かつて見たことのない実にユニークな周辺機器がホリから発売された。MMORPGである「ファイナルファンタジー XI」と卓上時計を、完全に結びつけてしまったのだ。スペックを見ればひととおりの機能は理解できるが、実際の使用感どうなのか。そこで今回は発売日に購入し、実際に考えられうる一通りの利用ケースを、FFユーザーとして試してみた。さっそく試用レポートをお届けしていこう。
■ ゲームを起動していなくてもヴァナ・ディール内の様々な情報が一目瞭然
本製品を一見する限りでは、単なるFF XIのロゴ入り時計だと思う人が大半だろう。青色にライトアップされた透過型の液晶文字盤や、円状に配置された月齢表記のデザイン等も、いかにもお洒落な卓上時計といった雰囲気である。しかしよくよく見ると、文字盤の時刻表示は、「Earth(地球時間)」と「Vana'diel」の2項目がある。さらに曜日を表示する場所には「光」や「闇」といった、通常の七曜以外の週日も見受けられる。 そう、この時計は、FF XI内の世界「ヴァナ・ディール」の時刻と完全にリンクしているのだ。ヴァナ・ディール内の時間は、現実時間の25倍の速度で正確に進んでいる(ヴァナの1日は現実時間の1時間弱相当)。これは仮にFF XIのサーバーがアップデート作業やメンテナンス等により一時的に接続できない状態であっても、常時カウントされ続ける仕組みとなっている。こうした事情から、現実時間を元にしてヴァナ・ディール内の時刻を算出することが可能なのだ。 つまり、本製品をパッケージから取り出し、現在の時刻を入力するだけで、FF XIを起動することなくヴァナ・ディールの時刻や曜日、そして月齢までもが一目でわかってしまうのだ。筆者は初めて本製品に触れ、オンラインゲーム内の仮想世界であるはずのヴァナ・ディールが「時計」というリアルな物体と結びついたと知ったときは、何とも例えようのない不思議な気分であった。MMORPGも遂にここまで辿り着いたかという感慨が半分、あまりの突拍子な企画に思わず笑ってしまうのが半分、といったところだろうか。 ヴァナ・ディールの時刻がわかるだけでも様々なメリットがある。たとえば魚釣りに関して言うと、新月と満月に限っては“当たり”の確率がとても高くなる。しかしヴァナにおける月齢の周期は、現実時間に換算すると4日以上。それだけに釣りスキルに強い関心を持つプレーヤーは、数少ないチャンスを逃したくないはずだ。また、曜日と合成スキルの間にも同様の関係がある。FF XIを起動することなくこれらの情報を確認できる所が、本製品において最初に注目すべきポイントといえよう。 それではまず、本製品の基本機能面についてざっと説明しておこう。本体の大きさは操作部分を両手で抱えるように持つと、ちょうどゲームボーイアドバンスの液晶パネル部分を縦に倍に長くしたような感触といえば伝わるだろうか。アラーム音は、FF XIの主要都市「サンドリア、バストゥーク、ウィンダス、ジュノ」の4曲をオルゴール調にアレンジしたものを収録(ジュノは上層/下層/港エリアの曲)。これらの音声出力はモノラルで、2段階の音量調節が可能となっている。
普段聞き慣れた主要都市のメロディも、アレンジが施されると大分新鮮な印象を受ける。
音質は値段相応のレベルだが、そのまま室内電話の保留音に用いられても違和感は感じないだろう。それ以外の外装等を含む時計としての基本機能は、値段相応の比較的オーソドックスな造りといえる。
■ 現実時間、ヴァナ・ディール時間の両方で設定できるタイマー機能を使いこなそう
一般的な時計に実装されているタイマー機能には、2通りの考え方がある。ひとつは、指定時刻になったらアラームを鳴らす、いわゆる目覚まし時計的な使い方。もうひとつは、現在から一定の時間が経過したらアラームを鳴らす、いわばストップウォッチに近い使い方である。本製品はこの2通りのタイマー方法を、現実時間またはヴァナ時間の両方の単位で行なえるのだ。 具体例を挙げると、「夜の9時(現実時間)になったらタイマーを鳴らす」や、「今から30分(現実時間)が経過したらタイマーを鳴らす」ことは普通の時計でも行なえる。既にこれを利用して、ノートリアスモンスター(NM)の再出現時間やモンスターのリポップ間隔を図っているユーザーもいることだろう。 しかし本製品ではそれ以外に、「ヴァナ時刻で12時」や、「ヴァナ時刻で3時間経過後」といった方法でもタイマー設定を行なえるのだ。これをFF XI内での用途と結びつけると、セルビナからマウラへの船の出航時刻や、バリスタの開催時刻にタイマーを会わせることが可能である。またアラーム音は4種類から選べるため、調理ギルドの店舗が開店する時にウィンダスのメロディを流したりといったように、普通の時計と比べてより直感的に利用できるのだ。 本製品はFF XI内の機能ではなく、独立した時計であることをもう一度強調しておきたい。たとえば社会人のプレーヤーは、仕事で疲れた日などはFF XIを起動する気力が起こらないかもしれない。そのような場合も、とりあえずタイマーを合成ギルドの店舗の開店時間にセットする。そして現実世界の雑用等をこなしながら、アラームが鳴ったら合成用素材を購入するためにログイン、といった活用法があるだろう。また筆者の場合は、あらかじめ仕事を行なう時間を最大120分と決めてタイマーをセット。そして一心不乱に原稿執筆を行ないながら、大好きなサンドリア王国のメロディをきっかけに仕事を中断し、サーバーにログインする。このような用途にもおすすめである。 さらに、4種類のタイマーを別々に設定できる点にも注目してほしい。これは少々ヘヴィな利用法になってしまうが、たとえばダボイの修道窟最深部や流砂洞のアルテパゲート奥といった危険地帯は、通常のモンスターとNMの再出現間隔(倒してから次に出現するまでの間隔)が微妙に違っている場合がある。何も考えずに敵を倒し続けていたら、NMを含む複数のモンスターが同時に出現してしまい大ピンチ、といった経験のある方はいないだろうか? このような場合も、2種類のタイマーを通常モンスター用とNM用とで使い分けることによって、事前に察知できるのだ。
タイマーの設定方法は、先述した4種類から選んだ後に時間を入力するだけなので、慣れてくれば指一本で行なえる。また一度設定しておけば、タイマーの開始/停止はワンタッチで切り替えられるため、忙しいプレイ中でも問題ないだろう。ボタンが大きく操作の間違いが起こらないので、FF XIとは別にWindowsマシンを立ち上げ、メモ帳やタイマー等のツールで管理するのと比べても大分扱いやすいと筆者は感じた。 ■ このような周辺機器を実際に作り上げた企画力に拍手
見方によっては本製品は他タイトルにおいて使い道があまりないのだが、言い換えると熱心なFF XIプレーヤーにとっては単なるキャラクタ商品以上の価値を見いだせるということだ。また、このようなアクの強い周辺機器が発売されることそのものが、FF XIの人気の高さを物語ってるともいえよう。 本製品を総合的に見ると、FF XIプレーヤーで手頃な卓上時計を探している人には文句無しでお薦めできる。また本稿で紹介した用途(特に釣り・合成スキル関連)に魅力を感じる人は、検討してみる価値は大いにあるだろう。逆にFF XIに関心がない人にとっては、せいぜいおしゃれな目覚まし時計程度の利用法しかない。あくまでFF XIユーザーのための卓上時計だ。
本製品の唯一の弱点といえなくもないのが、あまりにも手軽にヴァナ時刻を確認できるため、FF XIをプレイしていない時もヴァナ・ディールが気になって仕方がなくなる点だろうか。「寝ても、醒めても、ヴァナ・ディール。」という本製品のキャッチコピーは、見事に本質を突いている。それはもう怖い位に。ここまで煽っておいて言うのも何だが、MMORPGのはまりすぎには皆さんほんと注意しましょう。
□ホリのホームページ (2004年7月6日)
[Reported by 川崎 政一郎]
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