選手談)」わけだが、こういった戦術的な話は知識だけで何とかなる問題ではない。練習を重ね知識を使える知恵へと昇華させなければ実際に試合で使えたものではないわけだ。そういう意味では不安点は若干なりとももったまま、CPL本線へと突入したと言ってもいいだろう。

一緒にブートキャンプを行なったチームのメンバーたちと会場で再びめぐり合って、互いの調子を聞きあう。さすがにこの時期になると手の内にかんする質問や話は出てこない

こちらは4DNと一緒にブートキャンプを行なったチーム「TEC」の練習風景。おそろいの帽子をかぶって気分を盛り上げている。やはり、こちらの練習風景も真剣そのものといった印象を受ける


■ トーナメントの常とはいえ、強豪と続けて当たることになった組み合わせの不運

試合前には約30分間の準備時間が与えられる。この間にマウスとキーボードをPCに接続し、セットアップを行い、マシンの調子をチェックする。写真は、設定上のトラブルをスタッフに報告して直してもらっている場面
さすがにBYOC会場での練習時間と違い、トーナメントエリアに入ってから4DNの表情は真剣そのもの。素のメンバーたちの顔を見ることができる
 2日目は本戦に勝ち進んだ64チームで、ダブルイルミネーショントーナメントが行なわれた。組み合わせはくじ引きではなく、過去の実績などから決定されたシード順位がオフィシャルから発表され、これに従いシード1位とシード64位、シード2位と63位という具合に対戦順位が決まる。

 これはいくらダブルイルミネーショントーナメントと言っても、初日から強豪同士の潰しあいが発生しては面白くないという面での意味が大きい。そして、注目のシード順位が発表された。4DNの順位は#43位。この順位は事前に発表されていたe-Sports専門メディアなどの下馬評だった30位前後からするとかなり低い。そのため、4DNはCPLのランキング上位層と1回戦目から当たることになってしまった。

 対戦相手である#22位にランクされたのは「Gamers.nu」。Gamers.nuはCPLチャンピオンであるSKをはじめとして、世界の強豪を輩出しているスウェーデン出身のチーム。スウェーデンの「Counter-Strike」ランキングでは6位にランクされ、ヘッドフォンメーカーであるゼンハイザーがスポンサーにつくような強豪クランだ。倒せば一気に世界ランクの仲間入りという、4DNにとっては実力を試すのにうってつけの相手だ。

 4DNのテロリスト側スタートで始まった1st Half、試合は取ったり取られたりという展開で6-6の同点で折り返すこととなった。上でも書いたようにこの2日目のダブルイルミネーショントーナメントは、1回戦目はある程度実力差を持つように試合が組まれるため実力が拮抗した試合は少ないのだが、この4DN対Gamers.nu戦は違った。「日本から来たチームがGamers.nuと互角の戦いをしている」、この事実は海外のe-Sports専門メディアがこの試合を1回戦の注目試合として後に語るほどのインパクトを持っていたわけだ。

 そして、この緊張感を持っての2nd Half、今度はカウンターテロリストでスタートした4DNは、第1ラウンドのピストル戦を制する。「Counter-Strike」はラウンドを勝利したり敵を倒すことによって武器を買うためのお金が支給されるため、第1ラウンドを取ると相手チームに装備面での差をつけることができる。逆に第1ラウンドを負けたチームは装備を整えるために第3ラウンドまで「エコ」と呼ばれる「負けを覚悟でお金を貯める」戦術をとるが一般的だ。そのため、互角の1st Halfを踏まえた2nd Halfでの第1ラウンド勝利は、4DNを一気に勢いづけるはずだった。

 しかし、2nd Halfの第2ラウンド目、通常ならば装備の差というアドバンテージをもって有利だったにもかかわらず、4DNはこのラウンドを落としてしまった。これにはいくつか理由がある。勝利した2nd Halfの1ラウンド目、4DN側も4人倒されており、ぎりぎりの勝利だったのだ。

 そのため、Gamers.nu側としてはこのままエコ戦略をとって3ラウンドを取らせてしまうと、4DNを完全に勢いづかせてしまうことになる。そのため、4DNを4人倒した事によって得た賞金を使って2ラウンド目に掟破りの武器購入をし、勝負を掛けてきたのだ。結局これが試合の流れを決めるターニングポイントだった。傾き掛けた流れを掟破りの買い物という賭けによって取り返され、試合の流れは一気にGamers.nu側に傾いた。

 4DNも負けじと流れを取り返そうとするものの、緊張の糸が切れたためかなかなか思うようにラウンドを取ることができない。結局試合はそのままずるずると負け、8-13で終わった。初めてのCPL、そしていきなりの強豪との試合、互角の1st Half折り返しなどで限界まで張りつめた緊張は2nd Half2ラウンド目の負けによってプツンと音を立てて途切れたわけだ。これにより4DNはLower Backetと呼ばれる敗者側トーナメントに移動する。ダブルイルミネーションの場合、一度負けてもLower Backetを勝ち抜けばまだ優勝の可能性がある。

試合が始まると「敵がどちらから来た」とか「残りが何人」、「敵の装備は!?」といったゲーム進行にかかわる怒鳴り声だけが響きあう。マスコミと選手以外進入禁止のトーナメントエリアの中、ゲームだけが粛々と進行していく 1回戦目の対戦相手Gamers.nu、こちらもゲーム中はかなり静かだが、逆転や奇跡的な射撃を見せたりすると、立ち上がって大きな声をあげる。声をだして気分を盛り上げることで、自分に暗示をかけているという一面もあるのだろう


 Lower Backetに移っての第1試合は「Assassins Unleashed(aU)」との対戦。CPLの下位リーグであるCyberathlete Amature Leagueの中でも中堅クラスのチームで、予選シードの順位も#54位と4DNよりも格下に位置づけられるチームだ。当然試合の方も4DNがCTでスタートした1st Halfは9-3と圧倒的な実力差で勝ち、筆者も「これは危なげなくみていられるな」と思っていた。

 しかし、2nd Halfで異変が起こった。この試合で使われたマップはde_aztecといい、全体的に開けたマップ構成になっているためにAWPを使うスナイパーが有利なマップだ。そのため、敵に実力のあるAWP使いが攻めてくるのを待つ側であるCT側にいる場合は、狙われそうな場所を避けたりスモークグレネードを炊いて視界をふさいだりという対応が必要になってくる。

 2nd Half、始まってみると1st Halfで9-3と大勝できたせいか、4DNの動きが全体的にいい加減になっている印象を筆者は受けていた。そこに、aUの強力なスナイパーが襲いかかった。次々と開けた場所でAWPの犠牲になっていく4DNのメンバー達。あれよあれよという間にラウンドは取られ続け、楽勝ムードだった雰囲気はいつの間にか追われる焦りへと変わっていった。

 結局、そこから4DNは踏ん張りを見せたものの勝敗は2nd Halfの最終12ラウンドまでもつれ込み、最終スコアは13-11ということでかろうじて勝った。1st Halfでの大勝によって気が抜けてしまったのと、de_AztecというAWP絶対有利なマップでの試合でAWP巧者のいるチームに当たってしまったことがここまで試合を引き延ばした結果だろう。シード下位のチームではあってもこれである。そういった意味ではCPLの懐の深さを感じさせる試合だったといえるだろう。

 そして、Lower Backetに移っての第2試合、相手はシードランキング#21位の「Gatekeepers」が相手。CPLチャンピオンのSKなどが活躍するヨーロッパの「Counter-Strike」ランキングで9位にランクされるチームだ。マップはde_Nukeでスタート。不利と言われるCT側で4DNはスタートしたわけだが、1st Halfの4DNはある意味神がかった射撃を見せ、9-3とこれまた大勝してしまった。

 選手達からは「この弾の当たり方、信じられない!」という声も挙がるほどで、妙な雰囲気がその場を支配していた。しかし、先ほどの試合のこともあったため、決して油断してという訳ではないようだった。むしろ逆に慎重になりすぎていたと言ってもいいだろう。そんな状態で突入した2nd Half、4DNは、少しでも資金が不十分だと思われる場合、即座にエコ戦術をとって相手に勝ちを譲り、エコ後の買い物ラウンドで装備を整えて負けを一気に取り返そうという戦術をとった。しかし、あまりに慎重すぎたために動きが硬化してしまい、買い物ラウンドをことごとく落としたのだ。結局この買い物ラウンドを立て続けに落としたことが負けに直結してしまい、2nd Halfは2-10、最終的に11-13という結果となった。

最初のうちは大勝できていたために、試合中でも笑みがこぼれてしまう4DNの選手たち。しかし追い上げられていくうちに笑みは消え、真剣そのものの顔へとかわっていった


■ チームとしての活動はこれで終わりではない、WCGが待っている

会場内ではインターネットをベースに展開する「TEAM SPORTSCAST NETWORK」が各試合を事細かに実況。会場にこられなかった観客たちもインターネット経由でCPLを観戦するというわけだ
 この時点で日本代表4DNのCPLでの挑戦は終わった。しかし、全体としてみれば今回4DNが残したものは大きい。1つはブートキャンプを行なった事により海外の強豪クランとLAN環境での交流ができたこと。これによって世界に対して日本のCS界の実力を少しでも示すことができたわけだ。

 ブートキャンプのもう1つの効能として見えたのが、常日頃オンラインで練習をしていたとしてもブートキャンプを行なうことで十分にLAN環境への適応は可能ということだ。そういう意味では、日本のCounter-Stikeのチーム達も常日頃オンラインで練習し、国内の大会でも直前にブートキャンプをするようになれば4DN並の実力を身につけることも夢ではないということだ。

 そして、もう1つはAim力に限って言えば日本のCS界の実力は決して世界に劣っているわけではないと言うこと。逆に言えば日本のCS界が世界と肩を並べるほどに強くなるために必要なことは、世界に目を向けて最新の海外情報を積極的に調べて検証し、自ら吸収していく戦略面での練り混みを今以上に行なう必要があると言うことだろう。また、4DNに限って言えば、この戦略面での練り込み以上にCPLのような海外の大会での場慣れが必要だろう。

 今回のCPLでは1勝のみという結果しか残せなかった4DNだが、ブートキャンプやPre-CPL LAN Tournamentではすばらしい結果を残して、海外にその強さを印象づけた。その強さをCPL本戦でも発揮できていれば、残せた結果は1勝どころの騒ぎではなかっただろう。逆に言えば「本番で実力が100%発揮できない」というのは、そういう状況に慣れていないということだ。そういった意味では、4DNにはどんどん海外へ飛び出していって欲しいと思う。

 これで、今夏のCPLは終わったわけだが、彼らの戦いは終わったわけではない。帰国して2週間後には、10月に行なわれるWCGの日本予選が開催される。4DNが今回のCPLでの経験を糧に、より一層強力なチームとしてWCGで活躍してくれることを期待したい。

□CPL2004Summerのホームページ(日本語)
http://www.acegamer.net/cpl/2004summer/
□CPL2004Summerのホームページ(英語)
http://www.thecpl.com/league/
□関連情報
【8月2日】Cyberathlete Professional League開幕
ゲームをとことん楽しむ“ヘビーゲーマー”達の祭典
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040802/cpl2004.htm
【6月29日】CPL2004 夏季大会日本予選観戦レポート
優勝はチーム力と個人技能の両輪を磨き上げた4DN
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040629/cplsum.htm
【6月25日】短期集中連載:CPL 2004 夏季大会の楽しみかた
CPLの概要とCSの観戦方法、マップの見所などを一気に紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040625/cplpre.htm

(2004年8月3日)

[Reported by tyokuta@ukeru.net]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.